真っ暗な世界

50

真っ暗な世界はあんがい狭い

私の世界はまるで湿っていて重い何かに埋まっているかのような圧や冷たさを感じ真っ暗だ。 時間の感覚すら気温の変化でしか感じられない。

 私は真っ暗な世界で死んでゆくと思うと何も残せないことに虚しさや寂しさを覚え今世に絶望をした。


 私の世界に少し変化が訪れた湿っていた重い何かが乾き自分の身体さえ乾いていくのを感じた。

ジワジワと死へ向かって行くのに分かっていた事だが何も残せない事に寂しさを感じ絶望していた心は何も感じなくなっていた。

 私がまるで死んでいるように何も考えずにいると、乾いてる重い何かが少しずつ湿っていくのを感じる。

 私は急な出来事に止まっていた思考が動き出した。

(やった生きれる!)

と生の喜びを感じたが直ぐに真っ暗で生きたとしても何も残せない真っ暗な世界であると言う事を思い出す。 私はその現実を受け入れ、来世へと希望を託した。


あれから何度夜と昼の気温の変化を感じ、重い何か乾き死の危機を感じたんだろう覚えていない、だが私の身体が日に日に大きくなる事を感じた。

 最近は圧を感じず、すーすとくすぐったい風の感触を感じ始めた。 私は急いで思考したがしばらく頭を使っていなかったせいか、私が何なのか簡単なはずなのに分からなかった、だが自分の世界が真っ暗な世界だけではない事が分かったのは大きな収穫だった。


 私は身体が大きくなったいく事に楽しみを感じながら、私が何なのかを毎日考えた、だがその答えは一向に見つからない、なかば諦めていた時。

真っ暗だった私の世界は緑が生い茂る夏の草原に変わった。私は驚き辺りを見渡す、すると花の先が見えたその時やっと分かった私が何だったか。

私はこの世界に何も残せないと言う不安はなくなった。 種が残せるのだから。


私がこの世界に希望を持った日から、温かい夏から植物が枯れる季節になるほど時間が流れた。

 私はもうすぐ今世の命が終わる。

(来世は植物じゃありませんように)

と願いながらこの世を去った。

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真っ暗な世界 50 @50majkaru

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