Episode.1...Injection magic.

 眩の月.

 太刀を鮮やかに振って見せるように、銀月の光はアルミみたいな銀を称え、そこにしばらくの間眠っている。

 ところで、話は変わるが、どこにでもお金さえあれば買えそうな宝石のような魔法というものはあったりする。使えればいいなと言う魔法は体内の老化を停止してしまう魔法のような気がする。そんな儚い美しさを求める気持ちが純白のドレスのように、いつもクローゼットの前のドレッサーの横の洋服掛けに立て掛けられている。写真のように映えることもなく、そのまま古びて腐っていくことのない永遠の憧れと感情は時を過ぎた今も望んでいる。

 図書館の書籍だってそうだ。表紙や中身が色落ちしても、永遠にその作品の文学的価値は下がることもなく、保ったまま図書館へと保存されていくのだ。司書の私だって、若い時は、歌手になりたいなどと言う夢を掲げて上京した覚えもあるが、アルバイトでその日暮らしするのがやっとで心身が疲弊していき、危機を感じ、帰郷した。田舎暮らしも住めば都とはよく言ったもので、北九州の街並みも見慣れればそこら辺に飾っていそうなアクアリウムの一角と大して変わり映えもなく、その瞳にはInnocentに移るときがある。

 コツコツと歩く音がする。ハイヒールではなくパンプスに変えたのは会食に出かけるわけでなく、作業するためだからだ。私の作業は本の紹介、書籍の検索、情報の一部の紹介、後は、利用者の借りた書籍の返却と、貸借の管理である。中々返してこない利用者さんが増えすぎて困る。一々電話で連絡しないといけないのが面倒だからだ。余計な手を煩わせるなとまではいわないが、単に時間にルーズな奴は嫌いだった。私は図書館にあるアクアリウムの小さな煌びやかな熱帯魚に餌をやる。

 白い手、指に光が差した。振り向くと、あんなに生きているみたいに綺麗な三月のレジンアクセサリーがそこに置き忘れてあった。銀月が利用者さんの忘れ物を照らし出してくれた。

 素敵―――その言葉は、飲んだ一杯のcoffeeよりも翡翠色の三日月はよく似合っている。まるで、体のいいナンパみたいだ、などと苦笑しつつ、そこを立ち去り、読書ルームへと向かう。

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