蛍の詩

古都綾音

第1話


私ね……唐突にごめん!

 タイムスリップで降りて来たの!

 だけど ここって地球?

 なんだか目ざしてたのとちがうのよ

 石塔ばっかり

 山ばっかり!

 どーなのよ?

 ここどこよー!!

 私 蛍!

 確かここ!ニューヨーク!

 オマケに2029年?

 マシンの カウンターはそうなんだけど

 ビルどこ?

 摩天楼!

 どーなってんの!

 日本のマシンに間違いない!

 なんでこうなったんだ!

 パニック!パニック

 迷子だよー

 タイム スリットにでもはまった?

「あーーーー!おかあさーーーん」

 蛍16歳 受難 爆発

 成田山新勝寺で 引いたお御籤大凶!

 でもねー

 マシンの 試運転でもあるまいに!

 そりゃ着地で 擦ったわよ…………

 だからって!!

 ひどいよー

「ひーん」

 涙 ポロポロ泣いてたら

 かっ!

と 弓矢がマシンにとんだ

「ひっ」

 そんな!そんな!何時代だーーーーー!

「うるさい」

 狩りの邪魔!

 結構 バリトンの 声がふる!

 一応日本語!

 日本なの?

「空から物騒な!」

 渋めの お兄さんが 剣を 抜いた

「ひ……」

 蛍!絶対絶命であーる


 第1章 物騒はおまえだーーっ!


 「女!」

 ここからされ!

 ここは我の 所有地だ!

 その 塊しょっていけ!

 なの!無理に決まってんでしょ!マシンなのよ!

「消えないなら!奴隷に 売る」

 剣が 私の頬を なでるのよ!

 いい声すぎてゾクッとくるけど!

 金属の ゾクッとはやめてよね!

「ここどこ!」

 やっとこ 話してみたものの!

 お兄さんはいぶかった

 ……おまえ!

 地球の 女か?

「なんだとー!」

 とんでもなーーーーい!

「面白い名は!」

 名乗るもんか!

 きっ!

 私の睨みは折り紙つき!

「よし!妾にしてやる」

 ふざけんじゃなーーい!

 蛍ここに来て貞操の 危機!

 異星で 妾なんて!とんでもなーい

 こんなのありえーーん!

「名乗れ」

 皮肉る様に剣を滑らせ

 ボタンを 飛ばす

 ちょっと自慢のバストが!

「やめたほーがいーよ!」

 背後から女が 寄ってくる

 私と歳がかわんない

 どんな病気もってても!

 ぱちん!

 蛍おこって 手がとんだ

「おまえ!」

 女がぐーでなぐろうとすると お兄さんが止めた

「よせ!可愛い顔をしている!」

「また?何人拾うの!タカ!」

 お兄さんはタカとかいうらしい!

「面白い女だ!おまえに喧嘩ふっかけるとはね」

「病気持ちはごめんだかんね!テントいっぱい女かこって!なんなの!」

 呆然!

 なんだと!

拾える女は 拾うまで!

 タカは 自慢げ!

 私切れてもいいよね!

 いいといってー!!

 蹴り飛ばすとこ蹴り飛ばし

 だっと 駆け出す

 おー!

 女が

 笑顔で 蹲るタカを見た!

 やるねー彼女!

がしっ!

 ポニーテールの 髪を鷲掴み

 ぐりん!

 顔を近づけた

「タカ」

 こいつ

 私が貰う!

 あ……アシュラ!

 よっぽど蹴りが

 ハマったのか!タカは立てない

「私の側づきにしてやろ!」

「タカの 股間蹴る女!」

 高々と 笑ったアシュラ!

 私は髪を 掴まれてぶら下がる

「いいねー」

 教育しがいあるだろよ!

 タカの 苦悶を 見捨てると 私を引っ立てる

 アシュラは ずるりと 剛力で 引きずった

 涙も痛くて出てこない!

「おまえ!名が名乗れないなら ポチでどう?」

 なんだよーそれー!

 地球じゃちょーっと あれでしょが!

「ほたるよ!」

 良い名があんじゃん!

 アシュラが 放り出す

 つかれた!ついてきな!

 抵抗したら ビンタ100回!

「や……」

「アシュラ様ってよぶんだよ!いいね」

「アシュラ様」

 いいじゃん!いくつよ!

テントまで きていて

 私へたりこんだ

「いくつだ!おまえ!」

 顎をがしっと 掴まれた

「16!」

 睨んで見たものの!アシュラの 眼力には負けちゃって

 アシュラは 老婆を よびだした

 ばーちゃん!新入り!

 投げ捨てるみたいに 顎を離し アシュラは スタスタ 広場に向かう

「アシュラ様もお忙しいのに!」

 おまえ行き倒れか!

 なんだよー!

 むかっ腹たつけど相手おばあちゃん!

 ここは大人しくしとくか

 見たとこタカ様の ご趣味だが!

 救われたね!

 タカ様にかこわれて何人の 娘っ子が 狂い死んだか!

「アシュラ様ならいいよ!」

 見たとこ 可愛がって下さるだろ

「なんで」

 おや!訛ってないね!

 どこの村から拾われたのかと思えば!

 アシュラの テントには いい服を 着た侍女が 10人働いていた

「ここに加わる名誉!忘れんじゃないよ!」

 おばあちゃんが 服を投げてよこす

 体を清めて お手伝いをして!

 侍女たちに急き立てられて

 湯浴み所に 放り込まれた!

 なんだよー

 私は 髪をとくとゴムを ほおった

 10本ほど毛が抜けて

 かなりヒリヒリする

「お前ね!遅いよ」

 アシュラが 遠慮も 無しに乱入

「洗ってやろうか?」

 かんざし を 棚にほおった!

 やる!ホタル!

 さっきと違い優しい!

 二重人格かよ!

 私はお湯につかった!

 危ないね

 タカには気をつけな!

 にこ……

 笑って アシュラが服を脱ぐ

 この主人!侍女と 混浴する気かよ!

「面白いね お前!友達にでもしようかね」

 目がとんでもなく優しい!

 どーなってんのよ!

「いたかったろ」

 髪をわしっとなでる

 あの場合!あーでもしないとおまえが殺される

 アシュラが ザバと 湯をたてた

「お前見たとこ生娘だろ!」

 あいつ気に入ると 殺すまで 性奴隷だ

 私が ひろわなきゃ 殺されてた!

 涙が湧いた私に アシュラが 手ぬぐいを なげる

「とにかく 外では 私はあんなだから!」

 ま!思い知ったろーけど!

