物語の主人公は、かつて足枷を嵌められ、自らの肉を削いで自由を掴み取った、足の不自由な記録官・ガルヴィング。彼の「小さくゆっくりとした一歩」が、歴史の狭間に消えゆく伝説を拾い上げ、世界に新たな理を刻んでいく。
本作の最大の魅力は、魔法という存在だ。「傑物の逸話を記録し、その物語を模倣する」ことで未知の力が顕現し「力」へと変換される。
「ミルクのような濃霧」の中を歩む巨人の群れ、石にされた人々が並ぶ「白い森」。著者の紡ぐ言葉は、荒廃した南部の地を残酷ながらも美しい。加えて、石眼を持つエルフの英雄や、我流を極めた老剣士、そして好敵手となるであろう「大炎術師」ロブといった個性豊かな登場人物たちが、ガルヴィングの旅路を彩る。
ガルヴィングは自らを「下の中の人間」と称し、最強を求めない。彼が望むのは、自分だけにしか届かない、自分だけの「唯一の力」だ。持たざる者が、観察と記録という武器を手に、王族や騎士といった強者たちの世界に挑んでいく姿には、静かな、しかし熱い意志が宿っている。
「僕は、歩くことが好きだ」
ただのファンタジーの枠に収まらない、重厚な人間ドラマと緻密な世界構築。読み終えた後、あなたの目には、見慣れた景色さえも「記録されるべき物語」として映るはず。
本格派のファンタジーを求める読者はもちろん、一歩一歩自らの道を進もうとするすべての人に捧げたい、珠玉のファンタジー。「魔法」に名前が付くその瞬間を、あなたも目撃しませんか?