第20話 盛夏
「おれは今すぐお前を食べたい、、」
後ろから抱きすくめられた。
「ダメです、今は包丁を持っていて、危ない、あァァ、、、そこ、駄目で、ァァ、、」
(包丁を離せばいい……コッチを向け)
――――――――――――――――――
久しぶりに雨が降り、涼しくなった夕方。
病院に居る伯母さんとしばらく電話で話をしていた
午前中には「男」の車に載せてもらい、隣町の病院までお見舞いに行ってきた。
体調が良さそうな伯父さんは冗談も言える程で、病室は終始
民宿の片付けについても、一緒にいた「男」共々に伯父さん伯母さんの双方から礼を言われたり、出来れば此処まで片付けが済んでいると有難い、と言う話もして貰った。
病院からの帰り道の昼過ぎ、随分と海からの黒雲が多くなって来て、今にも雨が降りそうになっていた。
青空が〈黒い濃い雨雲〉に消されて行き、風も昨日までのからりとしたものでなく、湿り気のある蒸した肌に張り付く空気になっていた。
「お前は雨が降ってくるから民宿に戻ってろ、おれが買い出しに行ってくる」
と「男」が日向を先に民宿に置いて買い出しに出掛けた。
その言葉通りに、雷鳴がゴロリと鳴り響き、ザッと降って来た雨に、慌てて洗濯物を取り込んでいたのだった。
今夜は、海上にある前線が多くの雲をもたらしてきて、更に夜半にも激しい雷雨になるだろうと、「男」の車で聞いた天気予報士が伝えていた。
いま、雨音は聞こえない、一時的に上がったらしい、、雲の間から西日は射しているが、湿度が高く、暗くなるのが早かった。
そこに買い出しから帰って来た「男」がキッチンに立っていた日向を、入って来た途端に抱いて来たのだった。
――――――――――――
「ダメです、今は包丁を持っていて、危ない、あァァ、、、そこ、駄目で、ァァ、、」
(包丁を離せばいい……コッチを向け)
日向に拒否するチカラは無い。
ふうとため息をついて、包丁を脇に片付けて「男」の方を向いた。
背の高い「男」が被さる様に日向の身体にのし掛かる、流しに背中を押しつけられ、のけぞった首筋に唇を当てて来た。
「甘えてくれ」
「……えっ……」
何を言うんだ? このヒトは……
「お前からキスするんだ……」
(今夜は伯母さんが戻ってくるから、何も出来ない、だから、それだけで勘弁してやるから、、)
と囁かれた。
熱い手は日向のズボンの真ん中に置かれている、でも軽く押されているだけで、
予兆を感知した日向の陰茎の方がジワジワと、既に硬さを増して来て、ズキズキする疼きが恥ずかしい事に陰茎から、更に後ろからも立ち昇ってきてしまっていた。
(、、あァァ、、く、、分かってやってる、、)
むずむずし始めた身体の疼きを無視して、日向は何とか先程の伯母さんとの会話を伝えた。
伝えるとどうなるのかは、予想はついているのだけれど、、
「あの、、この後、雷雨になりそうなので、、今夜、、伯母さんは、、」
「男」にねだられた口付けのことには触れずに、日向は顔を下に向けて伝えた。
「……泊まりか……良かった、、」
嬉しそうに言われた。少し雨に濡れた「男」の体臭が濃く日向に向かって来た。
――――――――――――――――
伯母さんが泊まりになる時には、必ず抱かれる、、
(どうして、俺は拒否出来ないのだろう、、)
一晩中、肌を合わせられ、深い口付けで熱い波に翻弄される。
その時の「男」の手は優しくて、あちこちを撫でて来る。
日向がどんな風に
息が感ぜられるほどの近さで見つめられる、、
瞳も、動く手も、、
日向の内側でいつまでも
(激しくて、、優しい、、)
身体の方がそれを
だから、避けたいのに身体は受け入れつつある、、自分に日向自身も困惑する、そんな状態になっていた。
――――――――――――――――――
また、遠くの方から雷鳴が聞こえてきた。
じっとりと湿度が高いのは、間近にある「男」の整った唇が呼びかけてくるからだと日向は考えながら、下を向いたままでいると、
そっと頬に手を添えられてゆっくりと上に導かれ、「男」の唇がまた目の前に来た。
もう、そのまますれば良いのに、、と日向は半ば呆れて思うのだが、少し笑っている気配で、日向から動くのを待っている、、
「してくれ、」下腹部への圧の方が強められた。楽しそうでもあった。
もう、脱がされる寸前だ、、
(キスをすれば止めて、この手を収めてくれるのか?)
