23話
文化祭2日目。実行委員会の仕事にもそれなりに慣れてきて、昨日よりは緊張せずにこなせるようになった。今日は音色ちゃんも蝉川さんも一緒ではないが、他の実行委員会の人達ともちょっとづつ打ち解けてきた。
そこで分かったことは、私は『闇属性の方の不思議ちゃん』として名が通っているということ。理由は音色ちゃんが『光属性』だから相対的に、あとは私の名前が『真夜』だから。私の方が音色ちゃんより幽霊とか見えてそうだの色々言われているようだ。まあ実際見えてるし陰キャだし、いじめられるわけでもなく、ただただそういう奴として受け入れられているのなら御の字です。
でも、皆の前では明るく振る舞っているけど、音色ちゃんにだって影があるんだよ?みんな見たことないでしょうけど?と内心マウントをとってみたり。
「やっほ~」
「あ、ザクロちゃん」
「昨日はありがとねー」
いわゆる一軍の女子とでもいえばよいであろう集団とともにザクロちゃんが現れた。自分の担当の時間が終わり他のクラスや部活の出しものを周っているようだ。
「弟さんはあれから大丈夫だった?」
「体が軽くなったって、無駄に元気になっちゃった。あの女の子だけど、あいつに告ってフラれた後、そのことで周りにいろいろ言われたみたい。真夜ちゃんは見えたと思うけど、結構かわいかったんでしょ?」
「うん」
「それを妬んでるグループが、振られてざまあみろ、ブスが調子乗んな…みたいなこと言ってたみたい」
それで学校へ行けなくなった…と。そして弟さんへの想いが歪んだ形で、生霊として現れたといったところか。
「あたしから釘刺しとこうとは思うけど、効果あるかどうか」
「きっと大丈夫だよ」
「えっこの子が、あの真夜ちゃん!?」
周りのイケてるお姉さん方(同級生)は、どうも私を渡良瀬真夜と認識していなかったようだ。確かに今日は音色ちゃんの巻き添えでガラにもなくエクステなんてつける羽目になったのだから、いつもと雰囲気違うよね。
「どの真夜ちゃん?」
「よく音色が連れまわしてる子。ザクロとも話すんだ」
「そうそう、渡良瀬真夜ちゃん。みんなよろしくね~」
「あ、えっと、どうも」
「今日頑張ってお洒落してんじゃん。自分でやったの?」
「絶対、音色にやられたんでしょ」
「は、はい…」
「雰囲気変わったよね、頑張ってる頑張ってる」
頑張った結果どうなのでしょう?
その後は慣れない写真撮影なんかして、一軍のお姉さん達は嵐のように去っていった。
お客さんの入場が途絶えていたからちょうどいいと思っていたが、校門の方に気配がして視線を移すと同年代の女の子が立っている。気配といっても、ヒトの気配とか、そういうものではなかった。今まで怪異の邪悪な気配を感じたことはあれど、今まさに感じるのはその逆だ。マイナスイオンでも出ているかのような清々しい、神々しい感じだ。人の姿をした神的なものだったらどうしよう。
「あ、あの~、校門のとこに人いますよね?」
「さっきからいるね。誰かと待ち合わせしてるんじゃない?一応声かける?」
よかった、他の人にも見えている。れっきとした人間だ。でも、とても同じ人間とは思えないオーラを感じる。
ふと、神々しい女の子と視線が合う。流石に視線に気づかれたか。視線を向けたまま、女の子がこちらに向かって歩き出す。それとほぼ同時に、クラスTに身を包む本校の生徒が女の子に声をかけた。ここからは声が聞こえないが何か渡しているようだ。何かを受け取った女の子は、本校の生徒と一緒に受付にやってきた。
「貰ってるところ見られちゃったから言うんですど、どうしても今日こちらに来たくて、友人のツテでチケットをお願いしていたの。直接の知人というわけではないのだけど、参加できますか?」
「私の家族が来れないんです。だからチケット余ってて」
防犯等の兼ね合いで、入場者はチケットを貰った生徒の家族・知人、あとは中学生と決められている。この子が問題を起こすような人には見えないが…。
「ど、どうします?でも実際、さっきの見てなかったら私は通してたと思いますし…」
「正直に伝えてくれてるし、どうしようかな。一応、委員長か信楽さんに聞いてみる?」
「…え!?シガラキ!?」
神々しい女の子は落ち着いた態度を一変させ、実行委員会の先輩に詰め寄る。
「そんな苗字そうそういないわ。名前は!?クロエじゃない!?」
「ええ!?なんで知ってるの!?」
「やっぱり!絶対オカルト研究会に所属してるでしょ!そんなんでしょ!」
「ええ!?」
その子は信楽クロエ先輩の名前を言い当てた。オカルト研究会のことまで。
「あの!私もオカルト研究会のものです!きっと先輩や、オカルト研究会のことで用があるんですよね。私が案内します!」
「…あんた名前は」
「わ、渡良瀬真夜といいます」
「そう。…ごめんなさい、騒いでしまって。名乗りもせずに」
その子は改めて私の方を向きなおす。
「
***
占いの館と化した生徒会室に、今日も開店前から特別にお客さんを招き入れることとなった。今日は私だけでなく、音色ちゃんも、信楽先輩も早めに集まった。当然、本日のお客様第一号に会うために。
「まさかこんなにすぐ効果が現れるとは思わなかったわ。SNSの力は偉大ね」
「もっといろいろ発信してくれていれば、断然早く会えたんじゃない?」
一通り自己紹介を終え、これまでの経緯を帆井逢里さんに話してはみたものの、感動の再会という雰囲気ではなかった。
当時のグループのリーダー格だったらしい帆井さんは、確かに気が強そうな印象を受ける。昔の友達とはいえ、信楽先輩に対してもちょっと態度が大きいような。
「それにしてもだいぶ変わっちゃったわね。特に音色なんか別人みたい。本人で間違いないの?怪異と入れ替わっているなんてことは?例えば…」
「あ…アタシは…!」
「音色ちゃんは、音色ちゃんです!!…あ、すみません」
「…あんた、真夜って言ったわね。真夜が音色に連れられて小学校に行ってそのコックリさんを見つけた。そしてコックリさんが再び現れた。その時他に変わったことはなかったの?あんた達が出したのは赤いコックリさんだけ?何か忘れてることはない?!」
帆井さんの剣幕に押されてたじろいでいると、音色ちゃんと信楽先輩が割って入る。
「ちょっとやめて!真夜ちゃんはアタシに協力してくれただけ!」
「あたし達の分かっていることはさっき話した通りよ」
「本当に?」
「待って…確か私と音色ちゃんが
「…そうだったかも」
「なるほど、分かってきた」
帆井さんは何か腑に落ちたように落ち着きを取り戻した。
「こんなことになったのは、やっぱり音色が原因と見てよさそうね」
「そ、それはっ…」
「待ちなさいよ。儀式中にめちゃくちゃにしちゃったのは、もうしょうがないでしょう。皆、恐怖でパニックだったじゃない。順番が違えばあたしがめちゃくちゃにしたかもしれないわね」
「小学校の頃にやった儀式は…まあ、自分で言い出したことだから、攻めるつもりはないわ」
帆井さんは腕を組み静かに話し始める。
「今年の4月に小学校でコックリさんを呼び出た。そして同じ時期にクロエのドッペルゲンガーが以前にも増して出現する頻度も増え、力も増してきた。そうなんでしょう?」
「言われてみれば、確かに時期は被ってたみたいね」
「同じ時期に変化があったのはあんた達だけじゃないのよ」
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