第5話婚約者

「娘のティアと婚約者としてもらってほしい」


「「へぇ?」」


 俺達は、褒美について話していたんだよな?それって、褒美か?それに、なんで俺?もっといい奴いるだろ。本人同士の確認も必要だと思うぞ。相手が望んでいないのに、婚約なんてごめんだからな。


「陛下、一つ確認したいんですが」


「良かろう」


「何故、俺なんです?もっといい人いると思いますよ。後、本人の気持ちはどうなのか?本人が望まない婚約はしませんよ」


「一つではなく、二つだな。前者は、お前程の優良物件はいないこと。後者は、本人から聞いてくれ」


「俺のどこが優良物件なのでしょう?」


「まぁ、一旦ティアの話をきいてくれんか?」


「別にいいですけど」


「では、アル様。私の婚約者になってください」


「無理に政略結婚しなくても――――」


「違います。これは、私の意思です。私は、アル様が好きです」


「………」


 マジで?本気なのか?えーと、しばらく思考放棄するが、どうしようか?なんも考えてない。どうやって断ろうか。本当に俺のことが好きなのかも分からないし。


「本当に俺のことが好きなのか?」


「はい。なんなら証明しましょうか?」


「どのように?」


「その、夜の営みを」


「………」


 ガチのやつだ。マジで本気だ。まだ、5歳なのになんでそんな言葉知っているんだよ。はぁ、ティアナ王女殿下は可愛いし、嫌いじゃない。ただ、好きかと言われると分からない。そのことを伝えてみるが。


「大丈夫です。その分、私が愛してあげますから。婚約してから、好きなってもらえばいいので」


 なんかもう、罪悪感で半端ない。自分が情けない。相手がこんなに好きでいてくれているのに。それに、どうせ貴族だから誰かと結婚するだろうし、腹をくくるか。


「ティアナ王女殿下がそこまでおっしゃるなら。頑張って幸せにします。陛下」


「分かっておる。では、二人の意思のもと婚約成立だ。これから、義息子なるのか。だが、夜の営みは、もっと成長してからだ。わかったな」


「「はい」」


「これから、よろしくティアナ王女殿下」


「ティアでいいです。私もアル様とお呼びしますね」


「因みに、俺のどこが好きになったの?」


「えーと、すべてです。顔も実力も性格も」


「お、おう」


 すでに、ティアに好いてきていると本人は気づかない。即落ちしたことも。

 照れながら、俺の好きなところを言っているの可愛いな。この子が俺の婚約者か。まさか、こんなに早くできるとは思わなかった。嬉しいかも。


「さて、婚約については終わりだ。次は、洗礼の儀だが、フェルも連れて3人で行ってくるといい。そして、ティアは後2年王宮で過ごしてもらい、7歳からは、ラフィード辺境伯領に住まわせる」


「早くないか」


「ティアが今すぐにでも、一緒に住みたいというのでな、せめて後2年は我慢させてもらった。これ以上長いと、娘に嫌われるからな。それと、アル。ときどき顔を見せに来てくれ」


「分かりました」


「そんな、堅苦しくなくていい、もっと砕けて喋っていいからな。もう、家族当然なんだから。もちろん、公の場では無理だろうが」


「分かった。そうする」


 こうして、話し合いが終わり今日は王城で過ごすことになった。何回か、迷子になったので王城で働いているメイドが傍についてくれた。

 途中からティアも来て、王城内を案内してくれたが、広すぎて覚えているところは少ない。

 翌日、ティアとフェルと一緒に教会に向かう。


「アル様、着きました」


「様は、外してくれない?」


「分かりました、アル」


「二人とも、仲良しだな」


 3人で雑談しながら、教会に入っていく。最初は、フェルが洗礼の儀をする。次に、ティアと順番にやっていき、俺の番になった。

 洗礼の儀は、丸い水晶に手を乗せて祈るだけでいい。そうすることで、ステータスを確認することが出来るらしい。

 俺は、教えどうりに水晶に手を乗せたら、懐かしい声が聞こえた。


「ホォホォホ、久しぶりじゃな諒太君。いや、この世界ではア――――」


「もう、遅い」


「めっちゃ、待ってたんだから」


「ようやく、会えたわ」


「ちゃんと、体鍛えているか」


「毎日、1秒たりとも鍛錬を怠るなよ」


「おじさんじゃないし、大丈夫だよ」


 ジェノフの言葉を遮り、魔法神ルミーナ、破壊神ミナエル、時空神エステナが割り込み、他の神達も挨拶していく。筋肉バカの剣鬼神カイと武闘神ケンは、体を鍛えているか聞いていたので、素っ気なく返答してあげた。久しぶりに会ったのに、第一声がこれはないよ。


