第3話 それぞれの謎の色は何色か


翌朝。

リリーの声で目を覚ます。視界に映るのは、いつも通り色のない天井だった。


「レイ。おはようございます。……辛いでしょうが、出勤しましょう」


どこか申し訳なさそうな声。

AIだと分かっているのに、つい本音を隠して強がってしまう。


「大丈夫。それより今日はきっと、配属先が――」


そのとき、電話デバイスから通知音が鳴った。


「レイ! エイトさんからメッセージです!」

「読み上げて」

「はい! 『今日は俺忙しいから、みんな懇親会だけで大丈夫だよー。夜6時くらいに新宿ねー』……とのことです!」


「……そっか」


レイは目を閉じた。

昨日の病院での出来事を整理しようとしたが、灰色の感情が押し寄せ、目頭が熱くなる。


――気づけば、夕方だった。

知らないうちに眠り込んでいたらしい。


「レイ、おはようございます。もう起きないかと……。何か食べませんか?」

「心配しすぎ。昨日は初出勤で疲れただけ」

「栄養ドリンクだけでも、どうですか?」


空腹も喉の渇きも感じない。

声だけが妙に単調で、頭はぼんやりして現実感が薄かった。


無味の栄養ドリンクを流し込み、シャワーを浴びてからテレビをつける。


『本日のニュースをお伝えします。昨日、関東第一大学の物理教授が突然意識を失い、病院に搬送されました。関係者によると、体には異常はなく、原因は不明とのことです。特に、目を開けたまま反応を示さない状態は極めて珍しく――』


――教授が。

やっぱり、ただの偶然じゃない。

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セブンサイエンス しにょ @7sience

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