 不思議と 信じてしまえる

 私は アシュラを アシュラ様と 呼びたくなった


 アシュラ様お水でございます

 私の出るより先にアシュラがでる

 その裸身は小麦色で 肩に3cmほどの傷が あった

 ウエストもキュッとしてて

 私は湯船でぶるると頭をふった

 私だって!

 まぁ胸は合格

 ヒップにも自信あり

 だがしかーし

 ウエストが

 はーー!

 悶々としてきた……

「おいホタルのぼせんぞ!」

 アシュラがふりかえって 私を 抱き上げてくれる

「まったく手のかかる奴」

 ばーちゃん みてやって

「おやまあ やっぱりお気に入りで?」

 うん

 友達にしとく!なかなか おもしろいんだ こいつ

タカの股間けりとばしてさ

「おや!まあ!タカ様の!」

 ぷっ

 思い出したのかアシュラが笑う

「かっこいいだろ」

「はい」

 客間に入れといて ばぁちゃん

「わかりました」

そんな話がされているなんて露知らず

 私は気をうしなっていた

「外にはひとりで ださないで!タカが狙ってる」

 はい

 アシュラ様

 こうして 私は 客間なんて豪勢なものをいただき

 そして 白い布団で ぐうぐうねていたのである

 1時間後

「飯できたってさ?おきれる?」

 アシュラはショールを 外し アラビア風の衣装を着ている

 その衣装はアシュラの 美しいボディラインを浮き出させ 女でもみとれる

「服はそこ!出歩くなら侍女同伴 」

 そこにはアラビア風の 赤の 衣装がある

 とっとと着替える!

「わかりましたアシュラ様」

「敬語いらん様もつけるな!ホタル」

なんだか不思議な世界だがもしかしたら たのしめるかな?

 私は思ったのだった


 第2章 宵月


 私が着替えるとアシュラはうれしそうだ

 似合うじゃん 探したかいあった

 うーん

 露出がねー……

 ほとんど裸 足だけは薄いパンツが ついてるけど

 飾りが きんきらしすぎでしょー

 これ多分 本物の金よね

 動く度にシャラシャラなる

 ううーん

「お前は何着ても似合う!今度したてようか?」

 アシュラは母親が 娘を見るような目をしている

「私は大丈夫よアシュラ……何かお手伝いさせて」

 小首を傾げると

 辺りがあたふたした

「アシュラ様のお友達にそんな……」

 じゃ!そうさね

 私用の 化粧係でもさせようか?

 アシュラがそう言ってくれたおかげで 仕事が貰えた

 特別待遇はちょっとね

 さーてがんばるかな!私はひとつガッツポーズをしてショールの裾をシャンとならした

「くす……やっぱお前は おもしろいわ」

 夕飯はタンドリーチキンと ラム肉の やいたの?

推測だが……そして ヨーグルト風味の紅茶

 ご飯はパン 黒パンだが美味しい ラム肉と チキンを挟むと美味

 アシュラがそうして 豪快に食べていた

 私も真似る いや 口に入り切らない

 アシュラは造作がおおきいからな

 ポロポロと脇から零れる

……ホタル?おまえねぇ

 アシュラに呆れられた

 お前は口ちっちゃいんだから ほら

 箸をくれる

「みんな!今日もありがとう よくはたらいてくれたね」

 いえいえアシュラ様のためなら

 皆が笑う なんとみな同時にご飯なのだ

 アシュラのテントでは 上下の差など無いようであった

 とっても楽しい

 なごやかな食事風景

 バサ

 その時間を乱すように テントの入口がなった

 入ってきたのは タカ

「あの娘を寄越せ」


 私はどうしようか?どう切り抜けようか考えた

「タカ?蹴られすぎて快感にでもなったかね」

 アシュラが 笑った

「ここにいる女達は 私のさ」

 ホタルも渡さない

「無礼はたらくってんなら 容赦しないよ!タカ」

 アシュラが 薙刀を 持つとテントを出た

「ふふん!まあ勝つまでだ」

 タカが 剣を抜くと後を追う

 ホタル!

 どこかで声がする かんざしの 宝玉だ

 いいかい?

 裏からみなを逃がすんだ

 お前もだよ

 どうやら思念の類らしい

 宝玉は緑柱石だ

「うん!」

 私は 皆を逃がしながら 自分はテントに残った

 燃え残りの 薪をにぎりしめる

 タカとアシュラは互角

 ざっ……

 タカの剣がアシュラの 服を裂く

「いい眺めじゃないか?なあアシュラ」

 アシュラの 大腿があらわだ

後ろへまわって せーの!でタカの 頭頂部に 薪を叩きつけた

「ぎゃ……」

 タカが崩れ落ちる

 アシュラ唖然

「おまえね人の話きいてたかい?」

「聞いたけど」

 パンパンと手をうつ

 これで今朝の暴言 おあいこ にしてあげる

 行こうアシュラ

 タカは目を回している

「さ……」

 テント裏には 有事用のテントや 乾物が積んである馬車があった

 ……おまえね……ほんと面白い子!普通真っ先ににげるだろ?……

 あらあら

 このホタルさん見損なっちゃこまりますよ 友達は守る

でしょ?

 アシュラにウインクする アシュラ は 面食らったが

 豪快にわらった

「アシュラ様ホタル様お早く」

 侍女の ひとりが2人を呼ぶ!

「ありがとう皆!」

 アシュラが笑う

「私たちは主人を置いて逃げるくらい くさってませんわ」

 侍女頭の女性が 馬に鞭をくれる

 ぶひひん

 馬は嘶くとはしりだした

 3頭立ての馬車だ

「ふふタカの奴くやしがるだろうねー」

 ふふん!

ははは!

 豪快な笑顔だった


一行は 草原を行き 岩肌に出た

「これなら轍も消せるね」

 アシュラが笑う

 あのアホどうしたかね

「地団駄ふんでますよー」

 おばあちゃんが 笑う

「私ゃね女をおもちゃに使う奴は ゆるせないんです」

 ポンと胸を打つ

 爽快でしたねー

 こうすかっと……

「ばあちゃん 」

 くくっと アシュラが 笑う

「ライカ」

 侍女頭に 水筒を渡す

「疲れてんだろお飲み」

「はい……アシュラさま」

 侍女頭はライカというらしい

「さぁてと……新しい目的地は どこにすっかね ここらは遺跡ばっかで めぼしいとこないもんね」

 アシュラが 足を投げ出して

 両手を頭の後ろへ回した

「いっそ遺跡のひとつにでも 住みますか?」

 おばあちゃんが かんらかんら と笑う

「いいね!」

 楽しそうなアシュラ

「あんのバカと縁がきれてさっぱりさ」

「やらしい男は大っ嫌い」

 私が 頷くと アシュラは かかか……と笑った

そうさね やらしい男は わんさかいるが あいつのは病気だからね……!

