怒られたラブレター

五來 小真

怒られたラブレター

「これ、良かったら読んでください――!」

 俺は一年上の女の先輩に手紙を押し付けるように渡すと、その場から逃げ出した。

「なに、ラブレター?」

 先輩の友人が冷やかしている。

 しかし留まっている場合ではない。

 読む姿を見る勇気まではないのだ。


 放課後を迎え、靴箱を開ける。

 ——さすが文芸部の先輩だ。

 もう読んで、返信を入れてくれてる。

 返信の手紙を手にして、良い結果を祈った。

 高鳴る動機を抑え、手紙を開いた。


『こういう渡し方はやめて下さい。次やったら読まないからね。―内容ですが、出だしが平凡ね。ここはガンとハートを掴まないと。続く話で飽きられちゃう——』


 ——ダメだったか。

 うちひしがれてると、友人に肩を叩かれた。


「先輩に告白したんだって? 手紙を渡してるの見たっていう奴がいてさ。その顔じゃ、上手く行かなかったのか。――受け取ってくれただけ良かったじゃないか。彼氏がいたら、手紙すら受け取ってくれてなかっただろうな」

 友人の言葉に、俺は顔をガバっと上げた。

「彼氏がいたら、受け取ってもらえないのか?」

「―ああ、そりゃあ、疑わしい行為は控えるだろうよ」

「そりゃまずいな。―どうしたらいいんだ……」

「次は上手く書くんだな」

「そうか——」


 ここに来て本当にラブレターは、かなりの意表をつくだろう。

 なんかワクワクしてきた。

 ——なんだっけ?

 出だしが平凡だっけ?

 手紙を再チェックする。

 小説のものであるという違いはあれど、何しろ本人のアドバイスだ。

  

 ——しかしラブレター的に、最適なオチとはどういったものか?

 先輩を落とすこと——か。

 単なるシャレに終わったことに、自分のセンスが疑わしくなった。

  

 <了>

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怒られたラブレター 五來 小真 @doug-bobson

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