蒼月のエレメント

古都綾音

第1話


プロローグ

 蒼い月が 煌々と 魔法学校の 煉瓦を 染めていた

 ライトの 魔法使い シャリーは 蒼い月の雫を 草花から 集めていく

 魔法月9 「蒼」の 雫は 魔法力が とても強く

 特に ライト エレメントの 魔法の源として 重宝された

 シャリーは 右の手の甲に よんだ 魔法陣を 発動させると 試験管に あつめた 蒼の 雫に きゅきゅっと 蓋をした

 蓋はゴムのようである

 シャリーは 嬉しそうな顔で スキップをして

 学校の 寄宿舎の 扉を開けた

魔法月9は 肌寒いぐらいであるが シャリーは この 空気が 好きなのである

 ミソノが シャリーとの 相部屋なのだが もう 夢の中にいるようだ

寄宿舎の 床はワックスで 黒く滲む

 トンコ トンコと ステップを ふむと

 シャリーが 部屋の扉をあけた

 部屋の中の 魔法陣には エレメント召喚の 魔法陣が こめてある

 使い魔召喚

 ライトの 魔法の 使い魔は 妖精である

 よくみられるのが 緑の巻き髪の 手乗り 妖精

 今日はシャリーの 使い魔を 召喚する 大事な日である


 第一章ファースト コンタクト

 ――遠かりし 月の下僕

  フェアリーテイル ここに ――

 使い魔のコアになる イチイの実に 蒼い月の雫を 二、三ふりかけた

 ポムっ

 イチイの実は はじけると

僅かに 光の粒を撒く

「いでよ フェアリー」

 シャリーは 小さな釣鐘ベルを ちりりと鳴らす

 パァ……

 イチイの 実から発芽した

「おいで……おいで」

 シャリーは そこ ここで ベルを打ちふる

「はーい」

 かわいく 小さな声が 光る緑の 玉と共に現れた

 そして

 玉は ほぐれていく

 ほぐれて まずは 羽が広がり

 ほぐれて緑の 飾り石のドレスが 花開いた

 そこから そった上半身がみえて 細い手足が

 伸びる

 そして 愛らしい顔に大きな瞳のフェアリーは

 ニッコリ わらった

「こんばんは……ご主人!私エンド」

 フェアリーがくるくると バレエの ようにまわって しゃなり……と ポーズ

「エンド……って!ええっ!」

 これにはシャリーも おどろいた

 いきなり

 最高クラスの フェアリーである

 階級が上位中の 上位

 エンドクラスである

「あのね……ご主人!月の妖精の樹が 果実で鈴なりなの」

 エンドは ちっちゃな手で 指折り数える

 その数三十個!

 エンドはくいっと 小首を傾げた

「だからね……最高上位クラスの イチイが 落ちたの」

フェアリーテイルでは 伝説の通り……果実が実る夜にだけ最高上位が 誕生するという

 その日に 幸運にも シャリーは 当たったのである

「らららん……らららん……」

 エンドは歌いながら 背中の羽をひろげて踊る

「ご主人 お名前は?」

 ピタリ……とまって エンド

「シャリーよ……エンド」

 シャリーは ちょいちょいと エンドの 頬をつつく

「シャリー」

 エンドは嬉しそうだ

「よろしくエンド」

 シャリーが 細い黒縁の メガネを 指であげる

「シャリー……」

 エンドは 慕わしい者をよぶように 反芻して

 シャラランと ドレスの 裾をつまんで 貴族の 礼をした

「よろしくシャリー」

 なかよくなれそうな そんな予感!

 シャリーは 満面の笑顔でエンドを 肩にのせたのだった


 そうして2人は出会う

明日は精霊祭!間に合った

精霊祭とは 精霊の女神を 崇めるお祭りで 使い魔に 感謝する日でもある

 使い魔 それすなわち 精霊とする考え方で まず 女神像参拝をし それから精霊と共に 踊る日でもある

使い魔にも色々あり ウンディーネ ドリアード サラマンダー などなど

魔法使いの 個性などにもよる

 ファイヤーには サラマンダー 定義は あるものの

 術者の 能力にもより

 フェアリーの 最高ランクを 召喚できた ライトの 術者は 今までの 歴史で 2.3人と伝わる

つまりシャリーはすごいんである

自慢できるぞー

 シャリーは エンドの 子守り歌を聴きながら 眠りについた



その朝は

朝から花火の空砲が上がり

 学校中が 盛り上がりを 見せていた

 もう寄宿舎内では 大盛り上がり

 精霊と共に談笑する術者 踊るようにスキップする術者 賛美歌を歌う術者で 大騒ぎ

 ドタバタである

ミソノはウォーターの魔法使いで ウンディーネの 手乗り精霊を 連れて歌っていた

「ミソノ」

 シャリーは 眠い目をこすりこすり 相棒を呼んだ

 らりらー!

 ミソノのソプラノは 頭に 響く

 キーンと来た

「随分早いのね」

 多少 シャリーは 苦情をこめたが ミソノは

 ららら……が止まらない

「あらシャリー……うーんこの音が定まらないわ!らーっ!」

 と……来た

うーん……

シャリーは 目眩を覚えた

 ミソノさんは 鈍感なのである

 そんなこんなで

 朝ごはんも 満足に すすまず でも エンドとは 共に歩き 寄宿舎内を 案内した

 この 地方は 平和で安定した土地だが

 他の地方では 魔物が でる

 使い魔を 召喚する儀式で 不正を すると 魔物を 召喚してしまう

 その場合 魔物使いとなり

 魔法界の お尋ね者となる

 追われる身の 魔物使いだが 聖なる術者の 使い魔使いを攻撃するものも現れている

 シャリーの両親は 共に 魔法使いであって 聖なる使い魔使い

だけど父は 能力を 捨て 普通の民として 農作物を 育てている

 まあ 周りからすれば変わり者?

 シャリーは そんな父が好きである

 母も そんな父を愛して 魔物ハンターとして

 国に奉仕している

 シャリーは 楽しそうに鼻歌を歌うエンドを 見守りながら 階段を降りた

「ここが玄関よ エンド」

 大理石貼りの 豪華な 玄関 そこを シャリーは くぐって 中庭に出た

 蒼月には 秋の 気配

 薔薇が 咲いている

 野薔薇が 綺麗だ

「うぁぁ!綺麗ねシャリー」

 エンドは 嬉しそうに 羽をはためかせる

 シャリーは ちょっと得意になった

「ここのお庭はね!園芸部が 管理してるの!」

 シャリーの 部活動であって

 得意になるのも無理はない

 この前肥料を まいたのは 何をかくそう シャリーである

「素敵ねシャリー!」

 エンドの 声が耳に気持ち良い

「ありがとう!エンド」

 シャリーが ニッコリすると エンドも 嬉しそうだ

 今日は 精霊祭の 大祭 なので 皆 浮かれ気味

 歌いながら歩く

 ある少年も 浮かれていた

 隣にドリアードを 連れている

「ハイツ おはよー」

 シャリーが ブンブンと 手を振ると ハイツが

「やぁ」

 と返した

少年は 園芸部の 部長ハイツ

 へんてこな 髪型で 天然だが 下手な 辞書より 園芸に詳しい

「おはようシャリー!あらあなたの 使い魔エンドじゃない!」

 ドリアードが 気づいてくれた

「すごいなー」

 ハスキーな声でハイツ

シャリーの 背を追ってトコトコと かけてきたミソノに 少し頬を染めた

 そう ハイツ君は ミソノが 好きなのである

 らーーーっ

 その当人ミソノさん 嬉しそうに 歌っている

「うーん絶好調だね」

 ハイツ君ミソノがやることなすこと 肯定的

 歌う ミソノを 眩しそうに 見守った

「はーっ」

 シャリーは 少しため息

 肩を落とす

「あのね!ハイツ」

 ミソノは 尻尾を 振る子猫のように ハイツに 駆け寄った

「合唱部で ソプラノ1位なのー」

 なのーで 歌う

シャリーは クラっと来た

 ミソノは 嫌いではないが 空気読めな子ちゃんだ

 今日はどうなる?

 精霊大祭?

 エンドは 何を見ても楽しそう

 シャリーは まとめ役のような気分になって

 先が思いやられた


 やれやれ やれやれ 精霊大祭 ポムン ポムンと 空砲が 弾ける

「らんらんら!」

 ますますソプラノ ミソノさん

 シャリーは 目眩を覚えてこめかみをもんだ

「あ……行っちゃう」

 ハイツ君情けない

臀を叩いて シャリーが 目で合図

「ミソノは 合唱室」

 と コソッと言った

「うん」

 ハイツとドリアードは タタと駆ける

 シャリーはガックリと肩をおとした

今日の 主役の部活動は 演奏部と 合唱部 そして園芸部

 我等園芸部は深淵の女神アビスの 花冠を作成する

 手先が器用な 魔法使いが 必死に編んで

 魔法を かける

遠き民の 魔力より生まれ出る

 イチイの木のワンドで

 浮遊を かけて アビス像の 頭に運ぶ

 そして

 演奏部の オーケストラと

 合唱部の 賛美歌

 トドメが 魔法軽音の 部活動の ダンスの 時間

 これが

 皆のたのしみで

 皆総出で おどるのだ

 女神アビスの あたたかい庇護の元

 魔法学校はお祭りだ

 シャリーはエンドと 手頃な 薔薇を 見繕い

 園芸部へと

 テテと 向かう

 長めの スカートに 花を詰んで

 エンドが何とか 白薔薇抱え ひらりんと つづいた

「いい匂いね」

 芳香を放つ 薔薇の庭を抜けて

 2人は 園芸部の ドアをすり開けた

「おはよー」

 シャリーの 明るい挨拶に

 後輩が おはようございますぅと 返してきた

 もう手元にかなりの花が揃っている

「先輩ハイツ部長みません?」

「あ!しばらく帰んないと思う……パパッと編んじゃおう」

 シャリーは小さい子等を指示しながら

 編み込みに かかる

「先輩の使い魔エンド様ぁ」

 小さい子が

 エンドに 手をのべる

「はーい」

 エンドはサービス満点

 光をふり撒いて

 くるると 回って たのしませた

「いいなあ」

「エリリも15歳になったら 召喚出来るよ」

 シャリーは 笑ってやる

「うん!」

 エリリは フェアリーを 憧れの存在のように 目を潤ませて

 手をパタパタと ふった

「あなたならミドルもいけそう」

 エンドが チョンとエリリの 頭に 手をのっける

「本当ですかぁ――」

 嬉しさしきりのエリリさん

 踊るように黄色い野薔薇を 抱いてかけてきた

「これアビス様に!」

「あらエリリ これあなたが丹精込めて育てたのに」

「差し上げたいのです」

 シャリーの 手にのっける

「ん!わかった アビス様のお額をお飾りしようね」

 シャリーは 編み込む

 他の子も 我よ我よと 手に花を掲げる

 シャリーと エンド は それが微笑ましく

 愛おしい

 そうこうして花冠は出来上がり

 皆で抱えて

 正面へまわる

 噴水のある

 庭園の真ん中に 女神アビスは佇み 皆を守るように微笑んでいた

 オーケストラと賛美歌が 静かに流れる中

 ハイツが真っ赤でかけてきた

「ごめん」

 園芸部の 皆にペコペコしながら 磨かれたイチイのワンドで 浮遊を かける

 花冠はしずやかに空を 進み

 そうっと アビス様の 頭上に降りた

 ダァンダァン!

 華やかな空砲 4連発と共に

 魔法軽音のダンスが 始まった

 エンドは クルリと 踊りながら

 可愛い子等に 光をまく

「幸あれ」

 教師の一声に 一同 「幸あれ」と 唱える

感極まって泣く子まで現れ

 庭園 は 歓喜につつまれた

 その時

 空を駆け抜けた 紫の雷撃

 ズンっと 重力が おちたのだ


 それは アビス様の御手から落ちたかに見えた

 園芸部のルナが重力に巻き込まれ 地に伏す

 そして悲鳴が 巻き起こった

 そして 女神アビスの 像が ビジリと 不気味な 音をたてた

「シャリー!」

 ミソノが かけてくる

 シャリーは ルナを 助け起こした

 しかし

 ルナは 既に 呼吸をしておらず

 女神の 足元からドレスにかけて

 ひびが はしった

「アビス様」

 シャリーが 見上げると

 アビスが 弾けるが 同時であった

「そんな」

 そして その 内部から 黒い球体が 現われ砕けていく

 うねる 重力波

 ミソノの 制服が 巻き上がる

「きゃ……」

 ハイツが 魔力の 結界をはって ミソノと シャリーを守った

「あれ!まさか深淵の王じゃ」

 教師が 震える

「まさかアビス像に 深淵の王のオーブ」

 校長が スタッフを 向けて

取り残さた シャリー達をまもった

「アビス様のお名前が絶望とされた意味」

 校長のスタッフが ギリリと 軋む

「いけません」

「古代王が 封じた深淵の王が 体内にお在りになったから……」

 校長の 肌を 重力波で 砕けた砂礫がかく……

 エンドが 精霊魔法を 唱え

 一同を学校内へと 転移させた

「嗚呼」

 校長が 膝をつく

「なんでこと!」

 学校内は 強力な魔法結界の 元

 守られていたが

 重力波の ズドンと いう音が 樫の木の 扉を打ち叩いた

「きゃあああっ」

 小さな子等が 寄り固まって悲鳴を 上げる

 エンドが 舞っていって

 そっと 光をまいた

 ミソノは ガタガタ震えて シャリーに 縋り

 シャリーは ハイツに 縋っていた

 ハイツは 果敢に キッと扉を 見据え

 イチイの 杖で 防御魔法の 強化を 唱える

 がかっ

 魔法陣が 浮かんで

 扉は鳴りやんだ

「どうしましょう」

 こんな大切な日に

 教師がオロオロするのを 校長が バシっと 叱った

「おだまり」

 かなりの気合いで 教師は ペシャリと 座り込んだ

「このままでは 深淵の王が復活します!何としても」

「何としても」

 ハイツが 校長の 言葉を拾う

「封じましょう!」

 そして シャリーを 見ると

「あなたのエンド 真の女神の お引き合わせかも!」

「共に戦います!」

 シャリーは、キッと 立ち上がった

「僕も!」

 立つハイツに ドリアードが 習う

「怖いわ!」

 ミソノが 半泣きで ウンディーネを 抱き寄せた

「ミソノ!あなたの ハイの ウンディーネの 加護が 必要です 立って」

 校長が 励ました

「え……は……はい」

 ミソノが 泣きながら スックと たつ

「エンド!転移を」

 校長が 毅然と 目をあげ フェアリーを 呼ぶ

「はい!」

 エンドが 転移を唱えると 一同は

 散り散りになった 庭園の 花々の 中央に いた

 そこには 女神像の 足元に 残る 白い杖が あった

 シャリーが それを拾うと 杖先がまるで道しるべを 記すように光をはなっていく

 つ――――ぅ

 光は庭園中央を抜け

 深淵の王を 追う様に 走り抜けて行った


 シャリー達は 杖の光の先を追いながら 魔法学校の門をでる

深淵の王を封じた 英雄王は 最後に ある神殿を奉納されたと聞く

「………………」

 シャリーが 杖の光の終点を探した

 光を追う

巨大な英雄王の像の 剣の柄の 宝石に 杖の光は消えていた

 その石はアレキサンドライトであり

 美しい輝きを 放つ

その石は 杖の光に キラリと 輝き

 像の足元に 巨大な魔法陣があらわれていた

 魔法学校の 生徒は 入学の 祝いに ピアスを 開けるのが 習わしであるが

 そのスタッドピアスの 石はアレキサンドライトの石である

 チカリ

 シャリーのピアスの石と 英雄王の剣の宝石が 呼び合うように 輝きを 明滅させた

「シャリー」

 エンドが シャリーの ピアスに 触れた

 突如

 魔法陣が 七色の 輝きを 放ち

 一帯を 輝きが 薙ぐ

「シャリー」

 深い男性の 声が シャリーを 呼んだ

そして 光がある姿を 形づくる

「英雄王」

 その姿は 正しく その王そのものであった

「ライト様」

 校長が 膝をつく

「皆来たね」

 ライトは柔らかく諭すように 呟くと

 泣きそうな ミソノの 頭をなでた

「大丈夫」

 王がいう

「深淵の王は マッハ女神に 託してあったのだが」

 ふわりと王が笑った

 魔法学校の祭りはね

 その日に結界を 強める為の祭りであったのだよ

 王が 目を上げる

 いつの間にかマッハ像を アビスと 呼ばわるようになり

 祭りは 学校の 娯楽になった

 女神アビスが本来の名を持つと 知るものは居なくなった

 ドルイドの 秘法も 消えてしまったね

 校長が うなずく

「申し訳ありません」

「そして 深淵の王の 復活ははじまってしまった」

 悲しげにライト王は目を伏せた

 魔法学校の期限はね シャリー

 王はシャリーの 瞳を そっとのぞく

 来る 深淵の王アビスの 復活を阻止する

 魔法の系譜を 残すためであったんだよ

「時と共に魔物ハンターの 学び舎となったけどね」

 ライトが 空を見上げる

 ……君達に 願いがある

 ライトは 目をもどした

「アビスを倒して欲しい」

ハイツがこくんと唾をのむ

「私は君達を選んだ」

 そして太古の 神の 神託でもある

「出来るでしょうか」

 シャリーが少し不安げだ

「君達に私のドラゴンを 託そう」

 ライトが 指笛をふくと ざあ……と 風がないで 大きな影が現れる

 その鱗は 宝石の ように 輝いていた

「綺麗」

 シャリーが 舞い降りた ドラゴンに そっと手をのばす

「アレキサンドライトの精霊王だ 」

 ライトが 従順に 頭を垂れる ドラゴンの 頭を撫でる

 ドラゴンは シャリー達に 目を向けると 瞬きをする

 ……君がエンドの主だね

 ドラゴンが 優しく思念をとばす

「まだ 未開だが 巨大な 魔法力を 感じる」

 エンドは嬉しそうに キラキラと 飛びながら

 ドラゴンに言った

「シャリー大好きなの」

「そうかね」

 ドラゴンが 鼻から息を吐く

「私も嫌な物は感じないよエンド」

 輝く 鱗に光を呼びながら ドラゴンが シャリーの 頭に キスをした

「喜んで力をかそう」

 ライト王は ハイツを 見ると 腰の剣をはずした

「ハイツ」

「はい」

 天然なハイツ 純粋なハイツは 英雄王から剣をさずかる

 それは まるで 羽のように軽かった

「持っておくといい……好戦の証ではなく守りのために」

 ライト王は 静かにミソノに ルーンのネックレスを 渡す

「ミソノのウンディーネの力を最大限に 引き出す癒しのルーンだ」

 その ネックレスの 先には 黒水晶が 輝いている

 校長

 王は最後に 校長に スタッフを さずける

「最後のドルイド サリーのスタッフだ」

 君の力を最大限に ひきだせるだろう

「頼むよ」

 ライト王は精霊にも 笑顔を向ける

 フェアリーのエンド

 ウンディーネのハイ

 ドリアードのハイ

 一人ずつに聖別を 与えると

 王はシャリーを 見た

「神殿から 深淵の穴に転移できる」

 君たちを 神殿へ送ろう

 ライト王の魔法陣が ゆらりきらめく

「頼むよ 小さな英雄諸君」

 王の声は 七色の 光と消えた


 第2章 深淵の穴


 シャリーの腕に ミソノが カタカタと抱きついている

 一行は 消えゆく魔法陣の 虹の輝きの中で 実体を取り戻しつつあった

 ハイツは剣を構えながら 油断なく 辺りを見回す

 校長がカツンと 地面である岩肌を スタッフで 小突いた

 ミソノが シャリーから離れると チャラリと ネックレスを かける

 シャリーはドラゴンの宿る紋章とルーンの刻まれた

 ブローチを 胸につけると

 たしり……と 砂礫をにじる

「ここが」

 目前に 大理石の柱を もつ 美しい 白き神殿が 建っていた

「いきましょう」

校長が 明り取りの魔法を スタッフに呼ぶ

 1歩づつ 神殿に入っていった

 ミソノは ウンディーネの 小さい手を握りながら

 ちょこちょこと ついてく

 ハイツも 不安気な 様子で 歩いた

 シャリーだけ顔を上げて キッと前を向き

 大股でいく

 なんだか 強くなったきがしていた

 多分 ドラゴンのルーンの加護のおかげだろう

しばらく行くと行き止まり 目の前にルーンの 刻まれた 壁があった

 ミソノは 手で撫でながら つらつらと読む

 彼女は こう見えて 古文に 長けた 校長の 一番弟子である

「先生ここです」

 ちょい……女の子らしい手指で 壁を押すと ゴゴ……と どこかで音がして 壁が割れた

「凄いやミソノ!」

 大喜びのハイツ君

 ミソノは ちょんとスカートを つまんで 貴族礼をした

「よく出来ましたミソノ!」

 校長も 晴れ晴れ 笑顔である

 シャリーと エンド は エンドの光る粉を 壁に印にして にこにことつづいた

 幸先良い!

 上手くすすめそうだ

しばらくいくと 大きな広間に出た

 天井は高く 上の方に階段の無い踊り場だけが 付いているのが見える

そこから上は 階段が伸びていた

「ここはシャリー……ドラゴンの 出番です」

 校長が 振り返る

「はい!」

 シャリーは 手で ブローチを 覆うと 魔法を唱えた

 白銀の ルーン文字が そこから楕円に 広がり 散っていく

「きてドラゴン!」

 ルーンで 唱えると

 輝く鱗の ドラゴンが あらわれた

「やっぱり綺麗ね!」

 ミソノの 感嘆

「よんだか」

 ドラゴンは 静かに頭を垂れた

「ドラゴン!背に乗せて」

「オズルでいい」

 ドラゴン オズルは そう言うと 静かに 皆を載せる足場として 尾を垂れた

「ありがとう オズル!」

 シャリー初め一行は オズルの 背を 経由して 首を伝い 踊り場に 降り立つ

「戻ってオズル」

 シャリーの 祈りのルーンと 共に オズルは ブローチへと 消えた

 校長は スタッフを 掲げて 辺りを照らす

 階段は 白く 階上へと続き 手前には 縦長の穴のある 台座があった

「ハイツ!剣を そこに差して!」

 手すりの ルーンを 熟読していた ミソノが 髪を揺らして 振り返る

「わかった!」

 ハイツは 縦の穴に剣を差す

 かっ!

 台座が割れて行き レバーが 現れた

「ビンゴ!」

 嬉しそうなハイツ君

 見ていてミソノも 嬉しそうだ

 ミソノの 頭上で ウンディーネが クルクルまわった

「大正解!」

 校長は パチパチと 手を打つと レバーを ぐっと 引き上げた

 どん……

 階上で 何がが落ちる音がする

「仕掛けが 作動した見たいですね」

 校長が また 先頭を 行く

 ミソノは 自信が ついたのか ちょっと 小走り

ハイツ は 剣を抜くと 後につづいた

 シャリーは エンドと 顔を見合わせると クスっと笑う

「いい感じ」

「だねシャリー」

 エンドが 可愛く頷いた

「行こ」

 シャリーは大股で とことこと いく

 なんだか 新年の すごろくゲームのようで ワクワクしていた

「あれ!」

 階上に つくと 大きな台座が落ちている

「あれに乗れということでしょうか?」

 ハイツが 呟いた

「そうですね」

 校長が 台座の 周りを見て回る

 見て!

 エンドが 台座の

 隅の端に 紋様を見つけた

「これ!癒しのルーン!」

 ミソノが ネックレスを はずした

 そして 黒水晶の ルーンの 部分を パチと はめる

 ごご……

 台座が 浮き上がって行く

 魔法力の お陰だろう

 そして 空中で制止すると 奥へ進んだ

「やるね」

 エンドが きらりんと 1回転する

「えへへ」

 ミソノ嬉しそう

 奥へすすむと 巨大な穴が穿たれた 大地が拡がっていた

「いこう!」

 ハイツが 力強くいう

「OK!」

 シャリーが うなづいた

 そのまま 台座は 穴に入り 降下を開始する

 校長の スタッフの 清らかな 光だけが 頼りだ

 どんどんと 降下していく 台座の上で 一行は 武者震いをひとつした


 台座が 最低部に降りきるとシャリーの足が地を踏みしめる

 ハイツ……ミソノと続き校長も おりたつ

そこは 広い空間になっているようだった

 ミソノが ぶるり……と身震いする

「寒い」

 そこはまるで真冬のようで

 ピチョン……ピチョンと 水滴の音がしていた

「大丈夫かい?」

 ハイツが校服の 藍のブレザーをかけてやる

「ありがとうハイツ!」

 ミソノは ちょっと頬をあからめながら ハイツの横顔を見つめた

 ハイツ君は 恥ずかしかったのか 真っ赤になっている

本当に微笑ましい 1幕であったのだが 校長の スタッフが かつ……と地をうつと 反響が 伝播して わあん……とひろがった

「広そうですね」

 ドリアードが珍しく口を開く

 ハイツの ドリアードは物静かで柔らかい

 萌え出た若葉のように 緑の 髪をしている

 目も同じグリーンだ

「そうね」

 返すのはウンディーネ

 エンドが不安げな使い魔たちを宥めるように

 くるくるとまわった

「大丈夫!」

 エンドの 鈴を転がすような声に 使い魔の緊張はほぐれて行く

 1歩踏み出す事に 現在いまが過去になる

 一行は深淵の王の 行方を探しつつ進んだ

 ピチャン……

 ハイツの首に天井から水滴が落ちた

「ひゃ!」

 さしものハイツも飛び上がる

 クスクス シャリーは 笑った

「もう!シャリーってば!」

 シャリーの背を叩くハイツ

「まあまあ……行きましょう」

 校長が 明かりとりの 魔法を強めた

 周りは 1寸先は 闇である

 ミソノが おっかなびっくりで シャリーをみた

「いこう!ミソノ」

 激励を とばすとミソノは 頷く

「ハイツがいるもん」

 ………………!

