クールで男嫌いな高嶺の花が義妹になったら、俺にだけ甘々にかまってきて可愛い。

☄️星拾いの旅人✨️

season1 クールな高嶺の花が義妹になった

第1話 突然できた義妹がクラスメイトのクール美少女だった

「神楽さん、マジで可愛いよな〜!」

「まあな、上品でクールだし」


教室の隅でヒソヒソと話している、男子生徒たちの目線は、とある一人の少女に向かっていた。


腰くらいまでのストレートロングに、夜空に輝く一番星のような、神秘的な瞳。スレンダーで魅惑的な体型。


「…………んっ」


髪を耳にかけ、わずかに吐息を漏らすその仕草は、男子生徒ならばイチコロである。


「はぁっ、神楽さん………朝露に濡れた黒百合のように美しいッ!」

「お、おう……(引き)、そうだな!」


しかし、彼女は『男嫌い』で有名である。


男子生徒が話しかけると、彼女の眼からは光が消え、氷雪のような冷たさであしらわれるのだ。


「………まあ、それがクセになっちまうんだけどな!」

「変な扉が開いてるじゃねえか………鍵持ってこい、鍵」

「フッ、開いちまった扉は閉まらねぇ………それが世のことわりってやつだろ?」



「はぁ…………」


そんな会話を聞きながら、とある一人の男子生徒は静かにため息をついた。



―――――――――――――――――



「蓮、父さん再婚することになったんだ」


朝食を食べていると、父さんが嬉しそうに報告してきた。


「そうか」

「……………少しは驚いたりしないのかい?再婚だよ?再婚」

「いや、全然。…………あ、おめでとう」

「言うの遅すぎて何も嬉しくないよ?………でもありがとう、蓮」



高校二年生の春、父さんが再婚することになった。しかし俺にとっては義母ができるだけであり、特に驚くことでもない。


―――と、この時の俺はそんなことを思っていたのだ。




 ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡



「ほら、凛も挨拶しなさい」


これからさんになる女性。たしかかぐさきさんだったか………が、挨拶に来た。


「………………かぐりん……です」


俺は適当に挨拶をしてから、幸せそうな新婚の二人の邪魔にならないように部屋に戻ろうとした。


…………だが、義母さんの隣にいる少女が気になりすぎて、部屋に戻れない。


「こんにちは神楽さんたち、これからよろしく…………っと、蓮も挨拶しなさい」

「―――――――」


「おい蓮、何ぼーっとしてるんだ?」


「――――っ、こ、こんにちは……がわれんです。よろしく」


慌てて挨拶をするが、俺の意識はかぐりんという少女に向けられていた。


「凛と蓮くんは同じ高校で同じクラスなんだってね〜」

「おっそうなのか蓮、二人とも仲良くな」


そういう父さんであったが、神楽さんはその気がないだろう。なぜなら彼女は鋭い目つきで俺のことを睨んでいるからだ。


―――彼女は、男嫌いで有名だ。


それでも男子たちは彼女に告白して玉砕するのだが……。



「じゃあ蓮、僕たちは夫婦で仲良く買い物に言ってくるから、凛さんをよろしく。これから同じ家で暮らすんだから、仲良くしていなさい」


その時、神楽さんの視線が僅かに揺れた。


「あ、ああ…………」


そう言って、父さんと義母さんは買い物に行ってしまった。


「………………」



気まずい………………



ここには俺と、眉をひそめて少しも目を合わせない、神楽さん。


なんだか、氷の壁が目の前にあるみたいだ。


俺の視線は下を向き、ボソボソと話す。


「………俺と一緒に暮らすことになってしまって、ごめん」


神楽さんは眉をひそめて、わずかに目を逸らした。


「神楽さんが不快に思うようなことは絶対にしないし、話すのも必要な時だけにする。

だからその………これからよろしく」


「………………」



俺が顔を上げると、神楽さんと初めて目が合った。


彼女は、唇を軽く引き結び、訝しげな目で俺を見返していた。


彼女は息が止まるくらい魅力的で、まるで誰も触れられない夜空の星みたいだった。


「――――っ」


しかし俺は、彼女に恋愛感情なんてものを抱いてはいけない。家族になったとはいえ、しっかりと距離を取って接しなければならない。


「…………よろしく」


神楽さんはぶっきらぼうに、そう言った。正直返事なんて返ってこないと思っていたので、少し驚く。


「……………」


すると彼女はそそくさと、新しく作られた部屋へ行ってしまった。


「………これは、成功なのか?」


この挨拶が成功だったのか失敗だったのかは分からないが、多分そんなことは今後、関係ないだろう。


「家族と言っても、義妹。どうせ関わることなんてないだろう」




―――と思っていた俺だったが、他でもない神楽さんによって、俺たちはちょっとおかしな距離感になっていくことをこの頃の俺はまだ知らなかった。



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