 皆がもっともだと頷く

「しっかし情けないね……アシュラの足に見とれて」

 ボカッ!だもんな

 わっはっは

一行は 本当に遺跡に住むことにしたのである

「ここなら近くに沢もある 兎も狩れる!いいかもね」

 アシュラが ヒョイと降りた

「すごい」

 うん……ここは 狩りを司る神様の神殿さ

 装飾は いいんだけど 難ありなのさ

 魔物が住み着いてるとか聞く

「魔物!?」私が 驚いてアシュラを みる

 うん

 グリフォンらしいんだよ

なんだそりゃ?

「どんなの?やっつけられる?」

 うーん

 タカが いれば 1発なんだけど

 あの体たらくじゃね ぱっくりやられちゃうだろさ

私たちで狩りましょ!

 侍女達 矢筒を しょった

 戦えるんかい?

 いい!

 私らで なんとかする!

 ら?

 私ら?私も入るんかい?

「お前なら戦えるだろ?」

 ウインクされて

 ガックリ……きた

「嗚呼 お母さん 先立つ不幸を……」

 誰に祈ってるんだい!いくよ!

アシュラに 尻をひっぱたかれて

 私は 剣を 握った


 第3章 グリフォン


「グリフォンってどんなの?」

私が アシュラにとうた

 鷲の上半身と羽を持っていて 下半身はライオンって奴さ

お前頭良さそうだから知ってると思ったよ

 ファンタジーな生き物なのね!

「ファンタジー?」

 アシュラが返す

 ロールプレイングの もとよ!

「ロール……なんだそりゃ」

 うー?

 ゲームかな?

ゲームねぇ……

 2人はずんずんと進む

 と……そこにファサリと巨大な 1枚の羽が振った

 なにこれでかい!

 いやがったか!

 アシュラが 薙刀を 構えた

 来るよ!

ざっ

 鋭いクチバシが 襲う

 ぴゃっ

 私は尻もちをついた

「甘い!食われるぞ……ホタル」

 だっ……!

 アシュラが 床に降る影目掛けて ひた走ってっ……と地を蹴った

 そして垂直に跳ね その本体を薙刀で 切りつける

 ぎゃあ……ぎゃあ……

 グリフォンとやらは 羽毛を舞わせながら 私に標的を 変えた

 どずっ!

 グリフォンの 必殺の つつき

 私は 横転して避けた

 そして首目掛けて一撃!

 血がまった

「うまい!やるじゃんよ」

 弱いとよんでいた 私の思わぬ反撃に、グリフォンは バッサバッサと とびまわった

 ぎゅ……

 グリフォンの 標的が 絞られる

 ガウ

 再びつつきが 来る

 私は前転しながらかわすと グリフォンの 首を刺す

「ぎゃあ」

 お前才能あったんだな!

 アシュラの 言葉

 うーん新体操なら少し!

 新……体……なんだって?

 新体操

 新体操は好きで 昔リボンごっこをしていた

 ざうっ!

 アシュラが腹をさいて 後転する

「行けるね!」

 2人が同時に跳んだ

 そして

 武器を振り下ろす

 ギィエ ギィエ グリフォンは きりもみながら

 落下する

 そして地で果てた

 やったね

 2人してハイタッチ

 これでしばらく 食いもんには困らないかな?

 これ……?くうんかい?

 くえるの?

「嗚呼!うまいよ」

 塩焼きとかね

 シンプルなのね

 でもま

 お腹くだしはしないだろう

 よっしゃ!

 皆おいで!

 今夜はご馳走だ!

「きゃー――」

 ライカを始め 侍女たちが大喜び

 グリフォンの肉ですって!

盛んに喜ぶ

 なんかご利益あるんかい?

 私はグリフォンの 頭をコツと蹴った


 第4章 悟り


「そうかホタル お前は地球から来たのか!」

 アシュラが ダン!と 肉に フォークを さすと 噛みちぎった

「うん!」

「あの星は綺麗だろ」

「うーん最近排気ガスとかは改善されたけど自然がないの」

「へー!あの鉄の?車とかいうんだっけ?」

「うん」

 ライカが んーっと 噛みちぎろうとするが ちぎれず すごすごと ナイフを使う

「異星の方だったんですね!でも アシュラ様と似てらっしゃる」

 なんか嬉しいな!

 アシュラが ワシワシと自分の頭をかいた

「ホタルみたいな妹が 欲しくてさ!」

 アシュラいくつ?

 私がきく

「ん……100歳」

 へ……?

 100何だって?

「100歳!」

 うそ!

 若く見えすぎるから!

「あはは!」

 いいさね

 地球じゃ ばあちゃんよね

 じゃ おばあちゃんは?

 ちょっと怖々……

「1000歳だよ」

 わーお!

上には上がいた

「地球と時間の流れが違うからね」

「うん」

 まだ地球と交流があった頃……

 アシュラが 顔を上げる

「父さんは商人でさ」

 商人?

うん

 地球が 心配って言ってたんだよ

「災害が おきまくってたろ」

 あーなんか 歴史で習った

 2025年の?

 うん

 それでさ 父さんが 死んで わかんなくなった

 アシュラが 遠い目をする

「大丈夫だったのよー!」

 今はね 時間を 行き来するマシンとかもあってね

 なんだか そのアシュラが 悲しそうに見えて 私は ペラペラと 説明を はじめる

「時間ね!1番ねじったらいけないもんだろ!時間の神がお怒りになる……」

 アシュラ 意外と 信心深い 狩りの 神様にも きちんとお供えをして

 御前を よごしてすみませんと 祈ってた

「ここの星ではね 念波という能力があってさ」

「念波?」

 うん

 念動力とか そういう類……

「私は嫌いだから 肉弾戦だけどさ……ホタルは 才能ありそうなんだよね」

「ん……?」

 私の上げた顔にアシュラが 続ける

「私の思念にもすぐに反応したしさ!いっちょ悟ってみる?」

「へ?何それ?」

 瞑想!

「あーあ……」

 ハグっ

 私も 肉をかみきる 塩が効いてる

地球でいうところの クレイジーソルト

「おやりになっては!心強いです」

「うーん」

 頭使う類はー……

 無心になりゃいいのさ!

 無心!ふーむ

 こんな感じですね ばあちゃんが フォークと ナイフを 浮かせる

 それは宙で くるくると回った

「ま……私はやらんけど……」

 とアシュラ……

 また 遠い目

「ん……?」

「おまえはこれから身を守らにゃならんだろ!」

 アシュラが ガッツリ 肉を 噛み締める

「そうですね」

 他の侍女も 同意する

「あのタカ様が 相手ですもの」

「うーん!」

 タカって強いの?