 真っ赤になるハイツ君

 2人は脈なしという訳ではなさそうだ


 シャリーは 2人にガッツポーズを送った

「………………」

 ますます真っ赤な ハイツ君

 ミソノも モジモジしている

「はい!いきますよ」

 校長に遮られなかったら ずうっと2人はモジモジしていただろう

 エンドが使い魔達と こちらを楽しそうに見ている

「さ!いこう!」

 シャリーは はっぱをかけるとあるきだした

「あ……まって」

 ミソノが 慌ててかけてくる

 ハイツも頭をカキカキついてきた

「可愛らしいね」

 エンドが

 ウンディーネとドリアードの同意をもとめる

 ドリアードは 少し思うところがある様子

 ウンディーネは ふよふよと 舞いながら こくこくとうなづいた

 校長は ため息をつきながら

 シャリーの采配に 期待してくれている

校長のスタッフの 照らす先に 仄青い 鱗が ちかりと

 輝いた

「なにか居ます!」

 校長の 喚起の声

 シャリーは ブローチに念をこめた

 オズルを呼ぼうとする

 しかし

 鱗の主は 一足 早く 攻撃に転じていた

 ざぁっ……

 地を這う音と共に 伸び上がる その者は

 大蛇である

「きゃ……」

 シャリーが尻もちをつく

エンドが守りの結界を張った

 使い魔各々の 結界のお陰で シャリー達は無傷である

 しかし 蛇の 牙 が校長の 肩を掠めていた

 出血はさほどしていないが 赤黒く 皮膚が変色していく

「ミソノお願い」

 シャリーが 校長を ミソノに託すと オズルを よんだ

 しゅ……

 ブローチから古代ルーンが放射に広がり

 オズルは その美しい姿をあらわす

「オズル」

 エンドが 安堵の表情をうかべた

 校長が 蛇の毒で動けない今

 一行の命運は つきようとしていたのである

 しかし

 オズルがいる今!逆転のチャンスが出来た

 ぼうっ……

 オズルの 口から 光球がはなたれる

大蛇は 躱すが ひとつが その横っ腹に命中する!

「ハイツ」

 ハイツの剣が 大蛇の鱗をそいだ

「オズル 火炎放射」

 シャリーが 念を飛ばす

「承知!」

 オズルの口から爆炎が 放たれた

 ビィィ……

 焼かれた蛇の断末魔か 嫌な音が鳴り響く

「シャリーお見事」

 校長の 毒を浄化した

 ミソノと校長が微笑む

「ありがとうオズル」

 シャリーが戻れと 願うと

 オズルは

静かにブローチへと消えた


 ほう……

 ため息をつく一行……シャリーが胸を撫で下ろす

 ミソノも肩から緊張を抜いた

「ライト様のネックレスがないとやばかったの……」

 涙目のミソノさん

 シャリーはミソノの頭にポンと手を乗せて 息をつく

 こうゆう時は腹式呼吸だ

 すーっはーっ

 校長は 誇らしげに 3人を見守ると スタッフを掲げる

 またあんなのに出くわしては心臓に悪い

 守りのルーンで一行に加護をあたえた

 しゃり……しゃり 足元に 鍾乳石の柱

 そして天井からも伸びる鍾乳石が 水を滴らせている

 ハイツは 怖いのか剣をおさめられないでいた

「ハイツ大丈夫だってば」

 シャリーが 背を撫でてやる

「う……うん」

 カチリ

 綺麗な装飾の鞘に 剣をおさめた

「ねぇ私変かなゾクゾクするの!こわいのじゃないのよ」と……シャリー

ミソノが こちらを見て目を瞬かせる

「怖くないの?」

「うん ドキドキするの楽しいの 不謹慎かな」

 ハイツが首を振った

「シャリーはシャリーさ」

 柔らかに笑ったハイツ君

 シャリーの心は少しおさまった

 ここで 少し不満気なミソノがいるのだが

 皆気づかなかった

 ミソノさんもハイツを 好きなのだ

 だけどシャリーとハイツが親密に見えて仕方ない

 ミソノは ぶぶん……と 首を振った

「行こう」

 ハイツが 珍しく先頭をきる

 校長はニコと笑った

「行きましょう」

 今この瞬間に 深淵の王が 蘇るかもしれないのだ

 シャリーは く……と唇を噛んだ

「シャリー」

 エンドが 少し怯えた風で シャリーの ツインテールを引っ張った

「ん……?」

「なんかね嫌な予感がするの!間に合わないかもしれない……」

 エンドがオロオロと シャリーの 懐に入った

「しばらくこうしてていい?」

 エンドは涙目であった

 あれだけ頑ななまでに元気で明るかったエンドが 怯えている

 使い魔達は一様に怯えて

 主に密着したがった

「エンド怖いよね 召喚して早々これだもん 明るくしてくれてありがとうね……」

 一行は 深淵の大穴の 最深部についた

 そこには巨大な繭

 辺りを筋肉のように脈打つ 糸が巡っている

「危うい所でした 復活されてはたいへん オズルに 焼いて貰いましょう

 シャリーはオズルを呼ぶと

「オズル火炎放射お願い」

 と呼びかけた

 ごぉぉうぅ……

 オズルの炎でも 繭は 傷1つもつかない

 シャリーが慌てた

「まってシャリー!」

 ハイツがオズルの眼前に 王の剣をさしだした

 オズル!

「剣に灼熱の魔法をかけてくれ」

 ハイツは言った

 オズルは灼熱のルーンを施した

「いくよ!」

 ハイツが繭の周りの糸に切りつける

 ドサッ!

 糸は事も無げに切れ 床に 繭が落ちる

 ウンディーネ 大放水!

 ミソノの 命により ウンディーネが 水流を 宙からよぶ

 ざあ……

 ウンディーネの聖なる水は繭を 洗って弱体化させた

「シャリー」 ハイツと ミソノが呼ぶ

 シャリーは オズルに 火炎放射を願った

 ごおお……

 逆巻く炎に 繭が溶け始める

 オズル!

 シャリーの願いに オズルは繭に 牙をたてた

 ガオン……

 牙は立つのだが噛み締められないようだ

「まさか」

校長が背を粟立たせた

 復活してしまったのか?

 オズルは見えない力に繭をもぎ去られ

 背後へと弾かれる

「オズル!」


 シャリーが駆け寄った

「大丈夫だよシャリー」

 オズルは 首をもたげると

 背中に落ちた砂礫を落としながら起き上がる

「すまないね」

 シャリーは オズルを庇うように前に立つと繭を睨みすえた

 シャリーにもわかる

 闇の気配!

 エンドが シャリーの懐で ぶるりと 震えた

「起きちゃったの!王が」

 不安げな どうしようも無い怯えがエンドたち使い魔を ふるえさせている

「人間に加担する愚かな精霊が…………」

 どこからか声が降ってくる

「シャリーこわいよ!」

 エンドが泣き始める

「エンド大丈夫!みなのところにいて!やれるとこまでやってみる」

 シャリーは地を踏みしめる

「シャリー」

 ミソノが 不安そうだ

「大丈夫!いこうハイツいける?」

「行けるよシャリー」

 ハイツは剣をにぎりしめると

 じりりと 声の主の 出方を待った

「全て滅ぼしてやる」

 深淵の王らしき重々しい声は シャリーを突き飛ばしそうな程に叩いてくる

「頑張って」

 校長の 口がそう動いた気がするのだが

 シャリーは理解していなかった

「いくよ!」

 こうして 深淵の王との戦いは始まる

 ザア……

 オズルが 真空波を 浴びせるが ビクともしない

 繭の中から 小さな爬虫類のような 少年が現れる

「深淵の王」と校長

 これが!

 シャリーが 光魔法で攻撃するが 跳ねられ 壁に激突する直前を エンドの精霊魔法に救われる

「やぁ!」

 ハイツが 灼熱のルーンそのままの 剣で切りつけた!

 ざっ!

 しかし

 かすり傷を負わせただけで ハイツも飛ばされる

 ミソノは 怯えながらも古代魔法の 水霊を呼び出す

 しかし

 水霊 数体が一気に跳ねられてしまう

「校長」

 深淵の王が 校長を 跳ねた

「いけない!」

 頭から落下する

 シャリーがエアの 魔法を唱えた

 衝撃はやわらげたものの

 校長はどさりと 落下した

 シャリー!

 ハイツとミソノの 叫びが同時に上がった

 目を戻すと

 深淵の王が 目前に迫っていた

「きゃ」

 シャリーが叫んだとき

 ハイツの剣の柄とミソノのネックレスの黒水晶が 呼応した

 そして

 ふたつは一体となって

 シャリーの手に湧いた

 そして ブローチも 柄にはまり強大な 神聖力が湧いてきた!

 シャリーは 全身のバネを もって

 深淵の王を 切り捨てる

「……………… 」

 しかし

 神聖力が 通じない

「ふふ……」

 深淵の王が 笑った

「合格!」

 はい?

「諸君!合格だ!」

 校長が 拍手している

「良くやりました」

 ??????

 よく分からない

「テストだったのですよ」

 魔物が強力になって行く今 学校の守護を 精鋭隊に任せたく それでね

 心底嬉しそうな 校長に

 シャリーの 腰が抜けた

「3人を精鋭隊に加えるべきかと テストしたのです!ルナは仮死の 魔法を使っただけ」

 ハイツも ヘナヘナと座り込む ミソノに至っては わんわんと泣き 使い魔達になぐさめられている

「みんな知ってたの?」

「使い魔達も知りません」

 最後の賢者に 依頼して テストを しましたごめんなさいね……

 なんというか ハチャメチャである

 シャリーは ポカンとしてしまう

 オズルは クスクスとシャリーの 頭をかいぐった

「素晴らしかったよ 皆」

「オズル!知ってたのね」

 シャリーは ぷっくり膨れて ドラゴンを睨む

「まあまあそう言わない 帰って お祝いですよ」

 校長が とっとと戻ろうとする

 3人は ため息をつくと ごちた

「忘れてた!校長は 派手好きだった」

 そうこうして 一行は 台座へと戻り 神殿を目指した

「あの 女神像が 砕けたのは幻術かなにかですか?」

 ハイツが 校長をみる

「びっくりしたでしょう!あれくらいしないとね」

 あっけらかんと 返されて 3人と 使い魔は 項垂れた

「もう……どうでもいいです」

 シャリーが 小石を蹴る

「みんなの勇気見させて頂きましたよ!見事です!よく剣の眠りをさますことが出来ました」

 校長が

 3人の頭に順々に手を置いて行く 深淵の王 もどきの 老賢者も 一緒である

「すまんかったね」

 賢者は ふふと笑った

 しかし いいチームワークをみせてもらった

 上機嫌だ

 シャリーは かっくりと 項垂れる

「校長先生今度はもう少しお手柔らかに」

「いいえ!あなた達は 最上級生達と共に 魔物と戦うのですよ?鼻っ垂れたことを言ってはいけません」

 ………はぁ…………

 ミソノが ため息を落とした

 さあ!

 校長が 神殿を抜けた先の魔法陣に乗り

 皆を導く

「祝杯です!」

 喜んでいいのか?わるいのか?

 3人はため息しか無かった

 

 第3章 祝杯の庭


 学校にかえるとお祭り騒ぎだった

「……ルナ」

 シャリーが 抱きつく

「あ……先輩!ご心配を……」

 よかったぁ!

へたり混みそうな程の引力を 地から感じ

 ペチャリと シャリーは 尻を つく

「良かったよ!ルナ」

 ハイツが ルナをかいぐる

「いたた」

 手荒い撫で方にルナが苦笑

「両親にもこんなに喜ばれたことないですよー!部長!先輩」

 にこり……と 笑って小首をちょこん

 シャリーは 猛烈に愛しくなって

 ぎゅーっと抱きしめた

「もう」

 学校の前庭には 女神像も無事で散った薔薇すらなかった

 流石は校長!見事な幻術だった

 ミソノも合唱部と合流し何やら楽譜の 配布を している

「さあさ!お菓子をどうぞ」

 用務員のおばさんが 銀のトレーにのった クッキーを 配る

それは用務員さんの 手焼きで 信じられない程美味しい!

 これで専門店ひらけますね!

 そう皆が騒ぐほど

 ハイツは満面の笑みで2、3枚鷲掴み

 口に入れた!ミソノは いつか用務員さんを越えるぞと 誓った

 だってハイツ……

その目は恋する目で はたと ルナと 視線がぶつかる

ライバル発見なのである

 しかも 低学年1の可愛い子ルナ

「……………………」

 ミソノピンチ

シャリーは ココナツののった クッキーを摘むと 幸せそうに 笑む

 美味しいのよねー

 ヨダレを垂らしそうな顔がそれを証明していた

 クスクス

 ミソノは笑う

 シャリーはライバルかもしれないけど大好き!

 ミソノの小さな胸に 灯りが灯った

「合唱部の 皆さん今日の賛美歌は特別ですよ!マッハの女神に捧げます」

 ハイっ!らーーーー!

 合唱部顧問の先生の高音!

 辺りがしんとなる

 綺麗だ

 らーーーっ!

 ミソノの 調子っぱずれな所のある高音も 高音を 維持

 シャリーはワクワクして アビス像と呼ばれてきたマッハ像を眺めた!

 輝いて見える

「エンド?」

 エンドは 自分の 頭よりも大きいクッキーを 抱えて ふよふよ……

 シャリーが 爆笑した

「だってぇ……」

 エンド可愛すぎる!

 なんだか幸せ

 そんな時 夕方目掛ける 陽の方から

 オオカミの 吠え声が 児玉した!

「シャリー」

 最高学年の カイル先輩が 駆けつける

 最近見かける巨大な オオカミだ手慣らしに!

 先輩勝手を言ってくれる

 ハイツも顔をあげた

「あれ!多分人狼だ!」

 何でも吠え声に 特徴があるらしい

 ミソノも かけよってきた

「行ってくれるね?3人とも」

「先輩!あれ人狼ですよ!僕らじゃ手に負えないかも」

「君等ならやれるさ!ライト様から授かった力があるよね」

 最高学年の ライラさんまでもニコニコ顔

 残酷な笑顔に見えてくる

 仕方なし

 シャリーたちは 学校の結界の 端を抜けて森へと踏み込む

 そこには

 ハイツ2人分合わせたくらいの 大きさの 人狼が居た

「お願い手荒い事したくないの!居場所へかえって!」

 シャリーは 魔物とはいえ やたらに倒したくなかった

 ……グルル……

「シャリー」

 ハイツが咎める

「そいつ今は意思が無い破壊衝動しかないんだよ」

「なんだか可愛いそう」

 ミソノは言った

 人狼って呪いでなったり 襲われてなったりするんでしょ?

「うんでも この時間帯に人狼おかしいよ!呪いで戻れないのかも!満月昨日だよ!」

 ハイツが 剣を抜いた

 どうしたら?

 3人は思いあぐねた

 ……シャリー……オズルの声

 シャリーがブローチからオズルを呼んだ

「魔物使いが居る!それも強敵だ」

 このオオカミを 維持し操るやつ!

 君たちでは無理だ

「ううん!」

 そんな奴許せない!

「哀れな人狼を我欲のままに操るなんて!」

 オズル!何とかできない?

「倒すしかないよシャリー!ここまで定着してしまうともう……」

「飛べ!」

 男の声がする!

 オオカミは、がぅと 唸ると地を蹴った


 スタリとオオカミは片足で着地し シャリーに その牙を剥く

「シャリー」

 オズルを呼ぶとシャリーはエンドに 結界を頼む

「了解」

 オズルが攻撃 エンドが防御!

 鉄壁の筈

 しかしオオカミは その油断をついた

 エンドの結界が完成する前にシャリーの 目の前に躍り込む

「やばい!」

 ハイツがオオカミの牙を剣で受ける

 しかし流せず

 オオカミは ハイツの肩を牙で掠めた

「ハイツ!」

 血が舞う

「はやい!」

 きっと魔物使いとの 連携が桁違いなのだ

 ミソノは 黒水晶を握ると

 癒しにかかる

 しかし

 オズルの尾も早かった

 ばぢり

 オオカミをはねる

 オオカミはきりもんで 地面に 叩かれた

 しかしすぐに体勢を戻し

 食らいつきにかかる

 しかしオズルの 鱗は やすやすと 牙がたたない

 オオカミは食らいついたまま

 オズルの 首の1振りにとばされた

 しかし木々の1本に後ろ足で着地

 空からダイブしてくる

「いけない!」

 ハイツは ミソノを 背に庇うと 剣をオオカミの 腹目掛け突いた

 しかし毛皮を軽く掠めるだけ

 シャリーは深淵の王の試練の時を思い 祈った

 ミソノの黒水晶と ハイツの剣が一体となり

 シャリーの手に湧く!

 シャリーのブローチが1層輝いて

 剣の窪みに身を落とす

 ガッ!

 オオカミの一撃を軽くいなすと シャリーは 胸元の 白い毛皮に剣を突いた

「ぎゃんっ」

 オオカミは心臓を 貫かれ動かなくなる!

 シャリーが 剣を伝う血を見てカタカタと震える

 ハイツが その剣を 受けると

 オオカミからぬきあげた

 がっ!

オオカミは 発光すると 身を縮めていく

 現れた姿は子供

 シャリーが崩れ落ちた

「何てこと!」

 自分がしたことが許せない

しかしこうしなければ……呪いは!

 でも!

 首をぶんとふる

 どうしたらよかったの!

 涙が止まらない

「どうだい人殺しをした気分?」

 魔物使いは 姿を湧かせた

 ハイツは涙を 浮かべて

 魔物使いを睨みつけた!

「お前を逮捕する!」

「出来ないね」

 ひよっこ諸君?

 今日はご挨拶!

 お辞儀すると 中空へと消えた

「待て」

 ハイツの怒りが爆発する!

 しかし追えない

 シャリーの手がハイツの服を掴んでいた

「お願いハイツ……私を殺して」

 悲しみが場をみたす

「ハイツ……」

 ハイツはシャリーの頭を抱きしめると ただ立つだけでやっと

 ミソノは 剣から黒水晶をとると

 最後に傷だけでも癒してあげようとした

 その途端

 黒水晶が 強く発光し

 子供を包んだ

「ミソノ?」

 待って!シャリー助かるかも!

 ミソノの声に歓喜が滲む

 少年の身体は浮き上がると

 立ち姿として大地に降りた

「……!」

 シャリーの目が輝く

「僕……」

 少年が 口をきいた!

「やったぁ!」

 3人は抱きしめあう

「奇跡だ」

 泣き笑いハイツ

 ミソノに抱きついた!

「ミソノーーーっ」

 シャリーがわんわんと泣いた

「こわかったよね」

 エンドは シャリーの髪をかいぐる

「本当に……」

 オズルは 頷いた

「ありがとうぅ」

 声の限りでシャリーは泣く

 少年はオロオロするのみ

 ハイツはしゃがむと その頭に手を置いた

 パパ ママの場所わかるかい?

 少年が頷く

「帰れる?」

 ハイツが笑った

「うん……」

 何に知らない少年は大きく頷き 駆け去る

「ミソノ……」

 シャリーはミソノの腕の中で泣いた

「よかったよー」

 それしか言えないシャリー

 ミソノは 静かに シャリーの髪を 撫でた

 ハイツの肩もウンディーネの魔法が治し 一行は来た道を学校へと戻る

「シャリー」

 ドリアードの手が果実を 差し出す

「食べて」

 シャリーはその気持ちに感謝すると

 あむぅと 歯を立てた

 甘酸っぱい!

 不思議と 心が落ち着いた

「みんなありがとう!」

 シャリーはペコンと頭を下げる

「いいんだよ」

 ハイツが シャリーの手を握ってくれた

 ミソノが 反対の 手を握る

「帰ろ」


 第4章 精鋭隊


 シャリー達が学校につくと カイルが持っていた

 胸には守護隊のバッジ

 シャリー達にも授与するため

 ビロード貼りのプレートに3つ並んでいる

「ライラ」

 カイルが呼ぶと副隊長のライラが 敬礼し進み出た

 そして

 3人の制服につけて カイルに敬礼する

 3人はそれに倣うが 不格好

 ライラが頭を撫でてくれた

「おめでとう諸君!」

 校長は拍手すると

「精鋭隊のメンバーにあなた達の学年が加わるのは初です!名誉ですよ!」

 と笑う

 3人は こんな戦いが日常になる恐怖の方が強かった

「隊長 人狼は子供!魔物使いは逃亡」

 ハイツが報告

「 つらかったろ?」

 隊長が頷く

「はい」

「魔物使いの手段だ!我々の躊躇を狙う」

「はい」

「シャリー」

 特に君に!

 カイルは階級のバッジを付与しようとした

「いいえ!いりません!」

 シャリーは断固断った

「みんながいなければ……何もなし得ませんでした!」

 名誉と言うなら全員に!

 カイルは華やかにわらった!

「最高の新入りだ」

 よし!

 全員の胸に階級が付与され

 カイルが握手してくれる

「最速の階級もちの諸君」

 ライラが敬礼!

「隊員用の居室が与えられる」

そこは隊員用の寮だった

「夜中の出動も有り得る」

そのため他の生徒と分けられるらしい

 進むと隊員達が並び敬礼で迎えてくれた

「ようこそ!」

 寮監が敬礼する

「荷物は運ばせた」

 進みたまえ!

「シャリー!」

 ミソノが不安気

「君らは同室だよ!」

 配慮が嬉しい!

「ありがとうございます!」

 シャリーが寮監の手をブンブンと握る

 彼は戸惑うが 2人の頭を撫でると鍵をくれた

「ハイツ」

「はい!」

 君は僕と同室

 寮監がハイツの背を押す

「ありがとうございます!」

 名誉とばかりに ハイツ

「甘くは無いから!覚悟したまえ!」

「も……申し訳ありません」

 何を謝るハイツくん?

 シャリーとミソノは部屋のドア越しに吹き出した

「ハイツってば……」

 和んだこの時

 これが続くのを願わすにいられない……

「シャリー!」

 エンドは目を擦り擦り

 ポテッとベットに着地

「眠い……」

 エンドには無理をさせた

 生まれて瞬間から戦闘

 この激務

 精霊とて堪える筈

「おやすみ……」

 シャリーはエンドの頬っぺ擽った

 むにゃむにゃ……

 寝言を聴きながら

 ミソノとウンディーネのふれあいを眺める

「かなり育ってるね……」

 シャリーが言うとウンディーネはくるんと回って

 お辞儀

「ありがとうシャリー!」

 嬉しそう!

「ミソノの育てが上手いのね」

 ミソノは笑うとエンドをみつめる

「いきなりエンドを召喚したシャリーに言われる程ではありませーん」

 おどけてウンディーネとポーズ

「ありがとう」

 2人は 吹き出すと

 ぶあーっとあくび

 ベットに足を投げ出して

 眠りに落ちていったのだった


 かんかん…… かんかん

 「うーん」

シャリーが身動ぎした

 ベッドの端から ポテッと エンドが落ちる

「ん……もう朝?」

起き上がるシャリー 彼女は目をこすると

 黒い細縁のメガネをかけた

「みゃーーー?」

 ミソノさん

子猫のようにまるまる

「ねぇ……今 朝4時よ?」

 ウンディーネがベットテーブルの時計を睨む

「シャリー!ミソノ!」

 どんどんと扉を叩かれて

「はぁい」

 と返事をする

「朝練!サボる気?」

 ちょっと やんちゃな感じのテアが 扉をたたきあける

「即日 速攻 フルスピードが精鋭隊のモットーです」

 テアさんの後ろにくっついてハラがいう

 こちらは少しナイーブそう

「おきなさーーーい」

 テアの声に

 2人はもぞもぞと 隊服に着替え

 シャリー は金の髪をツインテールに ミソノはペールプルーの髪をすいた

「はい!たったとする!たったと!」

 テアに急かされるまま

 シャリーたちは 部屋をでる

「ぷーー」

 エンドがむくれている

 ウンディーネが笑いかけた

「大丈夫ですよ!やれますよエンド」

「むきーーー」

 はやすぎる

 もう少しで あのクッキー食べられたのに

 ふよふよと羽をはためかせて

 シャリーの胸ポケットにおさまる

「こら!寝逃げはだめよ!」

 テア 目ざとい

「今日は 対応力と 速攻についてまなびます」

 ハラは そっとエンドをつかみ出すと ピンとエンドのお鼻を弾く

「エンドの主だからと言って甘やかしませんよ」

 テアに引き立てられるようにして

 庭に出ると魔法のマネキンが三体 まっていた

「おやおや!その顔ではやられたねお二人さん」

カイルが からからとわらう

「やられたじゃないです」

 だって!朝ごはんぬかれたくないですから

 たったと 魔法マネキンの前に立つと

「まずは速攻!フレア」

 きゅきゅと 空気を縮めるとテアの呪文は見事 魔法マネキンに直撃したマネキンの首からバネがのび

ぴよよんと頭が伸びた

「隊長 もっとまともなのにしてくださいよ!」

「これじゃカカシとバトルしても変わらないですよ」

 テアの声に 隊長は 先ずはこの子達の養育だ

 校長のイチオシみたいだし!

 カイルが「フローズン」と唱ると カイルの手から

 詠唱すらないままに

 氷の矢がとぶ

「そうだね?まずはミソノやってごらん」

「凍てつく氷の皇帝よ……」

 はい失格!

 ライラが ミソノにいった

「詠唱無しまだ教わってないかな?」

 そっか

「じゃ……シャリー」

 エンドは力いっぱい激励した

「放ちたまえフローズン」

 マネキンの足から腰を凍らせる

「OK ま……及第点かな……じゃハイツ」

 ハイツは欠伸をしていたが

 グッと唇をかみしめた

 そして「フローズン」ハイツの杖をルーンが纏わり

 バシッとマネキンを倒した

「わお!」

 テアが笑う

「すごいすごいよ!ハイツ」

 やるね

 カイルも頭を撫でる

 シャリーとミソノは少し唇をとがらせた

 だってねー!あれなんである

 得手魔法と不得手はたしかにある

 でも

 ハイツの魔力急に成長した

 フローズンの練習をおえたら 宿舎のまわりを10周

 そして体幹トレーニング

 腕立て腹筋

「えーっ」いいたくもたるのである

「これでも初級むけなのよ」

 テアがシャリーの背を叩く

「やれるわよ シャリー ミソノ」

 ハラに励まされ

頑張ろって3人は誓った

 3人が顎が上がる頃

 ライラが告げた

「今日はねお祝いですって三人とも あの伝説のカレーピラフが食べられるわよー」

 士気がおちつつあった三人がフルスロットルになる

 流石は副隊長といったところか


 第5章 カタチある物は……


 シャリーが一番乗りで 食堂の 入口をくぐる

 テアがハラが続いて ミソノとハイツが 最後だった

嗚呼!

 我が校の伝説とまで言われたカレーピラフ

この日はみんな オカワリ必至

美味しいのだ!

 カレーのいい匂いが漂うと 皆のお腹が グゥとなった

 特に 朝練組は グゥグゥだ

「お腹へったぁ」

 シャリーは 椅子を引く

 目の前には名札と カレーピラフ

もはやよだれダラダラである

「聖なる糧に感謝して……いただきます」

 一同唱和して

 銀のスプーンでピラフをひと救い

 スプーンに映り込む ピラフの黄金が キラキラと輝いて見えた

 そして人参やらコーンやら グリーンピースなどなど

 タンパク質は ツナ一択

 ハグっと 食らいついたのは まずシャリーである

 エンドは ハグハグと 使い魔用のお皿で ピラフを食べた

 この時全員が 同じものを食べる

快感であった

「おかあり……」

 もぐもぐと口に入っているのにシャリーさん

 一番乗り!

