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京の夜は墨を流し込んだよりも暗く、民家の灯かりが所々に見えてはいるが、二十一世紀の日本に暮していた昇太郎には、およそ想像もつかないほどの暗さだった。この時代の人々の大半は、夜明けとともに起きて日没とともに寝る。という、習慣のようなものがあったから、この時間帯に就寝するということ自体、さほど珍しいことでもなかったようだ。
当時の京は昔から京の都と謳われ、天子(天皇)さまの住まわれる御所などもあり、江戸や浪花とはまた違う独特の風情があった。
さて、神仙郷から遥々(はるばる)この時代(慶応三年十一月十五日)に舞い降りてきた、昇太郎とソーラは坂本龍馬の暗殺現場である、近江屋へと向かっていた。道は雨が降ったのでもあろうか、ところどころに泥濘(ぬかるみ)ができていた。
『ほれ、ご覧くださりませ、昇太郎さま。あそこに見えますのが、近江屋かとも思われますが…』
『う、入り口の雨戸が倒されている。急いで行って見ましょう。ソーラさん。まだ、坂本龍馬の精神体が止まっていてくれればいいが……』
倒れている雨戸を踏み越えて中に入ると、入り口の土間に人が倒れていた。
『あ、人が倒れていますよ。ソーラさん』
『その者は、この家の番頭か手代の者かと…。さあ、急いで二階へまいりましょう。昇太郎さま』
階段を上ると龍馬のいる部屋は、戸が空けっぱなしにされており、倒れている龍馬と息も絶え絶えの中岡慎太郎がいた。そして、倒れている龍馬の傍らには青白きオーラを放つように、坂本龍馬の精神体が切られた自分の姿を、見下ろすようにして立っていた。
『龍馬さん…』
『坂本どの……』
昇太郎とソーラが同時に声をかけた。すると、龍馬はふたりの姿を見みて、うつろな眼差しでつぶやくように言った。
『何じゃあ、おんしらは…。わしゃあ、死んでしもうたんかいのう。
己れが目の前で切られている姿を見るちゅうのも、何だか妙な気持ちがするもんじゃのう…』
『坂本どの。わらわは神仙郷よりまいりました、ソーラ・マラダーニアと申すもの。これにおわす方は、斉天大使大山昇太郎さまにございます。此度は神仙郷の神仙大師さまの命により、坂本どのをお召しに上がりましてございまする』
『龍馬さん。初めまして、大山昇太郎と云います。よろしくお願いします。て、いうか。龍馬さんがあまりにも有名な方なんで、初めて逢ったような気がしないんですけどね。それにしても龍馬さんから出ている、その青いオーラは見事なものですね。さすがに神仙大師さまは見る眼が違いますよ。そうは思いませんか。ソーラさん』
『まことにお見事なオーラ、神仙郷においてもこれほどのオーラはお見受けすることもありませぬ』
『一体、何なんじゃい、おんしらは…。その神仙郷とか神仙大師とかちゅうもんは、何のことぜよ。わしには何のことやらさっぱり解からんぜよ』
『坂本どの。あなたさまは、たったいま人に切られてお果てなさいました。いまこうして、わらわたちとお話なされているのは、坂本龍馬どのの精神なのでございます』
『ん、精神体…。ああ、魂とか霊魂とかいうものかいのう。つまり、わしはやつらに切られて死んで、そして精神体に…、魂だけになってしまったという訳か。人が死ぬと魂は残るというがまっこと本当じゃったんじゃのう。ふーむ…。
それにいま思い出したんじゃが、おまんらが云っている神仙郷とやらのことも、だいぶ昔のことだが誰かに聞いたことがあるぜよ。なんでも、そこには偉い神さまとか、仙人さんが住んでいるという話じゃったがのう。おまんらもまっこと、その神仙郷とやらからやって来たんかいのう…』
