爆乳お布団の精に人生設計されながらとことん甘やかされる俺の話
悠・A・ロッサ @GN契約作家
第1話 限界だと思ったら爆乳のお布団の精が現れて人生寝直すことになりました
限界だった。
睡眠時間、平均三時間。休日、月に一度。終電、昨日も逃した。
なのに上司は言った。
「“努力が足りない”んだよ、成瀬くんは」
努力って、なに? これ以上、何を出せばいいの?
帰宅して、倒れ込むように布団に潜った。何も考えたくなかった。朝なんか来なくていい。会社も、社会も、溶けてしまえばいい。
──そのときだった。
「……おつかれさま」
ふわ、と柔らかい香りが広がった。花のような、日だまりのような、そしてどこか母性を感じる、あたたかい匂い。
顔を上げると、そこにいた。
ゆるやかなウェーブの栗色の髪。深い色の瞳。
……そして、豊満な、なにかの重力に逆らいきれない圧倒的質量。
彼女は、かろうじて服を着ている──そう言っても差し支えない、薄いキャミソールに、ふわりと羽織ったルームガウン姿だった。
胸元はやわらかく布地を押し広げ、視線のやり場に困るほど。
けれど、不思議といやらしさはなくて、ただ包まれるような安心感だけがあった。
その女の人は、優しく微笑んだ。
「
「……いやいやいやいや。幻覚? 精神崩壊?」
「いいの、疲れてるのはわかってるから。反応遅くて当然よ?」
そう言って、彼女はにこりと笑った。
「とりあえず、今夜はゆっくり休みましょ。大丈夫、起こさないわ。むしろ、出さないから」
抱きしめられた瞬間、意識が溶けた。
まどかの胸元に頬を埋めると、驚くほど柔らかく、あたたかく、包まれるような感触が全身を満たした。
その豊満な柔らかさに頬が沈み、目を閉じると、耳元に優しい鼓動と微かな甘い香りが漂う。
ああ、ここは世界で一番安全な場所だ。そう思った瞬間、全身から力が抜けた。 ぬくもりが、包み込むように広がって──
***
翌朝、目覚ましが鳴った。が、手が動かない。
いや、正確には動かせない。
「ふふ。逃がさないって言ったでしょ?」
腕に、胸に、脚に。絡みつくようにまどかがまとわりついていた。
文字通り、“布団から出られない”状態である。
「や、やばい、会社……」
「うん、だからね──」
まどかが、スマホを見せてきた。 画面には、通話履歴がひとつ。 『人事部(鬼)』──通話時間:4分38秒。
「電話、しておいたわ。退職、完了よ」
「えぇぇええええええ!?」
「本当はね、大企業だったら“休職”という選択肢もあるの。でも……あなたの企業は、制度が形だけで、実際には休ませてくれない。むしろ、休職を申し出た社員がパワハラで辞めてるの、知ってるわ」
なにこの……できるキャリアアドバイザー。
お布団なのに。
でも、たしかに──最初は転職しようって思ってたんだ。だけど。
気づいたら、それすら考える余裕がなくなっていた。
履歴書を書こうとしても、文字がにじんで読めなかった。
パソコンを開いても、メールの文面を打つ手が止まった。
求人サイトを見るだけで、胃が重くなって、気づいたらベッドに倒れていた。
自分は何ができるのか。どこに行けるのか。誰かに必要とされるのか。 そんな問いを思い浮かべるたびに、頭の中が霧で覆われるようになった。
ある日から、ただ“起きて、会社に行って、帰って倒れる”ことだけが自動化されていて、心がどこかに置き忘れられていた。
そうして、何も考えられなくなったころ──まどかに出会ったのだ。
「無理してると、壊れちゃうのよ。そうなってほしくないの」
まどかは、そっと僕の頬に手を添えて、静かに続けた。
「あなたは……ちょっと壊れかけてたの」
その言葉は、不思議と責める響きがなくて。ただ、事実をそっと置かれただけなのに、胸の奥に染み込んだ。
「“うちの子はもう限界です”って伝えたらね、しぶしぶ了承してくれたわ。……最後、“すみませんでした”って言ってたわよ?」
笑顔で言うな。
その柔らかさに免じて許せてしまいそうになるけど。
「これからはね、あなたの心と身体、ちゃんと回復させましょう?」
「……仕事は……?」
「ふふ。とりあえず今日は、お布団で生きててえらいってことで」
そう言って、まどかはもう一度、僕を包んだ。
心地よさと甘い香り。 ……そして何より、救われたという実感。
ああ、これが本当の――
「人生、寝直し」ってやつかもしれない。
***
心に響くものがあれば★やコメント頂けるとうれしいです。
https://kakuyomu.jp/works/16818792439399456221
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Xではちねろ(@HatiNero)さんと、「オフトゥンから出れない」「むしろ巨乳のオフトゥン擬人化はどうですか?」から始まりました。自分としてはめちゃ好きな作品に仕上がりました。
はちねろさんの作品はこちら:https://ncode.syosetu.com/n5567ks/
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