 ミソノも 負けじと食らうが シャリーの速度には及ぶべきもない

「うーん……幸せー……」

 シャリーさんを 見つめて皆 ニッコリする

そして続けとばかりに カイルとハイツ

ミソノは 尚もあたふた……

ウンディーネが くすくすわらった

「争わない争わない」

 しかし ミソノさん必死である

 負けるもんかと おかわりした

 ゴックン

 飲み込みすら出来てないのに お皿に よそってもらう

なんだか障害競走のようである

 シャリー三杯でリタイヤ

 ハイツ終盤で巻き上げて 三杯半

 その上をいくのがカイルとライラ

おおっ……と周りがどよめいた

「はいはい!おしまいね」

空になった トレーを見て 皆お腹を撫でさすり

くったどー!な皆さんである

 各々食器を下げて

 給食のおばさん達に一言

「ありがとうございます!」

 そう言って帰っていく

 ドアを開けようとした時

 ゾクッと背中を何かが駆け抜けた

「シャリー!感じた?」

 ハイツもミソノも 少し青ざめている

「この気配!」

 昨日の魔物使いだ

「ここに?何で」

 ここは結界内のはず

 三人はカイルを振り返る

「うん」

 カイルが頷いた

「また……変な所に来たね」

 気配の出処は マッハ像の近く

「近すぎる!」

 一同は 廊下を駆け抜け

「皆!外にでるな!」

 と 声をかけた

「シャリー!ミソノ!ハイツ!行けるか?」

「はい!」

 一同の顔は強ばっているが 力強い!

「よし……」

 カイルが 玄関のドアを開けた

「いた……」

 魔物使いは 薄ら笑をうかべてマッハ像を眺めている

「こんなので結界?笑わせる」

 手に 暗黒の魔法を宿らせる

「笑止」

 カイルが レイピアを抜いたが 暗黒の魔法の方が早かった

 暗黒魔法は マッハ像を直撃!

 像は 無惨にも砕け散った

 そしてそこから 現れたのは 本物の 闇のオーブ

「まさか……」

 シャリーが 固唾をのむ

 カイルが 1歩踏み込みざまに 魔物使いの 腕を レイピアでさすが

 魔物使いの方が早かった

 魔物使いが オーブに触れるや がんっ!と 重力波が溢れ出る

 カイルが 片膝を つくが 魔法結界に 阻まれる

 カイルのウンディーネである

「ご主人?」

 ウンディーネが のぞく

「大丈夫だ!」

 彼は にやりと笑うと 手に 魔法をよぶ

「フローズン」

 しかし!

 闇のオーブの放つ波動の方が強く

 弾かれる

「く……」

 カイルが 脇腹を庇った

「シャリー!みなを出すな!いいね?」

「は……はい!」

 ミソノのウンディーネが とんでいき

 カイルを癒そうとする

 カイルのウンディーネは結界で精一杯だった

「すまないね」

 カイルが 笑む

「詫びないでください」

 らしくないです……

 テアが 魔法の炎で 魔物使いを 薙ぎ払う

 しかし 闇のオーブの 結界が強く

 重力波が テアの体を弾いた

「エンド!」

 シャリーが 呼ぶとエンドは 魔法でテアを 抱きとめる

「大丈夫?テア?」

 エンドが耳打つ

「大丈夫よ!エンド」

 テアが ゆらりと立ち上がった

 ハラは 玄関から出ないように注意する シャリーを手伝っている

 誰か!校長を

 叫ぶ ハラの脇を抜けて雷撃の魔法が走った

 校長である

「来ましたね!」

 久しぶりね!

 そんな校長に怪訝なシャリー

「彼は私の息子です!ドラ息子ですがね」

 校長の言葉に皆が息を呑む

「息子さん?」

ミソノが とう

「その通りなんだよミソノ」

 カイルは どうやら面識があるようである

 僕が 精鋭隊に抜擢された頃 あの人は精鋭隊のエースだった

「それが……それが一体なんで……」

 カイルが 睨みすえる

「運命だよ……皮肉だねカイル 」

 魔物使いは ランドルと呼ばれ にやりと笑った

 

「今の俺の役目はね 闇のオーブを持ち帰り 孵化させる事さ 深淵の王知っているだろう?アビスの真の姿!そしてあの方の願いを叶えるために」

「 させません!」

 校長は スタッフにルーンをくべると 雷撃を放った

「甘いんだよ母さんは!こんな学校意味もない!アビスにかなうもんか!孵化すれば 一撃さ」

 紫電が 空をかけ校長の足元をさらった

「は!衰えたね母さん!やっぱり甘い!ガキども庇って自分は死ぬの?そーゆーのが我慢ならないんだよ!」

 ばぢっ……

 ランドルの紫電と 校長の雷撃が ぶつかり合う!

 互角か?

 いや?

 校長の方が庇う者が多いぶん不利

 がどん!

 紫電に念を集中していた校長の腹に 重力波が命中する

 ボギっ

 不吉な音

「校長!」

 倒れ込む校長に シャリーと ミソノがかけよった

「いけま……せん!シャリー!みながでないように とどめてください!エンドと頼みます!」

 はたり……

校長の 手が落ちた

「校長!」

 シャリーが叫ぶ

 カイルがミソノのウンディーネとミソノに目配せした

「はい!」

 2人は校長を癒そうとする

 しかし!

 蘇らない!

「そんな!なんで!」

「ふん!闇のオーブの傷は癒えないさ!」

 カイルが唇をかみしめた

「さぁて!皇帝にこれを献上しよう!」

 ランドルは言いおくとシュルリと去った

「ランドル!お前は!」

 カイルが絶叫する!

「もう少し時間をやるよ!嬢ちゃん達!もっとつよくならないとなぁ!」

 ランドルの声だけが そう聞こえた

「くっ!」

 シャリーが 呻く

「校長!校長先生!」

 ライラがドリアードの 葉の露で 癒そうと試みるが 校長の体は徐々に冷たくなって行く

「なんで!」

 校長のスタッフが ミソノの 絶叫に反応した!

「これは!」

 テアが スタッフを ミソノに渡す

「はい!」

 ミソノは 受け取ると

 古文書で読んだ 古魔法を 唱えて見る

 がっ!

 スタッフは 上から裂け弾けたが

 校長の体には生気が戻る

「ああ……」

校長の 唇から 息がもれた

「ランドル!ランドル!もはや手にかけるしかないと言うの?」

 校長の涙がハラハラ落ちる

「校長!」

 シャリーが 校長の 上げた右腕を 抱きしめた

「校長!」

「ごめんなさいね!皆んな怖い思いをさせましたね」

 校長が ミソノの 頬を撫でる

 ありがとう ミソノ!

「こうして精鋭隊を集めていたのは!他ならぬ!あの息子を 止めねばならなかったから!」

 校長が 身を起こした

「カイル」

「はい!」

「止めてくれますか?」

「はい!校長!命にかけて」

 カイルが 己の手で胸を叩いた

「ありがとう」

「ごめんなさいね!」

 まだふらついているが 校長は 医務室へ去った

「皆 大丈夫だね!」

 カイルが振り返る

「はい!」

 互いが互いを庇いあい

 シャリーは何かを思った様だった

「隊長!ライト王の像に行けば……!」

「何か分かるかも!」

「いや!先ずは君らを 強化せねばなるまい!今はまだライト様にお会いできないよ」

 カイルが穏やかに 三人をみつめた!

「みっちり 仕込むから!そのつもりで!」

「は…… はい!」

 固まる三人だったが 返事は同じ

「ランドルを逮捕する!」

「いや!手にかける気でいかないと……ランドルは 甘くないんだよ!母である校長ですら殺そうとする奴だ」

 カイルは そっとライラに 耳打ちすると まずは 学校の 1階にある 古代図書館へと むかった!

「ミソノ!君なら判読できるね!」

「はい」

 古代図書の 封印の 棚に 長く封印された古書を

 見つける

「皇帝!」

「そうだランドルが……仕えてる奴だよ」

 魔物使いの王だ!

 飾り物だと思っていたが 実在するらしい!

「ここを……」

カイルの 長い人差し指が 古書のページを とんと叩く

 紙のにおいがした

「皇帝ギュンター」

「そう……」

 カイルは その本をミソノにたくす

 判読してくれ!

 なるだけ……詳しく

 そう言ってカイルは 図書館の床に膝を落とした

「隊長?」

 テアが駆け寄る

「大丈夫ですか?」

「すまない」

 少し 休ませてもらうよ!

 その顔は 青白い

ミソノが カイルの脇腹をさぐって青ざめた

「肋骨が 」

「みたいだ……」

 カイルの 頤が落ちた

 皆で カイルを 医務室へ運び 看護師に たくす

「ミソノ!」

 古書を抱え込むミソノに ハイツが言う

「ごめん!こればかりは力になれなくて」

「大丈夫よ!ハイツ!得意分野だもの!」

 シャリーは ライラのいる庭に そしてハイツも 続いた


「ライラさん!」

 シャリーが駆け寄る

 早速ですが 訓練お願いします!

 ぴょこんと頭を下げる

「待って!待って!待ちなさい」

 ライラさんが 両手で制する

「今ね先生方と 結界の 綻びを 縫ってるの!そしてねシャリー!いいよく聞いて!休養も鍛錬!わかる?」

「でも!」

 縋るハイツに ライラさんが笑う

「いい目ね!2人とも!」

 その目はとても優しい……

「ならねハイツ!貴方の得意な結界魔法で綻びを閉じるの手伝って……ちょーっと 結界魔法 私 苦手でね」

 パチンと 片目をつむるライラさん

「は!行ってきます」

 なんだかカッチンコッチンな歩き方で 去るハイツを 見送るライラさんの目は寂しそうだった

「シャリー!あのね!もしかしたら……ランドルが 本気になれば 私達を壊滅されるのは容易いの……なのに!後一歩で攻撃を止める!これって 変でしょ?きっとね裏があるわ!シャリーこの後誰かが死ぬかもしれない……」

 ライラさんの唇が締まる

「戦える?もし攻撃してきたのが味方だったとして……本気で?」

「味方……」

 エンドがプルルと 首を振った

「はい!戦います」

 ライラさんは悲しげだ

 戦いはね……シャリー そんなに甘くないわ!

 誰かが死に!

 味方も死ぬ!

 出来る?

「……………………」

 シャリーが目をふせた……

「いきます!」

「ふふっ……じゃあね……テア!」

「はい!」

 呼ばわられてテアがかけてくる

 オートマタ出してあげて!

「でもあれはまだ……シャリーには……」

 ライラさんはコクとうなづいた

「わかってる……でも出して……ね?」

「は……はい……」

 テアが 魔具倉庫へと駈けていく

「シャリー?今の貴女では大怪我するかも……でもやれるわね?」

「はい……!」

 強くシャリーは笑った

「いい笑顔……!いっていらっしゃい」


 シャリーは テアの後を 早足で追う

 テアは 魔具倉庫の 封印を 解除すると 奥から 魔法金属で 覆われた 鎧型の 人形を ガチャリと取り出す

「これと1時間戦えたら次のステップいい?シャリー これには最高学年ですら手こずるの!今更 撤回はなしよ?OK?」

「はい!」

 シャリーが エンドと 身構えた

 テアは 鎧の 胸に描かれた 魔法陣に 魔力を注ぐ

 ぎぃ……いいい

 魔法金属は 擦れ合いながら 腕を上げた

「来るわ!エンド」

「うん!シャリー」

 だっと 左右に展開した2人は エンドが光魔法

 シャリーが フローズンで 同時攻撃

 しかし……!

渾身の 一撃も 弾かれる

 ガシャン……

 オートマタは シャリーを 腕で はらった

「きゃ!」

 シャリーが 後方に 飛ばされる

「何してるのシャリー!脇甘い!」

「はい!フローズン」

「まだまだ!甘い!」

 今度はオートマタの 蹴りが来た

 シャリーの 身体が 校庭を 擦る

「何やってるの!」

 エンドはテアに 叱咤されまくるシャリーを 見てオロオロと 涙で目を潤ませた

「エンド!何してるの!使い魔なら ここは結界でしょ!」

「テアさん!これはいくら何でも」

 ハイツが かけて来る

「なぁに?ハイツ!」

「シャリー!」

 エンドの 悲鳴!

 シャリーの 唇が切れ 出血していた

「エンド!癒し魔法!まさかつかえないなんてないわよね」

「は……はい」

 パタパタと シャリー目掛ける

 と……そこへオートマタの 薙ぎ払い!

 シャリーは エンドを 両手で包んで守った

 だが シャリーが オートマタの 薙ぎ払いを まともに食らう!

 ががん!

 シャリーの 背が 校庭に叩かれた

「なぁに?随分な余裕ねシャリー!」

 と!テアの 髪が1束落ちた

 エンド!

 エンドの 周りに 光の真空魔法が 取り巻いている

「許さない!もうシャリー罵倒しないで!」

 エンドが かっと!光った

 オートマタの 魔法陣目掛け 真空魔法が 命中する

 ギャン!

 魔法金属に 傷が深く入った!

「ふ……!」

 テアが笑んだ

「いいじゃない!エンド!その呼吸!忘れない」

 きょん……

 エンドが 目を瞬いた

「テアさん!」

「こんなに早く一撃見舞うなんて!さっすが!」

 パチパチ……ライラさんが 歩み寄る

「大丈夫かな?ちょっときつかったでしょ!」

 でもすごいわ!

 最高学年ですら傷つけるのに1ヶ月かかるのに!

 テアが 両手を 握ってブンブンと 振った

「いえ…あの…」

 シャリーが 唇を 拭う

「た……」

 かなり切れていた

「シャリー……」

 ふよふよと シャリーへ寄ってエンドが 唇を 撫でる

  「ごめんね」

「ううん!大丈夫よ!ありがとうエンド!」

「もう少し覚醒遅かったら割って入るつもりだったけどね!」

 テアが ウインクした

「癒し魔法より攻撃魔法の方ねエンド」

「うん……」

 ポテン!

 エンドは シャリーの 両手に 降りると 目を閉じた

「エンド?」

「寝かしたげて!疲れたのよ!覚醒いきなりだったしね!」

 ライラさんは にっこり笑うと シャリーの 頬を 包んだ

「ほら……たてる?」

「はい」

 唇の 傷は癒えていた

「隊長に後は頼むと いわれたけどね……正直心配だったのよ!だってシャリー可愛い女の子だもんね!」

 ライラさん泣いている

「テアありがとうね!」

「はい!」

 テアが 敬礼した

 さすがスパルタの テアと言ったとこね!

 うふふ

 優しい副隊長の ライラさんは シャリーの 頭を かいぐりながらテアを 見て 敬礼で答えた

「いい隊員を もったわ!」

「そんな……もったいない!」

 テアまで泣き出してしまい……

 シャリーは オロオロと 2人を 見比べた

「凄いやシャリー!」

 ハイツが たっと 駆けつける

「ハイツやってみる?」

 テアに じっと見られて あたふたと ハイツは 首を振った

「ふふ!」

「よかった!」

 テアと ライラさんが 校舎へと向かう

「疲れたでしょシャリー!休みなさい」

「はい」

 ライラさんの 愛の深さを噛み締めながら シャリーは 宿舎へ入った

 シャリー!

 ミソノが土まみれの シャリーを 見つけて 涙目で駆け寄る

「やだ!アザになってる!来て!」

 部屋へ 引っ張って行かれながら シャリーは 敬礼をした

「お疲れ様!」

 カイル隊長が 3人を 労う

 頑張ったね!

「あのオートマタ相手に30分で一撃!最速だよ!ご立派」

 時に鋭いアイスブルーの 瞳を細めて カイル隊長が 微笑んだ

「うーん近くで見たかったな!」

 隊長の 隊服の 胸元から 包帯が のぞける

「大丈夫ですか!肋!」

不安気な シャリーに カイルが頷く

「闇のオーブの傷を癒すには ちょっと時間かかるみたいだ」

「あの!」

 ミソノが 古代語で魔法陣を発動させる

「多分 この魔法なら……」

「ミソノ……」

 カイル隊長は その手を留めた

 古代魔法はね

 依代となる何かがないと術者の 命を削るんだ

 ふぁっと 手を ミソノの 頭に置く

「むやみに使ってはいけないよ!いいね!」

「でも!」

「大丈夫だから」

 優しい声音の 隊長に ミソノが こくりと うなづいた

 

 第6章 彼女


 ふんふん……

 ミソノは シャリーに 癒し魔法を かけながら 子守り歌を歌ってくれた

「おやすみ……シャリー」

 それは あまりにも耳に心地いい メロディで 今まで聴いた どの歌よりも 心に染みる

「うん……」

 シャリーの 背のアザが 次々と ほんわりと 包まれ

 癒されていく……

「いい子ね……」

 脇に 放り出された隊服は さっきミソノが 魔法で 綺麗にしてくれている

「ミソノ……お母さんみたい……」

 うみー……

 シャリーの 目は閉じ 眠る

「うん……」

 しかし……ミソノの目は この時 異常に 悲しげだった……

 シャリー は 夢を見た

 深淵の王の 繭の前 倒れる 精鋭隊!

 残るは ミソノ……

 そして彼女は!


 「ごめんねシャリー……」

 ミソノは 部屋を出た

 手に 古代書を持ったまま……


「ミソノ!!」

 シャリーが 跳ね起きた!

「みゃっ!」

 エンドが 転がり落ちる

「駄目……!」

 シャリーが 身震いする

「ミソノ……」

 涙が頬を伝った

 ミソノは古代魔法を……発動する気だ!

 命を!全てをかけて……!

 駄目!

 シャリーは 精鋭隊全ての扉を叩いて招集をかける

「どうした?」

 カイルが 驚いたが シャリーの 涙をみて 悟った様であった

「言う……べきでは……なかったね」

「止めなきゃ!ミソノが!」

 ガタガタと 震える シャリーをライラさんが ギュッと抱いた

「行きましょう!隊長!」

 ハイツが カイルの 目線を すくう

「でもね……今の君では」

「死んでもいい!」

 ミソノだけを行かせる訳には!

「うん!」

 ライラさんが うなづいた

「隊長」

「了解……みんな決意は同じって顔してるね!いいよ!いこう!ただし……勝手には動くな!誰か1人かけても全滅だ!」

 エンドが シャリーの 涙を 抱くようにして シャリーの 頬にキスした

「エンドはシャリーと……ずぅっといる!」

「うん」

 シャリーがようやく クスと 笑った


 隊員全員7名 隊を組んで校長室の前に立つ

「校長……失礼します」

 カイルが ノックする

「どうぞ……」

 声は気丈だが 泣いていたらしかった

「校長 行きます!」

全員が敬礼する

「そう……ですか……もう……」

「はい!ミソノが 飛び出しまして……全員の 大切な 仲間!守りに行きます」

 カイルが 告げた

「わかりました!行ってらっしゃい……誰1人……誰1人欠けないてもどるのですよ!」

 校長は しゃきっと 背をのばすと 誇らしげに 一同を 見た

「ミソノ!戻ったら叱りとばします!」

 頷く校長は 涙を 目に溜めたまま……一同を見送くる

「ライト様にお会いなさい!」

「はい!」

 シャリーは そうっと 校長を視線で抱きしめた

「ありがとうございます!」

 旅立ちの時はあまりにも はやかったが 一同は 古代王ライトの 像を 目指す

「ありがとうございます……」

 ハイツは何度も 一同の 背に言う

「何を言う!もちろん救いに行く!」

 寮監は 力こぶをつくった

「ミソノちゃん可愛いじゃないか!」

「……!」

 おや……ハイツ!思わぬ所に伏兵が!

 そんな事を言っている寮監の 足をテアが 蹴りつけた

「ほら!前見る!」

 こけっ!

 寮監サイは 派手にずっこけた


 結界をぬけると 古代王ライトの像の前まで進む

 そして 剣の柄にはまったアレキサンドライトの宝石に魔力を込めると 祈った

 すると 宝石は 七色に光を放ち地面に大きな魔法陣を描く

 一同は その魔法陣へと乗ると ライト王の間へと転移した

 ライト王は 一同を迎えると その手に イチイの木で作った 赤玉のはまった杖をたくす

 そしていった

「みんなきたね 覚悟は出来ているみたいだね ミソノを追うなら これをもつといい」

 ライト王は ミソノのネックレスと対の 茶水晶のはまった もう1つの ネックレスをたくす

 茶水晶には ミソノの黒水晶に彫られていたのと対の ルーンが彫られてある

「はい」

 カイルは両手で恭しくいただいた

 そして一礼

 一同は頭を垂れる

「このまま 神殿へ君たちを送ろう」

 ライト王が笑った

「はい」

 カイルは敬礼する

 ブンっ……

 虹色の 魔法陣が再び滲み 一同を包み込んだ

 そして 虹色の 消える瞬間に一同は 壮麗な神殿へと辿り着く

「ついに辿り着きましたね隊長!」

 ライラが鼓舞するように言った

「ああ」

 カイルが頷く

「ミソノ……」

 シャリーは不安気に 目を泳がせる

「シャリー……きっと大丈夫!」

 エンドはシャリーの髪を引くとにっこりわらった

「うん」

 一同は神殿の門をくぐる

 そして

 あの魔法の台座の前へとついた

 そして

ミソノのネックレスをはめたはずの窪みに今回はそれと対のネックレスを填める

 カチッ

 ごっ……

 台座は一同を乗せたままブブンと浮かび上がった

 そして 深淵の穴へと回転しながら降りて行く……

 台座は深淵の穴の底へと着地する

 一同は静かに下りた

 そして

 ハイツは 己のイチイの杖に灯りを呼んだ

「1寸先は真っ暗ね」

テアが かなり警戒する

「はい」

 ハイツが テアの語尾を拾った

「ちょっと怖い………」

 ハラは かなり 不安気に眉を寄せる

「大丈夫だ!皆!」

 カイルは 皆を安心させようと声を張った

「はいっ!」

 テアが応じる

「ミソノ」

 ハイツの不安そうな呟きがライラの耳に忍んだ

「ハイツ……」

 ライラが優しくハイツの頭をポンと叩く

「きっと守るから……」

「………………ぐす」

 ハイツの鼻が鳴る

「ハイツ!」

 シャリーがハイツの尻を叩いた

「もう!シャキッとして!それじゃあ……ミソノに笑われる」

「う……うん」

 涙目ハイツ しっかと 頷く

そして 一同は 広間へと歩を進めた


 「坊や達……」

「……!」

 一同はぎくりと歩を止める

 その広く深い闇の広間には気配を消した あの……ランドルがいた!


 「ランドル!」

 カイルが レイピアを抜く……そして 身構えた

 ハイツも剣を鞘から払うと ぎりと握り込む

 シャリーはエンドに結界を頼むと ブローチからオズルをよんだ

 そして各々が左右に展開する

 ランドルは 懐から 銀の笛を出すと 口に咥えた

 そして 音のない 音色で 巨大な 鬼を呼ぶ……

 鬼は 黒鉄の棍棒を持ち その肌は 鋼鉄のような 灰である……

「行け!」

 ランドルが 深い声で 鬼に命じた

「オズル!」

 シャリーが 命じるままに オズルは 鬼の棍棒を尾で弾いた……

 そして オズルは その強靭な牙を 鬼の 腕に見舞う

 しかし 歯がたたない

「フローズン!」

 ライラの 弾力のある声が 呪を唱えた

 バジュン!

 痛い程に 尖った 絶対零度の矢は 鬼の 胸板すら貫けない!

「サラマンダー!」

 テアが使い魔を呼んだ

 灼熱の トカゲは しゅるんと テアの 手にまつわる

 そして ボゥ…… と 激しい 火焔の渦を 吐く……!

 だがしかし サラマンダーの火焔ですら

 ランドルの魔物である 鬼の肌を 焼く事は出来ない!

 がどん!

 サイの 使い魔 ドリアードは 強靭な 根をもって

 鬼の足を封じた

 が……鬼の足の力は 物凄く その根ですら 踏み 千切る

 鬼の 凶悪な 拳が シャリー 目掛けて 打ち据える

 ばうん!

 その 拳は エンドの結界で 阻まれた

 しかし バチっ!

 エンドは その 衝撃で 弾かれる

 そのままの 勢いで エンドは 床に叩かれた

「エンド!」

 シャリーが 叫ぶ

 エンドの 羽は 傷ついてしまい さすがに 痛々しい……

「みー!」

 エンドが か細く 泣いた

「どうしよう!」

 シャリーは エンドを 抱き上げると そうっと 抱きしめた

そして 心の底から祈る

 かっ!

 ハイツの 剣が その祈りに 答える

 そしてシャリーの 手に湧いた

 カイルの 腕に巻かれた ライト王の ネックレスは その 祈りに 答えるようにして 姿を変える

 茶水晶が 剣の窪みに ガチリと はまった

 そして シャリーの ブローチが 最後に剣の窪みに 身を納める

 ガカッ!

 神々しい 輝きを 放つ その 剣は 凄まじい 神聖力を もって 刃に ついっと……シャリーの 涙の 露を 宿した

 その 露は 刃を 滑りおり…… 柄を滑って 茶水晶を 滑り エンドの 上に ポツンと 落ちた

 パァッ……

 煌めく 輝きを 放って エンドの 羽が ふわりと 癒えていく……

「シャリー!」

 エンドの 可愛いらしい 声が 愛おしい気に シャリーを呼んだ

「エンド!」

 シャリーは その涙顔に エンドを 抱きしめる

「えへへ」

 エンドは 嬉し気に 笑い ながら

 シャリーの 涙を 浴びた

 もはやもみくちゃである

「シャリー!くすぐったい!」

 エンドが 笑った

「ごめん」

 詫びると シャリーは 手を放す

 エンドが舞いあがる

 そして シャリーは グッと 剣を構えた

 そして 上段に 振りかぶる

そして ガウッと 空を 薙いだ

 凄まじい神聖力の 真空の 刃が 空を 滑る

 そして 鬼の 胸から腹に かけてを バクッと 裂いた


 傷口から 血が噴き出す

 カイルが ウンディーネをよんで アイススピアに変化させた

 そのスピアは 鋭く 気配すらも裂くようで 空気中の 水分を 絶対零度の 嵐へと変化させる!

