<後編>~ひとの答え~

ーー第1章 「再生する世界の始まり」ーー

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……そして……新しい世界にて、セレネは目覚めるーー

                       ------


    ………………いか………………で……



    ……お……いてか……ないで…………



セレネ「……おいてかないでっ……!」



セレネ「…………っ…………!」



セレネ「…………


    ……ここ……は……?」



セレネ「……うっ……まぶ、しい……」



セレネ「…………?」



セレネ「……明、るい……?」



セレネ「…………


    ……これは、光……白い、光……?」



セレネ「…………!


    ……お母さんが、言っていた……


    ……白い、輝き……?」



セレネ「…………


    ……上から……降り注いでる……」



セレネ「…………


    …………!」



セレネ「……世界の、鏡がっ……白く……輝いてる……!」



セレネ「…………っ!


    ……それに……暖かい、風……


    …………緑の……大地…………」



セレネ「……っ……!」



セレネ「……もう……ここは……」



セレネ「…………


    ……私の、生きてきた……


    ……私たちの……世界、じゃないんだっ……」



セレネ「……っ……


    ……もう……女神さまと……


    お母さんとは……会えない、のかな……」



セレネ「…………っ


    ……いや……だよっ……」



セレネ「…………!

    

    ……あの……大きな樹はっ……!」


    

セレネ「……っ!


    ……女神さまっ……お母、さんっ……!」




------

……そして、大きな樹の前にてーー

              ------


セレネ「……女神さまっ……お母さんっ……!


    ……どこっ……どこに、いるの……?」



セレネ「…………っ


    ……返事……して、よ……」



セレネ「……私はっ……


    わたしは、ここに……いる、よっ……」



セレネ「……だか、ら……


    ……おねがい、だから……こたえ、てよ……」



セレネ「…………


    ……っ……!」



セレネ「……入口が……


    …………閉じ、てる…………?」



セレネ「……っ


    ……なんでっ……なんで……なの……」



セレネ「……お願い……」



セレネ「…………っ


    …………お願い、だから…………」



セレネ「……開いてよっ……

    

    …………会わせてよっ…………


    …………あいたい、よ…………」



セレネ「…………どう、して…………


    …………どうして、あえない……のっ…………」




------

……セレネの叫びは……


悲しみの、想いの限りの……叫びは……


……虚空に、消えていった



……疲れ果て、崩れ落ちるように……


大きな樹にもたれかかる、セレネを……暖かな光が、包み込む……



……その光は、暖かな記憶を……セレネに思い起こさせた


……かつて、母に抱きしめられたことを……


……そして、女神から託された言葉の数々をーー

                             ------


セレネ「…………っ!


    ……暖、かい……」



セレネ「……っ……


    ……この、温もりは……


    ……女神さま……お母、さんの……」



セレネ「…………っ…………!


    …………」



セレネ「…………    


    …………わかっ……たよ…………」



セレネ「…………っ


    ……二人の、願い通り……私は……」



セレネ「…………私、はっ…………


    ……この世界を、見守っていく……からっ……」



セレネ「…………


    …………だから…………」



セレネ「……また……


    ……会いに来ても、いい……かな……」



セレネ「……何回でも、ここに……


    ……この……暖かな、場所に……」



セレネ「……っ……


    ……それ、くらいなら……


    ……許してくれる……よね……」




------

……そして、セレネは……再生する世界を生きていく



……新しい世界での日々を過ごす中、


あるとき……彼女は、物思いにふけるのだったーー

                      ------


セレネ「…………」



セレネ「(……この世界で、しばらく過ごしてみたけど……)」



セレネ「(……人間たちが、穏やかに暮らしてくれていて……


     ……本当に、良かった……)」



セレネ「(……今のところは、大丈夫……)」



セレネ「(…………


     ……あの……女神さまの記憶に合ったような、


     人間同士の……悲しい争いも、起こってない……)」



セレネ「(…………


     ……このまま、何事もなければ……)」



セレネ「…………っ」



セレネ「(…………まあ、私は…………


     あの人たちとは……関われない、のだけどね)」



セレネ「(……私は……怖いんだ……


     ……大切な人を、失うのが……)」



セレネ「(……っ……

 

     ……もう……あんな……


     ……悲しい思いは、したくない……)」



セレネ「(……だからこそ……)」



セレネ「(…………


     ……女神さまの言っていた、見守る者……


     ……そんな、言葉で……)」



セレネ「(…………

     

     ……都合よく、今の自分を……


     役割としての私を……正当化、してるんだろうな……)」



セレネ「……っ……!」



セレネ「(……だめだ……


     今は……私のことじゃない)」



セレネ「(……この、世界を……


     ……女神さまとお母さん、お父さんが……)」


  

セレネ「(……大切なみんなが、繋いでくれた世界を……


     ……私が、守らないと……)」



セレネ「…………っ…………」



セレネ「(……だから、今は……


     あのことについて、考えよう……)」



セレネ「(…………


     ……あの、『魔物』……という、


     人間たちが、そう呼んでいる存在について……)」



セレネ「(……私が感じた限り、あの魔物たちは……


     人間たちとは違って、陰と陽の心を持たず、


     ただ……そこに、あるだけの存在……)」



セレネ「…………」



セレネ「(……なんで、私は……


     ……心を感じることが、できるんだろう……)」



セレネ「(……前の世界では、こんなこと……


     ……全く、分からなかったのに……)」



セレネ「(…………


     …………女神さま、なら…………


     …………お母さん、なら…………)」



セレネ「(……聞いたら、教えてくれた……のかな……)」



セレネ「……っ……!」

 


セレネ「(……また……考え、ちゃった……)」



セレネ「(…………っ


     だめだめ……しっかり、しないとっ……!)」



セレネ「(……魔物について、考えよう!)」



セレネ「(…………


     ……とにかく……


     魔物たちは心を持たない、空っぽの存在……)」



セレネ「(……そして……


     存在している場所に、明確な偏りがある)」


     

セレネ「(……その場所は、あの……大きな樹を……)」



セレネ「(…………


     ……世界の中心にある、大きな樹……)」



セレネ「(……あの聖域を境にして、


     片側にしか……存在していない)」



セレネ「(……姿は、人間そのもの……


     ……だけど、違うところがある……)」



セレネ「(……お母さんのような……


     悪魔のような……黒い、翼……)」



セレネ「(……そして……顔と、身体の輪郭がボヤけて……


     ……はっきり、しないことだ)」



セレネ「(……それに、言葉を話すことも……


     ……鳴き声を発することも、ない……)」



セレネ「(……本当に、そこにあるだけの存在……)」



セレネ「(…………


     ……世界の、背景……景色の一部……みたいな……)」



セレネ「(……あんな存在は……


     女神さまの記憶には、いなかった……)」



セレネ「(…………


     ……本当に、あの魔物たちは……なんなんだろう……)」



セレネ「…………」



セレネ「(…………まあ、


     今は何事もないから……いい、かな)」



セレネ「(…………


     ……何か起こった時は、私が……何とか……


     ……何とかする、だけだしね)」



セレネ「…………っ」 



セレネ「(……もう……この世界には……


     …………私しか、いないんだから…………)」



セレネ「(…………


     ……私が、やるしか……ないんだーー)」

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