第17話 これからも

私と陽菜ひなちゃんはクレープを食べ終え、ペンギンを見に行くことにした


「わ~ペンギンかわい~私と一緒に写真撮って」

陽菜ちゃんがスマホを差し出してくる、笑顔でダブルピースして待っているのがかわいい、撮った写真はあとで送ってもらおう

「はいチーズ」


「ありがと~次は私が撮るよ」

「自撮りで陽菜ちゃんと一緒に撮りたいんだけど嫌かな?」

せっかくふたりでまわれるんだからツーショットを撮りたい


「もちろんいいよ!撮ろ撮ろ」

ふたりとも上手く画角に入れてシャッターを切る、すばやくスマホの待ち受けに設定する


ペンギンのいる水槽を抜けると深海魚コーナーがあって、より一層暗くなっていた

「暗すぎない?前見える?」

そんなことを言いながら陽菜ちゃんがくっついてくる


「見えるよ、離れないように手握ってて」

恋人つなぎではなく、友達同士のシェイクハンドだった


深海魚コーナーを抜けてお土産屋さんに行くとちょうどたちばなさんたちが買い物をしていた

「陽菜ちゃんたち見つけた~」

明石あかしさんが近づいてきたので慌てて手を離すと、陽菜ちゃんに肘で脇腹をつつかれる


「結芽ちゃんはお土産何買うの?」

さっきまでの落ちついた声とは違う明るい声で陽菜ちゃんが話しかけている、なんだかさみしい感じがした。

「とりあえずお菓子は買うかな~」


「このちっちゃいぬいぐるみかわいいよ...」

中野なかのさんがひかえめに指さして陽菜ちゃんに教えている

「かわいいいね!通学バックにでも付けるの?」


やっぱり私だけに優しいわけじゃないよね~なに期待してんだろ...

今日は下の名前で呼んでくれるけど明日になったら名字で呼びにもどってるんだろうな...


「れ、水瀬さんもこのぬいぐるみ買おうよ!」

「うん、かわいいから私も買おうかな~」


そこからはあまり覚えていない、陽菜ちゃ、白石さんが他の子と仲良く名前で呼び合ってるのがなぜだかつらかった


バスに乗り込み傾き始めた太陽を眺めていると白石さんが肩をぽんぽんとたたいてくる

「ちょっと耳貸してくれない?」

急になんなんだろう、ろくに返事もせず耳だけ傾ける


「これからも怜って呼んでいい?」

その言葉に喜びがあふれ出て背筋がぞわりとした

「もちろんだよ!私も陽菜ちゃんって呼んでいい?」

思ったよりも大きな声が出てしまったのか、それともあまりに必死だったのか、白石さんが一瞬きょとんとする


「これからもよろしくね怜」

「これからもよろしくね陽菜ちゃん」


「ふたりともいい雰囲気だね~告っちゃえ告っ」

後ろから明石さんがヤジを飛ばしてきたと思ったら急に声が途切れる、たぶん橘さんにやられたんだろう


陽菜ちゃんと向かい合いクスクスと笑い合う、この時間が永遠に続いたらいいのにな

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