「来よ!氷の帝王!」

 カイルの右に 姿をみただけで 凍るような 妖艶な王があらわれた

 彼の呼吸は まわりを 凍りつかせ

 空気の水分全てを 針の矢と化す

 その 空間ですら裂くような白い手に

 氷の帝王は スピアをにぎった

「アイスストーム……」

 声の音が 空間を振動させる

 氷の帝王の 突きが 放たれた時

 はげしい 氷の礫が 鬼の 全身を打ちのめす

 ぎぁあああ!

 悲鳴なのか 回転するストトームの 叫びなのか

  そのまま 鬼のからだは はじけとぶ

 ランドルは がくと 膝をついた

「観念しなさい!」

 ライラが 使い魔を武具に進化させる

「ランドル!逮捕します」

と……

シャリーが 1歩進んだとき 強大な魔力の弾丸が シャリーを 目掛けてとんだ

「……!」

 ランドルが その胸に シャリーを 抱え込む

「ら……んどる!」

 言う間も無く

 悪意の力は ランドルの関節を 真逆に捻じる

 ボギュ……ポグッ

「が……っ」

 ランドルの 口から血が噴いた

 そして

 身体中の 関節を 真逆に 回転させた ランドルは

 どざりと 床に落ちた

「ランドルさん!」

 シャリーが ランドルを 助け起こす

「よぉ……おじよ……うちゃ」

 話そうとして

 血を噴いた

「はなさなくていい!」

「隊長!」

 シャリーが目をあげる

 カイルが ウンディーネの 癒しを 発動させてランドルを 癒しの繭で覆った

「つよ……くなったじゃないか」

 ランドルは 更に口を開く

「神剣の 主とはね!」

 少し楽になったのか ランドルが 笑った

「最初の時に学校吹っ飛ばせる魔力はギュンターから貰ってた でもさ……シャリーお前が成長するま……」

 がっ!

ランドルの 胸を

 魔力の槍が貫いた

 ごぼ……

ランドルは 血を溢れさせると 事切れる

「いやあああ!」

 シャリーが叫ぶ シャリーは ランドルを抱きしめた


 第7章 真実

 そして 暗闇の奥を グイッとみわたす

 そこは生命の活動ですら 無理なそうな 場所

 サイとハイツの ドリアードがいなければ

 長くはいられまい

 赤玉の イチイの杖を ハラが振るった

「ライト!」

 その呪を となえると 赤玉が 真空に輝やく

 赤玉は まるで命あるかのようにランタンとなり

 ざあっと 闇をなでた

 その先に 黒い鎧の 偉丈夫 ギュンターが いた

「小賢しい!ちび共のぶんさいで」

  ギュンターが ドッと地面に拳を打ち込む

 すると 魔物の群れがあらわれた

 よたよたた

 それは歩く死体であった

「眠りすらも奪うの!」

 ハイツのドリアードが 燐光を放つ

ハイツの 腕に 美しい剣があらわれた

「ハイツお願い!アンデットなの!ねむらせてあげて」

テアの 腕のサラマンダーが 炎の爪へと

姿を転じる

「テア」

 了解

 彼女は跳んだ そして

 アンデッド2体を 蹴り倒し ギュンターの 背後へと

 歩をつめ……そして その喉に 爪をくいこませた

 しかし

 それは?

いきなりランドルに 転じられて

「ランドル」

 と唇をかんだ


「おろかものが……」

 ギュンターは テアの みぞおちに 肘を見舞う

「ぐばっ」

 テアは 胃液を まきながら 吹き飛ばされる

「テア!」

 カイルが あわや石壁に激突と いうところでだきとめた

「すみませ……ん」

「詫びるなテア」

 カイルがテアに ヒールをかける

「お前たちは……!だから甘いというのだよ!」

 ギュンターが 鼻で笑った

「ランドルに里心を つけたのは……!おまえたちか?

 滅ぼして来いと言ったはずなのにな!」

「ほらくれてやろう……ランドルの たましいだ」

 キラリと光る 水晶が シャリーの前にころがった

 水晶から 映像が 広がる

「どうして滅ぼさなかった?ランドル」

 ギュンターが 黒い雷をよぶ

「お前なら一撃で あの学校諸共 羽虫共をほろぼせたはず 」

「闇のオーブは戻した」

 ランドルの声

 鍵を破壊していないな?

 ランドルが ぴくりと 反応する

「あの 小娘だよ!」

 八つ裂きに!

 記憶に みいっていた シャリーの 眼前に ぎょろりと

 ギュンターの顔がせまる

 そして ギュンターの 大剣は振り下ろされた

 がうっ!

 シャリーの 体を 潰すのもわけない そんな剣圧

 しかし

 ある結界が シャリーを 守った

古代魔法!

 いけない!

 シャリーが 振り返った

「ミソノ!」

 振り返るとそこに 青い顔で 魔法を 放つミソノが いる

「ミソノ」


 シャリーが 駆け出そうとした

「駄目!出ちゃ駄目シャリー」

 禍々しい 闇の魔力が 結界の まわりを 侵食し始めている

「ほう……古代語……」

 ギュンターが ミソノに 顔を向けた

「中々やる……名を聴いておこう?」

「ミ……」

 名乗ってはなりません!

 校長!

 皆が 振り返った

「古代語の詠唱の際にみだりに名乗ってはなりません!」

 ランドル……

 校長の 目が倒れた 息子を 捉える

「どうして」

 カイルが 聴いた

 これが届いたのです

 校長か 懐から 白銀に輝くオーブを取り出した

「通信球」

 ライラがこわばった

「馬鹿息子……!いえ……ごめんなさいねランドル」

 校長が シャリーに 近寄る

 しかし闇の魔力が 校長の 身を侵食していく

「……」

 ミソノの詠唱に 校長の詠唱が 重なった

「ソウェイルの名によって来よ!ウルズ」

 ずし……

 神聖な力を もった雄牛が ギュンターを 角で突く

 ガシャ

 鎧が ひゃげ

「ぐぅっ!」

 と……声が漏れた

「ハガラズの 剣いでよ!」

 校長が 天空より 巨大な剣を呼ぶ

「イサの源よりいずる 神 氷結!」

 ミソノが 詠唱した

 ガキ……っ

 ギュンターは反撃することも出来ず 氷の中に眠った

「イングズの名のもとにハガラズ」

 唱えると途中てミソノが倒れる

「ミソノ!」

 シャリーが 駆け寄った

「大丈夫!生きてますよ」

 言った校長の 口から朱が散る

「吐血!」

 まさか校長!

カイルが 駆け寄った

「来ないで!カイル」

 私は この馬鹿息子と 共に逝きます

 校長が ランドルを 抱き起こす

「馬鹿な子」

 涙にまみれた 頬を ランドルに 擦り寄せる

「どうか……どうか許して……愛していると言わせて」

 ……母さん

 通信球が 輝いている

 ……こうなるのではないかと思ってたよ……

 頑固者の母さん……

 ランドルの 笑顔が再生される

 でも!

母さんは生きるんだよ

 依代 は僕だけでいい!

生きるんだ

通信球が 千々に散った

「僕でいい……」

 ランドルの 体から 闇のオーブが転がり出る

「封印してしまって」

 優しいランドルの 笑顔が 皆の心を打った

「ランドル……」

 校長の 柔らかい唇が ランドルの額 頬 唇に落ちる

 わかりましたよ……

 優しい声 母の呼びかけだった

「ありがとう……ランドル」

 校長は 闇のオーブを 拾うと カイルに 行きましょう……と 強く微笑んだ

「校長!」

 シャリーの 呼びかけに 校長が 振り返る

 通信球の 散った辺りに

 魂のランドルが 横たわっていた

 ……良くぞ……良くぞ……

 マッハの 女神である

「見せていただきましたよ!みんな」

 マッハは 校長から 闇のオーブを 受け取ると

 ランドルの 背に美しい手を触れた

「さあ……目覚めなさい……待っている人がいますよ」

 その声に

 ランドルの 魂は 肉体へと帰る

「もう苦しまなくても良いのです」

 全員の傷が癒えた

 さあ!

 ライトが 待っています

 マッハは にっこり笑うと

 闇のオーブと 共に消えた

「う……」

 ランドルが 身動ぎする

「ランドル!」

 校長が 支え起こす

「母さん……」

 ランドルが ふふっと 笑った

 泣き虫だなあ……

 あら

 貴方の泣き顔だって

 虫歯を抜いた時から変わってないわ!

 優しい後ろ姿

 シャリーは くずっと 鼻をすすりあげた

 と……

 バキ……

 ギュンターを 封じた氷が 砕け始める

シャリー!

 剣で ギュンターに とどめを!

「はい!」

 シャリーの 念がのった攻撃が ギュンターの 心臓に 突き刺さる

「ぐああっ」

 ギュンターが絶叫を 上げた

そして もろもろと 崩れていく

 骸骨になっても その姿自体とどめない

「怨念の塊だったのさ」

 ランドルが シャリーの 頭を撫でた

「よくやった!昇格ものだな!カイル」

 バチンとウインクするランドルに カイルは苦笑した

「お手柔らかにお願いしますよ教官!」

 カイルの敬礼

 皆も倣った


 エピローグ そして 3人は?

 

 一同が 学校へもどると 学校内は大騒ぎであった

「ライト様が……ライト様が」

 きゃー

 黄色い声が湧き上がっている

 そして 金の髪の 長身

 たくましいその人は 古代王ライト

 その御方である

「お戻りに……?」

 校長が 呟く

「永久の眠りにつく前にね……皆に会っておこうかと!可愛い私の子供たち!よく顔を見せておくれ……

 良く!良く戦ってくれたね」

 ライト王は ミソノの 寝顔を 見て

「勇気を 体現した……立派だったよ」

 くすと ミソノの 鼻を擽る

「そうそう……君達 精鋭隊に 頼みがあるんだ 古代王

 ライトの 騎士団に 名を記させて欲しい」

「まあ……」

 なんて

 なんて名誉な!

 頑張った使い魔の 諸君!君たちもだよ

 ライト王は ニッコリと笑う

 聖都に 来る際には 神殿の壁画を眺めておくれ……

「ライト王!あなた様は?」

 どうしてお隠れあそばしたのか?

 皆の聞きたいことであった

「さあ……お祝いだよ!」

 そう言って ライト王は 雲間に 消えた

 ゴーン……ゴーン

学校の鐘が鳴る

 3人が聖なる都を 訪ねるのは別の話

 今日はここまで……

 ね……どうだった?

 お休み可愛い子ちゃん達

 いい夢みるんですよ!

ママより

 

 

蒼月のエレメント聖都編 そして新章へ

 


 

第1章 聖なる都


「んーーーーーーーっ!」

 シャリーは ベッドの上でのびをした

 ミソノも パッチリと目を開く

 そして顔を見合わせた直後

 カンカンカンと 朝練の 招集

「こらー二人共」

 テアが部屋の扉を 叩き開ける時には

 支度が終わっていた

「あら……ご立派!」

 テアが 毒気を 抜かれたように 目を瞬く

「やってくれるじゃない」

 ハラも ちょこんとのぞくと にっこり笑った

「やられたねーテア?」

「ま……まぁね」

 テアは頭をかく

「さてと……今日の朝練は オートマタの 撃退!ハイツと あなた達3人でやってもらうわ」


 エンドはまだ ねむくて ふよふよと飛ぶ

 ウンディーネはミソノの肩にのると エンドに水球を

 投げた

 ぴちゃん

「みゃ!」

 起きなさい!エンド!

ウンディーネは 怒ってるのではない ふざけているらしかった

 お顔を水びたしに しながら エンドは シャリーの 肩にのる

「ほぉら!用務員さんのクッキーですよー」

 テアが 紙袋を ガサガサと振ってみせた

「みゃー!!」

 エンドは パッチリ目を見開く

「クッキー!」

 袋越しでも 美味しそうな匂いが漂う

「たべる!」

 エンドの取り扱い説明書

用務員さんのクッキーもしくは ケーキでつりましょう

 ペッタン

校長が 特Aくれそうだ

「おわってからね?」

 ハラがにっこりわらう

 ぷーっ

 エンド 頬を膨らませるが 俄然やる気!

「ぜ〜ったい食べるもん」

 ハイツも寝ぼけまなこで メガネをかけた

「おはよ!」

 シャリーに いわれて

「なーんでシャリーは朝っぱらから元気なんだよー」

 と項垂れる

「おはよう!」

校庭にでると カイルが オートマタを なぎ倒したところであった

 しかも一撃で

「………………」

 テアは頭をかかえた

「隊長!これからオートマタ使うんですから 壊さないで下さいよ」

 みると魔法陣が アイスストームで ベコベコだ

「あらら」

 副隊長のライラが 笑う

「手加減してくださいっていったのに……これじゃドワーフさんに 修理してもらわないと」

 カシャン……

 オートマタの 腕の装甲が落ちた

「それじゃあ3人で僕を攻撃するといい」

 ランドル教官の声に みなが 振り返る

 カイル手加減しないのは相変わらずだね

 にかっ……ランドルに笑いかけられて

 カイルが 頭をかいた

「さあ!みんなおいで」


「はいっ!」

「僕は手加減しないよ!潰す気でおいで!」

 ランドルが ファイヤーボールを 放つ

「あちち」

 ハイツが 髪の端を 焦がされた

「ドリアード!ウィップ!」

 ドリアードの 根がムチになって ランドルの 頬をかすめる

「いいね!」

 しかし ランドル 炎帝をよんで 3人に攻撃を仕掛ける

 炎帝の 腕から 爆炎があがる

「エンド!結界」

「みゃ!」

 間に合わない

「ひゃあ!」

 シャリーが 尻もちをついた

「ハガラズ」

 ミソノが ルーンを 唱える

「ミソノ」

 依代が無いのに?

 シャリーが慌てた

「大丈夫!」

 ミソノが シャラと ペンダントを みせる

 炎帝の炎は ハガラズにかき消された

「たあっ」

 ハイツの剣

 それもランドルの 腕をかすめるのみ

「うん!いいね」

 シャリーは 少し置いてけぼりを食らったような思いがした

「エンド真空」

 唱える間もなく ランドルの攻撃

「シャリー立てる?」

 ミソノが結界を はった

 なんだろうかシャリーはチクリと心が痛んだ

「う……うん」

 シャリー!オズル!

 ハイツは ランドルと 剣を交えている

「シャリー!」

「オズル!」

 シャリーが 叫ぶ

 しかしブローチが 反応しない!

「……!」

選ばれなかった?

「エンド カッター」

 シャリーがエンドを見ると 凄く悲しそうだ

「シャリー!」

 シャリーは愕然とし

 背中が震えた

「魔法が……」

「シャ……」

 ミソノがテイワズで 空の神ティールの 雷を

 ランドルに落とした

「シャリー!」

 ハイツが呼ぶ

「シャリー」

 ミソノが呼ぶ

「甘ったれるな」

 ランドルが たたみかけようとして

 カイルに止められた

 シャリーは ボロボロと涙をこぼす

 こんなことって?

 使い魔と心が通じ合わない!

「どうしよう……」

「どうやら 脱落者がいるようだ」

 ランドルが きつく言うと剣を おさめた

「なんで?発動しないの!エンドひどいよ」

 シャリーが ごねた

「君は魔法に依存しすぎなんだよシャリー」

「………………………………」

シャリーは 顔を膝に埋める

「エンドは 悪くない!シャリー!使い魔に依存しすぎだ!このままでは 使い魔が 命を落とす」

 ランドルが ごねているシャリーの頭をポンと 叩いた

「シャリー」

 カイルが 手を伸ばす

「すまない精鋭隊脱落だ」

 隊服から バッジを 剥奪される

「そんな!」

 ハイツが カイルにくってかかる

「そんな!魔法力が 安定しなくなったと言って剥奪なんて……!」

「この調子では 精鋭隊の誰かが命を落としかねない」

 甘やかすわけにはいかない!


「だったら僕も脱隊します」

 ハイツ半泣きだ

「私もです」

 ミソノが 1歩 歩を進める

シャリーが わなわなと震えた

「シャリー……君はこれでいいのかい?皆を巻き込んで」

 ランドルの 冷たい物言いに ハイツが

「教官」

 と くってかかる

「甘いんだよ!君らは」

 ランドルの 言葉に ミソノが ぶんぶんと首を振った

「許せません!私シャリーといたいです」

「そうかわかった 1人の落ちこぼれを隊におくのと2人が抜けるのでは 置いておく方がいいな!カイル!」

 隊長が 隊員証をつけ直そうと シャリーに 触れた瞬間!

 シャリーの手が払い除けた

「シャリー……」

 ハイツが シャリーの肩を抱く

「大丈夫だ……シャリー」

 一緒にいよう

 ミソノが カイルの手から隊員証を 取り

 そうっと

 シャリーに つけようとする

「いいの……!2人とも!いいの!私が抜けます!皆の足を 引っ張りたくない!」

 エンドは 近づくか 離れるか考えあぐねているうちに 涙が ポロポロと溢れてきた

……おいでエンド……

 シャリーが エンドを呼ぶ

 しかしエンドは ふいっと 離れた

 そしてランドルの 腕におさまってしまう

「そ……そんな……」

「やはりみはなされたね!」

 ランドルの追撃にライラが 激しい痛みを堪える顔をした

 カイルも 悲しげに俯く

「シャリー……」

 ハイツが 隊員証を自ら外す

ミソノも それに習った

「僕らも抜けます!最低です!教官!隊長まで!寄って集って……大人のやることって!こうなんですか?」

 ハイツが 泣きじゃくるシャリーの頭を抱く

「ごめんねぇ……」

 シャリーは 泣くしか無かった

「ごめんねぇ……2人とも……エンドぉ……」

 エンドが ひどく切なくうつむいた

「3人で仲良く 聖都にでも行くがいい!騎士の名だけは剥奪しない!眺めて名誉だけでも味わうのだね……」

 ランドルの ひどすぎる 物言いにエンドが 身を捩った

 そして真空波をランドルに見舞う

 エンドは 泣きながら飛び去った

「おやおや……」

 カイルが 振り向きざまに ランドルを 睨む

 ……ちょっとやりすぎでは……耳打ちする

「いい……」

 ランドルは ひとつうなづいた

「我々は学校自体の命を 背負う身!あまえなら いらない!」

 吐き捨てられた言葉にシャリーの肩がびくりと 震える

「教官……」

 黙って見ていた スパルタのテアでさえも 苦情を 申し出た

「君らも抜けるか?いいんだぞ」

だっ!

 シャリーが 駆け出す

 もうこの場所にはいられなかった

「サイ……後で3人の荷物を……」

 バシッ

 ランドルの頬が鳴る

「隊長……!」

 カイルである

「そんなに強くなさりたいなら……隊長の座お譲りします!」

 そう言いおくと 3人を追った

「おやおや……嫌われたね」

 ライラが 視線を捨てる

「すみません……不甲斐なくて」

 そうしか言えなかった


 シャリーは ぺったりと 石畳に へたり込むと 膝を抱えて泣く

「エンドぉ」

 つらいよぉ……

 そのシャリーの肩を ふわり……と 触る何者か?

 シャリーは 涙と鼻水で ぐじゅぐじゅになった顔をはね上げた

「エンド?」

 否 そこにいたのは ハイツのドリアード

 シャリーが ぱたりと涙を落とした

「シャリー……」

 泣かないで……

 あやす様にドリアードが 囁く

「シャリー……」

 ハイツ達が追いついた

「泣くなよ」

 ハイツが シャリーの髪を撫でる

「だってぇ」

 この場合……泣くしか無かった

  「うん……シャリー……うん!」

 ミソノが 駆け寄る

 シャリーを 抱きしめようとして

 はたとカイルと目があった

 いかな隊長とはいえ……この瞬間……敵に見える

「な……なんですか?」

 ミソノがうってでる

「すまない……なにもできなかった」

 カイルは 心底 嘆くように言ってシャリーの頭を撫でた

「許してくれるかい?」

 カイルにしては 弱々しい

 弱者の 謝罪

「シャリー」

 シャリーは 顔を上げると涙溢れる瞳で カイルを みた

「はい……大丈夫です……」

 いや!決して大丈夫では無いだろう

 が……しかし

 もう誰も巻き込みたくはなかった

「聖都に行こう」

 カイルが うめく

 ハイツがきっと カイルを睨んだ

「隊長!貴方まで騎士の碑を見に行けというのですか?」

「いや…違うよハイツ 聖都ベルカナならきっと……シャリーの失った力を戻せる何かがあるはずなんだ」

 それにもう……

「それにもう隊長では無いよランドルに譲った……君たちと行こう」

 優しくあくまでも優しく

 カイルが シャリーに言った

「でもでも……また……」

 大丈夫だ!

 カイルが 笑う

 3人で行こう……

「私も行きます」

 ミソノが うなづいた

「うん…そうだね!いこうか?」

「は……はい」

 シャリーは 鼻を啜り上げて 目を拭った

「シャリーなら……そういうと思ったんだ」

 カイルの 笑顔が ハイツの目に痛い

 男っていうのは……強さだけじゃないのだな……そう思う

「行こうシャリー」

 ミソノが シャリーを 立ち上がらせる

 そんな光景を エンド は 木の間からみていた

 涙をいっぱいに 溜めて

「シャリー」

 囁く声を風がさらった

 胸が痛いの エンドが ぎゅと 右手を胸で握る

「大好きなのに……どうしよう……」

 ポロンポロンと 涙が溢れる

 シャリー

 それを 隣の木の枝からムクドリだけが見ていた

「さあ行けるかな?」

 カイルに 背をさすられてシャリーはコクと頷く

「はい隊長」

 クス

 カイルが 微笑む

「シャリー!もう隊長じゃないんだよ?カイルでいい」

「はい……た……カイルさん」

「はは……」

 カイルが頭をかいた

「君らは本当に厄介だ!目が離せない 僕は君達の味方だよ!味方って名乗っていいかい?」

 も……もちろんっ!

 シャリーが こくこくこく と 頷く

 お願いします

 ぴょこたんと 頭を下げて カイルの 手を取る

「じゃ……行こうか?校長には ライラが言ってくれる……ライラも味方だよ」

 柔らかい 青い瞳が シャリーの涙腺を更にゆるめた

「泣かない……ね」

 ミソノの ウンディーネが シャリーの 頬を抱く

「ね……行こうね」

 3人の優しさに包まれて

 シャリーは グッと顔を上げた


 第2章 旅立ち


 4人は そのまま 旅に出ることにした

 保存食は なんとテアが 用意してくれていて

 シャリーを 激励してくれた

「見返すのよ!シャリー!あんなのに負けちゃダメ!」

 仮にも教官を あんなの呼ばわりも無いものだがシャリーには非常に心強く最高の 後押しである

「ベルカナまでは2日かな?転移できたらいいんだけどね……歩いて行くのよ 街道を 真っ直ぐだからね」

「テア 僕をわすれてないかい?転移なら使える」

「た……隊長もいくのですか?」

 テアが狼狽える

「そのつもりだ」

 なら平気ね

 テアが 自分のお腹を ペンと 叩いた

「お腹いっぱいになって寝ないようにするのよ!」

「君じゃないんだから……」

「隊長!」

 2人の漫才も この辺で 一同は 円を組んだ

 シュッ

 カイルの 胸元の 宝石が 輝いたと見えると 一同は 空の上にいた

 そして グングンと 地表が近づいて来たかと思うと

 ベルカナの 門の下におりる

「ここまでは転移で来られるんだけどね ベルカナは結界都市だから」

 やれやれと カイルが頭をかく

 どんな転移のベテランでも ここからは歩き

「いいかい?」

 他の3人を 順々に見て カイルが 言った

「はい!」

 我先にとシャリーが 頷く

「元気になって良かった」

 ミソノが 安堵する

「じゃあ行こうか」

 3人は カイルを追う

「この門は転移ゲートだ」

 カイルが 柱に触れた

 しかし僕では作動できない 勘弁してくれ

「大丈夫です!カイルさん」

 ハイツが 元気に返事をする

「ね……!」

 女性陣2人と使い魔を 振り返る

「歩きます」

 ここは市民証がないと稼働しない仕組みなのさ……ちょーっと厄介だね

 苦笑交じりのカイル

 カイルが 居るだけで安堵する

 えへへ

 シャリーが 頭をかいた

「第1関門はここ」

 古代王に見込まれたものしかくぐれない石像の門

「でも君達なら平気だ!ライト様から承認の証を貰ってるだろう」

 ゴゴン……

 動くかにみえた 石像が ピタリとおさまる

 行けそうだ

 一同はそこを突破して ベルカナ中央にあるという 古代王の 神殿を 目指した

「すごい!真っ白な街並みですね」

 ミソノが 手を打つ

「うん大理石なんだよ……凄いだろう」

 正しく豪華絢爛

 シャリーが 目を瞬いた

 そして

 少し距離を置いて エンドが 四方を見渡しながらついてきている

 シャリーと離れるのが不安でもあり……拒絶されるのも また怖かった

「シャリー……」

 心細いのか 細い肩が揺れる

「ごめんね……ごめんね」

 繰り返すうち また涙が 伝った

「大好き……シャリー」

 あの時ずぅっといっしょと 誓ったのに 離れたのはエンドからである

 罵られるのは覚悟で シャリーに詫びたいが これがまた怖いのだ

「みゃ……」

 不安そうに 目を泳がせると 目をこすった

「う……えーん」

 泣きたくなって 小さく嗚咽する

 と……シャリーが 気配を感じたのか振り返った

「みゃ!」

 エンドが ある邸宅の ベルに 隠れる

「……………………?」

 幸いにも見つからなかったものの 不安でいっぱい

 エンドは ため息を落とした

 そうして陽は天頂に登る


 一行は 大理石の ベンチに腰掛けると 保存食を 頬張る

 お尻が 石の上なのに ほんわりと あたたかい

 でも硬い石の上 ちょっと痛かった

 保存食は チョコバーで ナッツが 入っている

 チョコを焼いたもので 溶けづらい

 シャリーは はぐっと 噛み付いた

 甘くて 幸せ!

 エンドがいたら 喜ぶのに……と ちょこっと 心が塞いだ

「シャリー……考えてること当てようか?エンドだろう?」

 カイルが くしゃっと シャリーを かいぐった

「はい……」

 足元の小石を蹴っ飛ばすシャリー

「食べさせてあげたい!美味しいのに」

「うん」

 カイルが 頷く

「あとね……これもある」

 用務員さんの バタークッキー!

 ハイツが 狂喜した

「わーい」

 こら!

 君にじゃない!

