第五章
第三十九話
「っう……!」
村から離れた森の中、少女のうめき声が響く。
少女の右足首には、金属の刃がいくつも食い込んでいた。
主に狩猟で使用される古典的な
「ひらいて……!」
トラバサミの顎に手を入れ、力任せに開こうとする。
しかし、人間より力のある魔族とは言え、まだ成体となっていない少女ではトラバサミの刃を動かすことはできない。
「魔族か……、これはいい獲物がかかったな……」
歩み寄ってくる黒装束の男。
少女の手首に無理やり手錠を嵌めると、黒色の頭巾で視界を隠された。
「やめて……! 離してッ!」
「うるさい、静かにしろ!」
頭に受けた殴打に、少女は意識を失って昏倒した。
「本日の目玉商品! まだ年端もいかない魔族の少女! 捕獲時の事故で角が折れてしまいましたが、それ以外の状態は良好! では皆さま三十万からオークション開始となります!」
無理やり立たされた舞台の上、無数の視線に刺される身体。
「五十万!」
「百……!」
「二百万ゴールド!」
仮面で顔を隠した人間たちが、より高い金額を叫んでいく。
そんな中、少女は言葉を発することすら許されず、身体を震えさせるしかなかった。
「他にはいらっしゃいませんか? いらっしゃいませんね? では五百万ゴールドで、羊の仮面をつけたお客さまで決まりましたッ! おめでとうございます」
「むッ……! むうぅぅう!」
椅子に手足を拘束され、口元を布で覆われた少女。
そんな彼女の目の前には、熱せられた焼印を持った男がいた。
「よいか、よく聞け? 貴様は今日から我がワイズ家の所有物だ。言うことを聞けば、命は保障しよう。だが――」
男は、少女の鼠径部へと焼印を押しつける。
少女の声にならない叫びが、部屋にこだました。
自分の身体が焼ける臭いがする。
耐えられない激痛に身を捩るも、彼女を縛りつける拘束具が焼印から逃れることを許さない。
「逆らえば、これより悲痛な罰が待っておるぞ。よぉく覚えておくことだな」
焼印を少女の肌から離し、男は卑劣な笑みを浮かべる。
陶器のように美しかった少女の肌には、ワイズ家の紋章である羊と八芒星の紋章が刻まれていた。
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