第36話
昼休みは図書室に行き、呪いを解く方法の本を探したりして、あっという間に一日が過ぎた。
ずっと胸のなかが重たい。
どうして未了ばっかり、こんな目に合うんだ。
骸骨になって、それでも飽き足らずに呪われて……。
強い霊能力を持つ者の宿命なのか。
おれにはないモノを未了は持っているからなのか。
帰りのホームルームの時間が終わってもすぐに帰る気がしなくて、また図書室へと足を向ける。
天気がよければ茄子谷のサッカー練習でも眺めるんだけど……雨のせいでサッカー部員は体育館で筋トレをしているみたいだ。
「きーぶーねーくんっ!」
廊下を歩いていると、聞き覚えのある声がおれを呼び止めた。
「太陽先輩!」
「このまえは、くろすけを……うちの猫を助けてくれてありがとう」
「ああ……えっと、いえ、そんな」
勝手に侵入して騒ぎを起こしたことを謝る前にお礼を言われてしまった。
ちょっと気まずい。
「未了くん、学校に来てないんだって?」
「ええ……実家で休んでいるって聞いてます」
「ああ! そりゃそうだよな、未了くんの実家って、あの有名な……」
太陽先輩が言いかけたとき、廊下の先でふらふらっと倒れ込む生徒が目に入った。
「初鹿野??」
床に手をついて座りこむ初鹿野のそばに駆け寄る。
「ど、どうしたんだよ」
っていうか、初鹿野は、いま目の前を歩いていた感じがしなかった。
突然、降って湧いたみたいに現れたような。
廊下の前を歩いていたんじゃないなら、廊下に沿って並ぶ教室のどれかから出てきたってことだろうか。
初鹿野が倒れているのは理科準備室の前。右隣は理科室、左隣に社会科資料室。
「ちょっとメマイがしただけ。貴船くんこそ、まだ学校に残ってたんだね」
「あ、いやもう帰るところ。初鹿野も寮に戻る?」
「ううん、僕は資料があるって教えてもらったから、図書館に行こうと思って」
「ダイジョーブか?」
「うん。貧血かな?」
アハハ、と笑って初鹿野が膝をはたく。
図書館か。霊能力関係の資料なら、学校の図書館の方が多いから、きっとほかの授業のための資料だろう。
「なんの授業の資料?」
えへへ、と初鹿野が頭をかく。
「授業のじゃないんだ。独渦山神社の古文書だよ」
「古文書ぉ?」
なんでそんなものを?
「無患子くんのこと、僕も何か力になれないかなって思ってさ。そもそも無患子くんの肉体は、独渦山神社の神様が形代として預かっているはずだろ。返してもらえる方法が、調べればわかるんじゃないかと思って」
「ええー! すっげぇ! じゃあおれもついていっていい?」
「もちろん」
初鹿野は少し顔色は悪いものの、微笑んでうなずいた。
おれは太陽先輩を振り返る。
「先輩。おれ、初鹿野と一緒に帰るんで、また」
「あ……ああ。気を付けろよ」
「大丈夫ですよ、図書館ですから」
おれは笑って手を振った。あ、そういえば、太陽先輩、さっき未了の実家のことを知っているっぽかったな?
おれですら、あんまり聞いたことがないけど、無患子家ってそんなに有名なんだろうか?
一応ちゃんと聞いておこうかな。
「先輩……」
振り返ったときにはもう先輩の背中はかなり遠くなっていた。
「まあ、明日聞きにいけばいいかな」
「貴船くん、どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
おれは初鹿野と昇降口へ向かって歩き出した。
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