「まぁ!私並みには!」

 とアシュラ

 ほー……強いのか……やってみるかな!

 よっしゃ……

 ぽん……

 あぐらの 膝を叩く

「よし……んじゃ !」

「へ?もう?」

 善は急げだろ?

「あ……はい!」

 なんだか アシュラは 焦っているように見えた なんで?

 私は聞けなかった

 

第5章 祈りの中に浮かぶモノ


 私とアシュラは 狩りの神の 神像の前で あぐらをかき

私はアシュラの 言われるままに 心の つぼみ をひろげた

 そして 手を 左右にのばし アシュラの 手印を 真似て見る

 ドクン……

 なにか脈打つものを感じるが それが何かは まだ掴めない

 しかし 念を眉間に 集めると 共に 何かが ふと……見えた

 それは……ある爆発とも 破裂ともつかない何か……

 びく……

 アシュラが 震えた

「ごめんホタル」

 アシュラが立つ

「ごめん……」

「ん……?なに?」

「いや……いい」

 続けな……

 言って足早に去る

「アシュラ?」

 アシュラの あんな顔はじめてみた

 私は少し不安だったけど続けてみる

 今は それが最善なのだろうけど 少し心がざわついた

「すーっ」

 深呼吸

 ふと 美しい人を見た気がした

「?」

 彼女は振り返るのだけど 念だけがすれ違う

 顔が見えたような気がしているのだけど?

 誰?

 アシュラ?

 ドン!

 破裂音

 そして?

「ホタル!見なくて良い!お前の 感応力を 甘く見すぎた!見ないで!」

 悲鳴のようなアシュラの 声

「?」

 私は びっくりして振り返る

 アシュラの目には涙が たまってた

「う……ん……」と私

「なんか……な……ごめんホタル」

「わかった」

 私はすんなり飲み込めた

 たぶんみてばならないモノ

 そう……何か……

「アシュラ……」

 私はアシュラの 背を撫でた

「わかった……ごめんね……」

「いや……お前が詫びる事じゃない!」

 アシュラが 涙を捨てる

「ちょっとね……」

「うん……」

 きっと踏み越えてはいけない領域に 踏み込んだのだ

「ね……」

 休もう

 侍女の3人程が マンドリンを持ち出していたらしく 少し歌ってくれる

 あたたかい弦の音

「すまないね皆」

「詫びたりしないで下さい」

 ライカが 果実酒を差し出す

 そして私にも

「いや……私 未成年だし」

「誰が咎めるんだよ?意外と 真面目だね!この里では15歳から飲酒OKだよ」

 アシュラが ふふ……と 私の肩を抱く

「飲みなホタル……疲れたろ」

「お前……はじめての星で大活躍してくれて……いい子だよ……」

 褒め上手だなアシュラ!

 私はバンと アシュラの 背をうつ

「いたいってさ……」

「えへへ」

 クイッとあおると 心が ほっこり……と なった気がする

「なんかね……幸せだよアシュラ!そして皆」

 ここで 星空とか見れたら最高なんだろな

 そんな事考えてた

そうこうして 眠気が誘う頃 みんなで キルトにくるまって のんびり寝そべっていた

 ふと……アシュラが思いついたように思い出話を始める

 それは こんな話だった

「父さんが商人だった話はしたね……」

「うん……」

「それでさ みんなで池でテントを張っていた時 あれがおきたんだ………のどかな日だった

 だけどさ……あれは来たんだ……磁気嵐……わかるかい?」

 アシュラが 問う

「磁気……嵐」

 地球では あまり聞かない

「うーん……磁気の嵐?」

「ふ……っ……おまえって 素直……そう 正にそれ……」

 そいつに テントやら宇宙船やら巻き込まれて……

 ドンって……

 私は 離れて 薪拾ってて ドンって……

 わかるかい?

「うん」

 間に合わなかった……

 手を伸ばしたってさ

 なぁんにも……

 助けられなかった

 みーんな 家族は死んじまった

 アシュラの さっきの涙の理由 これだったのか

 そうか……

「でさ 残ったのは傷だけ……」

 あ……あの……

「風呂で見えたろ?」

「うん……」

「磁気嵐……相手に敵なんて討てない……だろ?」

「う……ん」

 だからさ……

 ただ……ただ……やるせなくてさ……

 一時荒れた……

 悪い奴等ともつるんだ!

 そう それがタカ!

「理解できる?」

「わかる……」

 だけどね……時間って薬なんだよ

「時間」

 そ……時間……

 だからね 時間の神様にだけは失礼があっちゃならない……

 私の持論……私を癒したものって……時だからさ

「う……………………ん」

 なんかね……アシュラの声が 子守唄みたい……

 ふと……うつらうつらする

「いいよ……お眠り ホタル……」

 アシュラが ぽんと 頭を撫でた

「アシュラ」

 私は アシュラの 陽の匂いのする 体臭に あやされながら 眠る

 でもね……夢見たんだ……

 ある箱の夢

 それを開ける 奴

 そして そこから放たれたのは……!

 まさか……

 ダメ……

 何かが巻き込まれて 人すら飲み込まれて…… 破壊されて

 ドンって……

「ダメ!」

 冷や汗とも 脂汗ともつかない……

 夢見が悪い…… 感応した?

 アシュラの 昔話のせい?

 でも 蓋を開けたのって

 あれって!

 若かったけど……

 タカ?

 まさか……

 箱からでたのって!

 いやだ……

 ぶるる……

 震えが来る

 磁気嵐……!

「アシュラ!」

 ガバッ……

 起きて 見回す……

 と…… 神像の前にアシュラの背中……

「あ……良かった」

 ひどく安心

 アシュラ……!

 私 夢を伝えようか 伝えまいか 迷った

「アシュラ」

 ふと……詩

 なんだろ……古い詩 地球のメロディ

 スコットランド民謡

 蛍の光!

 なんだろ

 声をかけてはいけない……そんな気がした

「おきた?ホタル」

 キルトに くるまっていると アシュラが近づいて来る

「うん……」

 今の?

