第1話 いねむりラピン

「ふあ〜」

 ラピンラピンは、授業終了のチャイムとともにうたた寝から目を覚ました。


 新学期早々、授業中に寝ていたのは、大器の器か、ただの怠け者か。


 ラピンラピンは18歳。呪術学校高等科の3年生だ。

 霊能力にたけた彼女は、水晶玉による占いを得意としていた。

 

 占星術学やタロットの授業は、いつも眠くて仕方ない。


 そんな彼女にクラスメイトがつけたニックネームは、『いねむりラピン』だった。


「ちょっとー。次の授業までにレポート提出だってー! ちょっと聞いてる? ってか、起きてる? もう! 留年したくないんでしょ」


 中等科からの大親友、アリシアは、なんだかんだいって、ラピンラピンの面倒をみてくれる。


 母のいないラピンラピンにとって、アリシアは母親のような存在でもある。それを言うと、怒られるけど。女子は年齢に敏感だ。


「寄宿舎に帰ったら、真っ先にレポート片付けるからね!」

 アリシアは、檄を飛ばした。


「ふあーい」

 まだ、半分夢の世界に足をつけているラピンラピンは、生返事して、耳をかいた。


 赤いレンガの外壁でできた寄宿舎は、高等科の建物の目と鼻の先にあった。寄り道などできやしない。


 寄宿舎のラピンラピンの部屋は、4人部屋だった。占術コースのアリシアのほかに、魔術コースのマギーとエイミーがいた。


 部屋のドアを開けると、愛に生きる女エイミーが彼氏とお取り込み中だった。


 ラピンラピンとアリシアは、もう慣れてしまい、他人の濃密接吻を見てもなにも思わなかった。


 二人は、部屋を出ると、食堂に向かって歩き出した。

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