『そうですよ、龍馬さん。でも、ぼくは龍馬さんの生きていた時代より、百五十年くらい後の日本に生まれたんです。それで、ぼくは学生時代から山登りが好きで、十二月の大晦日に山に登って、令和二年という年の初日を拝んでいたんですが、山を下りようとして足をかけた岩が崩れてしまい、谷底へ真っ逆さまに落ちてしまったんです。
気がついた時は、辺りは真っ暗な闇でした。ぼくは手を動かそうとしてみましたが、感覚もまったくなくて困っているところに、こちらのソーラさが来てくれて、ぼくのことを神仙郷に連れて行ってくれたんです。
そこで神仙大師さまから、斉天大使という称号をいただいて、大師さまの命により龍馬さんをお迎えにきました』
昇太郎は自分の身に起ったことを、大筋ではあったが龍馬に語り終えた。しかし、龍馬はこの時昇太郎が語った、百五十年後という言葉を聞き洩らさなかった。
『何…、おまんは百五十年も先の時代に生きとったとか…。そ、それで、徳川は…、幕府はどうなったんじゃい』
龍馬は、そのことがよほど気になっていたと見えて、即座に昇太郎に問いただしてきた。
『大丈夫ですよ。龍馬さん。徳川幕府はなくなりましたから。龍馬さんも知っていると思いますが、いまからひと月ほど前に、徳川慶喜公が朝廷に大政奉還を行い、来年…、慶応四年には明治という新しい時代が始まるんです。ですから、龍馬さんも安心して、ぼくたちと一緒に神仙郷に来てください』
『ほうか…、来年にはあの腐れ切った江戸幕府がなくなるのか…。だけんど、わしもその新しい世の中ちゅうもんを、一目なりとも見てみたかったもんじゃのう……』
坂本龍馬の精神体は、しみじみとした口調で言った。しかし、龍馬の眼には自分が見ず知らずの不逞(ふてい)の輩(やから)に切られて死んだという、無念さや悲愴感は微塵も見られなかった。
『さあ、そろそろ参りましょうか。坂本どの』
ソーラが龍馬を促した。
『さあ、行きましょう。龍馬さん、神仙郷へ』
こうして三人の精神体は、瀕死の重傷を負っている中岡慎太郎を残したまま、京近江屋の二階の小部屋から、まだ夜明けまでにはほど遠い夜の空へと飛び立って行った。
『ほう…、ここが仙郷というところかいのう…』
神仙郷に着くよりも早く、物珍しさにあちこち見回しながら龍馬が言った。
『だけんど、わしゃあ、神仙さんたちが住んでいるところじゃき、いまちいっと綺麗で賑やかなところかと思っとったぜよ。しっかし、神仙郷には随分と美しか女子(おなご)がいっぱいいるもんじゃきに、わしゃあ、いまたまげて見とれておったところぜよ』
と、龍馬の見上げる空には天女の衣をまとった、若い神仙女たちが優雅な姿で飛び交っていた。
『そうでしょう、龍馬さん。ぼくも初めてソーラさんに連れてこられた時は、まったく龍馬さんと同じことを感じましたよ』
昇太郎もつられて、神仙女たちが舞い飛んでいる空を見上げた。
『さあ、坂本どの。神仙郷に着きましたれば、今宵はわらわの館にてごゆっくりお休みになられて、明日にでも神仙大師さまに、お目通りをして頂かねばなりませぬ。さあ、こちらのほうにお入りくださりませ』
『おう、まっこと、すまんのう…。ソーラどの。すっかり世話ばかけ申して…』
神仙女たちの舞い姿に見とれていた、龍馬もにわかに我に返ったように、ソーラのほ向き返った。
ソーラが門番にひと声かけて館に入ると、奥の方からソラシネが駆け寄ってきた。
『お帰りなさいませ。ソーラさま』
『ソラシネ、坂本龍馬殿をお連れ申したゆえ、使い女たちに宴の用意をさせなさい』
『いいえ、ソーラさま、宴の準備はすっかり整っております。どうぞ、こちらのほうにお越しください。龍馬さま』
『おまんは、ソラシネさんというんかい…。神仙郷ちゅうところは、まっこと美しか女子ばかりいるところじゃのう…』
『まあ、いやですわ。龍馬さまったら…、そんなことを云われたら、わたくし困ってしまいます……』