「出ておいでエンド!」

 カイルが 大理石の 家の柱に隠れているエンドを 呼んだ

「え……」

 シャリーが バッと立ち上がる

 そして 柱へと駆けた

「エンド?エンド!エンド!!」

 何度も呼ばわりながら 目に涙を溜めて 覗き込む

 モジ……

 身体を 捩るエンドと目があって シャリーは エンドを 抱きしめた

「エンドぉ……」

 エンドは パタパタと 降ってくる シャリーの 涙を 顔に受けて ポロンと涙をこぼした

「ごめんねシャリー……おこってない?」

「おこらないよぉ……エンドぉ」

 わんわんと 泣き始めるので 通行人が怪訝そう

「ほら……おいでシャリー……エンド!クッキーあげよう」

 カイルが クスクスと笑った

「はぁ……い」

 くすぐったげに エンドが 笑う

「いこ……シャリー?」

 いい子いい子しまくる最愛の相棒に エンドが いった

「うん……うん……だぁい好き!エンド」

 ちゅっ ……シャリーの 唇が エンドのほっぺにふる

「えへへエンドもだよ!シャリー」

 2人は てこてことベンチに腰かけると 涙でぐしゃぐしゃなのに クッキーに かぶりついた

「良かったね……シャリー……エンド」

 ミソノが ウンディーネと 一緒にシャリーと エンドの 肩を抱く

「はい……お茶」

 あまぁいハーブティーが 喉をすべった

「美味しい!美味しい!」

 エンドが ニコニコと 自分の顔より大きいクッキーにかぶりついている

「僕も……」

 ハイツが手を伸ばそうとして ミソノに 手を包まれる

「ハイツ」

 ハイツが 一瞬で 真っ赤になった

「み……ミソノ!」

 耳まで 赤くして ハイツは しどろもどろ

 カイルが ふふとわらった

「青春だね」

 あまりにも的をえていて

 ハイツが 更に真っ赤っか

「もう……」

 ミソノまで赤くなって手を引っ込めた

 ドリアードが んしょと ハイツの ハンカチを 引き出して シャリーに 渡す

「あ……いい大丈夫」

 鼻が凄いから……

 にっこり…… ドリアードが 笑う

「拭こ……可愛いシャリーが 台無しよ」

 ハイツが こくんとうなづいた

 使って……

 まだ赤いハイツに シャリーが 受け取った

「洗って返すね」

 ハイツの ハンカチにはクローバーの 刺繍がある

「素敵」

 エンドが こしこしと 顔を拭いて ハイツに クッキーを ふよふよと 運んだ

「ハイツ……ありがとう」

「エンドいいよ……お食べ」

 ハイツに ちょんと 頭を擽られて

 エンドが ぺこんとお辞儀した

「いつもシャリーをありがとう」

 ちゅ

 エンドがハイツの ほっぺたに キスを する

 バタークッキーの 匂いがした

「可愛いね……エンド……」

 カイルが 目を細める

 みんないい子ばかりだ

 少し目尻を 拭うようにしてカイルが ベンチを 立った

 どうやら泣きそうなのを見られたくなかったらしい

「シャリー……オズルが 放たれなかったのは 多分シャリーが 成長段階に 入ったからだよ」

 背中で カイルは言った

「成長?」

 シャリーは首を傾げる

「うん器が大きくなったのに 魔力が 追いつかないんだ……神官様にお願いしよう」

 なんだか……カイルの その背中が 悲しげで エンドが パタパタと 飛んでいく

「カイル?」

「ん……大丈夫だよ……エンド」

 カイルが 笑顔を エンドに 向ける

「相変わらず勘のいい子だ」

 ちょこん……カイルが エンドを 撫でた

「ちょっと悲しそう」

「うん……ランドルの事さ あんな人ではないはずなんだ」

 カイルが ベンチへ戻る

「食べたら行くよ」

「はぁい!」

 皆が声を揃える

 にっこり……カイルは笑った


 第3章 友の歌


 歩きながら エンドが 鼻歌を歌っている

 それは 古くからの精霊の歌で ミソノが それに習った

 そしてウンディーネと ドリアードも 加わると まるで四重奏のようである

 カイルは 通行人が 全員 くりくり眼で 見ていくので こまった風

 シャリーは スキップしていた

「おいおい皆!街中なんだから!」

 ハイツが 苦笑する

 だぁって!

 エンドが あまりにうれしそうで その後の言葉を飲み込んだ

「ま!いっか」

 ハイツは 四重奏に 身を委ねるように 両手を頭の後ろに回して ニコニコ笑う

 カイルは 道行くみんなに会釈しつつ 最後尾を 歩いた

「こら!神殿だよ」

 ポンと カイルが手を打つ

「綺麗!」

 白大理石に 壮麗な 彫刻を 施した 神殿は シャリーの 笑顔を 更に輝かせた

「見事だろう……ここが古代王の 大神殿!ベルカナ神殿だよ!」

「あ!」

 ふよふよと エンドが騎士の碑に飛びつく

「ほら!ここと ここも」

 ぺったん ぺったんと 触れながら みんなを振り返る

 みーんなの名前!

 ここでエンド 一番の笑顔!

「ねっ!」

 そして筆頭にシャリーがあって エンドが 頬ずりした

「わーい」

 きゃっきゃっとはしゃいで シャリーの 指を引く

 そこで見つけてしまった

 ランドルの名前

 少しシャリーは 凍りつく……

「気にするな……」

 カイルの 手が伸びて シャリーの 肩を軽く寄せる

「大丈夫だ!懲らしめてやろう!君たちを 追い出した事を!」

「そうよ!」

 ドリアードが ガッツポーズ!

 やりましょう!

 ウンディーネも 同意した!

「バシッといこう!」

 ハイツの言葉に

「わーハイツいいこと言う」

 エンドが クルクル回って ポージング

 ハイツは 少し頭をかいた

「へへ……」

 ちょっぴり ミソノの 笑顔を 盗み見て また真っ赤になった

 ……?……

ミソノは 気づいてないようだが これがどうして両思い

 シャリーが にっこり笑って 2人を見守る

「はーやく……笑顔になあれ」

 そっと唱えてみた

「?」

 みんなが シャリーを 見る

「ううん……なんでも」

 シャリーは 肩をすくめると ペロッと舌をだす

 ますます

 どんぐり眼な みんなだが シャリーはカイルの 背に回って神殿へと押す

「お……おいシャリー!どうした?」

 一同は わらわらと 転がり込む

 参拝者が きょとんと こちらを見ていた

「す……すみません」

 咳払いする 大神官様に一同 ぺこんと頭を 垂れる

「諸君……神殿は静かに……」

 重々しく 注意され カイルが 頭をかいた

「あの……」

「おお……少女!此方へ来なさい!」

 と大神官様

「君は良い気を持っている!器も大きい」

 手に聖水を つけて ペタと シャリーの 額をついた

「しかし魔力が 強すぎて覚醒が おくれとるな」

「はい……」

 カイルが 顔をゆるめた

 これなら話が早い

 大神官様が シャリーの 覚醒の上蓋を 外す

 これで良いだろう!精進なさい!

「君の使い魔はエンドだね!君もおいで」

 ちょいちょいと 手招き

 パタパタと エンドは 懐いた風に 飛んでいった

「いい目をしている よしよし!」

 エンドにも 洗礼を さずける

「みんなおいで!いい子達だね」

 みんなに 笑顔で洗礼を さずけると

「カイル君」

 ?

 カイルが はてと 首を傾げた

「名乗りましたか?」

「いやランドル君から聞いていてね きっとカイルなら行きますとね」

 カイルの 目から涙が零れた

「嗚呼」

 シャリーが カイルの 隊服の 袖を引く

「信じてよかったんですね 」

 グスと 鼻をすすった

「あの人は!どこまで狸なんだ!」

 カイルが 泣き笑いする

「なんてひと」

 ミソノも カイルの背を抱いた

「隊長!もうそうお呼びしてもいいんですよね!」

「うん……」

 カイルが 目を拭った

「やれやれ……ランドル君も 相変わらずかね」

 大神官様が 笑う

「あの学校は いい子ばかりだ!育ちなさい!」

「はい!」

 一同は 深々と 頭をさげた

「いい子だ!いい子だ 何より気持ちが良いね」

 大神官様は ポンと 手を打つと 神殿奥の間まで 皆を導く……

 ここからは 私が送ろう!

 転移の 魔法陣が あった

「わぁ!」

 エンドが パタパタと いく

「さあ乗りなさい」

 大神官様が スタッフを てんっとつく

 一同は 眩い光につつまれると 目を瞬いた

 なんと そこは 見慣れた学校の 校門前

 ぺったんと シャリーは 座り込んだ

「凄い!これだけの人数を……いっぺんに!」

 ハイツが 笑う

「さすが大神官様」

 ミソノが 手を胸で組む

「行きましょう!」

 ウンディーネの 声に動こうとした皆だったが……

 カイルの表情が 強ばっている

「隊長?」

 シャリーが カイルを みた

「行くな!アイツだ!ギュンターだ」

 厳しい声音がもれると 一同が凍りつく

「なんで?」

「いるんだ!今!ランドルが 対峙している」

 そんなまさか!

 倒したはずじゃ!

 シャリーが 狼狽えた

「あの人は!これをよんでいたんだ!だから僕らを追い出した」

 カイルが ギリと 歯噛みする

 ダメだ!守る者が多すぎる!

 ランドル!

 カイルは レイピアを抜くと駆け込んだ

「隊長!」

 後を追う 一同だったが!それを阻む様に 飛龍が 現れた

「ちっ……!」

 カイルは 舌打ちすると 戦おうとする!

「オズル!行ってください!ここは任せて!」

 シャリーが 見事 オズルを 放つ

 そして 火炎で 飛龍を焼いた

 しかし 硬い鱗に 阻まれ 火傷すら負わせられない

「エイワズ!」

 ハイツが イチイの杖を 振った

 防御の結界が 皆を幾重にも守る

「テイワズの名において!雷よふれ!」

 ミソノの 澄んだ声が ティールの 雷を 呼ぶ

 がかっ……!

 空を裂いて雷撃が うつ!

「すまない!みんな!」

 カイルが 走り出した

 足よもっと早く!気ばかりが 急く!

「エンド!お願い隊長に 光の魔法!」

「うん」

 エンドが くるっと 回転すると カッと カイルの 足に 魔法をかけた

 ブンっ!

 カイルの足が疾く走る!皆の元へ!ランドルの 元へ!

 それこそ3人の 願いだった


 第4章 決戦


 シャリーが フローズンを 唱え 飛龍の 翼を 射抜く

 ぐぅおお

 くぐもった 悲鳴が 響いた

「よし!翼は封じた!ドリアード!ウィップ」

 ドリアードの 強靭な根が 飛龍の 腹を 刺す

びぃいい……

 飛龍が 翼の皮膜を 裂くようにして氷の 矢を抜いた

 ガシャ……

 フローズンの矢が 石畳に 落ちて その矢を 飛龍の 足が 砕き折った

「結構根性あるわね!」

 ドリアードが 催眠花の 花粉を 風にのせて 飛龍に 見舞う……

 くら……

 いかな 飛龍といえど ドリアードの 催眠花の 誘惑には勝てずふらついた

「よし!」

「テイワズ!」

 どぉ……と 倒れた飛龍の 腹に ティールの 雷が 落ちる

 ばしっ……

 飛龍が 大きく痙攣すると 首を落とした

「ミソノ……ナイス」

 ハイツと ミソノが ハイタッチ……

「ほぅ……」

 シャリーが 息をつく

「オズル 火炎放射!焼き払って」

 シャリーは焦っていた

「ランドルさん……」

 誤解とはいえ……もし……教官に何かあれば永遠に会えなくなる!

 そんなのはいや!

 非情ともとれる 手段で 飛龍を 倒すと シャリーが駈けた

「シャリー……」

 エンドが 慌てる エンドからしたら ランドルも 心配……だけど シャリーが 心配で いてもたってもいられない!

「待てシャリー!」

 ハイツ達が追うが

 ここはシャリー体育会系!すばしっこい

 たったか かけていってしまい 総員慌てた

「シャリーってぱ!」

 シャリーの 背に追いついた時……シャリーと エンドは 愕然と 立ち尽くしていた

 ランドルが 腹部から出血し倒れ

 カイルの 片腕も神経がやられたのか だらりと たれている

 そこに 漆黒の 鎧の ギュンターが いた

「ほほう!逃げないのか小娘!褒めてやろう……」

 シャリーとオズル……そしてエンドに 出来るのはカイル達の 癒しのための 時間稼ぎ……!

 だっ……シャリーが かけた!

「おいで!神剣!」

 シャリーが 呼ぶと ハイツの 剣が 湧き ミソノの 黒水晶が 跳ぶ!

 そして ブローチを 剣が飲み込むと 光を天へと伸ばして 神剣が 放たれた

「ほう……早くなったな!やはりお前が鍵か!」

 ギュンターが だんっと 石畳を 蹴ると 鎧の重さを感じさせぬ 跳躍をうんだ

 そして 大剣が シャリーに 落ちる

 ギリ……

 神剣が 大剣の 腹を噛む

 ギリギリ…………

シャリーが 恐ろしいまでの胆力で堪えぬくと ギュンターが 大剣を 引ざまに 横にはらう

 エイワズ!

 ハイツの 咄嗟の 物理結界が なければ シャリーは 薙ぎ払われていた

「ありがとう!」

「テイワズ!」

 ミソノが ティールを 呼ぶ

 がぉっ!

 爆雷が ギュンターの 鎧を 不気味に 這う

「魔法金属!」

 ミソノが 震えた

 シャリーは エンドに 光の 魔法を かけてもらうと

 上段から 切り込んだ

 しかし その速度にすらギュンターの 視力は 付いてくる

 そして シャリーの 身体を突き刺さんと 大剣を 突き出した

「氷帝!」

 カイルが 両手を 使って魔法陣を 描き 美しい氷帝を 招く

「アイスストーム!」

 どがん!

 魔法金属ですらへこませる その 氷の嵐に ギュンターが叩かれる

「ちぃっ!油断した」

 漆黒の 重力波が ばんっと ひろがり シャリーが 弾かれた

「しゃ……シャリー!」

 ランドルの声!

ここで怯むか!

 シャリーは 踏ん張った

「負けない!」

 たん!

 魔法の靴を はためかせシャリーが 舞う

 ランドルも 跳んでいた

「炎帝加護を!」

 魔法金属をジリと 焼き 溶かしていく

「神剣!」

 シャリーが 強く念じて 鎧の 隙間に 差し入れた その腹に ギュンターの 薙ぎ払いが おそった

「シャリー!」

 ランドルが その脇に庇おうとするが ハイツの 物理結界が 砕かれ その分厚い 剣が シャリーを 薙いだ

 げほっ!

 ある程度の威力は 物理結界が 砕けるさいに吸収されたが 肋が いってしまった

 ぴっ……

 シャリーの 唇から 朱が散る

「シャリー」

 エンドが 弾けた

 眩い輝きが シャリーを 包む

「エンド!」

 テアが 勇気を もらったかのように 笑む

「癒しの 光」

 カイルが圧倒された

「綺麗」

シャリーの 脇に 転移した 傷だらけの ライラをも包み込み 癒しの 光は 輝く

「わ!」

 ハイツが その光におされるように尻もちを ついた

「ハイツ!」

 ミソノの 手が ハイツを 立たせると

 ハイツは エイワズ!と 杖を 振るった

 この場に いた味方全員に 保護をかけると 杖が弾けてしまう ハイツにしても かなりの消耗なのだが エンドの 光に つつまれると みるみる力がみなぎった

「すごいや!」

ハイツが 両手を伸ばしてみる

 まるで自分の身体が別物のように軽い

「この羽虫が!」

 ギュンターが 拳で叩こうと手を伸ばした時 その手を 骨ごと裂いて神剣が 立てられた!

「ぐ……」

 ギュンターが 腕をひく

「私のエンドを!羽虫だなんて言わないで!」

 シャリーの 目が爛々と 輝く!

「やったな!シャリー!」

 ランドルが笑顔を向けた

「覚醒だ!」

 ハガラズ!

 シャリーの 唇が 呪を 紡ぐ

 どんっ!

 アイスストームが そしてサイクロンが 吹き荒れた

 がおん

 ギュンターが 舞いあげられると どがん!と石畳に 叩かれる

 その衝撃 石畳が千々に 砕けるほど

 だし!

 シャリーが 地を踏んだ

「イサ」氷の 嵐が神剣を 包む

 そして ギュンターの 胸に その切先は 吸い込まれた

「ぶっ……」

 鎧すら貫くその刃は ギュンターの 心臓を 切り裂く

「シャリー」

 その途端

 糸が切れたかのようにシャリーが倒れた

とすっ!

 ランドルが 抱きとめると ギュッと抱く

「よく……よく……」

 ランドルの 頬を涙がぬらす

「よく……来てくれた」

「もちろんです 」

 シャリーが 微かに笑うと 気を失う

 エンドも ライラの 手の中で眠っていた

「すんごい嵐だったね」

 テアが ぴょこぴょこと 跳ねる

「もう……テアってば!まるで子供!」

 ハラが テアをつつく

 ……だぁって

 大興奮であった

 無理もない

 アイスストームと サイクロンは上級魔法

 その合体なんて!

ザラ……

ギュンターの 身体が 灰となり 風に舞う

 カイルは その行方を 目で追った

 その 灰はさらに 散り 解けていく

「どうかこのまま……」

 ランドルは祈った

「もう戻るな」

 その言葉が 風を追う

 ライラの手で 揺られて ぐっすり眠る エンドは くす……と 笑った

 …………クッキー…………

 その寝言に 皆がどっと笑った

「もう!この子ったら」

 ライラが 泣き笑いする

「あとで 好きなだけあげるわよ!」

 テアが かるく つっついた

「ふふ……」

 笑うランドルの肩を カイルが 抱く

「おかえり!隊長」

 ランドルが がしっとカイルの 頭を かきこんだ

「よくやってくれたよ!君は」

 満面の 笑顔

 そこに皆の 輪がひろがった

 正に!精鋭隊!再結成の 時である


 エピローグ……魔法学校の花火大会!


 シャリーが 目を覚ますと 心配そうに 覗く エンドの 瞳があった

「大丈夫?どっか痛くない?」

 ぽわ……

 ちっちゃい手に 癒しの 光

「ううん……大丈夫よ!」

ここは 医務室

 どうやら運ばれた様である

「目が覚めたのね」

 ライラが ついていてくれた

「はい……」

「シャリーってば!凄かったわよー」

 テアの手がブンブンと 振られる

「テア!」

 ライラが 諌めると そっとため息

 疲れたわよね!

 シャリーの おでこに 額を コツン

 あれからね!

 精鋭隊 再結成って お祝いするって

 サイが さわいでねー

 テアが止まらない

今夜花火あげましょうって!

 ライラの 笑顔!

 なんか凄いらしいわよ!

 くすっ……

 桃色の唇が 緩んだ

 ね!でられそう?

「行きます!もっちろん!」

 花火大好き!

 ガバ!シャリーが起き上がって エンドが 肩に 降りる

「エンドもー!」

「いこうねー」

 お互い声を揃えて笑われた

「こら!ここは 医務室ですよ!」

 看護師さんにしかられる

「すみません……」

 急に声をひそめて ぷぷぷっと笑う

「貴女たち!」

 雷がひとつ!

 ごめんなさいーっ

 一同まろびでた

「あらまあ」

「景気いい声が聞こえたが?」

 ランドルと 校長が 笑いかける

「……!」

 教官!

「凄いぞシャリー!凄まじかった!」

「ありがとうございます!」

 ピシ 敬礼が 決まる

 エンドも ならって ランドルに 笑われた

「今夜はパーティーだ!」

「羽目を外し過ぎないのよ!ランドル」

 校長が 母の助言

「もちろんですよ!」

 にこ!

 わらって ぱちんと シャリーに ウインク!

「羽目を 外さない!」ピシャといわれて ランドル首を すくめた

「じゃ!シャリー!ランドルを よろしくね?」

「へ?」

 エンドと シャリー きょとん

「あなた達精鋭隊を 抱けて!わが校誉れ高いわ」

 ふわ……

 ドレスを なびかせて 校長が さる

「さぁて監督!ドレスアップなんかどうだい?」

「東洋の ユカタとかいう 衣装を 取り寄せたんだ!」

 そこに カイルが 包みを持ってあらわれた

 看護師さんの 怒鳴り声が 響いてたんだよ

 苦笑する

「ユカタ?」

 ミソノの 故郷の 衣装だってさ

 ハイツが 入ってくる

 可愛いお魚の 涼し気な 布

 美しい 布も 畳まれてある

 これはなんだか?サンジャクとか言うんだって

 ハイツがにっこり

「でね!」

 何か言いたげに手をモジモジ そして 真っ赤になって 喋りだした

 さっきね着て見せてくれてね!

 でね!

 バラみたいに真っかになって言うんだ

 今夜一緒にハイツと 花火みるって!

 精鋭隊の 一同が 唖然

「おいおい?」

 ランドルが 止めた

 それは……

「デートね!」

 テアが 威張る

「何故……テアが威張るの!」

 ハラが くいと 隊服を ひく

「よかったねー!!」

 シャリーがエンドが 一同が さざめいた

 どうやら皆気づいてたらしい!

 2人はいたって分かりやすい!サイが ポンと 胸を 叩く

「ここは!僕が 身を引こう」

 あんたってば!およびじゃないわよ!

 テアが 肘鉄

 ぐえー

 サイがおどけた

「よし!今夜は 羽目を!」

 ランドルが 言いかけて ある視線に 固まる

「ダメです!教官」

 一同に 叱られて やれやれと 肩を落とした

 ……やられましたか

 カイルの 苦笑

「あーあ!」

 天井を 大袈裟に 仰ぎみて

 若返りたいよ!そうなげいたランドルさん

 一同が どっと 笑った

「こら!誰です!医務室前ですよ!」

 また叱られた

 シャリーがペロと 舌をだした

「まったくもう」

 ぷりぷりと戻る看護師さん

 皆が息をひそめて笑いあった

 

 夜


 ポムン!ポムンと 空砲が 上がる

 シャリーは ミソノに ユカタを 着せてもらっていた

「このお魚はね!キンギョって言うのよ!」

 サンジャクとやらで巻かれて シャリーが 袖を眺める

「袖長いのね」

「そうそう!」

 ミソノさん アサガオとか言うお花の ユカタを 纏い 髪をゆっている

「ミソノ!ハイツ大喜びしてたよ!」

「あー!ハイツったら 」

 ちょっとだけ ミソノが 怒ってみせた

 なんだかな

 シャリーが 笑う 姉さんニョウボウだっけ?

「うん!」

 ミソノが 胸を張る

 ハイツに お嫁さんにしてもらうの!

 何たる気の速さ

 シャリーはポカンとした

「ミソノ?」

 ……ん?

 いつから大胆になったのよー!

 ききたかった それを エンドが ひろった

「大胆ねぇ」

 驚嘆するようである

「だって!私の故郷ではね!16歳から結婚出来るの!でもハイツ15歳でしょ!3年待つの!」

「んー」

照れ隠しか 思い切りサンジャクに しめられて ぐぇっと なる

「あ……ごめん」

 すこしゆるめると 苦笑した!

 だってね ハイツかっこよくなったし!

 ミソノさん 褒めだして止まらない

「ミソノ!ほら!待ち合わせの 時間!」

 カランカラン ゲタとか言う履き物 には シャリー苦戦した

「わ!」

 ミソノ

 ととと……と 飛び出して ガツンと衝突!

 相手は ハイツ!

あちゃー!シャリーが目を覆う

「ごめんよ!怪我ない?」

 しかしハイツくん!

 しっかりミソノを ホールドしていた

「おお!」

 周りから 声が上がる

「お熱いこと!」

 テアが よせばいいのにからかうので ばっと ハイツが 手を離す

「あ!ばか!」

カイルが ぽすんと ミソノを 救った

「ハイツー!」

 一同に 叱られて しょげるハイツくん

「大丈夫よ!」

 ミソノが 浴衣の 袖を バッサバッサと ふるった

「ほら!いって!」

「みせつけんな!」

 みんなに 激励され2人は とことこ逃げ出す

「もう!」

 シャリーも ガックリきた

 なんか慣れない ユカタのせいか 非常に疲れる シャリーである

「おや!似合うね」

 カイルが 笑いかけると 一同の 目がシャリーに 向く

「いえ……あの!慣れなくて!」

 エンドも 小ちゃい使い魔用の ジンベエとやらを 着ている

 なんでも これ!手縫いだったりする!

 ウンディーネも ジンベエを着て ミソノを 追って行った

 今頃 2人は手でも握ったかな?

 出口で 待ってたランドルが ヒョイと リンゴアメというお菓子を くれる

「この前の お詫びだ」

 わ!

 綺麗!

 リンゴアメ ミズアメとかいうキャンディに くるまれた 真っ赤なリンゴの キャンディだった

「シャリー」

 いいよ!一緒にかじろ!

 2人は 真っ赤な リンゴに齧り付いた

「うわー」

 美味しーい

 だろ!

 ランドルが 袖まくり

 屋台設営手伝ったらくれたのさ!

 ははは!

 笑ったランドルの背中越し 巨大な花が ばんと 咲く!

「おお!時間か!」

 一同 宿舎を でると 校庭に立つ

 ひゅるひゅる

 ドーン!

今度は ピンクが 花開く

 わーい

夜更かし許された低学年が校庭を駆け回る!

「きゃー」

 女の子が手を伸ばした

  花火の 花びらを掴みたくて ぴょこぴょこ跳ねる

「ほら!つかめないでしよ!」

 シャリーに 声を かけられて女の子がペコと頭を さげる

「先輩!精鋭隊昇進おめでとうございます!」

 暗くてわからないが 声からするに ルナである

ドドーン!

 連続で花を夜空に咲かせると ぱらりと 火花が 煌めいた

「私!先輩に憧れてます!」

 先輩が 男の子だったらなぁ!

 はい?

 シャリーと エンドが 小首を 傾げる

 なんだか 行動まで似てきて ぷッと吹き出す

「ありがとう!ルナ」

 くしゃ!

 柔らかい巻き毛を かきまぜて シャリーが 空を見上げた

 エンドは 花火を眺めながら

「光のお花いーっぱい」

 と 踊っている

 嬉しくてしかたなくて 頬が更に赤い

「きれいねー」

 最低学年の チビさんたちが わらわらと 走ってくる

 こんなにいた?

 それくらいの数だ

「新入生ですって」

 ライラが 背後に 立つ

「あー……」

 シャリーが 笑顔で見送った

 ドドドーン

 連続の 花火に ミソノと ハイツの 後ろ姿が浮かび上がる

 2人はしっかり手をつないでいた

 よかったね!

