落涙アイスクリーム〜橋の上で泣いていた少女とアイスクリームデートで心を通わせるASMR〜

汐海有真(白木犀)

Icecream.1 橋の上でバーアイス

(ひとりの少女が橋の欄干に腕を預けながら、ソーダ味のバーアイスを食べている)


//SE 橋の下の川のせせらぎ


//すすり泣く声

「……ぐすっ……ひっく、うう……」


//SE 茉白ましろが、バーアイスをしゃりと齧る音


//泣きながら

「ぐす……う、おいし……」


//SE 茉白がもう一度、バーアイスをしゃりと齧る音


(主人公が橋の上を通りかかる)


//SE 主人公の足音(段々と大きくなっていく)

(主人公が立ち止まる)


//主人公に気が付く

「……ん、」


//SE 茉白が腕で涙を拭う音


//冷たい掠れ声で

「……なんですか? じろじろ、見ないでください」


//SE 主人公がポケットからハンカチを出し、茉白へ差し出す音


//驚いたように

「……え」


「……いや君、お人好しすぎませんか? 普通見知らぬ泣いてる女にハンカチ、差し出しませんからね?」


「ああくそ……またなんか、涙出てきました。ぐす」


「……借りても、いいですか?」


//SE 茉白が主人公からハンカチを受け取る音

//SE 茉白がハンカチで零れた涙を拭く音


「うう、ふかふかだ……」


「……ありがとうございます。返します」


//SE 主人公が茉白からハンカチを受け取る音

//SE 主人公がハンカチをポケットに仕舞う音


「はあ、わたし、かっこ悪……」


「あ、やべ。溶けちゃう……」


//SE 茉白が、バーアイスをしゃりと齧る音


「ああ、おいし……」


「……あの。じっと見られてると、食べ進めにくいんですけど……」


//SE 主人公が手に持っていたビニール袋から、包装されたバーアイスを取り出す音


//驚きつつ、ほんのりと嬉しそうに

「……え!? 君も、アイス、持ってるんですか!?」


「隣で食べていいか? え、まあ、んー、……いいですけど」


//SE 主人公が包装を破り、バーアイスを取り出す音


「スイカ味、か」


//切なげに

「……センス、いいですね」


//SE 茉白が、バーアイスをしゃりと齧る音

//SE 主人公が、バーアイスをしゃりと齧る音


「……このアイス、食べたことあります? 爽やかなソーダ味の、これ」


「だいぶ昔に食べたかも? じゃ、味忘れてんじゃないですか?」


「口、開けて」


(茉白が主人公の口へ、持っているバーアイスを近付ける)


「食べて?」


//SE 主人公が、茉白の持っているバーアイスを一口齧る音


「……どう、おいしいでしょ?」


「……君のスイカ味も、おいしそう」


「食べさせてくださいよ」


(主人公が少し驚いてから、茉白の口へ持っているバーアイスを近付ける)


//SE 茉白が、主人公の持っているバーアイスを一口齧る音


//また泣き出してしまいそうな声で

「あー……すごい、おいし」


「……ん? なんで泣いてたか、ですか?」


「……ご想像にお任せします」


//SE 茉白が、バーアイスをしゃりと齧る音

//SE 主人公が、バーアイスをしゃりと齧る音


「はあ、最後の一口だ……」


「……名残惜し」


//SE 茉白が、バーアイスをしゃりと齧る音


「……おいしかった」


「ごちそうさま、でした」


「なんか、食べ足りないな……」


「え? おかわりいるか、ですか?」


「……いる」


//SE 茉白が、主人公の持っているバーアイスを一口齧る音


「おいし……ありがとうございます」


「……そういえば君は、高校生ですか?」


//最後、くすりと笑う感じで

「高校二年生? ……なんだ、タメじゃないですか」


「この辺住んでるんですか?」


「……ああ、住んでるのは隣町で、この町の高校に通ってるんですね」


「でももう、夏休みの時期じゃないんですか?」


「へえ、学園祭実行委員会の活動があったんですね……」


「学園祭実行委員会って、陽キャの集まりのイメージです」


//少しからかうように

「もしかして君も、陽キャ?」


「陽キャのふりをしてる陰キャ、か……ふうん、なるほどね」


//ちょっと得意げに

「ちなみにわたしは、陽キャのふりをすることもできない陰キャです」


「……おい。ここ、笑うとこですよ?」


「……アイス食べないと、溶けちゃうよ」


//SE 主人公が、バーアイスをしゃりと齧る音


「君ももうすぐ、食べ終わりますね」


「……え? 最後の一口、くれるんですか?」


//最後、くすりと笑う感じで

「君ってやっぱり、だいぶお人好し?」


「後悔しても遅いですからね」


//SE 茉白が、主人公の持っているバーアイスを一口齧る音


「……おいし。ごちそうさまでした」


「それじゃ、ばいばい。わたしはもう少し、ここにいたいんで」


「……え? 友達にならないか?」


「……別にわたしと友達になっても、おもろいことは起きないと思いますよ?」


「それでもいいって? なんというか、君、物好きですね……」


「……まあ、ひとりでアイス食べるのも味気ないし、いっか……」


「スマホ持ってる? 連絡先、教えて」


//SE 連絡先を交換したときのスマホの電子音


「ありがとうございます」


「じゃ、また一緒に、……アイス、食べましょ」


「またね」


//SE 去っていく主人公の足音(段々と遠ざかっていく)

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