ソラシネは、思わず頬を赤らめながらも、龍馬を宴の間へと案内して行った。
宴の間に入るや否や、食台の上に盛られた数々の食物を見て、龍馬は思わず驚いたような顔をして叫んだ。
『こ、こげえな豪勢か喰い物ば見たのは、わしぁ、生まれて初めてじゃき……』
使い女たちは龍馬の前に、次々と料理の入った器やら飲み物を運んできた。
『さあ、龍馬さま。どんどんお召し上がりください。本日は、ソーラさまより龍馬さまのお世話をするようにと、わたくしが仰せつかっておりますので、なにとぞよろしくお願いいたします』
『おう、そうか、そうか。時に、ソーラどのと昇太郎どのの姿が見えんようだが、どげんしたとか…』
『ええ、間もなく見えられると思いますので、まずはご酒などをお召し上がりください。それにお料理もございますので、ぞうぞ』
『ほうか。それじゃ、お先に頂くきに…。これはなかなか旨かもんぞね。これは何かの…』
そんなことを話して、龍馬が酒を飲みながら料理を食べている頃、昇太郎とソーラは別の場所で、龍馬のことについて語り合っていた。
『昇太郎どのも見られたと存じまするが、龍馬どのが切られ時に立っておられた、龍馬どのの精神体から発しておられた、あの凄まじいばかりに青白く光り輝く、オーラをどのように見られましたか。昇太郎どのは…』
『確かに、もの凄いオーラだと感じました。ぼくもソーラさんのもただ白いだけなのに、これは普通の精神体ではないなと思いましたよ。さすがは、精神大師さまの見る眼は違うなと思いました。正直云って、龍馬さんの精神体は並みの精神体とは違うというのが、ぼくの率直な気持ちです』
『やはり昇太郎どのも、そのように思われまするか。わらわは龍馬どのの、あの青きオーラを見ましたる時には、落雷でもあったような衝撃が全身に走りました。あのお方は…、坂本龍馬どのの精神体はわらわどもなど、到底足元にも及ばぬほどの尊い存在なのでありましょう。それを精神大師さまはすでに見抜かれておられた。おお、なんという恐れ多いことじゃ…。お、お、お……』
ソーラは、自分では考えても見なかった真実に気ついて、すっかり恐れおののいているようだった。
『でも、ソーラさんそんなに恐れいることはないと思いますよ。ぼくは…、それに龍馬さんだって、ぼくらと同じ精神体じゃありませんか。精神体に上下の隔たりがあるとは思いません。精神大師さまは、また特別な方だと思いますけどね。さあ、ソーラさんも元気を出して、また、あの慎ましやかな女性に戻ってくださいよ』
『昇太郎さま…、わらわは嬉しゅうございます…。わらわは、わらわは…』
『ソーラさん、ぼくも嬉しいですよ。精神太子じゃなくて、ひさしぶりに、ぼくの名を呼んでくれたから…』
『昇太郎さま。わらわは、あなたさまのお側に仕えて本当に嬉しゅうございます。これからはわらわのことは、ソーラとお呼びください』
『え…、また何で……』
『確かに、昇太郎さまのいう通りではございますが、あなたまは精神太子さま。わらわなどよりずっと高いところにおわすお方。それゆえに、わらわごとき者のことを、「ソーラさん」などとお呼びになるのはお止めくださりませ』
『だけど、上下関係があるのなんて、人間界だけで十分だと思うんだけどなぁ…。まあ、いいか。それじゃ、きみのことをこれからはざっくばらんにソーラと呼ぶけど、それでいいんだね』
『はい、ありがとうございます。わらわも嬉しゅうございます』
『あ、それから、その「わらわ」とか「どの」って云うのも、止めてくれないかなぁ…。何だか、時代劇をみたいで堅苦しくていけないんだよ』
『はい、分りました。いかようにもいたしますゆえ、よろしゅうお願いいたします』
『それ、それ。それがいけないんだと思うよ。今度、ぼくが話し方を教えて上げるからさ。さて、そろそろ龍馬さんのところに戻らなきゃ、いけないんじゃないの…』
