空白のノートと埋まらない心
@yuripyonn
第1話
終業のチャイムの鳴る音と共に体が崩揺さぶられる感覚がして、目が覚める。
ぼーっと霞む意識と視界を何とかクリアに戻して、私の下敷きになり、しわくちゃになったノートを見つめた。
何も書けていない…。
「
私を起こした隣の席の幼馴染…
「なあに?」
休み時間の喧騒に声が掻き消されないよう、相手の声を聞くために彼に顔を向ける。
「寝ていたけれど、もしかしてノートは、とれなかったのかい?」
ふふっと笑い、私のノートを覗き込みながらからかう様に言う彼は、幼馴染だからかいつも私を気に掛け、世話を焼いてくれている。
私がコクリと頷くと、彼は「しょうがないなあ…」と、まんざらでもない表情をしながら、私に教えようとしてくれる。
「じゃあ、重要な点を抑えて書いた僕のノートがあるから、僕のノート書き写してね。」
不真面目な私にとても優しい彼のノートを、ありがたく貰い、私は早速ノートを書き写し始める。
(機械が持つ技術は人々を腐敗させる。)
…機械が持つ技術は人々を腐敗させる。
(実力こそ全てであり、機械に頼るという行為は人々を堕落させる。)
…実力こそ全てであり、機械に頼るという行為は人々を堕落させる。
(下流労働者への命令は、彼らを支配する唯一の権利である。彼らに自由意思は存在しない)
……
いつの間にか鉛筆を握る力が強くなっていて、紙には、窓から差し込む太陽の光を反射する黒鉛の跡が残っていた。
「
はっとして
「うん…写し終わったよ。ありがとう。」
「休み時間…まだ15分あるしさ、
「うん…。」
浮かない顔で
「どうして…こうなんだろう…」
「こう…って?」
「こう…っていうのは…」
私のキャパシティでは何とも言い表せないそれを、頭の中で何度も反芻する。
「あ…!もしかしてあれかな?」
…そんな様子を見兼ねたのか、彼は自分の中で解釈をし、私に説明をする準備をし始めた。
「君ってば、歴史の授業も寝ていたのかい?
しょうがないなあ〜僕が教えてあげるよ。」
彼は人差し指を立て、胸を張りながら話を続ける。
「いいかい?今みたいに、機械という物に頼らなくなったのはおよそ三百年前と言われているんだ。」
機械…聞いたことはある。とっても便利だった…らしい。あと、私は歴史の授業は寝ていない。ノートをとるのは忘れたけど。
「それは何故か…三百年前、全ての文明が滅ぶ程の大戦が起こったんだ。それから人類は過ちを繰り返さないよう、兵器なる物や、機械、そしてその技術を全て捨てた…と、言われているね。」
自身満々に知識を披露する幼馴染に、少しだけ頬が緩んでしまう。
でも、私が知りたいのはそうじゃなかった。
(下流労働者への命令は、彼らを支配する唯一の権利である。彼らに自由意思は存在しない)
あの文章が、何だか喉に異物が引っかかったように取れなかった。
空白のノートと埋まらない心 @yuripyonn
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