「そ……おまえの星の詩!父さんに聴いた」

「懐かしい」

「古い詩……昔ね……日本の年末に歌うの……テレビでね……」

「そ……か……」

「そ……」

 みんな寝てるね……

 時間が優しい……

「疲れたんだろーさ」

 アシュラが ごろん……と 寝そべる

「アシュラ……あのさ……」

 夢……いや……夢……

 そ……うん やめよ

「なんだい?」

「なんでも……」

「面白い子」

「あはは」

 なんか 話しちゃいけない気がした

 今はね

「ここって……空気美味しいね」

「ああ……」

 アシュラが こっちを向いた

 狩りの神様が守ってるからね……

 ふーん

 なんだろ……

 アシュラの声……不思議と眠くなる

「おまえって……本当……素直……」

 アシュラが ぽんと撫でる

 また……あの詩

「思い出すな……」

 うつらうつらしながら 思う

「大事な詩なんだろね」

 うん

ポロン……

 マンドリンの音……

「ライカ……」

 随分 古い……お歌……

「何でも……日本の詩なんだと……」

「素敵ですね……」

 いい……夜だった


 第6章 秘密


アシュラは ずっと ロケットを身につけていた

 金のロケット

 中にはどんな写真が?

何となく気になった

「アシュラ……それ何?」

 ふと問うてしまった

「ああ父さんの遺した唯一のものさ」

 しゃら……

 鎖がなる

 鎖の形が特殊で 喜平でもないベネチアでもない

 特殊な鎖だ

 みる?

 アシュラが 外して 見せてくれる

 ……きら……

金のロケットの 中央に深い緑の 小粒の石

エメラルドかな?

「 綺麗ね」

 あけていい?

 きいてアシュラの 顔をみた

「開かないんだ」

 アシュラが 緩く首をふる

 開けようとしたんだけどね

 私は 楕円の ロケットの 縁を撫でてみて

 ふぅと いきをついた

 ……と……

ぽわ……ロケットから 光が照射される

「?」

 アシュラが 身を乗り出した

 その光は ふわりと 天井へと伸びる

 そして

 その 光から 男の人がうきだした

「そんな……父さん!」

 そう

 アシュラと似た人 そして

 胸元に 同じ ロケットを している

「アシュラ……」

 ふと 男の人が口を開いた

「父さん!」

 アシュラが 縋ろうと するが

 ついっと 透過してしまう

「ホログラムだ」

 私が呟く

「ホログラム?」

 これが 記録媒体なの

「そして今一緒にいるであろう時の旅人」

 アシュラの パパは そういった

「なんでホタルをしってるの!」

 アシュラが 声をかけてみるが アシュラのパパは答えない

 こちらの声は聞こえてはいない

 だけれど ロケットが カチリと 開いた

 そして

 金の石が 私の額に 光を投げる

「時の旅人 君にアシュラを 託す……どうか……どうか……時間の神の神殿へ」

 アシュラパパは 涙ぐんでいた

 時の柩を 開けさせてはならないよ

 なんだろう ある箱が 目に入った 黄金の 箱

 小さな掌サイズの箱

 ルビーが 蓋に 輝いている

 この箱を 山賊が 狙っている

 タカに気をつけなさい

「タカ?」

 時の柩には 暗黒の嵐がおさまっている

 開けさせてはならないよ

 いいね?

「父さん!父さん」

 アシュラが アシュラパパに 触れたくて

 そっと 手をのべる

 だけど 透過してしまう

「あなただけが頼りだ……時の人」

 ぷっ……と 映像は 消えた

「いや……」

 アシュラが だん……と 床を叩く

 そして 私の手からロケットをひったくると

 ぽたぽたと 涙をこぼした

「父さん」

 ロケットを ただ……ただ抱きしめる

「父さん……」

 その背中が 嗚咽に 震えた

「嗚呼……」

 アシュラ……

 私はその背を抱くしか出来なかった


 第7章 時の柩


 「ねぇアシュラ」

「………………」

 あれからアシュラは 無言だ

 膝を抱え込み

 はあ……と息をつく

「時の柩って?」

「知らない何もしらないの!」

私が問うと跳ねたように否定した

そう時の柩

 それを解放し得たもの永遠を手にするという謎の小箱

「あのねアシュラ……磁気嵐は天災なんかじゃない……タカが開いた宝箱からあふれたの!」

 言ってしまった

 言ってしまって それで 後悔した

 アシュラの 大粒の涙

 はたはた と 握ったアシュラの手を濡らした その涙がなにを意味していたのか?

 そうアシュラは 心をもっていかれていたのだ

 タカに だから 子供だましの決闘をしてみたり からかってみたり

 手加減ばかり

 悪仲間だったのだ

それだけじゃない

 愛してしまっていた

 性奴隷をもつようなはちゃめちゃな男に アシュラの思いは……

 敵?

タカが!? アシュラはわらいたくなった

 性行為までしたあの男が?

敵だった?

 ちょっとまって

「わたし……あんな奴と!あんな奴と!」

 おこりが 来たように体が震える

「アシュラ……」

 ほたる!

 殺して!今すぐ私を殺して浄化して!

「アシュラ」

 抱きしめる

 そして頬を寄せた

「大丈夫!アシュラはアシュラ!私の姉さん!そして家族!そして!親友でしょ」

 アシュラはらしくなく わんわん泣いた

 アシュラのアイメイクが 私の頬につく

私は手ぬぐいでアシュラの頬をふいてやる

「ホタル……ホタル私汚れてる」

 よごれてないよ!

皆も頷く

「アシュラ様は世界一ですよ」

 ライカが 涙ぐみながら アシュラに寄り添う

みんなで集まって おしくらまんじゅうみたい

「日本にあったね おしくらまんじゅう 押されて泣くな」

 ちょっとだけ吹っ切れたようにアシュラはわらう

 うん

 日本っていいとこだろうね

「うふふ」

 ひとしきり泣いて 神像にお祈りした

「時間の神様に会いに行こう」

 アシュラは アイメイクも落としてしまって素顔だが そこがまた美しい

 お化粧なんてもったいないね

 私がぽそり……というと

そうだね!あとはタカを 逆さ吊りにしておわりだ!

 おとしちまお!

 それがみんなで決まった意見だ

 だけど

 道のりはながそうだ


 第8章 道


 私たちは 再び馬車にのると 旅をはじめた

ガラガラと車輪がまわる

「あのさ……」

 アシュラが 私の手をとった

「ホタル……私の妹になってくれないかい?」

 私は 頷く アシュラみたいなお姉ちゃん欲しいもの

「なりたい」

 じゃあさ……

 何があっても 私の最後の願いだけは聞いておくれ

 頼める?

 なんだか 心に引っかかる

 なんだろう

「わ……わかった」

 本当に?

 アシュラが 茶色い瞳で 私を見透かした

 なにがあっても……ね

私はうなづいたけど 嫌な予感がする

 なんだろ?

「アシュラ様 草原に出ます」

 ライカが 呼びかけた

「わかった!食用にトカゲでも とっとくかい?」

 へ?

 今とんでもないことを!

