愛犬の死。
と聞くと、「=悲しい」とか「=涙」とかいうものを反射的に想起するのではないでしょうか。
でもきっと、実際はもっと多様で、複雑なのです。
どこか現実感のないような気持ちに、ふわふわと彷徨う思考。その飾らないひとつひとつから、深い愛情を感じました。
作者様も、涙を流したお母様も、UNOの話を持ち出した弟さんも。それぞれがちょっとずつ異なるトニーへの気持ちや思い出を持っていて、それらの受け止め方も、それらをどういった感情や言動に変えていくかというのも、ひとりずつ違っているのだと思いました。
血肉がこの世から消えても、記憶の中ではずっと一緒にいられるはず。なのに、どんどん輪郭は曖昧になっていく。
切ないけれど、それでも手元に残るいっとう愛しいものがあるのだと、祈らずにはいられません。
それは紅茶とチョコパイが燃えた後にも、もしかしたら残るものなのかもしれません。