放送
小さな手 小さな瘡
放送
小学4年生、当時放送委員だった━━は原稿をそのまま読むと味気なく、聴く人も少ないだろうという理由で、担当する放送の中で小さなアレンジを始めた。
主に下校時の放送を担当していた━━は、原稿を一通り読み終え
「おいそこー、教室で宿題やらな一い」と荒唐無稽なことを言った。
もちろん、本当に宿題をやっている生徒がいるのかなど、気にも留めていない。
放課後、教員は週に2回職員室に集まり会議を行う。そこで職員室とその近くの有線を切って先生の耳に届かない環境を作り、でたらめな放送をしたのだ。
友人からも好評で━━は義務感に駆られ、
スリルから来る快感が心に芽生えた。
ある時、彼はマイクの前で言い放つ。
「おーいふしんしゃー、さらえるもんならさらってみろよ」
その晩から翌日にかけて、県警に30件を超える捜索願が出された。特異行方不明者と判断された25名のうち、6名は保護(殆どが失語症、書字障害の診断を受ける)、12名は未だ不明、7名は近くの山間で遺体として発見されている。
身元が判明した遺体について司法解剖が行われ、同一犯の可能性があるとし捜査を継続したものの、16年の月日が経ち時効が成立。
今でも語り継がれる未解決事件となった。
当時、“放送”を聴いていた者は
戯言を聴く友人らを含む複数名の小学生、
そして人数が定かではない、命を軽視した何者かであると思われる。
放送 小さな手 小さな瘡 @A_heart_arrhythmia
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