「トカゲたべるの?」

 私が ぶるるとした

「この辺では普通さね 焼いて食べる」

それだけはいやあ!!

 私が ふるふると 首をふった

 美味いのに!

 市では かなり高く買いとられるんですよ

 侍女の1人が にっこり笑う

「えーっと!どんなに美味しくてもトカゲいや!」

「じゃあ……スズメでもとっとくかい?」

 スズメ?あのチュンチュンの スズメ?

 うーむ

 こりゃあ また受難ですよ 蛍さん

「気持ち悪いをとるか……可愛いをとるか」

 トカゲでいい

 いくら何でも チュンチュンちゃんは可哀想

「おまえって本当に素直!顔に書いてあるもんな」

「むーーーん!食べ物って こんなに悩むもの?」

 悩むもんさね

「うちらには死活問題だからね」

 そうか ここにはコンビニないもんね

 納得いったけど!トカゲかよー

 心の底にあった嫌な予感も 忘れて 今はトカゲで頭がいっぱいだった

 それがアシュラの愛情だとは 気づけなかった


 草原をぬけると 石畳に 出た

 そろそろ町だ

「うん」

 キョロキョロと 見回す

 アラビアの 古い町並みに似ている

 砂埃凄そう

「ようこそ アシュラ様」

 有名人なんだね

 魔物退治して金もらってるからね

 魔物?

 ああ あのグリフォンみたいなの?

「そ……」

 町の 門番に 一礼すると 馬車は 近くの 宿へと入った

「馬に水をやろう!干し草はあるかい?」

「ございますとも」

 宿屋の主人が いい匂いの干し草を 出してくれる

「馬を休ませたい!主人」

 ちょうど馬小屋が空いてますよ!先程タカ様がおたちになったので

 びくっアシュラが 肩を震わせた

 タカ!

 まさか先行しているなんて!

 私は 震えるアシュラの肩を抱く

「どうする?」

あ……ああ……皆疲れてるだろうし 1泊しよう

 アシュラが 不安そう

 こんなアシュラを 見るのは初めて

 私は ぎゅっとアシュラの 手をにぎった

「行ってもいいんだよ!」

 そうですよ 備品だけ調達してたちますか?

 ライカが アシュラの不安気な目を救う

「行きましょう」

 いやいい……ここは休もう 旅慣れてない奴もいる 休まないと倒れる

 アシュラは 何があってもアシュラだった

皆を第1に考える そんなアシュラ

 私には もったいないお姉ちゃんだった


 皆は 着替えたり 湯浴みしたり それぞれ過ごしていたけれど 私は何故か アシュラの 傍から離れてはならないような気がしていた

 アシュラ……

 なんだか思い悩んだ風で 窓際に 肘をついて 考えこんでいる

「アシュラ?」

 振り返ったアシュラは いきなり 私の みぞおちに 一撃くれた

 そんな……ば……かな……

 私は落ちていく 意識のなかで 涙ぐみながら そっと髪を 撫でてくれる アシュラを みていた

「ゴメンな ホタル……」


 第9章 追跡……


 ホタル様!ホタル様!

 ライカの 声に 私は飛び起きた

「アシュラ!」

 そうなのです いらっしゃらないんですよ!何処にも 馬小屋から 1頭 韋駄天の ような ハヤテが いなくなってます!

 多分 ご自分だけで!

「そんな馬鹿な!」

 私は 宿屋の 主人に アシュラの 向かった方向を 聞いた

「北の門へ向かわれたようで……」

 宿代は 既におさめてあって それでも 私は追う事にした

 馬車は 2頭ではひけない

 土地勘のあるライカを お供に 私は馬をひいて宿をでた

「みんな……あのバカ連れて必ず帰るから!まってて」

 バカ……バカ………バカ野郎……アシュラ!!

「はい!お待ちします!」

 ばあちゃんが 私に初めて敬語をつかった

 まぁ!そんなのは どうでも良くて……!

 気が急いて おかしくなりそう

 ライカ!

 時の神殿に アシュラは 向かったんだと思う!

「はい!」

 ここから北に 馬を駆けさせて2日ほどです

遅い!なんとかならないの!

そうこうしてる間にアシュラは!

私は 馬に跨って 鞭をくれた

 ひーん……馬は嘶いて一気にかける!

「ホタル様!」

 ライカも 続いた

「アシュラ!死んだら許さないからね!」

 馬の駆ける振動で舌を噛みそうになりながら

 そっと呟いた

「許さないから!」

 ピシッ……

 今アシュラは 何を考えているのだろう

 きっとタカを殺そうとする

 でも……きっと出来ない!

 だって……好きなんでしょ!

 あんな男!

 ピシッ……

 ひーん……

 遠く 土埃が 見えた

 いた!

 アシュラ?

 それともアホ男?

 私はピシッと鞭をくれた


「誰だ……?」

 馬の嘶きと 背後の土埃……

 タカは 馬を止めた

「タカ……」

 私は ぴくり……と 眉をあげる

「お前から抱かれに来たのか!よしよし!」

 この大阿呆!

 私はビンタを お見舞いした

「誰があんたなんか!」

「でも来ただろう?」

 アシュラ!

 アシュラは いないの

 そして キョロキョロ見回す 私に タカがきいたのだった

「じゃじゃ馬姫は どうした?」

 アシュラの ことを指しているらしい その 言い方に 私はワンパンチくらわしてやりたくなった

「それはこっちのセリフよ!」

 馬首を 巡らせて一巡り!

「アシュラ!」

 どこ!

 アシュラ!

「お前面白いな!妾やめて正妻にでもしてやろうか」

 こんの!おおばか!

「お前どこへ行く!」

 あんたの行くとこよ!

 きっとアシュラも そこに来る!

「抱かれる気になったか?」

 ふざけんな!

 アシュラ!

 ドキドキする

 どこ?

 タカが私の肩を抱く

「優しくしてやるぞ」

 …………………………あんたね!

 蹴りがまともに 馬に入る

 お馬さんごめん

 ひひーーーん

 馬が 竿立ちに なる

「うお!」

 タカが 放りだされた

 強かに 腰をうったタカ

 自業自得よ!

 この天敵が!

「時の神殿に いくのよね!」

 ライカが 追いついた

「ホタル様タカ様」

 アシュラが いないの!

「はい」

 時の神殿まで ハヤテなら 1日もかからないかと……

 休ませなければですが

 アシュラさまは……!

 オアシスだ!

「ライカ!オアシスは?」

「この辺では……」

 と 話し込んでいる所に 石礫が 飛んできた

「お前!」

 アシュラ!!

「ホタル……」

 すまなそうな アシュラ……

「何考えてるのよ!ばか姉貴!」

 バッチーン!

