魔法少女の中の人 ~伊達女と辻斬り屋は前途多難~
はち
第1話 某日0937時 魔法少女協会会長室 新人魔法少女の所感
僕の祖父は、魔法少女達の頂点に君臨している。ザ・オールド・ワンと言えば皆が尊敬し、憧れる。僕が大好きな魔法少女、クワトロ・セブンもまた尊敬に値すると手放しで褒め称える程だ。
そんな祖父の孫として生まれた僕が魔法少女に覚醒したのは13歳の誕生日、祖父がその地位を使って僕の憧れであるクワトロ・セブンを連れて来てくれた時だった。魔法少女には大きく分けて3種類に分けられる。1つは剣や槍と言った白兵武器を使う甲種魔法少女。有名どころで言えばクワトロ・セブンの弟子であるテン・バーであろう。
次に乙種魔法少女。これは銃や弓と言った武器を使用する魔法少女で、僕の祖父であるザ・オールド・ワンやクワトロ・セブンがこれに当たる。
そして、最後に丙種魔法少女である。これは文字通り魔法を扱う魔法少女で有名な所で言えばクラウド・バスターや雷帝が、これにあたる。
「そして、君だ。
そうだねぇ、グローリー・ショー……は、安直かな?
では、ブロンディ・グローリー……いや、クリーフ・アイってのはどうだい?」
僕の前に座る、一人の少女が告げた。彼女こそ、僕の祖父であり魔法少女の頂点にして最強、ザ・オールド・ワンその人であった。古めかしいカウボーイの様な風体な少女だ。
「クリーフ・アイ?」
「ああ、どうかな?
爺ちゃんが好きな俳優のリー・ヴァン・クリーフと彼が演じたエンジェル・アイから取ったんだ」
エンジェル・アイとリー・ヴァン・クリーフから……
「まぁ、良いんじゃない?
個人的には悪役じゃない、ダグラス・モーティマーの方が好きだなぁ」
「なら、リー・モーティマーはどうだい?」
ザ・オールド・ワンはフムと顎に手を当てて僕を見る。
「うーん……
どう思います?」
僕は先程から扉の近くに立って会話に一切入ろうとして来ないメイドさんと甲冑武者、クアトロ・セブンとジェーン・ザ・リッパーを見る。
「お好きにどうぞ」
「どーでもいいーでーす」
2人は心底どうでも良いと言う顔だった。
「そういう家族での会話は、家でやって貰えますか?」
「幾ら、孫だからって堂々とそう言う内々の話をするのはどうかと思いまーす」
そして、二人は壁にかかっている時計を見た。
「それで、我々を此処に呼んだ理由は?」
クアトロ・セブンはザ・オールド・ワンを見た。
ザ・オールド・ワンはそんなクアトロ・セブンを見てにっこり笑う。
「いやね、一つは孫の事なんだよ。まぁ、そこは殆ど既に済んだけどね。孫の、リー・モーティマーの指導魔法少女は雷帝、インドラ・エネルに頼もうかなって。
そしてね、最近暴れてる魔法少女過激派だよ。あれの全権をね、君達も良く知ってる人達に任せようかなって」
「誰です?」
「上杉君か、宇山江君」
ザ・オールド・ワンの言葉に二人は非常に嫌そうな顔をした。その二人は、 自衛隊の特殊作戦をしてる人たちだ。特に魔法少女関連でよくザ・オールド・ワンと会談をしている。お爺ちゃんは決して僕が関わるのを良しとしないので、たぶんそう言う事だろう。
「ま、その話は追々やろう。
彼等は汚いからね。それより、インドラ・エネルだ。彼女はどうだい?」
インドラ・エネル、彼女は丙種魔法少女でかなり有名だ。また、今じゃあまり語られない魔法少女の地位がかなり向上し、発言力も大いに増えたウィークエンド事件でウィークエンドの脇に居た黒い魔法少女もこのインドラ・エネルだったとか。
まぁ、お爺ちゃんは隠しているが魔法少女協会の偉い人とかそれこそ宇山江さんや上杉さんと関わっているとそれと無く分かって来る。明言はされていないが、そう言う事だろう。
勿論、僕はそれを他人に喋る事も無ければ言いふらす事も無い。僕は魔法少女が大好きだし、お爺ちゃんも好きなのだから。また、ウィークエンド事件以降世界各国では似た様な連中が世界各国でテロを起こしている。イスラム教徒だったり、今だとロシアとウクライナ、中国辺りが盛んだ。勿論、中東やインド周辺もある。
そう言う事なのだろう。何が、とは言わないが。
「苦労していますよ。
貴女が思い付きで組ませた炎帝と氷姫の御世話役で」
クアトロ・セブンは呆れた声色で答える。
炎帝と氷姫は丙種魔法少女の中でも期待のニュービーと言う立ち位置であるが、かなりの暴れん坊だった。炎帝が凄まじい勢いで建物から何からキメラごと燃やし、氷姫も基本的に凍らせる。能力の制御が出来ていない可能性もあるという事で雷帝ことインドラ・エネルが派遣されこの3人がなんちゃってアイドルグループの様な感じになっている。
そんな半ば魔法少女アイドルとしてのメディア露出も多い彼女達の中でまとめ役と言うか、彼女が居なければ炎帝も氷姫も成り立たないと言われているのが雷帝インドラ・エネルであった。裏でのあだ名が苦労人とか負債請負人とか中々酷いあだ名とファンたちからの同情を買っているのだ。
そして、そんな彼女が僕の指導魔法少女になるわけだ。
欲を言えばクアトロ・セブンに指導魔法少女をして貰いたかったが、彼女は忙しい。僕の世話で彼女の手を煩わせるのも申し訳ないし、それよりも、未熟な僕を見られるより、会う度に成長している僕を見て欲しいと言う男の子の複雑な心理って奴だ。
「そうか。だが、上手くやっている様で良いと思うよ」
ザ・オールド・ワンはにっこり笑ったと思うとクアトロ・セブンに僕を連れて下がりなさいと言った。クアトロ・セブンは頷くと僕を連れて外に出る。その際、ジェーン・ザ・リッパーには残るよう告げた。
僕らと入れ違いに上杉さんと宇山江さんが入って来る。
「おー、クワトロにジェーンじゃん。
元気してたかぁ?」
「黙れ」
「喋り掛けないで下さいまし」
宇山江さんが話し掛けると二人はそちらを見る事も無く告げた。大層仲が悪いらしい。
「んだよ、仲良くしろよ。
お前の恩師だろぉ?」
「失礼しますね」
先に行ってしまったクアトロ・セブンを追う為宇山江さんや上杉さん、ジェーン・ザ・リッパーに頭を下げて後を追う。
背後では近寄るなとジェーン・ザ・リッパーの刺々しい声が聞こえ、ザ・オールド・ワンの笑い声と共に扉が閉まる音が聞こえた。
「雷帝は4階の会議室に居るそうです」
「分かりました!」
こうして、僕は魔法少女としての第一歩を踏みしめるのだった。
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