『まあ、そうでしたわ。わたくしとしたことが如何いたしましょう』
『そう、それでいいんだよ。ソーラ』
それから、昇太郎は急に現代語風になったソーラを従えて、龍馬とソラシネが待つ宴の間へと出向いて行った。
一方、宴の間では酒も入って上機嫌の龍馬は、ソラシネを相手に唄ったり踊ったりの、どんちゃん騒ぎの大はしゃぎの真っ最中だった。
『ほうか。ソラシネ、まっことおまんは、うまいことば云いよるきに、わしゃあ、たまらんぜよ。ウワッハハハハ…』
『ほんとうなんですってば、龍馬さま…』
『また、また、またぁ。ほんにおまんは、面白か女子じゃのう。クックックッ…』
『だいぶ賑やかで楽しそうですね。龍馬さん』
宴の間に入ってきた、昇太郎が声をかけた。
『おお、昇太郎さんか。いやぁ、このソラシネが、あんまり面白かことば云うもんじゃき、わしゃ、腹が痛うなってきたぜよ』
『何の話をしていたんですか。一体…』
『いえ、何でもありません。何でも…』
ソラシネは話題を変えようと、何故か必死になっているようだった。
『隠してもダメですよ、ソラシネ。わたくしにはすべて判るのですから。また、あのことを龍馬さまに話したのですね。あなたにも誠に困ったものですこと…』
『あのこととは、一体なんですか。ソーラ』
『昇太郎さまが、気になさるほどのことでもありませんから、どうぞ、ご心配なく…』
『ソーラさま。きょうのソーラさまのお話のしかた、いつものソーラさまと違いますけど、どうかなされたのですか…』
『いいえ、どうもしませんよ。昇太郎さまがこうしなさいと云われたので、そういたしたまでのことです。ソラシネには関係ありません』
『あ、ソーラどの。つかぬことを聞くようですまんが、このソラシネをわしの嫁にもらう訳にはいかんかいのう…』
『ええ…』
『まあ…』
『……』
言われた本人はともかく、昇太郎とソーラは仰天の声を上げた。
『えー、だって、龍馬さんにはお龍さんという、奥さんがいたじゃないですか…』
『ほう、おまんも、よう知っとるのう。だけんど、わしはごらんのように、切られて死んでしもうたき、お龍にはわしの分まで、長生きしてもらわんといかんのじゃ。わしは死んで、精神体として生き続けにゃいかんのじゃが、ひとりじゃとても寂しゅうて、やっていられんき。ソラシネを嫁にもらいたいと思うたんじゃが、どうじゃろうかのう。ソーラ
さん…』
『龍馬さま。ここ神仙郷では犯罪以外はすべて自由なのですが…』
と、ソーラは思いつめた顔の龍馬を前に語りだした。
『ですから、わたくしにおふたりの結婚について、とやかく云う資格も権限もございません。大事なことはおふたりのご意思だけなのです。龍馬さまのお気持ちは、いまお聞きました通り明白です。
ここで重要なのは、ソラシネの気持ちだけなのですが…。ソラシネ、あなたの気持ちはどうなのですか。龍馬さまと添い遂げる意思はおありなのですか…』
すると、ソラシネは一瞬その頬を真っ赤に染めながら、ポツリポツリと話し始めた。
『あの…、その…、つまり、龍馬さまのお嫁になるということは、龍馬さまのお子を産むということでございますよね…。ソーラさま』
『そのとおりですよ。ソラシネ』
『わぁ…、恥ずかしい……』
ソラシネは、思わず両手で顔を覆い隠すと、耳や首筋まで真っ赤になっていた。
『龍馬さま。ごらんのように、ソラシネはまだまだおぼこでございますが、そりでもよろしいのでしょうか』
『なんの、かまわん、かまわん。ほんによか女子じゃき、ソラシネは…』
龍馬はソラシネの肩を、優しく包み込むように抱いた。
『ああ、それから龍馬さま。お伝えするのが遅くなりましたが…』
と、何ごとかを話そうとして、ソーラが龍馬のもとへ寄ってきた。