 引っぱたいてやった

 なんなんだ?いったい?

 何にもわかってない すけべ男は 捨ておいて 私は アシュラを 抱きしめた

 もう!バカね!

「ごめん!ごめんな……」

 こいつを休ませてたのさ

白馬の ハヤテ

「やっぱり ホタルには かなわないか?」

「死のうとしたでしょ?」

「ふ……ふ」

 アシュラってば 笑い事じゃない!

「バレてるか」

 大バカ!

「おまえら!俺を捨てて何を」

 タカが アシュラの 肩をつかんだ

ひゅっ!

 アシュラの 剣が鞘走る!

「触るな!父さんの敵!」

 剣圧で おすと アシュラが 上段から切りかかる

「まて……!ちが……!」

 きんっ!

 私が 剣で止めた

 なんか変!

 待ってアシュラ!

 こんなバカが やれるとおもう?

「バカ!馬鹿だと!!」

 怒り心頭とばかりに

 睨みつける

 こわかないけどね

「なんか変だ!」

 タカ!

 あんた双子?

 それとも ソックリな兄弟は?

「いないよ!」

 アシュラが 言い捨てる

 ホタルが 透視したなら こいつのはずだ

「何の話だ」

 はっ!しらばっくれる気か!

 アシュラの 剣が タカを切り裂こうとする!

 ドンッ

 その 間に 何かが 吹き飛ぶような 塊が 落ちた

 念の塊!

 アシュラが 首を巡らせる!

 茶番劇は そこまでにするんだな!

 タカ?

 まさか!そっくり!

 そんな!

「ふん……こんな顔も役にはたつ……50年ぶりか?お嬢ちゃん」

 馬鹿な

 アシュラが 明らかに動揺している

「どっちがあいつ?」

 アシュラに聞く

 私が知ってるのは この天然おバカの方さ

 ということは!

 アシュラの お父さんが亡くなったのって?

 50年前!

 こいつだ!

「気づくの 遅いじゃないか?お嬢ちゃん」

 アシュラは ハヤテと 共に切りかかろうとして 念動力で はね飛ばれた

「くっ……!」

「アシュラ」

 お前敵っておじさんの?

「ああ!」

 アシュラは 口を切ったのか 唾を吐いた

「倒す!」

 無理だね

 お嬢ちゃん!

 時の柩!知っているだろ?

 あんたね!なんでややこしい事すんのよ!正々堂々と しなさいよ!

 すまないね お嬢ちゃんのお父さんは 疑り深くてね!

 この野郎!

 今まで聞いていたタカが 切りかかった

 ばちっ!

 念の圧力で タカの剣は折られ

 切っ先が 回転して タカの 肩に 刺さった

「くそっ!」

「名乗ろうか?」

 山賊の長 ケルだ

 ケルは するりと 顔を撫でた

 すると タカとは 似ても似つかない 赤銅色の 肌の 男になった

「それが素顔!」

 そうさ!

 ケルは 笑ったのだった


 第10章 時の旅人


「に……しては!なんで 50年?」

 私が 用心深く聞いた

 どこか弱点は?

 しかし……隙がない

「お前が来るのを待っていたのさ……時の旅人」

 お前が いれば 時の神殿は 真実の姿を見せるはず

 時の柩は そうまでして手に入れたいものなのさ

「くっ……」

 タカが 刺さった剣の 切っ先を 抜いた

 ぽたぽたと 血が滴る

「馬鹿だね……」

 アシュラが そっとタカの 背を抱いた

「あいつ……ただじゃおかねぇ……」

 剣の 傷がかなり痛むらしい

 タカは苦鳴を あげる

「お前なら……」

 ぐんっ

 私の首に見えない力がかかった

 ケルの 念動力だ!

「生かしたままつれていく」

 体が浮き上がる

「や……」

 ホタル!

 アシュラが ばぢり……と 念を爆発させる

 しかし 瞬間的に ケルと 私は飛んでいた

 そして着いた先は 美しい 平原の中に立つ アラビア風の 建物

 ここだ!

 ケルが 私を地に捨てた

「ちょっと……」

 くそ……手を痛めた

 どさって何よ

「生きてさえいればいい」

 私は 建物の中へと引きずられた

 きん……

 中には水が張られ 中央に 神像が たっている

 その顔が!私?

「そうさ……わかったろ?お前がいなければならない理由」

「わかんないわよ!ただ似てるだけでしょ」

 どうかな!

 手を 捻り上げられて

 掌に ナイフが走る

「たっ……」

 血が 神像の足元の皿に落ちた

 乱暴者!

「ふん!」

 じゅっ!

 血の滴った皿に 鬼火が灯る

 なに?


 そして その水面が 静かに割れていく

「ついに!ついに来たぞ」

 ケルが 意気揚々と 割れた水面の 下にあらわれた 階段に 踏み込んだ

 そして 乱暴に 私を引きずる

「いた……離してよ!」

 私は痛めた手首を 更に捻られて悲鳴をあげた

 だけど ケルは 容赦ない

 ズルと 引き摺られて 私は涙をこぼす

「まて!」

 タカの声!

 ああ タカが救いの神に見える

「俺の嫁に何するんだ」

 言ってることが バカなんだけど この際どうだっていい

 痛いのよ!離しなさいよ!

 ざ……!

 アシュラが ケルの 腕に剣を見舞う

 バシッ!

 皮膚が裂けてるのに 怯みもしない

 奥に あの アシュラパパの 言ってた小箱が あった

「俺は!俺は神を超える!神になるんだ」

 赤銅色の肌を 尚更赤くして

 ケルは 小箱に 取り付いた

「だめ……」

 私が手を伸ばした瞬間!

 私の胸に ナイフが つきたった

「ホタル!!」

 アシュラが 叫ぶのに!

 私はただ無力

 流れていく 生命の雫を 見ながら

 倒れる

 ケルは ナイフを 抜くと 私の血を 小箱に垂らした

 ばっ……

 箱が 一瞬に して開け放たれて

 渦巻いた 暗黒が ケルを そして私を飲み込んだ

 嫌だ!!こんなとこで死にたくない!

 お母さんの 膝枕で 死ぬんだ!

 アホなことを考えながら……私は絶命した


「ホタル……!ホタル!」

 アシュラの 優しい声

 私死んだんじゃ……

「お前の タイムマシンさ!まだ使えたんだな」

 戻れた

 アシュラの 膝枕

 すんでで お前を 救えた

 涙がはたはた 落ちてくる

 ここはマシンの 中

「ケルは!」

 あいつは 化け物に なっちまった

 タカが そっと 覗き込む

「お前!強いな」

 なんだろ……嬉しい……

 アシュラのタカが悪人でなかっただけで ひどく嬉しい!

