Across

林檎

プロローグ

        報告書

氏名 有馬将介


以下のビデオログ(以下、甲と記載する)は昨夜、六月十七日 推定死亡時間 午前三時二十三分に自宅リビングで首を吊っているところを発見された、阿藤浩司大学教授のデスクから発見された物である。鑑識が調査した結果、甲に直接的な事件性は見られないことが判明した。

近隣住民からの聞き込みでも、特に他殺を示唆するような情報は得られなかったため、この事件を当人の単独自殺と決定。捜査を終結する。


甲での発言内容を以下に記載する。甲の処分については、

決定するまで部署の遺留品保管室に保管する。


「やはりだ…やはり私の仮説は、あの時から間違っていなかったのだ!」


「だがもはや私… いや、世界中の科学者が集まろうが、もはやどうすることもできまい」


「観測された『もう一つの世界』は後半年も経たないうちに影響を与え始め、世界は交差し、未曾有の混乱を招くだろう!!」


「この新しい世界を生き残るにはそれ相応の力が必要になる…教科書や参考書を読めば身につくような物ではない!!必要なのは、生きようする力そのものなのだ!!」


「それを持つというものは、何者になるだろうな…『ただの高校生』?それとも『日々の業務に追われる多忙なサラリーマン』?はたまた『真実を求めんとする警察官』か?そのような可能性の幅は広いだろう」


「このビデオを警察関係者以外が見ることはないだろうが、人々の奮闘を祈り、この記録を終了するとしよう」


「では諸君、灼けた空の下でまた会おう」



 映像はここで終了している。終了する直前、教授の右手にロープが見られる事から、このビデオを撮った後、自殺に至ったと推測する。





 

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