◆――scene3

「俺は人を殺しました。……捕まえてください」


 交番に行ってそうやって手首を差し出した。おぞましいようなものを見る目で警察官が俺のことを見る。その目を見て、なぜかほっとした。

 俺は人を殺した。この手で、殺した。

 殺したのは名前も知らない人。でも、仕方なかったんだ。俺にとって大切な命は譲れない。別に、俺がどうなったっていいんだ。だけを守ることが出来れば。


「なんでそんなことをしたんだ?」

「別に、むしゃくしゃしてたんです。酒飲んだら、なんかそんな気分になって」

「お前、未成年だろ。もうなんなんだよ……」


 ……嘘だ。警察に腹の内なんて明かすつもりはない。

 彼女の名前を出したら、きっと彼女の所にも警察がいく。このことを彼女に知られてしまうのはどうしても嫌だった。最期の俺の我儘だ。

 ――ストーカーだった。

 包丁を持って、彼女の家へ侵入しようとしていた。

 彼女が殺されるかも、だなんて思う前に手が動いていた。一秒後、包丁は俺の手に握られていた。

 俺は君のナイトになれただろうか……。

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