「ね……アシュラ!アシュラパパ救えないかな!」

 これで!

 私は マシンの 床をバンと 叩く

「うん……」

 アシュラが 俯いた

「いいんだ……父さんも それを望んじゃいない……」

 なのに アシュラ達は 私を救ってくれた!

「行こう!アシュラ!責任はとる」

 ガバと 起き上がると 胸を張る

「ダメだ……」

 タカが マシンの 操作盤を 見つめる

「アシュラの1番嫌いな……時の神のお怒りをかう」

 お前だけは……何としても救おうって……言ったけどな

 おじさんは 喜ばないよ

 それより……あいつを何とかしよう!

 タカなんだか 一回りでかくなったか?

「なんだろう不思議だね……タカの言ってる事が心にしみる」

 アシュラが 泣いた

「ゴメンなアシュラ」

 気づいて無くて!

 なんだよ!

 私は 赤くなった

 いつの間に?

 2人がキスするんだもん!

「もう!おじゃま虫ですか?」

「ふふ……」

 アシュラが 私の 頭を 抱き込む

「ケルをとっちめに行こう!いいだろ?」

「うん!」

 マシンを 出ると ここは あの 石塔ではなく 神殿の 傍だった!

 神殿の 頭上に 暗黒が 渦巻いている

「ざっとよんで 1年後!ワープ失敗したからね」

 アシュラが 剣を抜く

 行ける?ホタル!

 うん

 死すらこえた身としては アシュラの 泣き顔以外怖いものは無い……

「行こう」

 私は 手に手をとって 神殿へ 向かった

 ばちっ……

 神殿の 扉に 手をかけると ちょっと 弾かれる

 アシュラも タカも 試したけど

 結界とやらをこえられたのは 私だけだった

 私は扉を開け放つと 2人と共に進む

 私の 思念とかゆうので くるんでと アシュラから言われたけど 上手くいったらしい

 神像が崩れ 階段には コケが はえていた

 本当に1年?

 降りていくと 棺が1つ 棺の 上には花束が 葬られて そんなにたってない

 私は 勇気を もって開けて見た

 ご……

中には……

「きゃ……」

 何と私の遺体が おさめられていた 綺麗に 手を組んで

 服なんかも 変えられて

 そして胸には ある 短剣が 添えられていた

 私は そっと短剣を 手にとる

 きっと 過去からの 私のメッセージの はず!

それを握ると 私達は ある生命の 前へととんだ

 異形の何か!

 顔がいくつかあり

 そして……

 吐き気がするような 異臭

 そこから 鎖が 幾重にも伸びていた

 やはりきたな!

 生命は 声をはっする

 ケル!

「お前に封じられてからというもの ここで数百年」

 ?

 なに?

 数百年?

 おかしい1年しか!

 ここだけ時間の 流れが違うの?

「お前を 殺す」

 ケルの 怨嗟

 その生命!ケルは 思念で 話しているようだ

「父さんの 敵!うたせてもらう」

 アシュラが ケルに 剣を突き立てようとする

 バギリ……

 だけど 剣は砕けてしまい……アシュラは とばされる

「アシュラ!」

 ナイス!タカ!

 タカが アシュラを 受け止めた

「悪いね」

 アシュラが ふ……と タカの 髪を かき混ぜる

「やってやる」

 私の手には あの短剣!

 たっ!

 私はとんだ

 そして!

 弾かれることなく ケルの 1番大きな顔に 短剣を 見舞う

 ばっ!

 羽虫の 群れが 飛び出した

「や……」

 私の顔を 虫が覆う

 ……喰らわれろ……

 ケルの 声

 いや!

 気持ち悪い!

 ババッ!

 アシュラの念動力が 私の事を救う

「ケル……」

 タカの 手には あの 小箱

これにお前を封印する

「タカ?」

 アシュラが 振り返る!

「封印されてたってことは 封印できるだろ」

 なんか!発想のしかたがタカだが 正しい!

 私は 短剣を 構えると ふと あの 詩を思い出した

 蛍の光!

 歌って……ケルが 怯むのが分かる!

 よし……!イケる!

 だっ

 私はとんで ケルの 脳髄に 短剣を 振り下ろした

 ぎゃああああ……

 ケルの 断末魔は 児玉と なって 神殿を 揺らして 小箱に 吸い込まれる

じゅ……

 短剣が 溶ける

「なに!」

 私の 体が もろもろと 崩れ始めた

「いや……ホタル!待って」

 アシュラの 悲鳴

 崩れる……

 さよならなの?

 そのまま 私は……空に とけた


 第11章 そして……


 私が 目をさますと マシンの 中だった

 もう1人の自分を 見たから?

 遺体でもドッペルゲンガーと あったから?

 うふふ……でもまぁいいや

 マシンの 中で手足を伸ばす

 と 着ている衣服は この星にきた時のもの

 私は流れる涙を拭った

 おわった?

 そうなんだろう……

 しかし……マシンは 着地している

 よっしゃおりてみるかな?

 バタ……

 扉を開けて見てびっくり そこはアシュラの 星

 と そこに女の子を連れた 女性と出会う

「ホタル……いくよ」

 この声!聞き間違えるはずない

 アシュラ!

「はい……」

 女性が 振り返った

 まさしくアシュラ!

「どなた?」

 え?

 アシュラ……?

 おい

 アシュラ……

 タカだ!

 パパ……

 女の子がかけていく

「どこかでお会いしました?」

「え?」

「ホタルよ?」

 ふざけてる?

「ホタルは 家の娘ですけど」

 は?

 うそ

 アシュラ!

 あ……アシュラパパ!

 いい所に

「あの!」

 おや……時の旅人かい?

 アシュラパパが いう

 ありがとう……何時も見守ってくれて!

 時の旅人ホタル様

「?」

 ホタルの名は 時の神様からいただいたんです!

 暗黒の神を封じられて 葬られた方

 そういえば あなた似ているような……

 なんだろう……なんだろう……

 不思議……

 涙じゃない笑顔がこぼれた

 おわったんだ……

「はい……似てるっていわれます」

「良かったらテントで休まれませんか?」

 アシュラが ふんわり笑った

 どうしても他人とは思えなくて……

 アシュラ……

「いいです……このままたちます」

 ありがとう

 皆に背を向けて マシンへ

 そして 再び旅に出る

 会えて良かった……!

 最高の終わり方じゃない!

 ね!

 マシンは舞い上がると 地球目掛けてとびさった

私は永遠に駆ける この宙を……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

蛍の詩 古都綾音 @earth-sunlight

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