第6話 初テイム
俺はログインした後、新しく実装されたらしいNPCのもとへ行くことにした。
「装備整えないとね。」
初期武器の長剣はあるが、防具は一つもない。先ほどのイノシシのようなモンスターに早々に遭遇するとは思えないが、街の外のモンスターの強さも分からない。念のため、準備しておくに越したことはないだろう。となると、
「まずは、鍛冶屋か。」
マップを見ると鍛冶屋は複数あるようだが、一番近くの鍛冶屋に向かってみる。初期装備ならどこで買ってもそこまで違いはないだろうという考えだ。
(街の復旧作業は進んでいるが、果たして鍛冶屋は営業しているのだろうか?)
数分走って鍛冶屋に到着した。ありがたいことに営業しているようだが、即席の掘っ立て小屋だ。中に入るとファンタジーのお手本のようなドワーフがいる。
「すいませーん、装備を買いたいんですが。」
「好きにみていいぞ、大したものは無いけどな。はっはっは!」
ここの店主は豪快な人物のようだ。好きにみていいと言われたので、防具を見てみることにする。
(…思ってたより高い!)
胴や足、腕など守りたい箇所はたくさんあるが、最初のミッション報酬と初期配布のお金では一部位が限界だ。予算と相談し、一番守れる範囲が広そうな胴装備を手に取って店主のもとへ向かう。
「これをお願いします。」
インベントリからお金を具現化し、店主に渡す。
「まいど!次もうちで買ってくれよ!」
「もちろんですよ。」
(他の店の値段見てからだな。)
他の装備品の値段を記憶し、他店と比較できるようにした後、店を出ようとすると店主が追いかけてきた。
「兄ちゃん、冒険者だろ?一つ俺の頼み事受けてくれんか。」
最初にウィンドウを見た時に知ったのだが、このゲームではログインした時点で冒険者という職に自動的に就き、この職がゲームにおける最初の社会的地位となるらしい。
(頼み事ってことはまさか、ミッションか!?)
「受けます、受けます!」
俺が食い気味に返事をすると、ドワーフの店主は頼みごとの詳細を語ってくれた。なんでも、新人冒険者用に角ウサギの皮鎧を作りたいが、復興作業で人手が足りず、角ウサギの素材が足りないらしい。一定数持ってきてくれれば、報酬をくれるそうだ。
【『角ウサギの狩猟』
鍛冶屋は角ウサギの皮が足りず、困っているようだ。
角ウサギの皮を納品しよう。
達成率: 0/10 】
ミッションを受注した後、解体用のナイフも貰ってしまった。
(角ウサギの皮を集めつつ、テイムもできればしてみたい!)
町の外に行く前に角ウサギのテイム方法をダメ元で店主に聞いてみると、
「餌で懐かせるんだよ。餌やって襲われなければ成功ってことだ。餌は市場で適当なもんでも買いな!」
案外親切に教えてくれ、俺は礼を言いつつ市場へ向かった。
◇ ◇ ◇ ◇
市場で残りの金を使い、ニンジンやキャベツを買って街の外に出た。
街道から外れ、草原を歩いていると、
―カサッ―
「…角ウサギか?」
野菜を取り出し、草むらにゆっくりと近づく。やはり、角ウサギがいた。
角ウサギ(Lv.2)
LANK:1
――――――――
HP(体力):18
MP(魔力):2
ATK(攻撃力):3
AGI(素早さ):7
DEF(防御力):3
スキル:突進
目が合ったので、急いで野菜を角ウサギの前に投げる。
―もしゃもしゃ―
角ウサギはあっという間に野菜を食べ、こちらをじっと見つめている。
「一発成功か!?」
喜んで前に出た瞬間、
―ドスッ―
「ぐはっ」
普通に攻撃された。
「チクショー!許さんからな!」
持っていた剣を振りかぶり、角ウサギに叩きつける。HPが半分以上削れ、ウサギは吹っ飛ばされた。
次は油断せず距離を詰めようとすると、ウサギの体が淡く光った。
(スキルか!)
剣で体を守りつつ、急いで体勢を低くすると、頭が先ほどあった場所を角ウサギがかなりのスピードで通り抜けた。
「うりゃ!」
もう一度スキルを使われる前に攻撃しようと、体勢を整えている角ウサギに攻撃した。ここで角ウサギのHPが0になり、角ウサギの死骸が残った。
「剥ぎ取りってどうやるんだろう?」
解体ナイフを手にし、とりあえず死骸にナイフを突き立ててみると、死骸が素材に変わった。
アイテム:角ウサギの皮(F) ×1
「…これだけ?」
そこそこの大きさのウサギから小さい皮1枚しか得られないことに落胆するが、角ウサギのテイム挑戦がてら、皮を集めていくことにする。
◇ ◇ ◇ ◇
1時間、角ウサギのテイムと皮集めを並行して行い、肝心の成果は…
「はぁ~。…だいたい1時間やって、皮はFが8つにEが3つか~。そして、テイム成果は0っと。」
思ってたよりテイムできず、もう1時間やってテイムできなかったら都市に戻ろうと決め、引き続き角ウサギを狩っていると、
「きゅ~♪」
ラスト10分というところで、ついに野菜をあげたウサギが攻撃せず、近づいてきたのだ。
「やっとか!」
テイムできた角ウサギを抱き上げてみると思ってた以上にずっしりくる。目はくりくりしていて、先ほどまで殺意を浮かべていた目とは思えない。幸せの重みをかみしめながら、俺は都市への帰路に就いた。
◇ ◇ ◇ ◇
「おぉー、助かったぜ、兄ちゃん!」
ドワーフ店主に角ウサギの皮を渡してミッションを達成すると、いろんなことを教えてくれた。特に、
テイムしたモンスターはインベントリに入れられること、解体は『スキル:解体術』があれば便利だということが、一番の収穫だ。
店主に別れを告げ、俺は『スキル:解体術』を手に入れるために雑貨屋に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます