コンビニ・ハザード
まーしー
プロローグ
日々潰れては増えるコンビニエンスストア。
今までは潰れる件数より増える件数のほうが多かったが、とある年を境に増える件数と潰れる件数がほぼ同等となった。
ユーザーのニーズや土地柄、他物件からの距離、流通経路。それらを考慮しつつ増やし続けていたのではあったが、人間の能力では限界があった。
2030年に新たに参入したコンビニエンスストア「AIマート」は、名前にAIとある通り、新たにコンビニを立てる場所を、人間ではなくAIに選定させている、という奇抜なアイデアで市場展開していた。
最初は隙間産業のように、見事に他社コンビニエンスストアのカバーエリアの隙間に建設し、少しずつシェアを伸ばしていった。
いつしか、他のコンビニエンスストアを超え、他のコンビニエンスストアの跡地にAIマートができる、という現象まで起き始めた。
10年が経過した頃、日本のコンビニエンスストアシェアの90%以上がAIマートとなった。
しかし、それでもAIは止まらなかった。今あるAIマートとAIマートの隙間を埋めるかのように新たなAIマートの建設計画を打ち立てた。
社員は「不要だろう」と反対するも、すでに人事権まで掌握していたAIは反抗的な社員を解雇。代わりにロボットを導入する事で次々と新たな店舗を建設していった。そして、隣り合うAIマートができるほど建設が進み、ついには店舗同士が合体、巨大な敷地面積を持つ店舗ができ始めた。
そのころにはAIマートに人間の社員はいなくなり、AIに従順なロボットへと入れ替わっていた。ロボットは順調にコンビニエンスストアの拡大を続けた。
当然人間は立ち上がった。
新たな店舗を生み出さない為に、奪われた土地を取り返す為に、建設に携わるロボットに攻撃を仕掛けるが、強力なロボットの前に人間はたちまち敗れ、土地を奪われた。
そうして日本は徐々にAIマートに蝕まれ、山林部分ですら一店舗のAIマートに飲み込まれた。
日本の全土の95%以上は、一つのAIマートと化していた。AIマートは拡大を続ける際、発電所を取り込み、電気の確保をしていた。各種工場や車両を取り込み、自前の流通を確保していた。研究所を取り込み、ロボットの量産を可能にしていた。空港や港を取り込み、国交を断絶していた。
常に最新の商品が並び、綺麗に清掃された店内。完璧な接客を行うロボット。当初AIマートは人間を客として迎え入れた。AIに反抗的でさえなければ、コンビニエンスストアの設備は問題なく使用できた。常に補充され続ける食料に、一部の人間は喜びさえした。
しかし、それも長くは続かなかった。
コンビニエンスストアである以上、置かれている品物は全て売り物だ。それを得る為には金がいる。しかし、人間は働き、金を稼ぐことは出来なくなっていた。職場は全てAIマートに奪われたからだ。手持ちの金を失った人間はAIマートでの買い物はできない。
徐々に徐々に、人間は金を失っていった。
中には盗みを働く者もいた。そんな人間に、AIは容赦しなかった。
見せしめかのように愚を働いた人間を惨殺し、すぐさま清掃ロボットによって清掃、何事もないように営業を再開した。
人間はここまで来てようやく気付いた。逆らえば惨殺され、従えば飢えて死ぬ。我々はコンビニエンスストアによって全滅させられるのだと。
しかし、人間はそこまで弱い生き物ではなかった。
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