全く知らない世界に転生した俺、今世こそは、何かを本気で成し遂げたい
@Septem_
第1話
ああ、クソだ。おれは、なんてどうしようもないクズなんだろう。
薄暗い部屋の床に座り込み、遠のいていく意識の中で、そう呟いた。
おれの人生は、全てが**「本気」から逃げ出した連続だった。
中学から私立の一貫校に通わせてもらい、6年間、塾や予備校にも行かせてもらった。高校では、頭がいいクラスの、下の方。成績はいつも「上の下」で、それ以上は踏み込まない。努力すればもっと上に行けることを知っていた。
でも、しなかった。
人間関係はよかったと思う。おれは自分で言うにもあれだが、俗に言う陽キャってやつだ。
中学でバスケ部に入ったものの、すぐにやめて帰宅部。だが、ずっとサッカー部とつるんでいた。クラスではいじられキャラで、みんなを笑わせるのが得意だった。みんなに笑ってもらうのは落しかった。
楽しかった。
でも、満たされない。
心の奥底にぽっかりと開いた穴を、誰も埋めてくれなかった。いや、自分自身が埋めようとしなかったのだ。
高校3年の受験もそうだ。「どうせ推薦で行けるだろう」と、甘い考えでトップ私大の推薦を一つだけ受けた。結果は不合格。
他の大学も受けなかったから、あえなく浪人。一年間、時間をもらった。だが、おれはやはり「本気」になれなかった。
母は、女手一つで、必死におれをここまで育ててくれた。どれだけの金と時間を犠牲にしてくれたか、考えるだけで胸が痛む。いつか、親孝行をしたい。そう思ってはいた。
ただ、それも「いつか」だった。
そんな日々の中、おれは、おれと同い年の天才サッカー選手・ヤマルに憧れていた。彼のプレーを見るたびに、本気で一つのことに打ち込んでいる人間は、なんて眩しいのだろう、と思った。自分も、そうなりたかった。
だが、その夢も、もう叶わない。
母親が交通事故で亡くなった。
おれは、親孝行をするどころか、何一つ返せないまま、大事な人を失った。
絶望だけが、おれの心を満たした。空っぽだった心の穴が、真っ黒い泥で埋め尽くされた。
そして今、おれは、大量の睡眠薬を飲んで、死のうとしてい
る。
意識が、どんどん遠のいていく。何もかもがぼやけて、耳鳴りがキーンと響く。
「ああ.....少年みてえなこと、言っちまうけどさ.....」
霞む視界の向こうに、何も成し遂げられなかった自分の人生が見えた。
「何かを本気でやって、成し遂げたかったなぁ.....」
その言葉が、最後の吐息となり、おれの魂は、この世から消え去った。
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