僕らはチェックメイト
ろくろわ
僕らはチェックメイト
それなのに。
俺は遠くから手を振っている奴の姿を見て頭を掻いた。
事の発端は、俺と同じコンビニのバイト先の桜ヶ丘女子高の優里亜ちゃんとバイトの休憩中、バニラ味のソフトクリームを食べていた時だ。バニラアイスから昔のアニメの曲『バニラソルト』から始まりアニソンの話をしていた時だ。どうにも俺の声は優里亜ちゃんの好きな男性ボーカルに似ているらしい。そこで冗談交じりに「じゃあカラオケでも行きますか?」と誘ったところ、お友達も連れて三人対三人のカラオケ大会をしようと言うことになったのだ。
優里亜ちゃんは唇についていたバニラソフトクリームをペロッと舐めると「楽しみにしてます」とニコッと笑った。
このままカラオケで進展があれば、優里亜ちゃんとキスでも出来るかも。なんて淡い期待をしながら俺は早速、友達を誘い準備をして当日を待った。
俺はカラオケまでの日を指折り数え、折角だからと流行りをあえて外した新しい服なんかも買ったのだが、それがまずかったらしい。
今、俺の前で手を振りながら近づいてくる男。
「おい、
「それこっちの台詞な。どうすんだよ今日」
俺達はお互いの格好を見合った。
白い短パンにモノトーンのチェックのシャツ。メーカーは違えど、端から見ればお揃いだ。
「俺ら同じクラスのクラスメイトで、同じ寮のルームメイ卜じゃん。さらにチェックのシャツまで被ったらチェックメイトだな」
「いや、幸人。それじゃあ意味変わってくるじゃん。いやこの場合、詰んでるようなもんだし、チェックメイトでもあってるか」
「それにしても、あえて流行りを外したチェックのシャツが被るかね」
「とりあえずさ、どっちか一人がチェックのシャツを脱いでタンクトップになったり、服装変えてみる?」
「いいなそれ!じゃあ俺脱ぐわ」
「いや俺が脱ぐよ」
そんな話をしながら俺達はもう一人の友を待っていたのだが、現実とは実に残酷なのであった。
俺と幸人が合流して十分後。
笑顔で手を振る大柄な白い短パンにチェックのシャツを着た
武光と合流した俺達は、最初こそ気まずかったものの、もはや三人とも同じ格好の方が面白いと言うことになり、そのままの格好で優里亜ちゃん達と合流することにした。
もしかしたら俺達の姿を見て笑ってくれるかも。なんて期待してたんだけど。
待ち合わせ場所にいたのは、同じようなチェックの服装の女子高生三人だった。
白短パンにチェックシャツの男子三人に、チェック柄の服装の女子三人。
「何だかチェック柄ばっかりのお友達で、チェックメイトだね」
こそっと呟いた優里亜ちゃんと目があったが流石にちょっと気まずかった。
俺の淡い期待のバニラ味の甘いキスはチェック柄の気まずい時間によって阻止された。
チェックメイト
そんな声が聞こえた。
了
僕らはチェックメイト ろくろわ @sakiyomiroku
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