------

……ある始まりの、夢の中にてーー

　　　　　　　　　 　 　　　------

……燃えている

争いがあったのだ

……そんな場所で、ある悪魔が倒れている

……彼女は片翼を失っており、

いまにも……命の灯が、消えてしまいそうだ

……ふと、彼女の手が動いた

闇の中で……光に、縋るかのように……

……そして……

彼女の瞼がゆっくりと上がり……その瞳が、光を捉える

……瞳の先には、天使の僕がいた

……彼女と同じく……

片翼を失い、消えようとしている……僕が……

……彼女の声が、聞こえた

か細くも、はっきりとした声が……僕の心に、響く

「……天使、様……」

……僕を求める響きが、

消えゆく恐怖を……和らげてくれた

……僕は、求めていたのだ

恐れを覆い隠してくれる、暖かな闇を……

……こうして、光と闇は交わり……ひとが、生まれた

------

……ある洞窟の中にてーー

　　　　　　　　　　------

悪魔「…………きて…………ね」

ひと「……う～ん……」

悪魔「……起きてね～」

ひと「…………悪魔……さん…………？」

　

ひと「……はっ！？」

ひと「…………

　　　……おはようございます！」

悪魔「……おはよう～

　　　よく寝てたね～」

ひと「……あははっ……

　　　なんか、夢を見てたみたいで……」

ひと「……ぐっすり……寝てしまいましたっ……！」

悪魔「…………ふふっ」

悪魔「…………

　　　…………でも、夢ね～」

悪魔「……どんな夢、だったの？」

ひと「…………

　　　…………う～ん…………」

ひと「……それが、あんまり……覚えてなくて……」

ひと「…………

　　　…………周りが燃えていて、凄く怖い…………」

ひと「……そんなことしか……思い、出せないんです……」

悪魔「…………

　　　……燃えている……か」

悪魔「……………………」

悪魔「……まあ、夢だしね～　

　　　あまり気にしなくても、いいと思うわ～」

ひと「…………！

　　　……そう、ですねっ……！」　

ひと「……ぐっすり寝れたし、良しとします！」

悪魔「……うんうん！」

悪魔「……元気がでてきたね～

　　　その調子なら、大丈夫かな～」

ひと「…………！」

ひと「……ついに……ですかっ！」

悪魔「……うん！

　　　……ついにだよ～」

悪魔「……天使さんも、待っているだろうから……行こうか～」

ひと「…………はいっっ！」

------

……洞窟の入り口にてーー

　　　　　　 　 　　------

天使「…………zzz…………」

悪魔「……天使さ～ん、いますか～」

天使「……zzz……」

ひと「……天使さーん、

　　　おはようございまーす！」

天使「……！」

　

天使「…………おはよう」

天使「…………

　　　……夢を、見ていたみたいだ」

ひと「…………！」

悪魔「……周りが燃えている、夢……ですか？」

天使「……！　

　　　……ああ……そうか」

天使「……また、同じ夢を……見ていたんだね」

ひと「…………

　　　……そう、みたいですね」

ひと「……いつものように、

　　　あんまり、覚えて……いないんですけど……」

ひと「……！」

ひと「……そういえば……

　　　悪魔さんは、夢を見ることは……ないのですか？」

悪魔「…………そうね～」

悪魔「……あなたや天使さんと……

　　　同じ夢を、見ることはないわね～」

悪魔「…………

　　　……まあまあ、夢より……今は、あのことよ～」

悪魔「……そうですよね～、天使さん」

天使「……！

　　　……そう、だったね」

天使「……じゃあ、行こうか……外の世界に」

------

……ひとが初めて訪れる、洞窟の外の世界にてーー

　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　------

ひと「……ここが、外の世界ですかっ……！」

ひと「…………？」

ひと「…………

　　　……なんだか……暗い、ですね」

悪魔「…………そうだね～」

悪魔「……昔から、この世界は……変わってない」

天使「…………

　　　……でも、確実に……崩壊へ、向かっている」

天使「…………感じるんだ…………急がないと」

ひと「……！？

　　　……崩壊……？」

　

ひと「……この世界は……

　　　無くなって、しまうのですかっ……？」

悪魔「……そうね～

　　　今のままなら、無くなっちゃう」

　　　

悪魔「……上を見て

　　　あの空に、浮かんでいる……」

悪魔「……この世界を照らす、丸いものを」

ひと「……上……？」

ひと「……！

　　　……空の、丸いものって……」

ひと「…………あの…………大きいもの、ですか？」

悪魔「……そうよ～

　　　あれはね……この世界を映す、鏡なの～」

悪魔「……元々は、白色に輝いていた……

　　　らしい……のだけれど、今はーー」

天使「ーー中心を境に……」

天使「……黒色と黄色に、分かれて……輝いてしまっている」

ひと「……？

　　　……分かれていると、ダメなのですか？」

天使「……ああ

　　　一つの器に、二つのものは……入らないんだ」

天使「……無理に入れてしまうと、器が壊れてしまう……」

天使「……だから……

　　　本来は、混じり合っているもの……なんだ」

悪魔「……今は、世界という器に……」

悪魔「……二つのものが……

　　　無理に入れられて、しまっているの～」

悪魔「…………だから…………ね」

悪魔「……遠くない未来に、壊れてしまうのよ」

ひと「……っ……！？」

ひと「…………

　　　……崩壊を止めることは、出来ないのですかっ……？」

天使「…………女神だ」

天使「…………

　　　……女神に会うことができれば……」

天使「……世界が崩壊することは……防げる」

悪魔「……女神様はね～

　　　この世界を、創られた方なの～」

悪魔「…………

　　　…………だから、女神様なら…………」

悪魔「……壊れかかっている、この世界を……

　　　きっと……もとに、戻してくれるわ～」

ひと「…………！」

ひと「……なら、行きましょう！　

　　　女神さまの……ところにっ！」

天使「……！」

天使「……そうだね、行こうか」

天使「…………

　　　……そのために、僕たちは……外に、出たのだからーー」