砂下の古代魔法都市

五來 小真

砂下の古代魔法都市

 魔導技術の粋を集め、ようやく完成した潜砂船。

 砂をかい潜る魔導レーダーを駆使し、探索に向かう。

 目指すは、古代にあったという魔法都市。

 探し始めて三年という月日は、果たして長かったのか短かったのか。

 遂に魔法都市を発見した。


「結界が、まだ生きてるのか―」

 ところどころほころびがあるものの、結界が都市を覆い、都市の半分は埋もれずにいた。

 結界のほころびから、侵入に成功する。

「失われた古代魔法が、きっとここにある——!」

「古代の人の方が病気にかかりにくかったというのは、きっとその魔法の恩恵ですよね」

 助手の言葉に、首を縦に振る。


 宮廷図書館に当たりを付け、探索を開始する。

 魔法書が庶民に行き渡っていたということはないはずだ。

 高鳴る胸を抑え、見逃さないように助手と二手に別れて探した。

 そして遂に見つけたのだ。

 

『臓器を見る魔法』

『免疫力を上げる魔法』

『自然回復力を活性化する魔法』


 ——以上、魔法書3冊。


「やりましたね、先生!」

「この3つの魔法で、病気を予防していたに違いない」

「凄い発想ですよね。どうやって思いついたのやら……」

「おまけにどうやらこの3つ、同じ人物が作ったらしい」

 私は魔法書とは別に見つけた、『その人物が書いたと思しき手記』を開く。

「——え? そんなものまであったんですね!」

「念の為、魔力痕跡を調べたら、隠し部屋があったんだ」

「——何が書かれてるか、ワクワクしますね」

「ああ」


『——失敗作であった魔法だが、人々の健康には大いに役立ったようだ』


「凄い人もいたもんだな。あんなに凄い魔法が失敗作と来たか……」


『——もう少し魔法の強さを調整すれば、きっと服が透け、街を行き交う女性の——』


 ここまで読んだところで、助手が手記を取り上げ火を着けた。


「おい、歴史的文献だぞ」

「いいんです! 大体の男にとって、死後エロの歴史は燃やしたいはずです!」

「——そうか……」

 助手の勢いに押され、私は納得させられてしまった。


 調査から戻った私達は魔法書を発表し、医療の発展に寄与した。

 数年が経過し、魔法書の作者は七賢者に数えられ、教科書にまで載るようになった。

 授業を任されることも増えたが、賢者の意味がもう一つの意味に聞こえ、笑いを殺すのに苦労している。

 

 <了>

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砂下の古代魔法都市 五來 小真 @doug-bobson

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