 シャリーが小さくガッツポーズ

 我がことのように嬉しかった

「離しちゃだめよ!」

 ソッとこころに 焼き付けて シャリーは また空を 見る

 そこへドカンと 巨大な花が開いた

「わーー!」

 辺りから歓声が上がる

「最高!」

 シャリーは目を細めたのだった

 

 ハイツが うっとり空を見る ミソノを 見ていた

「綺麗!」

「君もさ!」

 言ってハイツくん 頭をかく

「もー!うまいなあー!ハイツ!他の子にも言ってるでしょ!」

 ミソノが プクと 頬を ふくらます

「ミソノだけだよ!」

 ぎゅ……ハイツが ミソノの 手を握った

「じゃ……ハイツ!証明してみて!」

 ミソノが ハイツに顔を向けると す……と目を閉じる

「ハイツ」

 淡いピンクの 唇が ハイツを誘う

「じゃ……これで!」

 ハイツは 額に キスをした

 勿論 ミソノが 何をねだったのか知らぬ程 無粋な 訳ではないのだが……

 ここは ミソノを 大事に したくて……額に 口付けしたのである

「もう……!」

 ミソノが 赤くなって ハイツの 胸を 叩く

 そして ミソノは ハイツの ほっぺたに キスをした

「ありがとう……!」

 これでいいのよね!

 ミソノさん

 ニッコリ笑う

「だぁいすき」

 ポンと 頭をハイツに 預けて

「最高ね」

 と 微笑んだ

 はてはて……ミソノさんの野望は叶うのか?

 マッハの 女神のみぞ知る

 次の日の 2人のキス目撃情報が 宿舎内を

 駆け巡ったのは言うまでもない……


 おしまい!

 エンドより!




 蒼月のエレメント新章 聖戦


 

はじめに……


 シャリーと ミソノ ハイツは 進級し 精鋭隊にも 後輩が 入ってきた

 そして校長の 選抜の儀式を 終え カイルの 手始めの 試練を 終えたのが ルナである

 なんと……!

 なんとルナは シャリー達の選抜の 時から 目をつけられていたらしく 余裕でクリアした

 そして

 可愛いらしい笑顔全開で 「先輩ーっ」と はしゃぐ

 なんとも 強者

 エンド お目目まん丸 ただでさえ こぼれそうなのにである

「凄い!ドリアードの エンドだ!」

 ハイツも 仰天!

「えへへ……」

 才能とは恐ろしいもの!

 カイルは 皆に優しく 厳しく 指導し ランドルの 采配の もと 訓練を開始する

 ルナの ドリアードは 精鋭隊に 2人エンドが いるため 便宜上 サナと 名がついた

 エンドとサナは 仲良し

 きゃっきゃしている

「エンドちゃーん」

「サナちゃーん」と 呼び合う仲

 そして!そして!ビッグニュース

 カイルと ライラが 婚約した!

 ババーン!

 もう 学校中でお祝いしようということになり

 おまじないに ライラさん 髪の毛くださいとか 女の子の お願いが 殺到した

 カイルは 頭をかきかき……ライラの 中に母性を 見たと いう

 結局 そっちか?

 ランドルに からかわれ 更に真っ赤なカイル

 そして惚気ける ライラの 瞳の中の 自分が 幸せそうで……とか 後輩に 取られたくなくて とか 宣う

「カイル様ーっ」

 悩める女生徒の 諸君!

 男は結局 母性に 弱い!

 チーン!

 ランドルも 納得!

 ライラはいい女だ

 で 終えた

 サイが 副隊長補佐になり テアが なんとサイに 告白した

 なんだか

 周りは カップルまみれ

 ハイツとミソノの仲の詮索も なりを潜めた頃に 恋愛ニュース

 こればかりは カイル追っかけ サイ追っかけに 分断して 上へ下への 大騒ぎ

「何よぉ!ハイツだって……だって……かっこいいのに」

 騒いで欲しいのかミソノさん

 可愛いい 唇を 突き出した

「仕方ないさミソノ!カイル隊長にはかなわないよ」

 ハイツは謙虚だ

「いや!」

 ブンブン!ミソノ 首をふる

「おーい!最少年カップル君」

 変なあだ名までつけられて ふたりは もう 笑うしかなかった

 なんですか?それ

 ランドルに問うたのは ルナ

「はは……いいだろ?なかなか」

「えーっ!最少年カップルは私ですぅ」

 ルナの爆弾発言!

「あのですね!私シャリー先輩の彼氏になるんです」

 バタッ……エンドが 顔から着地した

「?」

 なんかへんですか?

 ルナー!

 天才ルナ!恋には疎いようである


 第1章 あの夜……


 なんだかんだで 騒がしい学校内……

 シャリーは 恋愛には 興味なく ただ ある夢だけを 見ていた

 それは ひたひたと 近づいてきて そして ある人物の 姿をとる

 ギュンター

 ただの悪夢の 類い……

 そう信じた

 だけど ギュンターの 悪意に 満ちた腕が シャリーの胸を 貫き あるものを 抜き出す

 その幻視に シャリーは 悲鳴を 上げた

「どうしたの」

「闇の オーブ」

「シャリー!」

 エンドが 涙顔で シャリーを 覗く

「闇のオーブが……!」

 バン!

 サイが 飛び込んできた

「シャリー?」

「すいません……シャリー……ひどく怯えてて……」

 ミソノが 背を撫でてくれていた

 シャリーは ガタガタと 震える

「どうしよう……怖いよミソノ……」

 シャリーがシーツを握りしめ 泣き続ける

「怖い夢を……見てたようで……」

 ミソノが説明する

「うん」

 カイルがそっと シャリーの頭を 抱き寄せた

 大丈夫だ

 シャリー……!

 大丈夫だから

 脇にはライラが 居て ミルクの 入ったカップを くれる

「落ち着くかな?シャリーびっくりしたのよね……思い出さなくていいから……いいのよ」

 ライラが そっと シャリーの 額におでこをくれた

 そして

「夢よ……おいで……」

 そう唱えて 悪夢を 吸い取ってくれた……

「シャリー」

 エンドが 癒しの 光を手に宿らせると シャリーの 肩に触れる

 忘れなさい

 ランドルが 微笑む

 ふ…………

 シャリーが パタリと目を閉じた

 眠るといい……

 ランドルが そっと シャリーを横たえる

「ハイツ……マンナズの 結界はれる?」

 ライラが ハイツを 振り返った

「悪夢……あれは 辛いわ……自己防衛の 結界を……」

「 はい……」

「疾く来よ 守り給え……」

 がかっ……

 シャリーの 周りに 結界の 膜が 出来た

「エンド……」

「ここにいる!シャリー心配だもん」

「エンド……これはただの 夢ではないの……」

 ライラが 不安気だ

 もしかしたら 予知……

 有り得るとしたら……

 ライラさん?

 皆が振り返る

「教官……!」

「言わなくていい……奴だろう……!この気配……」

「はい……」

「ギュンター……」

 カイルが 手を握りこんだ

 なんて奴!

 テアが 壁を叩く

 ハラが シーっと 口の前で人差し指を たてた

「寝かせてあげよう」

 一同は そっと 離れた

 ミソノは シャリーの 傍らの ベッドに 座ると そうっと 聖母の子守り歌をハミングする

「おねむり……羊達……お眠り……良い子……」

 そっとハミングして シャリーを 気遣う

「ん……」

 シャリーは 静かに うめくと 寝返りを うつ

 エンドが ちゅっ……と シャリーの 頬に キスを した

「もう……怖い夢見ないようにね」

 おまじない……


 カイルとライラは 後任が選出されるまで 卒業後も 残ると発表された

 が……しかし……それには もう1つの 理由がある

 シャリーの悪夢……

 それが心配だと シャリーと エンド

 サナとルナを のぞく 全ての隊員に 告知された

 皆は 歓迎し

 カイルのライラの欠けた 精鋭隊など ありえないと 笑って迎えた

 やれやれ……

 ランドルが 肩をすくめる

 卒業後に 結婚式の はずなのにな……カイル

 と…… カイルの 肩をもんだ

「ご苦労さん」

 なんだか……いいのか悪いのか!

「もうシャリーの泣き顔は見たくありませんから」

 カイルとライラは異口同音 そう宣言した

「よろしくご指導くださいよ……隊長!僕……隊長クラスになりたいですから!」

 サイの豪語に テアが 腹に パンチを 入れた

「いてっ!この乱暴もん!」

 なんとか言って

 このカップルの じゃれ合いなのである

「こんのバカ!失礼でしょ」

 慎みなさいよ!

 テアが バチっと サイの 額を 弾く

「しゅいません隊長」

「構わないさ……心強いよ!サイ……副隊長補佐!頼らせてもらう……」

 カイルの 笑顔に サイが テアを ちょちょいと つつく

「ほらぁ……みたろ?聞いたろ?テアぁ」

 腑抜けた サイである

「調子のらない!」

 ピシッと 言われて サイはがっくり

 一同が どっと笑った

 シャリーが 眠そうに 部屋を出てくると ライラが そっと シャリーの 瞳を 覗く

「大丈夫?シャリー……?」

 はい……

 いつもの気丈さはどこへやら 気弱に シャリーは頷いた

「いつでもおいで!かわい子ちゃん」

 サイが ガバと シャリーに 抱きついて テアに 蹴飛ばされる

「副隊長補佐のアホ!」

 一同に 後ろ指をさされ むくれたサイである

「今日……一緒にねる?」

 ライラが シャリーの 寝癖を 撫でた

「うふ……カイルさんに叱られたくないですよ?」

 ちょっとシャリーが 笑う

 ライラが 耳まで赤くなる

「こりゃいいや!」

 ランドルが わっははと 笑った


 第2章 夢の続き……


 シャリーは その後 頑張って 訓練をこなし 次々と 点数を あげた……

 でも エンドには それが痛ましくて……ハラハラの連続…

「シャリー……休もう」

 わざと 音を上げてみせた

「エンド……わかった休もう」

 カサカサ……

 なんと……シャリー!

 用務員さんの クッキーの 術を 心得た

「みゃー!」

 エンドちゃん 馬力が 上がる

 真空波を オートマタに お見舞いし 得意満面 チョコクッキーにかじりつく

「エンドったら……」

 シャリーが笑った

「そーそー!シャリーは笑うと 最高なの!このクッキーより!」

「クッキーより?」

 シャリーが 小首を傾げる

「そーなの!」

「本当に?」

「うん!」

 エンドが お口の まわりを クッキーまみれに して ニカと わらった

「怪しいなぁ」

 シャリーが エンドの 頬を つつく

「本当だってば!」

 そう言いながら 2枚目をおねだり

 シャリーが 楽しそうに 声を上げて笑うと カイルが

「おや……いいね!僕ももらおうかな?」

 と……2人を覗いた

「だめぇ」

 エンドが クッキーに すがりつく

「あはは……冗談だよ」

 カイルが 笑う

「かわいいねエンド!」

 ちょこんと……カイルが エンドの 鼻をつついた

「えへへ……あげないの!」

 ハートマークを とばしながら クッキーと シャリーの 指を抱きしめるエンドに 皆が 笑う

「やーい!くいしんぼう」

 サイが エンドを からかった

「いいもーん」

 シャリーには あげる

 シャリーの 口に ふよふよと 運ぶ

「わぁ……ありがとう!」

 シャリーが 頬張ると

「おやまぁ……親子みたいだ」

 ランドルに 笑われた

 ふふ

 なんだかシャリーは 涙をこぼしながら笑えて

 幸せだった


 こうして 夜になる訳だが シャリーは 暮れる毎に 不安で……心が しぼむ

「ミソノ……」

「大丈夫よ!一緒の ベッドで寝よ」

 ミソノが 頼もしく 請け合って そっと シャリーの 手を取った

「ね?」

 エンドも ウンディーネも ぺったりと シャリーに くっつく……

「寝よ?」

「うん!」


 しかし……また あの夢が はじまる

 シャリーの 額に 脂汗が うき うなされはじめた

 そして また!

 闇のオーブ!

「いやぁっ!」

 ガバっ

 跳ね起きて エンドが シャリーに だきついた

「ミソノ……シャリーが!」

 皆が 集まってくる

「また見たのね……」

 ライラが おでこを コツン……

 それすら シャリーは 恐怖で はねのけた

「いや!いや!いや!いやぁ」

 悲鳴が続く

「シャリー……」

 ライラさんが 涙を 浮かべた

「シャリー……ベルカナへいこう」

 カイルが 静かに言う

「大神官様に相談しよう!」

 聞こえる?

 シャリーの 涙の 瞳を 見つめた

「カイル隊長……」

 シャリーが俯く

 今はカイルの 優しい アイスブルーの 瞳ですら怖い

「マンナ……」

 ハイツが 唱えかけて

「子供騙しはやめて!」

 シャリーに 怒鳴られた

「ごめん……ごめん……ハイツ……私」

「いいよ……シャリー」

 ハイツが シャリーの 手をとった

「ベルカナまで……一緒だ……いいだろ?」

 そして小指を 絡める

「私も行く」

 ミソノが シャリーを 抱きしめた

「う……ん……っく!ごめん!ありがとう」

 皆は一緒に朝をむかえると 校長室へ赴く

「ベルカナへ?」

「はい!」

 カイルが 姿勢を 正す

「行かせてくだい!隊長不在でも副隊長と 補佐がいます」

 校長は シャリーを 見て 全て察した様だった

「行ってらっしゃい!」

 優しい笑顔を むけると シャリーに 自分の ペンダントを かけた

「お守りに!」

 そっと 頬を寄せると 小さく

「彼氏が 出来るおまじない」

と 囁いた

「ふ……」

 シャリーの口元が 少し緩んだ

「はい……いってきます!」

 校長に敬礼する

「気をつけてね」

「はい!」

 一同が 敬礼すると 校長が 言った

「転移ゲートは 空けてありますよ!」

「なんと心強い!」

 ランドルが 頭を 下げる

「お行きなさい」

「はい!」


 第3章 旅の先に……


 シャリーは 見るものに 怯え 聞こえるものに怯え カイルの 隊服の 袖を掴みながら転移ゲートを くぐる

「大丈夫だよ行こう」

 シャリーの 背を預かるハイツとミソノ

 そして ベルカナの ゲートへと 転移した

 しかし……そこで 真っ黒な 法衣を 着た男達があらわれ一同に 縛の 術を かけた

「何者!」

 カイルがレイピアを 抜いて シャリーを 庇いこむ

「テイ……ワ……!きゃ」

 背後からも 囲まれミソノが ティール神を 召喚しようと唱えるが その体が とばされる!

「ミソノ!」

 ハイツが 弾かれたように 駆け出した

 だが ハイツの 腕を捻りあげハイツ達を 人質にする男達!

「何が望みよ!」

 テアが サラマンダーを 呼ぼうとする

 そこへ シャリーが 進み出た

「た……多分私です!」

 エンドが 泣きながら シャリーの 髪の毛を 後ろに 引く

「ダメ!シャリー」

 しかしシャリーから怯みは消えていた……

「みんなを離して!いくから!」

 友達を 離して!

「聞き分けよくて結構ですな……」

 男の1人が 手を上げる

 すると……周りに控える男達が一斉に 消えた

「シャリー!」

 ランドルの 手が 触れる前に シャリーの 身体は跡形もなく消え失せる

「いやぁ……」

 エンドの 叫びが 周りの皆の 魂に 刺さった

「そんな!」

 倒れた ハイツが叫んだ!

 シャリーの 大バカ野郎!


 シャリーと 男達は 暗黒の 渦の 中で 睨みあう……

「あなた達!」

 シャリーが グッと視線を巡らせた

 闇のオーブが望みでしょ!

 そんなの持ってない!

 みてわかるでしょ!

 虚勢を張ってみたものの 足が小刻みに震える

「大丈夫ですよ!器様」

「器?なんの?」

 シャリーは 知っている この先に まつ 男の事を 皇帝ギュンター!

 そして……闇のオーブは……!

 エンド!エンドごめんね

 シャリーは 舌をかもうとした

 深淵の王の 器なら 生存が必須

 ここで自分が 死ねば!

 がっ!

 その鳩尾に 男の当身が入る

「あ……」

 シャリーの 意識は飛んで行った

「恐ろしいお嬢様だ!この歳で自害なさろうとするとはね……」

 そして口に猿ぐつわをかませると

 抱えあげた

「失礼のないようにおつれしないとな」

 男の長であろう 高位の男は くっくっとわらう

「王の良い器とおなりあそばすだろうよ」

 そうして足跡もなく 消えて行った

 ただ 暗黒の 香りだけを残して……

 そうして 闇夜よりも暗い儀式は 始まった


 カイルが 膝をつく……自分がついていながら!

 悔恨の 涙が 地面をぬらす

「隊長……」

 ミソノが ハイツの 背を撫でながら 振り返った

「シャリーは……シャリーは大丈夫!エンド生きてるもん!」

 シャリーと エンドは 一心一体 そう シャリーが 死ねば……エンドも……

 いや……シャリー!

 ランドルが 己の掌に 爪を食い込ませた

 はやまるな!

 シャリー!

 焦りが 皆を包む……

「行こう」

 ランドルは闇の記憶から 闇の軌跡を 追う術を学んでいた

 血で濡れた 手を 大地に押し当てる

 すると……闇の足跡が 浮かんでは消える

 追う……!

 ランドルの目には 決意の 灯火がともっていた


 シャリーは 暗黒の 鎖につながれて目を開けた

「おお……おきたかね……」

 奇妙なぐらいに 柔らかいギュンターの 声

 そして その 鏡面の ように 皆の足元には ベルカナ大神殿が 反射していた

「え……」

 猿ぐつわは はずされたが その声は四方に 反響して耳にうるさい……

 ギュンターの 声は反射しない……

 なぜ?

 そして その 声音に恐ろしい程の 恐怖を 感じる!

 大神官様!

「ふふ……」

 目覚めたね……器様……

 やはり一致する

 そんな馬鹿な

「こちら側は 暗黒面なんだよ!シャリーさん」

 ここまでは気づかれてはならないのでね 色々利用させていただいた……

 さあ……可愛い姫君……オーブを 見せておくれ

 ギュンター……いや闇の大神官は シャリーの 胸に 腕を差し入れた

 痛みも無く貫通する そして戻るその手に 握られていたのは闇のオーブ!

 マッハ女神も よくよく人を信用なさる……

 愚かだとは思わないかね?

 ん?

 しかし……

 大神官は オーブを 叩き割った

 まさか!

 表の大神官めが!

 声音が ギュンターの 声音に 戻っていく

 馬鹿な!馬鹿な!紛い物だと!

 おのれ!

 ギュンターは闇の鏡面を 叩き割った

 そして 槍で 空をないだ

「哀れだの双子の!」

 大神官様が スタッフで 槍を止めている

 だが その凶悪な 槍は スタッフを 砕き

 大神官様の 純白の 法衣に 埋まった

「いやぁ……」

 シャリーの絶叫に 神殿に控えていた精鋭隊が なだれ込む

「ランドル……」

 ギュンターの 目がぎょろりと 睨みつけた

「大神官様!」

 ミソノが かけて 大神官様を癒しにかかる

 いいんだよ

 お嬢さん

 私を 器に なるように マッハ様にお力を いただいた……

 これでいい……

 ばたり……

 大神官様の手が落ちた

「大神官め!おのれ」

 大神官様の 胸からオーブが 抜け出ると 純白に 輝き 砕け散る

 おのれの 死で聖別化するとは!

 ギュンターが 地団駄を踏む

 シャリーの 鎖を サイが 解いた

「ダメです!ダメです」

ギュンターが 蹴りつける 大神官様の ご遺体に 駆け寄りたくて ライラに 抱きとめられる!

「ダメよシャリー!」

 ライラにしては毅然とした声

 シャリーの目から 涙がしぼりだされる

「いや!」

 と 校長の ペンダントが 白銀に 輝いた

 ソウェイル……その呪文が シャリーの 唇にのる

 だめ!

 シャリー!

 ミソノが シャリーを 止めたが間に合わない

 がっ!

 天から光の矢が降り注ぎ!大神官様を 包み込んだ

 そして 大神官様は 安らかなお顔になり カッと目をあける

 ブランク!

 大神官様はその呪文を 唱えた

 25のルーン が 束ねられ 暗黒面を 光で 薙ぎ払う

「ライト様!」

 最後に降り立たれたのは ライト王その人 そして 白光を 帯びた 剣を抜き払うと ギュンターの 首を落とした

「永遠に眠れギュンター……」

 その凛々しいお声に シャリーが 力尽きる

「シャリー!」

 駆け寄る仲間!

 エンドも 倒れふしていた

パキ……

 シャリーの 胸元で ソウェイルの ルーンの ペンダントが 砕け散る!

 ぱぁっ……

 放射にひろがる 光条に シャリーが 包まれる

「あ……エンド」

 シャリーが シャリーの 声が愛しき半身を 呼び寄せる

「はぁ……い」

 弱いが エンドの 声

 皆が バンザイと 叫んだ

 ライト様 良くぞ……

「校長に託してよかったね……」

 なんとも……

 ランドルが皆が 最敬礼をする

「これで……安心だね……」

 だが その王の 心臓を 貫く刃が あった!

「愚かなり!」

 ギュンター!

「ライト王……討ち取ったり!」

 そして その心臓こそが深淵の王アビスの オーブそのもの!

「ライト様!」

「王……」

 王の体が解ける!

 いかん!

 もたん!

 大神官が ソウェイルを 唱えようとして 王の 光の 粉に 包まれる

 民の為につかっておくれ!

 そして……そして……アビスを!

「小賢しい!」

 ギュンターの 暗黒が 王の光を 喰らい尽くす

「あんただけは!許さない!」

 シャリーの体が 神聖力の 炎に燃えた!

 そして テイワズと ティールと スリサズの雷神トールを 融合させ 空から爆雷を 呼んだ!

「わ!バカ!シャリー」

 エイワズを100重ねがけして ハイツが 皆を守った

 ずどん……ずどんと 雷撃が 降り注ぐ これには ギュンターの魔法金属の 鎧も紙切れのようだった

 しかし……

 ギュンターは 深淵の王アビスを 取り込むと 全てを無にしてしまう

「死ぬ気か!」

 ランドルが 吠える

 望むところ!

 アビスよ!目覚めよ!

 ギュンターが 己の喉を裂いた

 そして自分を生贄に 捧げ……アビスを 復活させる

「戻った……」

 1000の 闇夜を束ねたような重い声……

 ギュンター……

 お前を 副官に しよう!

 闇の呪文が ギュンターを 蘇えらせる

「蛆虫どもよ!都と共に死ね 」

 巨大な 圧力の塊が 聖都を 破壊していく!

「少年」

 大神官様が ハイツを 呼んだ

 行くぞ

「ハイ!エイワズ」

 2人の エイワズをもってしても 圧力には叶わない

「ソウェイル!」

 大神官様は反対呪文として

 古代魔法の 最高位呪文を唱えた

 全てが 包まれ 太陽の オーラに 守られる

 しかし……

「大神官様!」

 ミソノが 駆けつけたが 触れるまえに 大神官様の体は 灰と消えた!

「ダメです……大神官様」

 ミソノが 泣く

 だがそこに金の鎧を 身にまとった あの方が 降臨した

 ライト様!

「大神官……参ったね寝かせないつもりだね」

 優しく笑って 完全復活を遂げた 古代王は 太陽の神剣を 抜き放った


 そして テイワズを 剣に 重ねると 空をないだ!

「太陽の神剣!」

 ランドルが 感動している

 だが そこへ 重力波がのびた

「エイワズ」

 防御魔法が 間に合わず

 飛ばされたが 手を 石畳につくと 後転でかわす

「じゃれ合いならば…… 他でやれ……」

 目障りだ ガキども

 アビスの まわりをビズビズと 闇が 回転する

 それは常世の闇を従える王としての プライドだったのかもしれない

「フローズン」

 シャリーの 音もない詠唱と 共に 氷の 巨大な 柱がふる

 しかし

 瞬間にして砕かれ シャリーが 弾かれた

 氷が熱波になりシャリーを 茹でる

「エイワズ」

 ハイツが 物理結界を 発動していなければ シャリーの 丸茹でが出来ていた

「赤ん坊にも満たないチビが……」

 アビスが ぎゅと 圧搾

 シャリーの 物理結界が 砕けた

「シャリー」

 ライト王の マントが シャリーを そっと 守る

 圧力波は 霧散した

 王のまわりは黄金に満ちた

 太陽の オーラが キラキラと 揺らめいている

「素敵」

 ルナが 夢見るお姫様になって ライト王を見つめた

「恋敵かな?」

 クス?

 王は全てを知るように シャリーに 視線を 投げた

「やめてください」

 小っ恥ずかしそうに シャリーが 頭をかく

「ルナはシャリーの彼氏?」

 ランドルが 笑った

 不思議だ

 アビスの 巨大な 念の 中にいるのに

皆の闘志が 成長していく……

 ライト王の 輝きが そうさせる

「ブランク!」

 ミソノの 桃色の 唇が 呪文を 編んだ

 ルーンが 編まれ 渦となり ライト王を 守る

「ありがとう……ミソノ」

 優しい王

 女性なら 恋するに 違いない

「ミソノ!」

 ハイツが ミソノの 隊服を 引いた

「ハイツったら」

 ウンディーネが クスとわらった

 たっ……

 王が舞う

 シャリーが アイスストームを 重ね 王の 後押しを する

「ふん……!」

 ギュンターが 闇の 重力波を ねると

 アイスストームを 封じた

「エンド!」

 真空波!

 シャリーの 手に降りたエンドは 最大に 育ち

 その 鱗粉が 虹の虹彩を 放っている

 そのちいちゃなエンドなのに

 真空波は 瞬間ですら割いて 唸りをあげた

「最高!」

 テアが サラマンダーの ストームを 真空波に 織り込んだ

「のらせてもらうわ!」

 ぼぉう!

 真空が 炎を 纏い 爆風の 刃を 輝かせる

 魔法金属を 切り裂いて ギュンターの 胸を 切り裂いた

「やるぅ!」

 サイが 跳ねた

「小賢しいチビが!」

 しかし血が出るのでもない!

闇が 傷からほとばしり 癒してしまう

 王の 太陽の神剣が シャリーの オズルの 陽炎と共に 闇を裂いた

 バシュ!

 ギュンターの身体が 叩き割られる

「小僧!育ったのは一緒か!」

 アビスの 渦巻く深淵魔法が 筋肉の 腕を 巻いて 王の 頬を 薄く切る

「おやおや!一緒にされては困るのだよ」

 ライト王は

「シャリー神剣を!」

 と エメラルドの 瞳で シャリーを 包む

「分かりました」

 瞬間にして

 シャリーの手に 神炎の神剣が 呼ばれた

「ち!」

 王とシャリーの 神代の両断が アビスの マントを 散り散りに する

「チビの 闘気が 」

 精鋭隊の オーラが 大理石を 輝かせ マッハを 呼んだ

「眠りなさいアビス!」

 マッハの 神光が 放射に 放たれた

 があ!

