第7話バロックとの修行

 マジで死ぬ。

 俺は、今日からバロックさんとの地獄とも言える厳しい修行を終え、今は、ゆっくり風呂に浸かっていた。いや、地獄という名じゃ物足りないかもな。部屋に戻るときも、疲労のせいで一歩一歩踏み出すのすら苦労した。修行をした後は、暫く屋敷の広い庭で動けず、10分経ってようやく立ち上がることができた。

 そして、翌日の昼。えぇー、嘘でしょ。昨日よりも修行の内容がさらに厳しくなっているんだけど。ドウイウコトデスカ?


「あのー、昨日よりも修行きつくなっていません?」


「あー、それは、昨日が初めての修行でしたので軽めのメニューでやらせていただきました。どの程度ならついてこられるか知りたかったので。昨日のを見て、大丈夫そうだど判断し今日は倍にした訳です」


「大丈夫じゃないのだけど?昨日でもきつかったのに」


「グズグズ言っている暇があったら、早速始めしょうか」


「理不尽だーーー」


「では、最初は屋敷の周りを50周。25周目で昨日よりも遅かったら、10周追加です」


「チクショーーー、やってやるよ」


 俺は、言われたとおり屋敷の周りを50周し、すぐに次のメニューへと移行された。次は、俺用に作ってもらった木剣で、素振り1000回。腕立て伏せ50回5セット、腹筋50回5セット、スクワット50回5セットと鬼のメニューを終わらせた。途中、昨日よりペースが落ちていると追加でやらされもしたが、一応休憩タイムだ。


「何をやっているんですか?」


「何って、休憩タイムに決まっているじゃん」


「休憩なんてありませんよ。続き行きます」


「昨日、あったでょ」


「昨日は、様子見でしたので」


「そ、そんな~」


「えー、次は剣術の技をお見せします。アルス君は、まだ使えないですが先にどのような剣術があるかだけでも覚えてください」


「分かりました」


「行きます、千刃万華せんじんばんか


「す、すごい」


 バロックさんが放った剣技は、千の刃となって庭に用意された的が全て破壊されていた。魔法を使わず剣技だけで。それだけで、バロックさんのすごさが改めてわかった。あれは、今の俺じゃ使用することができない。もっと修行して、やっと覚えることができ、完璧にするにはもっと修行が必要だろう。


「アルス君、これが剣技の一つだよ。頑張れば、君でも習得出来る」


「頑張ります。最速で、覚えてみせますよ」


「言質は、とったからね。これから、もっと厳しくしていこうではないか」


「しまった。やっちまった」


「また、素振りからだ」


「やったじゃないですか」


「俺は、剣術を学ばせに来ているからな。今までのは、体力作りだでここからが本番の始まりだ」


「この鬼、鬼畜、悪魔」


「素振り追加で」


「すみませんでした」


 あれから、いろんな型で素振りを1000回ずつして、修行が終わる。疲労困憊の状態で庭で一人、放置されている。

 そこのメイド達よ、見てないで助けてくれないかね。こっちは、死にかけで1時間は指すら動かせないだろう。キャーキャー、疲れて動かないアルス様可愛いとか、今日は私が風呂を入れてあげますとか、一緒に寝て疲れを癒してあげるなど勝手なことばかり言いやがって。でも、一人じゃ何もできないのも事実。誰かの支えがないとフラフラしてまともに歩くことができず倒れてしまうだろう。今日は、諦めるか。今の報告を聞いたエルス母上も参戦してくるだろうな。考えていたとおりにエルス母上に捕まり、一緒に入浴し寝る。

 

 次の日、昨日と同じメニューをする。疲れが残っているがそんなことお構いなしにやらされた。ほとんどのメニューが2、3回追加されたが、明日は修行無しと告げられ喜びまくった。それを見たバロックさんは、修行有りにしようとしたので全力で止めた。

 今日は、エリーナ母上と風呂に入り寝た。


 バロックさんの修行が休みの日。今日は、部屋で過ごしていたが、それには理由がある。一昨日といい昨日といい修行がきつすぎて、疲労がたまっているのだ。だらから、未だにベッドから出ていない。朝食も昼食もここで済ませた。手が震えて上手く食べれなかったときは、どうしようかと思っていたら姉上達が食べさせてくれた。


