曖昧な闇に蠢めく人々の毒

作家ジロギン2 の『モキュメンタリー』は
只の モキュメンタリー ではない。

そこには様々な社会問題への丁寧な
クローズ・アップと共に、エンタメ小説としての驚くべき 仕掛け が、実に緻密な
計算の下に施されている。
 雇用、一人親のワンオペ育児、男女差別
SNSの匿名性、我が子や我が親への虐待、
そして、年々増え続けるゴミ問題。

それらはドキュメンタリーであり得る。
 けれども、これはモキュメンタリーだ。

その曖昧性が、既に現実と虚構とが、
作品の中で交錯し始めている。
 読者からのコメントを巻き込む貌で
展開して行く作品も、少ないがあるには
ある。だがしかし、本作は何処からが
実体で何処からが虚構の人格なのか、
 とても曖昧なのだ。

 それは、読んでみると分かる。

職場をリストラされたシングルマザーの
主人公は、短絡的にインフルエンサーを
目指す。そして、尊属殺人に絡むオカルト
情報を得る。

     羽虫に群がる毒蛙の如く。

彼女のブログに人々が集って行く。
そこには虚構のキャラクターもいれば
読者もいる。最も毒々しい者は誰か。
だが、強い毒を持つからと言って、

生き残れるとは限らない。


 だから距離を取りつつも、益々錯綜する
作者の 仕掛け を楽しむとしよう。


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