 アビスが 喉を伸ばす

 そこへすべての 精霊魔法が 渦となり叩き込まれる

 そして テイワズ!

 ミソノがシャリーが 爆雷を 降らせた

「ちいっ!」

 アビスが 弾けた

「まだ!消えただけだ!」

 皆!いけるかい?

王が 聞く

「もちろんです」

 全てが声を束ねる

 ……常世へ追う!


 第4章 闇走り


 一同は空間を踏むでもなく……泳ぎつつ

 常世の 門を目指す

 エンドは シャリーの 隊服に くるまると 両手で かっちりと ロックした

 ライト王の 光のまわりを怨霊や 幽魔の 類が撫でていく

 ひいいぃいい……

 幽魔の 絶叫が 耳に痛い

「早くおいで?」

 バンシーたちが きゃらきゃらと 笑った

「綺麗な魂のお兄さん」

 王に 触れようと手をのべるバンシー

 しかし

 青白いその指は焼け爛れた

「早くおいで……」

 老婆のように なって

 ふいときえる

「魔界だよ!」

王が 使い魔に 結界を施す

「このままではつらいね?おちびさん」

 優しい笑顔が 使い魔をいやす

 死をこえた シャリーと エンド そしてランドル!

 魔界では これを……

そっと 耳飾りをくれた

 アイツらの狙いは 魔界に近い 清らかな魂だ!

 シャリーは そっと 耳につける

 きん……

水晶を うち鳴らすような音がきこえる

 エンドは ちいちゃな耳に そっと つけると

 嬉しそうに えへへと 笑った

「綺麗なの!」

 耳飾りは 魔界の 闇の中で ゆらと 光の 波をうち広げる

 ゴブリンの 弓矢が シャリーの 頬をかすめた

「シャリーのお顔はエンドのなの!」

 真空の刃が ゴブリンを薙ぎ払う

「あっちいって!しっしっ!」

 エンド……ぷりぷりである

 薄くシャリーの頬が出血するが エンドの ひとなでで消え去った

「痛いのだめなの!」

 エンドは べったりと くっついて離れない

 ある時はシャリーの 髪を掴み

 ある時はポケットに 入り

 またある時は……

「エンド……」

 さすがに ハイツに 笑われた

「絶対離れないの!」

「エンド……」

 シャリーが そっと エンドの 髪をなでる

「だって!エンドは シャリーの 魂の一欠片だもん……」

「おやおや!」

 ライトがにっこり笑う

 愛されたね シャリー!

「はい……」

 心の奥……魂がほんわかする

 さあ……着いたよ

 そこは闇の沸き立つ場所

 闇が清水の ように 沸き立っている

 ポコ……


 ポコ ポコ ポコ

すべてをのみこむようで まったりとした何かが足にまとわりついてくる

「シャリー」

 エンドが ぷるぷると体を震わせた

 闇が 濃すぎる……

 アビスの 力が 満ちていく

 ライト王が 神剣に 太陽をやどした

さぁっ

 闇を祓う神剣の輝き

 そこには 骸骨が山をなしている

「スケルトンにすらなれなかったもの」

 王が 片膝をつくと

 骸骨の 頭を 撫でた

 つらかったろう……

 天へいくといい……

 王が 門を開く

「さぁおいき……」

 骸骨は 塵と なってすいこまれていくが

 王に 黄金の ネックレスが とんだ

「これは……そうか巫女……あなたも」

 王が ネックレスに 口付ける

 すると 美しい女性があらわれた

 胸にネックレスを かけている

「シャリーさん……」

 不意によばれて シャリーが顔を上げた

「あなたにれを……」

 銀の やじりであった

「きっと役にたつでしょう」

麗しい巫女は

 柔らかく笑った

「王……」

 ああ……逝かれるのだね

「はい……」

 王は 巫女の手に 口付けた

「王……」

 きっと愛していたのだろう

 巫女は涙を浮かべ 門へとさった

 王 は 見送ると黄金の ネックレスを下げる

 仇はうつ!


 第5章 聖なる戦い


 ゆら……足元を 纏わるように 暗黒の世界

 一同はライト王に まもられているとはいえ不安だった

「怖いです」

 ルナが シャリーの 隊服の 袖を引く

 大丈夫よ?

 サナが ルナの巻き毛を なでた

 ねっ

「サナー」

 ルナが サナをだきしめる

「ルナ!」

 みんないるよ!

 ね?

 振り返ると

 誰かがたりない!

「嘘!サイ」

 テアが涙目だ

「サイ!どこ?」

 おかしい

 なぜ消えた?

 ランドルが 見回す

 と……ハラの姿も消えた

 闇にのまれた……まさにそうである

 どうなって……わ!

 テアが 消える瞬間!

 シャリーが テアの 手をとった

 一緒に消える覚悟で……

 シャ……

 シャリーの 指を エンドが はっしと掴む

 ふわっ

 エンドと使い魔達を残して

 もはや4人が消えた

「シャリー 」

ゆら……王のくれたピアスが

 ゆるやかに光る

 泣きだしたエンドを王が手で包む

 大丈夫だよ!エンド!

 追える……シャリーが ピアスをしているからね

 優しくエンドの 背を撫でる

 行こう!

 怖いものはいないね?

 皆を振り返る

「はい……!」

 カイルが みなの背を支えた

「いい子たちだね行こうか」

 王は太陽の神剣で 天をさすと

 エンドとランドルのピアスが キラリと 輝いた

 かっ……

 白光とともに

 皆はシャリー達のもとへ

 そこで見た景色は

 惨殺された 魔女や魔導師の 遺骸の山である

 その中に ある見慣れた姿が

 まさか……サイ!

 サイ……

 ミソノが 手をのばし

 ソウェイルを となえようとする

「きゃ……あああっ」

 シャリー……

 エンドが 飛ぼうとしたが 王が包んだ

「今バラけるのは危険だ みなで行こう」

「シャリ……」

 エンドが 涙で王の手をぬらした

「大丈夫!」

 ハイツが エンドを 元気づける

「ね……」

 振り返って気づく

 ライラさん?

 ライラもいない……!

 カイルの顔色が変わった

「王」

 行こう

 全員で深淵に 駆け込んでみたものは

 鎖でつるされたシャリーと 半死半生の仲間であった

ライラがカイルの姿に安堵したのか倒れ込む

 ライラ

 カイルは抱きとめるとぎゅと抱きしめた

ライラを安全な場所に休ませると

 カイルがレイピアを抜いた

 それぞれが武装する

 シャリーの背中から出血していた

 刺されたのか切られたのか?

「こ……こ……で魔法をつかうと」

 シャリーが呻く

「反射します」

 ごく……王が つばをのんだ

 とにかく下ろさないと

 ハイツが シャリーの鎖をとく

 シャリーはがっくりと倒れ込むと ハイツにだきかかえられた

「シャリー……」

 エンドが シャリーに癒しの光をあびせた

「ふん!小虫どもが」

 闇そのものを纏ったような漆黒の鎧をきて

 アビスは立っていた

「氷帝アイス……ストーム」

 めずらしく……激情にかられてか

 カイルがアイスストームを呼んだ

「まて……ハイツ 結界!反射する」

 アビスに 当たった 魔法 は すべてが放射に返る

 氷のアイスストームは うなってこちらへかえった

「シャリーの助言を聞いていなかったのか?隊長!」

「すみません!」

 愚か者!

「妻となる人に手をかけられてはね

 男として返したくもなる!ランドルわかっておやり」

 ライト王は ソウェイルと 倒れた各自にルーンをきって

 声に出さずに癒した

「詠唱魔法は返る!ならばカイル?見せ場だよ」

 カイルの髪をくしゃと まぜる王

 カイルは 空間に 魔法陣を 描き 氷帝を 呼んだ

 そして イサときざみ 放つ!

 ずが……

 アビスの 魔法金属は 魔界で強化されたのか 傷ができるだけである

 マッハ女神 シャリーはたちあがると

 マッハの紋章をきざみ

 そこから錫杖を 取り出した

「シャリー」

 エンドが シャリーのほっぺにキスをする

 物理で倒すか 魔法力を纏わせた武具でぶんなぐる

 それしかありません!

「ぶんなぐるってねシャリー人格変わってない?」

 ミソノに肩をすくめられて

「えへへ」

 と笑うシャリー

「魅力的だよ……」

 王に言われて真っ赤になる

 あの……いいえ……あの!

 きたぞ!

 モジモジしてるのをランドルに 咎められて

 シャリーが

 エイワズの防御をはった

 7本の暗黒剣が 襲ってくる

 がががん……

 6本までは弾けたが 7本めがつきたった!

 ぴっ

 シャリーの頬を薄くさく

「女の子の顔なんだと!」

 エンドの足元に毒蛇が あらわれていた

「にゃーーーーー」

 エンドが 足をパクっとやられそうになって慌ててシャリーの結界へ逃げ込む

「おもってんのよー」

 安全なところでプンスカ……

 テアが ルーンをしめし フローズンを 呼ぶ

 ザア……テアがふったいきおいのまま氷の矢ははしる

 グオン……

 鎧の肩を 傷つけたがはずれてしまう

 シャリーはシャンと 錫杖をならすと

 錫杖をうちふった

 ぎゃん……!

 ライトアロー

 王が口の端を上げる

 アリアンロッドと契約したのだね!

 シャリーが 高く飛んで アビスを打ち据える

 鎧を 金の光が覆う

「よし!ブランク!」

 王が叫んだ

「王?」

不安げなカイルに

 にこ……王が笑う

 シャリーの錫杖の ちからで

 やつの反転結界が やぶれた!

 ルーンの 鋼鉄すら 貫通する矢はアビスを貫く

 アイスストーム!

 カイルも氷の嵐を招くと

たんっと 地を蹴り

レイピアで アビスの喉をついた

 がしゅ……

アビスは 片膝をつく

 精霊魔法 古代魔法 魔法のすべてをアビスにたたきこむ

 そしてシャリーと王の一撃に アビスは痙攣しとけさった


 これで……

 シャリーがへたりこんだ

 背中がいたいけど

 もう大丈夫!

 ……勝ちましたね!

 ライト王は武装をとかない!

「出てこい!卑怯者」

 太陽の神剣の切っ先が シャリーにむかう

 王?

 皆はいぶかる……

「ほほう……小僧だまされないかね」

「シャリー?」

 エンドが 近寄る

 でも

 オーラが 違う

「どうした?シャリー」

 ランドルが 王とシャリーを見比べた

 出て来いと行っている!

 どくん

 シャリーの心臓が脈打った

「た……」

 シャリーの目が 赤くなる

 それは まるで血のような

 さがれ皆!来るぞ!

 王が 叫んだ途端

 ばじゅ……

 シャリーの背が裂けた

「いやあ」

 エンドが 抱きつこうとして

 サナにとめられる

 シャリーの裂けた傷から

 鋼の手足がのびた

「やはり……寄生していたか」

 そしてシャリーの 背から

のっそりと蜘蛛があらわれた

「シャリー」

 ミソノが かけだそうとして王にとめられる

 がう……

 蜘蛛が こちらにむかってくる

巨大な鋼鉄の蜘蛛

「今だミソノ!こいつはひきつける」

 王がミソノに 耳打ちする

「はい」

 蜘蛛に テイワズをぶつけおびき寄せる

 ミソノは 遠回りしてシャリーの もとへ

「シャリー……」

 背中をみると 心臓へのダメージが 大きすぎる

「そ……ソウェイル」

 となえようとした

 ミソノに エンドがふよふよと やってきた

「ミソノ……エンドを ありがとうとシャリーに伝えて」

 エンド は酷くよわっているようで

 このままでは!

「ソウェイル!」

 エンド!

 ミソノが青くなった!

「エンド」

 はたり……

 地に落ちたエンドは 息をしていない

 シャリーは

 パチと 目を開ける

 エンド!エンド

 一心一体のはずなのに!

 決まりを破って!私をたすけるために!

「いやぁあ」

 シャリーが 抱きしめる

 エンド!

 羽がツヤをなくし

 エンドの あの声もあの姿も……

「シャリー」

 また聞きたい!

「シャリー」

 ?

涙いーっぱいだねシャリー

 ……エンド……

 そんな!

 アリアンロッド様においかえされちゃった

「エンドぉ!!」

 シャリーが エンドを抱きしめる

「そしてね この月の弓矢をつかいなさいって」

かたん

 シャリーの 足元に 魔法金属の 弓矢

 シャリーは矢じりがないのに気がついた

 たぶん……あの矢じりが

 シャリーはポケットから鏃をとりだした

 そして取り付けると

蜘蛛の 腹を狙う

 きしゃあ!

 蜘蛛が テアを 襲った時

 シャリーとエンドは光をこめて

 矢を放った

シュオン…

 矢は 光をやどしたまま

 蜘蛛の腹に吸い込まれる

「ぎゃあああ!」

「流石はアリアンロッドの矢強力だね」

 王が 上段から切り下ろす

 矢の もたらす激痛に 動けなかった蜘蛛は

 脳天を真っ二つに 割られ

 もろもろと くずれはじめた

王は太陽のオーブに アビスを封じる

「よし!」

 太陽のオーブはかがやきを失わない

「よくやってくれたねエンド」

王が微笑んだ

 なんて子だ!主と使い魔の契りを破棄して 主を救うとは

 王が手を伸ばしたエンドが ちょこんと王の手に乗る

 良い主とあったね

 王がフワとわらうと 小さいアレキサンドライトを くれた

 持っておいで……君なら 僕の想い人を預けられるから

「?」

 シャリーとエンドが首を傾げる

「シャリー大きくなったら花嫁になってくれるかい」

「ええええええええっ」

 シャリーが 腰を抜かす

「ずっと君をみていたんだよ 」

 強くなったね

 僕は1万年近く生きているけど

 ね……

 君みたいな面白い子初めてなんだよ

 ほめてるのだろうか?

「君ならベルカナの 王妃になれる お願いだ」

「王……?」

 ふざけてますか?

「ふ……さてもどるかな!」

 王!

 みんなに叫ばれてライト王は

 帰りの門へと消えた

「いってぇ……」サイの声だ

「サイっ」

 テアが抱きつく

「いたた!ばかおまえ!」

 テアがサイの額にキスした

 無事でよかった

 一同

 戻るが 王の求婚が真なのか?と 皆がシャリーを取り囲む

「シャリー」

「シャリー!」

「シャリー!!」

 ああうるさーい

 悪夢よりもこちらにうなされそうな

 シャリーであった


 第6章 エピローグ


 今日はお祝いの日 カイルとライラの結婚式だ

 式は大神殿で行われ 一同がドレスアップする

 特に楽しみなのは ライラのウエディングドレス姿

 カイルのスーツもたのしみだが

 女の子と言ったらウエディングドレス姿だろう

 ライラは ドレス姿で しずかに神殿に 入る

 そして皆に 一礼する

 エスコートは ランドル教官

 神殿奥には カイルが シルクのスーツで まっている

 少しドキマギしているのか

 頬が赤い

「きれーーーい」

 ルナが

 身を乗り出す

 本当に……

 校長の 同意

うつくしい

シャリーのエンドとカイルのウンディーネが リングボーイならぬリングガールをしている

 指輪の石は アレキサンドライト

 エンドがライラ用を運び

 ウンディーネが カイル用を運ぶ

 とてもキラキラ綺麗だ

 ……いつか私も……

 と隣にライト王を 想像し ぶぶんと 首を振った

 ただの冗談だってば

 とシャリーの脇に座る人がある

 見上げればライト様!

「しーーっ」

 人差し指を 口元に持ってくると

 笑いかけた

 いつか君も?

 茶目っ気なのかシャリーの 手をとった

 そして

 右手の薬指に アレキサンドライトの指輪を はめる

 ……これでも信じられないかな?

 ニッコリ笑われて

 シャリーが 真っ赤になる

「さぁ式はこれからだ楽しもう」

 ライト様が顔を前に向ける

 そして

リング交換 カイルは 気恥しいのが 額にキスをした

 わっ!

 周りは盛り上がり

 ライト様が 立ち上がって拍手をする

 シャリーはますます恥ずかしい

 みんなの注目があつまる

 そしてみつけた

 ライト王の右手にはまっているリングを

「みんな僕のフィアンセを紹介するよ!」

 さぁ立って

 シャリーを立たせると

 ウインクした

 シャリーが フィアンセ!

 周りは またまた大騒ぎ

 まいった

 頭を抱えた シャリーである

「おめでとう!」

 ライラがブーケを 直接 シャリーにくれる

 幸せに……

聖なる戦いはこれにておしまい……

 いい子たちに素敵な出会いがありますように

 ちゅっ

 エンドより



 蒼月のエレメント 新章2結婚

 

 

「わぁ!」

 エンドが 小さい子等とふざけている

 ミソノと シャリーは 17歳

 かなり手足も長くなり

 元気に 学校で学んでいた

 魔物使いには ひやひやだけど

 カイルさんとライラさんの結婚式の後

 2人の引退式 そして

 サイ隊長と テア副隊長の 任命式が 同時に行われた

 シャリーの右手の薬指にはライト王からいただいた アレキサンドライトの 指輪が光っていた

 地金は シルバーとても 美しい細工物である

「シャリー……最近指輪を見てため息ついてるね?」

 ミソノが こちょっと シャリーの 頬を 擽った

「どうしたの?」

 ミソノに 顔を覗かれる

「うーんライト様にはもっと相応しい方がいるのじゃないかと……」

 シャリーが 目を下げる

 指輪は 相変わらず輝いている

 指輪に 魔法が かけられているのか

 常に傷なく キラリと 輝く

「ばぁ……」

 ちびっこと かくれんぼをしていた エンドが

 シャリーをびっくりさせる

 もう……!エンド!

 シャリーが にっこり笑った

「やぁっと笑った!シャリー よーくこんな顔してるもーん」

 変顔をして見せる

「おやまあ……」

 背後で校長が 笑った

「随分にぎやかね……」

 校長は 足を痛めて杖をついているけれど

 お元気だ

「かわいいおチビさん達オヤツですよ!」

 用務員さんが クッキーを 差し入れる

 びゅん……

 エンドが かっとんでいった

「やれやれ……」

 シャリーは 頭をかく

「ねぇミソノ……」

「ん……?」

 いつもあんなかな?私

「ふふ……どーだろうねシャリー!幸せボケかもよ!」

「こらーっ」

 シャリーは ミソノに抱きついた

 もう!

 2人の輝く笑顔に ハイツが 満足そう

 ハイツは なんと 副隊長補佐に なったのだった

「きゃっ……きゃっ!」

 エンドと おチビさんが クッキーに 群がる

 こらー先輩の 分はー?

「はーい!」

 エリリが わーいと 5枚程掴んでかけてくる

「ありがとう」

 シャリーは エリリを なでたのであった


 第1章 とんでも……?


「シャリー!ミソノ!ちょっと来て ついでにハイツもね!そこにいるでしょ!わかってんのよー!」

 テア副隊長が 直々のお呼び出し

 そろり……逃げようとしたハイツくん 襟首を掴まれた

「こら……副隊長補佐!」

 サイに とっつかまる

「わ……」

 テアが かけてきた

「やっぱりね!」

 見回りほったらかしてなにしてんの!

 魔物使いよ!

 西の森に出たって

 つけつけと 怒られて ハイツ君がっかり……

「もう……」

 ミソノが 手を腰にあてる

「ほら!しっかり!」

 テアが ずる……と ハイツを 引っ張った

「すみません隊長行きます!」

「シャリー」

 サイに 付き従う シャリーに エンドが 飛びついた

「エンドもー!」

 はいはい!

 エンド お口が クッキーまみれ 苦笑した シャリーが丁寧に ぬぐう

 お口からココアクッキーの 匂いがした

 さっきのクッキーね!

 ちょん……

 シャリーが つっついた

「てへへ……」

 ミソノとウンディーネは 少しご立腹気味

「もう……もう……副隊長補佐になってから遊んでくれない!」

 ごもっともである

 新規隊員の 世話 そして見回り それからそれから……

 なのである……

 ミソノとデート出来ないのも仕方ない

「もーう……!おろしてもらおうかしら!」

 ミソノ…ぷーってしてるよ!

 エンドが ほっぺを膨らます

 シャリーに こら……と 叱られた

「えっへへ」

「エンドまで……」

 ミソノが ガックリ来たのも無理ないかもしれない……

「はいはい……3人ならんで!」

 テアが 手を鳴らす

「隊長!」

「あのな……ハイツ……お前が シャキッとしないとな俺が休めない」

「馬鹿!」

 テアに頭をひっぱたかれる

「いて……っ!だってさー」

「あんたも馬鹿ね!執務室でもあるって思ってたの!

 しっかりしてよもう!」

 テアに 叩かれすぎて ハゲそうなんだよー!

「はぁ……」

 一同ため息を ついた!

「さて3人で!」

 気を取り直したか 気合いでも入ったか

 隊長が 話す

「西の森へ!いってこーい」

 相変わらずである

「もー」

 敬礼する 3人に テアが

 帰ったらテア特製の コーヒーゼリーあるから!チャチャッとお願い!

 と拝まれた

「はーい」

 一同伸び伸びと 西の森へと 思いきや

「ハイツ副隊長補佐!少しは遊んでっ」

 ミソノさん ツノがはえそう

 ハイツ君ガックリ……少しは労って欲しいもんである

「ごめん……今やる事沢山でさ!」

 拝まれても ため息しか出ない!

 ミソノが ぷいっとした

「知らない!」

 ミソノー!

 ねーシャリー!ミソノがー!

 泣きつかれても 困ったもんである

「馬鹿ね デートしてあげなさい!」

 ちょんと シャリーにまで つつかれた

 ミソノー!

 ぷーん

 3人は 移動の時はこんな感じである

「あのね……」

 エンドが オズルに 耳打ち

 シャリーね 焼きもちやいてるのよ!

「エンド!」

 シャリーに 言われて てへっと舌を出す

 相も変わらず!エンドは 可愛い!

 不動の プリティエンジェルは エンドであろうか

「モー!エンドまでー」

 ミソノが 振り返る……と

 ハイツの 背に緊張が 走る

 皆!来る!

 凄まじい 魔力を 練り上げて サイクロプスが 造形される

「なに……あれ!」

 ミソノが 下がる

「1つ目巨人!」

 エンドも シャリーの 隊服の 襟に 隠れた

「でかい!」

 3人は見上げた

 と……その肩に 少年の 姿

「へっへーん」

 少年は 3人を 見下ろすと

「こんばんは!お兄さんとお姉さん」

 と からかうように 眉をあげた


 第2章 突破なるか?


 シャリーが オズルと共に駆けた そしてミソノが イサを唱え 氷結の帝王を呼び出す

 ハイツは 剣を抜き放つと 足元を狙う

「ちょっと……ちょっとお話させて貰えませんかねー」

 少年はひょいひょいと かわしながら 嘲笑を浮かべる

「ばっかだなーお兄さん達!人の話は聞けってならってないのー?」

 いやな言い方に エンドが ぷーっと むくれた

「何よー!どチビいいなさいよー!」

「おーい超ド級どチビにいわれたかありませんねー」

 ドンっ

 サイクロプスが 足を踏み鳴らす

 ぴょん……と エンドが跳ねた

「んッもー!頭きた言わせてあげるわよー」

「ちょっとちょっとエンド挑発にのらないで」

 シャリーが 怒り心頭の エンドを すくいあげる

「サイクロン」

 シャリーが放って オズルが 火炎放射を あわせた

 ごおっ

 炎の 渦が サイクロプスを みまう

「おおっと……」

 少年が 中空へ消える

「頭に血がのぼった妖精さん僕の名前覚えといてクゥっていうよー」

「知るかー!」

 サイクロプスも 霧と なって消えた

「あのチビ助ー」

 エンド……パタパタ

 むっきーっと 憤慨している

 ハイツは ペタとしりをついた

「良かった……あんなの相手にしたらやられる!」

 シャリーが 肩で息をする

 ミソノの 氷帝は つぃっと ミソノに礼をすると 消え去った

「あれ……伝説の巨人族じゃない!」

 シャリーが エンドの 頭を撫でてやりながら呻く

 ミソノが ぶるりと 肩を竦めた

「あーのガキンチョに操られるんじゃ……」

 エンドが 腕組みしてプンプン!

 たいしたもんじゃ

 しーっ

「あいつは強敵だよエンド……」

 ハイツが 告げる

 まるで死刑宣告のようだ

「うん」

 あの魔力!すごかった

 シャリーが 冷や汗を拭う

 3人じゃ勝てない……誰か殺られたら全滅だ!

 ハイツが大地を どっと 殴る

「遊ばれてたしな」

 悔しいらしい

 そこは男の子 当然と言えた

 シャリーは

 とにかく戻ろう 隊長と副隊長に 報告!

 そう言って 指輪を撫でる

 ライト様お守りください

 願うのみであった

 3人は嫌な思いを 個々に秘め学校へ戻る

そして隊長に報告した

「サイクロプス!?」

 お茶をいれていたテアの手も サイの悲鳴にも似た声に ピタととまった

「まさか……あの?」

「はい……紛れもなく」

 ハイツが うなだれる

「魔物使いは少年……遊ばれてるだけでした!悔しいです」

「よしよし」

 サイが ハイツを 撫でた

 3人で行かせてごめんな!

 クシャ……

 ハイツの 前髪を もむ……

「お前もハゲろ!って言いたいとこだが!よく行ってくれた」

 なんだろう?はげまされてるのかもしれなかった

「な……ほら!テアのコーヒーゼリー!」

 上には クリームが のっている

「まるで自分が作ったみたいにいわない!」

 テアがサイの 耳を引っ張った

 いてっ!

 ふ……ハイツが ようやく笑う

「可愛い顔して凶暴なんだからなー」

 サイが 耳をさする

「ま……いいやね!今度みんなでやっつけに行こうや」

 なんだかんだ サイ隊長!たよりになるのであった


 第3章 愛するコーヒーゼリー?


 サイがあんぐりと 大口を開けて ゼリーを 食べている

 ミソノが ペしゃと ゼリーを 器に落とした

 あんまりにも美味しそうに食べるものだから……

 エンドが シャリーの脇で 口をクリームまみれにしている

ほら!隊長!もう……シャキッと!

 本当は嬉しいのだろうか テアの 頬が赤らんでいる

「美味いもんは美味い」

 パコっ!

 軽く 叩かれるサイだったが 意に関せず

 パク……ヒョイ……パクと ほおばった

 馬鹿ね……

 ポソ……テアの呟きをシャリーは聞き逃さなかった

 仲良いのよね!実際

 クス

 シャリーも負けずとほおばる

「美味しいです」

 ハイツが 明るく言って ミソノに つねられた

 いてぇ

 跳ね上がって 一同の笑いをとる

「馬鹿!」

 こっちの馬鹿は ニュアンスが 違う

 シャリーが クスクスわらって ハイツを 見つめた

「やめてよー」

 ハイツ涙目

 可笑しいの!