『明日の件でございますが、神仙大師さまからの知らせによりますと、龍馬さまおひとりで来るようにとのとでございました』
『ほう、わしゃあ、何か神仙大師さんに怒られるようなことでもやったかのう…』
『さあ、そのようなことはないと思いますが、何しろ神仙大師さまは龍馬さまのことは、非常に高く評価されておられると聞き及んでおりますから…』
『ほなら、いいけんど…。さあて、明日のためにひと眠りするかのう。ソラシネも一緒にこいや…』
龍馬が立ち上がるとソラシネも黙って立ち上がり、龍馬の後を追うように宴の間にから立ち去って行った。
『ふう…、台風一過ってところだな。ありゃあ…』
龍馬たちを見送りながら、昇太郎がつぶやいた。
『本当に坂本龍馬さまは、あのように賑やかなご人物だったのでしょうか…』
『さあ、ぼくにも判らないよ。生きている時の龍馬さんには逢ってないし…。
でも、これだけは云えるかも知れない…。幕末動乱期に生きていた龍馬さんは、その混沌とした状態から脱出することができた。だから、龍馬さんはその反動であそこまでハチャメチャなことを、やっているんじゃないのかなと、ぼくは思っているんだよ。
幕末という時代は本当に過酷な時代で、人が切ったり切られたりとか、日常茶飯事のように繰り返されていたというんだから、ぼくらの時代では、想像もつかないほど暗い時代だったんだろうな…』
昇太郎は、幕末という時代を思いやりながら、しみじみとした口調で言った。
『昇太郎さま。あなたもお疲れでしょうから、そろそろお休みになられてはいかがでしょうか…』
『今日もいろいろあったけど、明日もあるからもう休もうか。ソーラもおいでよ』
こうして、神仙郷の夜も静かに深まって行った。
翌朝になると、坂本龍馬は神仙大師に逢いに行く準備をしていた。そこへ昇太郎とソーラが見送りにやって来た。
『もう準備はできたのかい。龍馬さん』
『おう、いまできたところじゃき、ほな行ってくるぜよ。なるべく早く帰るきに、ソラシネもしっとう待っとうせ』
龍馬の後ろ姿には微塵の翳(かげ)りも見れずら、ソラシネはその遠ざかって行く龍馬の姿を、慎ましやかな眼差しで静かに見送っていた。
『さあ、そソラシネ。龍馬さまのお帰りになられるまで、わたくしたちとともに過ごしなさいな』
『はい、そういたします…』
『どうだい。ソラシネ、龍馬さんは優しくしてくれるかい…』
昇太郎が訊くと、
『ええ、とても…』
と、いまにも消え入りそうに、ほほを赤らめながらポツリと答えた。
それから、ソーラと昇太郎は昨日ふたりで話し合った、坂本龍馬という並み外れた大きな精神体について話して聞かせた。
『ですから、龍馬さまのことは精神大師さまも、すでに見抜かれておられたようで、今回の昇太郎さまに命じられて、龍馬さまを迎いに行かせられたという訳なのです』
『そうなんだよ。ソラシネ、ぼくも最初に見た時、自分が切られて倒れている姿、じっとを見下ろしている龍馬さんから、青白く光るオーラを見た時にはマジで驚いたんだよ。いまでは仙郷にやって来たから、見えなくなってしまったけどね。
だから、それだけでも龍馬さんという精神体は、ぼくなんか足元にも及ばない素晴らしい精神体なのさ』
『でも、そのような偉い精神体の龍馬さまが、どうして、わたくしのことをお嫁に欲しいなどと、おっしゃられたのでしょう…』
『さあ…、それだけきみが美しくて可愛いかったからじゃないのかい。ソラシネ』
『まあ、昇太郎さまったら……』
ソラシネは、ますます消え入りそうに、衣の袖で顔を覆い隠してしまった。
そうこうしているうちに時は移ろい、そろそろ夕刻の時間に差しかかろうとしていた。
しかし、龍馬は帰る時刻を過ぎても。一向に戻ってくる様子も見えなかった。
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