「久しぶりです。アルと呼んでください。それと、なんで俺ここにいるんです?」


「教会に祈ったからだよ」


「それだけでしたら、他の人達も神界に来るはずですが?」


「私達が、会いたかったからもあるわ」


 俺の質問に、生命神ルシフェルと全知神シルが答えてくれた。どうやら、神界に招かれるにはいくつかの条件があるそうだ。


一つ、教会で祈ること

二つ、神々に興味を持たれているか

三つ、加護持ちで、加護レベルが高いこと

四つ、神々に会いたい気持ち


 一つ目は簡単にでき、二つ目は神達が興味を持つ人間が少ないこと、三つ目は加護レベルが高いほど良いが、そもそも加護持ちの人間が少ないらしい。四つ目は、祈りはするもの神々に会えると思っていない者が多いそうだ。


「俺がここにいる理由は、分かりました」


「だったら、ちょと時間ちょうだい」


「うん?まぁ、別にかまいませんけど」


 生命神ルシフェルがそう言って、男達を置いて女神様達だけで何か話していようだ。男4人組は、何の話かさっぱり分からないので、こっちはこっちで、俺が転生した後の話をしている。









○●○●○●


〈女神視点〉


「で、どうするんだ?」


「早くしないと、アルもそう長くはここにいられないよ」


 竜獣神リュールと死霊神シーナの言葉にみんな頷き、すぐに本題を話す。


「ルミーナ、ミナエル、エステナ、今やったほうがいいわよ」


「ルシフェルの言うとおり、時間が過ぎるほど出来なくなってしまうわよ」


「で、でも」


は、後2年はかかるはずだろ?」


「そうだよ、今じゃなくても」


「ダメよ。すでに、から許可はもらったでしょ」


「今やって損はないよ」


「うぅ~」


「やるしかないのか」


「大丈夫かな?」


「心配しなくてもいいわよ。私達が、全力でサポートするし」


男どもカイ、ケンには、邪魔されないようにするから」


「そういう問題じゃないよ。もう、こうなったらやるしかない」


「ボクも覚悟決めた」


「私もいいわよ」


「よし、それでいいのよ。時間もないし、作戦開始よ」


 ルシフェルとシルが話の中心になって、ルミーナとミナエル、エステナを後押しする。他の女神、竜獣神リュールと死霊神シーナは、3人が邪魔されないように警戒し、認識阻害と防音の結界を構築、準備万端だ。そして、作戦が実行される。









○●○●○●


 女神達が何かしている内に、カイとケンが軽く稽古しようと言うのでやってみたら、ボコボコにされ今は、床に転がっている。暫くすると、女神達が帰ってき、俺の状態を見たらカイとケンがボコボコにされていた。生命神ルシフェルは、俺の傷を治して、魔法神ルミーナ達が少し遠くで待っているとのこと。何かは分からないが、とりあえず言われたとおりの方向に進んでいくと、いきなりルミーナ達が目の前に現れて驚いた。


「ごめん、認識阻害の結界を張っているから」


「え?なんで?」


 時空神エステナが結界があることを教えてくれたが、何故なのか分からない。すると、心を読まれ破壊神ミナエルが応えてくれた。


「それは、今から大事な話があるからだよ」


「大事な話?」


「直球に言うよ。ボクと結婚して」


「私も、いいわよね」


「私は、無理矢理でも結婚します」


「………」


 俺は、暫く呆然としていた。何故?まず、どうしてそうなったのか、聞こう。それに、すでに婚約者がいるし、なんとか逃げられるだろう――と思っていました。


「因みに、アルの婚約者から許可されたよ」


「は?どうやって」


ここ神界に来る条件は、教えたでしょう」


「まさか」


「アルが今、考えてるのが正解だよ」


「本気なんだな」


「「「うん」」」


「はぁ、わかった。でも、神が地上に降りることってできるのか?」


「大丈夫だよ。人間の肉体を用意しているから」


「後2年は、肉体がボク達の力に慣れさせないといけない」


「だから、2年待っててね」


「すでに、準備しているんだ。こうなること知ってた?」


「ルシフェルとシルが必ず、こうなるって」


「マジか。ん?体が」


「時間オーバーみたいだね」


「女、増やしすぎないでよ」


「結婚、必ずだからね」


「約束するよ」


 こうして、俺はさらに婚約者がふえることになった。あの3人なら、可愛いしいいか。それに、ティアも許可したから大丈夫――では、ないな。地上に降りても身分は、どうするんだ?まぁ、そのときなってから考えるか。

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