 こうして夜もふけて それぞれ自室に帰る

 ハイツに サイが 言った

「な……ミソノちゃん……さ……もっと大切にしてやれ」

 優しい サイである

 ハイツは にっこり笑う

「はい!」

「よっし……!告白練習」

「えーっいいですよー!!」

 宿舎中に その声は響き渡った

「うっるさーい!」

 テアに 怒鳴られ すごすごハイツ

「ほらぁ……だから……俺をミソノちゃんとするだろ?」

「嫌です」

「なぁに?」

「ミソノはミソノです」

 今度はドンドンと 叩かれた

「私がなぁに?」

 ミソノさんである

「いやぁ……明日あたりデートしよってさ」

 先を越されたハイツくん 悔しそう

「ほんとー?」

 ミソノが 顔を輝かせる

「うん」

 なんだかハイツ項垂れた

「嬉しくなさそうねー?」

 下から睨まれて

 ハイツ 姿勢を 正す

 東の 丘の花畑いこう!

 ほらね!

 なんだかやけっぱち

 ミソノが

「……?……」

 と サイを 覗く

「いいから行ってこい!テアは 抑えとくから」

「だぁれを?」

 ミソノの 後ろから ツノの生えたテア出現

 サイ 死んだフリ

「馬鹿ね!わかってるわよ!」

 ピン!

 ハイツの おでこを指で弾く

「激務ご苦労!補佐行ってよろしい」

 本当ですかぁ?

 ハイツが 笑う

「うん!私は嘘つかないでしょ!いいわよ」

 ミソノの 背をパンと 叩くと 部屋へ戻って行った

「わーい」

 うるさぁーい

 また叱られた


 第4章 おデート 作戦


朝 起き抜けに サイ隊長が一言

 「なぁハイツ?チューくらいしただろな?」

 チュー!

 ハイツが 真っ赤になる

 そんな 不道徳ですよ!

 したことないんかい?

 おでこになら……

「ふーん?どんなもん?」

 サイが ハイツを探る

「ただ チュッて」

 あの?隊長?

 ポーリポリ

 サイが 頭をかいている

「まさか?隊長?キスまだですか?」

「るっさい!マセガキ」

 まだだったようである

 ハイツが 頭を抱える

 いっつも隊長と副隊長 漫才してるから

 とっくかと……思った

 しかしサイは ウブだった

 ハイツ ここは勝ったと 満足する

 お互い アホである

「隊長!スノードロップつんできますよ!」

 テアは スノードロップが 好きなのだ

「ね……」

 少し励ましながらガッツポーズ

 馬鹿である

 少年よ何を考える?

 サイが 涙ぐんだ

 頼めるか?

 毎日 ビシバシやられて さー

 泣くんである

「はい!」

 ハイツ ここで敬礼

「よっしゃ行ってこい」

 ワシッ

 ハイツの頭を混ぜ込んで サイも敬礼!

 お互い 意地がある

 勝負なのだった

「ミーソノ!行こう」

 ピョコ

 ハイツが 顔を覗かせる

「はぁい……」

 ミソノが 髪をツインテールに して おリボンまで結んでいた

「シャリーがね!」

 そう シャリーの 力作 必殺ミソノちゃん

 シャリーが ちょいちょいと 手を振った

「夜までにはかえるのよー」

「もっと早めに帰るわよ!シャリーったら!」

「えへへ……ちゅー」

 エンドが 唇を 突き出す

「もう……!」

 ミソノが 真っ赤だ

 ハイツは 愛おしそうに眺めていたが ミソノの 背をエスコート

「ガッツ!」

 シャリーの ポーズに ピースで答えた

 2人は 隊服の 上にオーバーを 着ていたが寒い

 ハイツが ミソノの 肩に 自分の オーバーを かけた

「プシュ…」

 ハイツ クシャミをする

 馬鹿ね……

 ミソノが ハイツに オーバーを かけ返した

「そこ!見せつけない!朝練つきあわすわよ!」

 テアに こん……こん……と 杖で はたかれる

「はい……」

 ふたりはテテッと 駆け出した

「全くもう!今の若いもんは!」

 テア……オヤジである

シャリーが テアの 肩を抱く

「副隊長……」

 テアが わかってくれるの?シャリーだけね……と 項垂れた

 そして 恐怖の 朝練が 始まる

 一同そろってオートマタ 2回倒す

 そして 体幹トレーニング

 オマケに腹筋

 そしてそして 宿舎周り20周

 さすがスパルタのテア

 いや?

 ムカついているだけか?

 やけであった

 ハイツは 東の 丘をめがけると ミソノの 手をとった

 ちゅ……

 ミソノが そっと頬に キス……

 ハイツが ポッと赤くなる

「えへ!」

 ミソノさん にっこり

「嬉しいんだもん!」

 かっ……かわいい!

 ハイツ ドッキドキである

 ね……キス……していい?

 ミソノの手を握った

「え……?」

 ミソノが 頬を染める

 これは反則だ

 花火大会の キスポーズは?

 ハイツが そっと キスを……なんと唇に した

 勝ったァ!

 何にである

 ハイツと ミソノは お互い真っ赤で 丘についた

 そして綺麗な スノードロップを そっとつむ

「隊長がね副隊長に あげたいって!」

「ふふ……」

 ミソノが 髪のリボンを くれた

「これでしばってあげて」

 そっと……手が触れ

 また 真っ赤

 ハイツが ありがとう……と 受け取った

 ふたりは 空を 見上げて

 ひばりがいると はしゃいだ

 なんだか泣けるくらい平和である

 ゾクッ……

 ハイツの 背を何かが駆けた

 まさか?

 ミソノと ハイツが 振り返ると クゥが居た

「よっ!お兄さん達」

 そして バサッと ハーピーを 呼んだ

 いけない!

 ミソノを……

 ハイツが ミソノを 庇い込む

「ハイツ」

 ミソノ!走れ!誰か呼んできてくれ!

 ハイツが ミソノの 背を押す

「はい!」

 ミソノが 駆け出した

「えーっ逃がさないよー」

 追おうとしたハーピーに 剣をみまうハイツ

 しかし左に 花束を 抱えたまま

「ムカつくんだよねー片手間じゃ勝てないよー」

 ハイツが ドリアードを呼ぶ

 そして フローズンを 放った

 ドリアードは ハーピーの 羽を 根でぬい止める

「クゥくん……守りたいものはある?」

「ないねぇ……」

 どっ!

 背後から 狼に 倒されたハイツの手から スノードロップが 落ちた

 そしてスノードロップは無惨に 踏みにじられる

「馬鹿だろー!」

 そこを サイクロンが 叩いた

 サイである

「君が クゥ?」

「はーい」

 サイの 後ろには ミソノが いた

「精鋭隊の隊長さんでしょ?」

 クゥは 仰々しいまでに 最敬礼を する

 今日は ご挨拶!

 ヒョイ クゥが ハーピーに捕まるとハーピーは 飛び去った

「ハイツ!」

 ミソノが 駆け寄る

 背に 狼の 爪痕と 牙の跡がある

 ミソノとウンディーネが 癒しを かけた

「隊長……すみません……スノードロップ!」

 サイが 踏みにじられた 花束を 抱く

「いいんだハイツ!」

 そっと涙を拭った

 そして立ち上がる

「あのチビ!喧嘩を 売ったこと後悔させてやる」

 サイの 肩が震えていた

 怒りか 涙かそれはわからない しかしサイは 決然として ハイツを 背負う

 医務室へいこう!

 ミソノの肩を抱く

「ミソノも 疲れたろ?」

「でも……」

 いいから

 3人は 学校へと 坂を 下る

 そして サイは怒りに燃えるのであった


 第5章 後悔……


 サイが テアに 花束を 手渡した

「赦してくれ」

 そして 両膝をつく

「ハイツとミソノを 守れないばかりか」

「馬鹿ね……」

 テアが サイの おでこに 唇を おとす

「嬉しいわ……ありがとう3人とも」

 無惨に 散った花束を テアが 胸に 抱く

 ハイツ?

 はい!

 ごめんね

 サイが 気配を 感じ取って もっと早くに 行ってれば

 ……テア……俺を殴れ

「いいから……だまってて」

 押しの強さは鉄板である

「もーお……」

 テアが 手をのばす

 大バカ

 そっとサイの 唇に 唇をつけた

「きゃー……」

 みんなが わく

「みちゃいましたぁ」

 ルナが嬉しそう

「隊長……」

 テアが サイの 胸をグーで押す

「やっつけましょ!」

 最高の 笑顔

 サイは 頭を かいた

「あ……ああ」

 頬をそめた隊長を この時はじめてみた気がする

 ハイツが パンと サイの 背をはたく

「良かったですね隊長……はじめて……」

 わっ……こらバカ!

 サイが ハイツの 口をおさえる

「どうしたの?」

「はじめてって?」

 ミソノと テア

たいがい鈍感なのである

「ちゅー」

 ふざけるエンドに

「もう……!」

 ミソノが手をぶんぶんと 振った

「なんなのー」

 と……シャリー……ここにも鈍感は いたのである


「まずは……クゥは 沢山の魔物を いっぺんに 使える」

 テア達に サイが 説明する

 多分

 サイクロプスの時は一体だけだろう……サイクロプスは強敵だ!だが……ここが……

 ここが弱点だ……

「うん……ここをみんなで叩けば……」

 テアが シャリー達の顔を覗く

「とにかく……やろう……」

 あいつは許せない!

 サイが きっと 正面を 向く

 そして テアを見た

 テアは ドキリとした

「なーテア!コーヒーゼリーまた作ってよー」

 あほーっ

 テアの 炸裂パンチ

 頬に決まる

 せっかく男になったと思ったのに!

 バカーっ

 ドキドキをかえせー!

 ひっくり返ったサイに テアは嘆いた

「作るけどね隊長にはあげません!」

「そんなー!」

 サイの 涙は なかなか途切れなかった


 第6章 打ちのめせ!


 サイの 探知能力を 頼り 一同は 北へ向かう それには

 ランドルも 加わった

「どうして……もっと早く言わない?」

 サイの頭をこねくり回しランドルが言う

「危険だろう!バカモンが!カイルが嘆くぞ」

「す……すみません」

 なんだかんだ サイは独歩でクリアしてきたのである

「教官」

「みんなすまないな……遅くなって」

 テアとハイツが 頭を下げに行かなければ

 サイ特攻していたかもしれない

「お前一人で全部背負うな!」

 ランドルは わかっていた

「はい……」

 サイが 敬礼

 ありがとうこざいます!

「あー堅苦しいのはいい!いくぞ!」

 北の ベルカナ付近 その辺でクゥの 匂いが消えている

 サイは 地に手をおくと 足音を さぐった

「教官!あの少年 ベルカナの中に!」

 なんだと!

 ランドルが 眉をつりあげた

 もう この都を 戦地にするわけには!

「連れ出せ ベルカナでサイクロプスに暴れられては!」

「ランドル?どうしたって?」

 この声!ライト様!

 愛しい婚約者の 気配に来てみれば……何かあったね?

 柔らかいが 目が笑っていない

「今サイクロプスと?」

 はい……

 ランドルが バシッと 姿勢を正す

 サイクロプスを 使う 魔物使いの 少年 クゥが……

「都にいるんだね」

 察しが早い

 流石である

「はい」

 僕には早目に言うように!特にランドル!

 一人で走るな!

 なんだか……どこかで聞いたお説教

 シャリーが クスと 笑った

「エンド……ライト様好きー」

 エンドったら!

 シャリーが 真っ赤である

「うん!ありがとうエンド!シャリーはどうなんだろうねー?」

 なんだか包まれている

 そんな優しさを感じた

「す……」

「尊敬です」

 サイに 妨害されたが シャリー

「好き?」

 コク

 迂闊に頷いて真っ赤になる

「嬉しいね!いいだろうランドル協力させてもらう みんなに傷1つ付けさせたくないからね」

 ライト様は 門を抜ける

 そして 光の 波紋を 放った

 魔物使いの 苦手とする 気配

 見事だ!都中に 広がる

「あの子だね」

 駆け出して来るのはクゥである

「おや……お兄さん達!また味方沢山連れちゃって」

 たっ!

 ライト様の 脇を抜けると ライト様に 抱え上げられた

「クゥくん……外で話そうか?」

「ちぇっ!」

 ライト様筆頭 一同は ベルカナから 距離を 取る

「いいよ!もう!全くライト王なんて反則でしょ!」

 ライト様に 降ろされて

 だっと 離れた

 そして サイクロプスを 呼ぶ

 なんと2体

「嘘だろ」

 サイが あんぐりと口を開けた

「皆んなが反則するなら僕も反則!僕の名は!」

「名は?」

 ランドルが かえした

「アビスさ……」

 ど……くん!

 皆の心に動揺が 走る

 そんな馬鹿な

 生身の 少年ではないか!

 いくよー!

 どがん……とサイクロプスが 棍棒を 振るう

 ず……地面が割れる

「ち……動揺したね」

 ライト様が 結界を はる

 皆が 守られたが

 ライト様の 顔に 傷が走った

「あ……」

「大丈夫だよ!シャリー君はそこにおいで」

 ライト様の マントが シャリーを 覆っていた

 ず……だん!

 サイクロプス2体が 足を鳴らす

 一同

 腰が抜けた

「立て皆んな!」

 ランドル!いいから

 シャリーが たっと 進みでる

 そして神炎の神剣を 瞬時に呼んだ

 ライト様が 太陽の 神剣を 放つ

 かっ……神剣が 太陽の 光をまとい

 がかん!と 切り降ろされた

 シャリーもそれにならう

 神剣同士 真空と炎が 纏わって サイクロプス一体を 仕留めた

「やられたねー!」

 なんだろう あの余裕!

 隠し玉でもあるのか!

「エンドっ!」

 真空波!

 ていっ!

 エンドが放つ

「おっと……」

 少年を 狙ったそれはかわされた

「おー怖!凶悪フェアリーだね!」

「うっさいわね!巨人呼び出して暴れてるだけの ガキンチョがーっ」

 エンド

 プンプン!

「おやおや怒らすとご婦人は厄介だよ少年!」

 ライト様が 笑う

 とっ……!シャリーが跳んだ

 足元に サイクロンを呼んで それを跳んで行く

「おいたもたいがいに!」

 だが!迫る直前 身に覚えの ある重力波に 弾かれる

「きゃ……」

 飛ばされたシャリーを ライト様が 抱きとめた

「こら!無理はしない!君に何かあっては……」

 ライト様が 神剣に 光を流す

「こまるからね」

 再び マントに覆われた

 シャリー……皆のところにおいで!

 見回すと 皆んないない

 まさか 「転移」

 ダメです!

 シャリーが 駆け寄った

「命懸けなんて嫌です!何かあったら」

 ふわ……シャリーの唇にライト様が 唇で触れた

 そして転移!

「だめ!」

 移動させられる中 シャリーは 叫んだ

「後でねシャリー!」

 ライト様!


 第7章 行方


「あっ……」

 シャリーが 目を瞬いた時

 学校前にいた!

 ランドル教官!

 傍に倒れているランドルを 揺する

 皆も1様に 気を失っている

「おきてっ!」

 バシッ!とシャリーが 背を叩いた

「う……?」

 痛みに ランドルが 起き上がる

「シャリー!ここは」

 学校です!

 ライト様が!

「あの方は!暴走するなというくせに!」

 皆を叩きおこす

「うーん」

 サイが 頭を抱える

 テアに ゲンコツを貰ったためだ

「ランドル教官転移お願いします」

 わかった!

 一同が 固まるランドルが 転移を 唱えた

 しゅ……

 皆は ベルカナへ戻った

「なんで……」

 残りの一体と対峙していたライト様が 振り返る

「何故もどった!」

 バチッ!

 シャリーがライト様の頬を うつ

「暴走しないで下さいっ!」

 皆が顔を覆った

「なんでわかんないんですか!」

 シャリー……

 ライト様が ふっと笑った

 確かにだ

 驚いた 無礼の筈なのに 笑っている

「ごめんよシャリー危うく 君を未亡人にする所」

 ガク……シャリーが 項垂れた

「違います!男の人って正気ですか!あれはアビスです!おひとりでは無理です」

 わかったよ

 見た事のないような明るい笑顔で ライト様が

 サイクロプスに 向き合う

 シャリー!皆!たのむよ!

 はいっっ!

 皆の足並みがそろった

 サナ!足封じ

 ルナのサナが サイクロプスの 足を封じる

 ミソノが 氷帝を 呼びアイスストーム

 シャリーが 跳ねた!

 とんっ!

 サイクロプスの 目に 神剣を立てる

「よし!」

 ブランク!

 ライト様が 全てのルーンを 放つ

 ずがん!

 ルーンの束が サイクロプスの 首をはねる

「ちっ……役たたず!」

 少年が 地におりた!

 そして手に 深淵の 剣を よんだ

「あんたねー!」

「いかな魔物といえ自分の 相方なんだから!」

「うるさいよ!おばさん!」

 腕の一振りで テアが はね飛ぶ!

「テア!」

 サイが止めて そのままの勢いで 木に叩かれる

「サイ!」

 テアが 涙をこぼす!

「このチビ!子供だと思って優しくしてるからって」

 テアが 炎帝を よぶ!

 おっとぉ!

 ランドルが主役を食われる

「ご婦人はおこらせないんだよー!」

 ライト様のほっぺたに シャリーの 手形

 シャリーが 真っ赤になってモジモジした

「おかげで正気にもどったけどね」

 テアの炎帝の ファイヤーストーム!

 炎帝を呼び出したばかりのテアなのに

 焼き払う威力に サイが うへーっと 息をつく

「もう怒らせるのやめよっと!」

 軽々と跳んで

 テアの前に立つ

 そして 少年の 剣戟を ドリアードの 剣で受止めた

「サイ」

「いいから!まもらせろよ!」

 サイが テアを 背で押した

「バカ!」

 テアが 真っ赤だ

 ライト様が 神剣で 真空を呼ぶ

「おっと!」

 少年が ひょいと下がった

 とと……と 後ろステップで下がりながら

 重力波!

 ズドン!

 ハイツの結界に 一同が守られる

「よっしゃあ!」

 サイが 神速でかけると どがんと 剣を打ち下ろす

 少年が 尻もちをつく

「こいつ!」

 少年の 瞳に 怒りがともった

「殺す!」

「炎帝!ファイヤーフレア!」

 おいおい!ランドルが青くなる

 テア!俺を超えたねと 肩をすくめる

 皆の動きが活き活きしている

 シャリーが 神炎を 纏い 剣を振り下ろす

 ファイヤーフレアに焼かれた少年に 剣が落ちた

 それをライト様が 止める

「!」

 シャリーが顔をあげた

「この少年は器だよ」

 ライト様が オーブを 抜き出した

 あいつがいるね!

 ギュンター!

 ランドルが 地を叩く!

「こんな少年を食わせるなんて……!」

 テアが 切れた

「許せない!」

 シャリーが立ち上がる

「うん……!奴を探そう!近くにいる!」

 ライト様が オーブを 転移させた


 第8章 死闘


「オーブを?」

「ああ……アリアンロッド様にお預けする」

 ライト様が シャリーの 頭を撫でた

 パチン

 ウインクされて

 シャリーは ライト様とキスした事を 思い出した

 顔から湯気をふきそうなほどシャリーが赤面する

「シャリー……」

 ライト様が 膝を折る

「ありがとう!」

 そして 毅然と 立ち上がる

「奴を叩こう!」

 マントを はためかせ

 古代王と一同が決起する

 行きましょう

「くれぐれも!1人でも死んだら!アリアンロッド様に はたかれるから死なないでおくれ」

 過激な ライト様

 だけれど

 シャリーは察した

凄く傷つく何かを隠されているのだと

「いくよ!」

 一同は ベルカナを まわる

 確か……この辺りです

 ランドルが 闇を 追っている 手には 剣で 傷がつけられている

「ありがとうランドル」

 ライト様が ランドルの 手に触れると 傷がきえた

「ライト様」

 ライト様は 見回すと 1本の 大樹に 剣を 立てた

「出てこい!卑怯者!」

 怒りが満ちているのか 温和なライト様の 声が

 震えていた!

「おやおや!ライト王自ら おいでとは……」

 その背後に ギュンターが現れた

「ギュンター!過去の主人まで食らうとは!」

 ライト様が 剣を抜く

 そして真っ向から斬りかかった

「どうされましたか?ライト王」

 からかうようにして ギュンターは 消える そしてまたあらわれた

「ライト様!」

 シャリーが 手をのばす!

「ライト様ともあろうお方が こんな小娘を お好みとは!」

 ギュンターが 標的を シャリーに 定めた

 そして……シャリー目掛けて 槍が 繰り出される

「ハミル様をお忘れか?」

 ライト様の顔に青筋が走る

「その名を!」

「どうされた?王」

「口にするな!」

 ライト様が 神剣で槍を絡め取る

「ライト様!」

 シャリーが止めに入る

「おかしいです!落ち着いて!」

「王?」

 ギュンターの 槍が 薄いシャリーの 胸を 貫いた

 そしてライト様の 胸に埋まる

「馬鹿なお方だ!正気を 失ってハミルは愚か小娘も 救えないとは!」

「い……言うな!」

 ソウェイル

 ライト様が 残りの輝きを 放って

 シャリーを 治癒した

「ライト様!」

 死から救われた シャリーは ライト様にソウェイルを 使おうとする

「いい……あとは……あとは……」

 消えかけた ライト様の 頬に 新たな手形!

「……?……」

 シャリーが 首を傾げた

「ふ……追い返されたよ」

 ふわ……

 ライト様の傷が癒えている

 アリアンロッド様も お人が悪い!

 ががっ!

 ギュンターの 鎧を 神剣が 切り裂いた

「お前を倒す……」

 ライト様の剣が ギュンターを裂いた!

「ぐっ!」

 ギュンターが 血を吐く

「お前は生身だろう?」

 そして

 ガンと 首を跳ねた

 ギュンターは 血を撒いて 倒れる

 テアが サラマンダーで 火葬を した

 ライト様?

「シャリー……君に……」

 言ってがくりと ライト様が 膝をおる

 そして木に寄りかかった

「体力の限界だ!やれやれ!生身は 加減がね」

 ふ…と 笑って ライト様が シャリーを 抱きしめた

 このまま聞いておくれ

「僕にはね……ハミルという許嫁がいた」

「……!」

 シャリーが 顔を上げる

 なのに彼女も君と同じく 庇い 亡くなったんだよ

 ふわ……唇が シャリーの 唇に 降る

「何とか倒しはした……だが このザマだ……許してくれるかい」

「はい……はい……!」

 シャリーが 頷いた

「分かりますライト様」

「ありがとう……」

 ライト様に ヒールを かけるウンディーネと 共に シャリーは 心の傷を 癒そうとした

「頼みがある!シャリー!僕の妻になっておくれ」

「も……もちろんです」

 シャリーが 鎧に しがみつく

「良かった!」

「は?」

 一同唖然

 いやー断られたらと……

バッチーン

 シャリーの 平手炸裂

 ライト様は苦笑した

「1番の狸!逮捕です」

 シャリーが 手形を 付けた頬にキスをした

「みーたわーよー」

 テアとミソノに 背後霊のように

 くっつかれて シャリーは 肩を竦める

 だってぇ……

 シャリーってばーチューした!

 エンドが ぴっと指を指す

 いけないんだー!

 なにをよー!

 シャリー 揉みくちゃである

 アッハッハ ライト様が一際明るく笑った

 あらまぁ1番の特効薬ね ウンディーネが ニッコリ

 エンドが シャリーに キスをした

 エンドもー

 そしてライト様に キス

「エンド!」

 シャリーに摘まれる

「えっへっへー」

 こうして一同は めでたく凱旋したのである


 エピローグ!ハッピーエンド


 シャリーが卒業の日 ライト様が シャリーを 迎えに来た

「ライト様」

 シャリーのお母さんが 膝をおる

「いいえ……お母様……そう呼ばせてください……」

 勿体ない……

 お母さんは 頭をたれた

「シャリーを 花嫁に下さるだけで幸せです」

 ライト様は 手を差し伸べた

 シャリーの お父さんは 木の影から覗いていた

「主人は……主人はお恥ずかしいからって」

「お父様……お顔を拝見させて下さい」

 ライト様が 一礼する

 お父さんは こそばゆそうに ひょっこりと 出てきた

「お父様シャリーを いただきありがとうこざいます!」

礼儀を重んじるライト様に お父さんは 涙をながす

「娘を……娘を よろしくお願いいたします!多少跳ねっ返りで……」

「それはもう」

 やわらかく シャリーに流し目

 シャリーは 赤くなったり青くなったり大変である

 そっと ライト様は ベルカナへの 陣を 組み

 式典参加者全員を 招待した

 ハイツとミソノ

 サイとテア

 カイルとライラ あそして2人の間の赤ちゃん

 ランドルと 校長 用務員さんにいたるまで それこそ学校中を 集める

 カイルが ライラと 祝福を のべる

「おめでとう……本当に」

「結婚するなんて」

 涙ぐんでいる……

「わーい」

 エンドは まさしく

 本家本元 リングガールである

 そして お友達の サナと 肩を組んで歌った

 結婚式は 蒼月の夜にと ライト様の提案

 つまり今日である

 シャリーは 着慣れないドレスに 四苦八苦

 裾を踏んで転びかけた

 ライト様が 蒼月差し込む神殿で待つ

 シャリーは 裾を ちょいと摘むと 首をしゃんと伸ばした

 そして丁重に歩く

 エンドとサナがリングガール……

 結婚指輪を 運んだ

 シャリーが ライト様の 前へ辿り着くと

 慣れないドレスで かんっと転びそうになる

 それをライト様が 包んで支える

 わっ………………

 会場から祝福の 拍手が 放たれた

 シャリーは 赤くなって ライト様を 見上げる

 ライト様は そっと長いキスをした……

 おほん!

 リング交換!

 大神官様に 咎められて

 ライト様が 赤くなる……

 アッハッハ会場に笑顔が満ちた

 蒼月の光の祝福のもと ふたりは夫婦になったのである

 さぁ……おいわいだぁ!

 ランドルに 校長の 一言

「羽目を外さないようにね?」

 ピシャリ きまった

 シャリーとライト様が にこやかに笑う それを蒼月が 見下ろしていた

 さーて 2人の愛は深まるばかり……応援してね!

 エンドちゃんでした!

 めでたし……めでたし……

 

 

 

 

 

 


 

 

 




 

 

 

 

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蒼月のエレメント 古都綾音 @earth-sunlight

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