 剣術の修行を始めて5日目、今日はいつもの走り込みや筋トレ、素振りをせず、バロックさんと模擬戦をしている。


「動きが直線ですよ」


「くっ……」


「フォームが崩れています」


「うわっ」


「剣の扱いが雑です」


「はぁ……はぁ…」


「技を繰り出すのが遅い」


「いってー」


「剣先がぶれているね」


「手加っ…減……しろ…よっ……」


「ダメですよ、アルス君。君の身体に剣技を叩き込まないとね」


「はぁ…はぁ……鬼…ですか?」


「余裕そうなので、ギアを上げますよ」


「ちよっ……」


 はぁ……はぁ…はぁ、マジで今日死ぬかも。

 バロックさんは、俺相手に手加減一切しないで剣を振るってくる。それを剣で受け――きれず吹っ飛ばされてしまう。その隙をすかさず攻めてくる。剣を受けるのではなく受け流そうとするも失敗し、攻撃をくらってしまう。

 俺が攻撃しているときは、真正面で防がれて攻守がすぐに変わる。全力で突っ込んで、縦に剣を降ろすときれいにいなされて、逆にカウンターをされて瀕死状態。それなのに、永遠に模擬戦が続いていく

 夕方、辺りにコン、コンと木剣と木剣が衝突する音が聞こえる。そう、まだ続いているのだ。もう、俺の身体は限界を超えている。反射的に防御し攻撃している。意識を半分だけ保もつのに精一杯だ。もう半分は、すでに意識がほとんどない状態で、たまに痛みすら感じないときがある。動きも最初に比べて明らかに落ちている。

 ただ、他と比べて一つだけ最初よりも良くなっている部分がある。意識が半分ないからなのか、何も脳に入ってこない。そのおかげで、集中力が大幅に上がっている。半分の意識で、冷静に剣筋を測り意識のないもう半分で反射的に動く。さらに30分後、ついにバロックさんに一撃を与えた。


「くはっ……ようやく俺に一発当てましたね。お見事です。」


「………」


「剣技は、集中力が必要でアルス君は意識が失いかけている状態になることで、集中力が上がったんです」


「………」


「そして、集中力が上がればその分剣の扱いが良くなる」


「………」


「だから、途中は俺でも――ん?」


「………」


「あちゃー、無茶させすぎたか。アルス君をどうしようか?」


「うふふ、バロックさん」


「げっ、エルス様」


「どうしたの?こんなに慌てて」


「いや、その………」


「言い逃れはさせませんよ」


 バロックさんに一撃を入れた後、俺は気を失っていたらしい。記憶があやふやであまり覚えていない。剣の達人であるバロックさんに一撃入れられるなんて思っていなかったので、本当かどうか今でも疑っている。

 エルス母上は、ボロボロになった俺が倒れ込んでいるのを見てバロックさんを拷問――ごほん、えー、問い詰めていろいろ聞いたらしい。エリーナ母上も参戦して問い詰めていたらしく、バロックさんは翌日、ボロボロになった姿が目撃された。あっ!死んだわけではないよ。ちゃんと生きている。どのような過程でそうなったのかは、聞かない方がいいだろう。

 そして、俺が起きたのは2日後で1日は安静にしろと言われた。母上と姉上、妹達が心配で見に来てくれた。


「アルちゃん、身体の具合はどう?」


「エリーナ母上、大丈夫ですよ。たっぷり寝たので」


「アル、長女として私がバロックというクソ野郎に軽~い罰をあたえといたわ」


「そ、そうですか。ありがとうございます?」


「アル兄、大丈夫?」


「ルナ、大丈夫だよ」


 家族に大分心配をかけさせたようだ。エリーナ母上と妹のルナは、身体の心配をしてリリアナ姉上は、少し怖いこと言っていたが聞いていなかったことにしよう。他の家族やメイド、執事にも声をかけられ無事なことを伝えた。

 バロックさんは、全力の土下座で謝りに来ていた。俺は、そんなに気にしていないので許してあげた。めっちゃ喜んでいたな。

 俺が寝ている間に、魔法を教える家庭教師が来ていたようだ。修行は、3日後俺の体調が戻ってからだ。

 ゆっくり休んで軽く自己紹介をして、魔法の修行が始まる

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転生無双の天才魔術師 @s-h37

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