第18話 球技大会
六月に入ったので、グラウンドに座って開会式を見ているだけでも汗が出てくる。
「なんでこんなに暑い中球技大会なんてするんだろうね」
隣で体操座りしている
「まあ私たちは体育館でバレーだし、開会式だけ耐えればそれなりに涼しいんじゃないかな」
外では男子たちがサッカー、体育館では女子がバレーを行う
令和の時代に性別で競技を決めるのはどうなんだとは思うけれど日焼けしたくない私にとっては好都合だ
ぼーっとしているとまわりが立ち始める、開会式が終わったみたいだ
「
「わかった!絶対行くね!」
サッカー部の男子に頼まれた陽菜ちゃんがふたつ返事でOKをだす
まわりの女子たちは「あのレンくんに話しかけてもらえるなんてずる~い」だとか「絶対陽菜ちゃんのこと好きだよね」とかそんな話で盛り上がっている
体育館に移動して第一試合のコートに入る
「
陽菜ちゃんがにっと笑って拳を突き出してきたのて、控えめに私も拳を突き出す
バレーのチームは各クラス二つずつつくる、大抵は経験者のAチームとそれ以外の人からなるBチームだ。
だけど私は身長が高いのでAチームの残り一枠に入れられてしまった、もちろん陽菜ちゃんとは別のチームだ
「怜頑張れ~」
コートの横で陽菜ちゃんが応援してくれているので絶対にいいところを見せたい
「サーブいきます」
右手を挙げて相手チームに教える
半月かけて授業後や昼休みにバレー部の子に教えてもらったジャンプサーブを放ち、点数を積み重ねていく
十点をとったあたりで疲れが出たのかついにネットに引っかけてしまった
それでも最初の十点が効いたのか、なかなか点差は縮まらない
終了のブザーが鳴る
午前中の予選は全チームが対戦を終えるために時間制になっている
「さっすが怜!半分くらいサーブで点とってたね!スパイクしてるのもかっこよかった!」
陽菜ちゃんがタオルと水筒を持って駆け寄ってくる
「ありがとう、陽菜ちゃんが応援してくれてたからだよ~」
タオルを首にかけ、水筒を受け取る
「次は私が頑張ってくるね!」
陽菜ちゃんがタッタッタとコートに走っていく
「白石さん頑張れ~」
急に大声を出されたのでびっくりして後ろを振り向くとさっきのサッカー部が応援していて、それに応えるように陽菜ちゃんがサムズアップする
「そうだよね、かっこいい人なんて私以外にもいくらでも居るよね...」
心の声がぽつりとこぼれてしまった
「ねーねー怜ってばちゃんと私の活躍見てた?」
気付けば陽菜ちゃんの試合は終わっていたみたいだ
「もちろんだよ」
本当は全く見ていなかったけど反射的に嘘をついてしまった
「本当に見てた?」
座っている私の顔をのぞき込んでくる
「ごめん、本当は見てなかった...でも」
「白石さん!今からサッカーの試合あるから見に来てよ!」
ちょっと考え事してたからと付け足そうとすると話を遮られる
陽菜ちゃんはなにか言いたそうにしていたけどBチームの女子たちに押し切られて体育館を出て行ってしまう
「水瀬さん、このままでいいの?」
頭を下げて涙をこらえているとAチームのキャプテン、大久保さんが手を差し出してくれる
「このままなんて絶対に嫌だ、私は陽菜ちゃんの隣にいたい」
目尻にたまった涙を人差し指で拭き、
「じゃあ絶対優勝しなきゃだね、円陣組んで気合い入れよ!」
「絶対勝つぞー!!」
「「「おー!!」」」
大久保さんのかけ声に合わせてみんなで床を思い切り踏みこむ
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