あの日の景色

ファシャープ

第1話

思い出して。


遊んでつかれきった日の午後。


枝に手をのばして、夕日に輝く果実が、


まるで宝石のようにキラキラと光っていたことを。


まだ酸っぱい蜜柑をかじった、あのすずしい季節。


頬はまだ赤く、幼いその小さな手で、どこまでも駆けたね。


すりむいたひざも、


木登りでできた豆も、


すべてがワクワクして気にしてられなかった。


綺麗な花を見つけては母に渡した。


目に入った蝶を追っては何度転んだことか。


僕の幼い頃の思い出は、いつもオレンジ色の世界だ。


あたたかくて、哀しい色をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あの日の景色 ファシャープ @Fasharp2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る