第5話 夏祭り、他の学校の生徒・みなと

 夏の夜。

 浴衣姿のひより、すずか、あかね、カレンの4人は、賑やかな屋台の並ぶ道を歩いていた。


「あっ!金魚すくいだ! わたしやる!」

 ひよりが勢いよく網を手に取る。だが――


「……あれっ、すぐ破けちゃう……!」

 何度やっても金魚は網をすり抜けてしまう。


「ふふ、ひよりらしいね」

 あかねが笑い、すずかも肩をすくめる。


 すると、隣の水槽からすっと手が伸びた。

 同じくポイを手にした短髪のボーイッシュな人物が、軽やかな動きで一匹の金魚をすくい上げる。


「ほら、こうやると簡単に取れるよ!やってごらん!」

 にこっと笑って金魚を見せるその姿に、ひよりは目を輝かせた。


「すごーい! お兄さん、上手~!」

 カレンも勢いよく声をかける。


「(お、お兄さん……?)」

 当の本人は小さく首を傾げつつも、「まぁ、よく言われるよ」とだけ返して苦笑した。



 その後、4人と一緒に屋台を巡ることになった。

 リンゴ飴を食べ比べたり、射的で競い合ったり。

 みなとは気さくで、誰とでも自然に会話ができる。


「なんか、面倒見のいい人だね」

 すずかがぽつりと言うと、あかねも一緒にうなずいた。

「うん、落ち着いているし……頼りになる」


 カレンは楽しそうに笑って叫ぶ。

「絶対、モテるタイプだよね!」


「ちょっと、カレン!」

 ひよりが慌てて止めるが、当の本人は苦笑いを浮かべるだけだった。



 やがて、夜空に大輪の花火が咲いた。

 鮮やかな光に照らされながら、ひよりがふと口を開く。


「そういえば、お兄さんってどこの学校?」


「ん? ……お、お兄さん……?わたし、女子だけど?」


「「「「えっ!?」」」」


 4人の驚いた声が揃って夜空に響く。

 カレンが目を丸くして叫ぶ。

「ま、まさかの女の子!?マジ!?」


「あぁ……いろんな人からよく男子に間違えられるんだよね」

 みなとは照れくさそうに頭をかいた。


 一瞬の沈黙の後――全員が笑い出す。

 花火の音にかき消されそうなほどの笑い声が、夏の夜空に弾けていった。



 この出会いが、5人の物語を大きく動かす始まりになるとは、この時はまだ誰も知らなかった。

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