流しに押しつけられた腰が、いつまでも圧迫されていて、このままだと倒れそうになる日向は仕方なく両腕を首に回して、軽く口付けた。
(収めてくれる気など無いんだ、、)
分かっていながらも、日向の半分の身体の方はもう「男」がもたらす熱を待ち侘びていた。
熱くて柔らかな唇が待ち構えていて、日向の舌を吸って来た。「男」の口付けはいつも繊細さを伴っていて日向を惑わして来る。
「、、もっと味わいたい、」
と「男」がぐいと日向の立ち上がって来た陰茎にさらに圧を入れて来た瞬間、
雷が光って
一瞬、民宿の電気が止まり、鮮やかな雷光が差し込んでくる。
闇の中にくっきりとした「男」の顔がみえた。
(有難いな、、大雨が降る、、大きな声で聴きたい、、お前が
「……!?、何を言って、、んんッ、」
息が出来ないほど、もっと深く舌が入って来た。
民宿の明かりが戻っても、天気は一変し、激しく降り出した雨が建屋の屋根に、庭先に、絶え間ない音を響かせてきて、時折り、雷鳴がとどろいて昼間の様に部屋を照らす。
色の無いヒカリと闇が、轟音の中で重なる日向と「男」の影を瞬く星のように点滅させた。
けれど、それを日向は全く分からなかった。
「男」に延々と声を挙げさせられたからだった。
もどかしそうに、脱がされ、
「チカラを抜け、もっと脚をおれに掛けるんだ、、」
「う、、急に入れないで、、」
(分かってる、、乱暴にはしないから、)
と約束されたが、それでもローションを付けた指は堰を切ったように後孔を滑らかに解して来て、
背中を壁にピタリと付けられて、いつもより早く挿入された。
「ひ、ァァ、、!」
片脚を掴まれて不安定な日向の体重が繋がれている敏感な内部からの刺激となる。
日向はそれでもゆっくりと律動を始めた「男」の両肩に腕を突っ張り離れようとしたがびくともしなかった。
「んァァ、!、、ダメ!、、ひっあ、、!、其処は、キツい!!、い、や!、、あぁァんッ、いッ、やめ、、ァァァ!!、どうして!?、」
「なんで、、?、俺の声なんて、、聞いても、、ひっ!あッァァ、ゃァァ!!!」
食堂の壁で日向は立ったまま、挿入されている。
白い細身の両脚を抱えられ、自らの行き場の無い重さが、圧となって腹の中の「男」の熱い陰茎をより奥に食い込ませてきた、
耐え切れず日向は殆ど叫んでいた。
「!!いッ、、あァァ、キつい!!、そこ!!、うわァァァァ!!んぐッ!!」
「男」がちゃんと気遣ってくれているのは、分かる、一度も後ろが切れたことは無い、、
けれど、激しく熱い棒をずっと腹の中で
いつも以上に、日向はおかしくなりそうだった。
「もっとだ、もっと、、聞きたい、、お前の声は堪らない、」
美しいとも言えそうな、キリリとした眉を歪ませた「男」は思い切り声を出すように耳元で囁き、突き上げて激しく日向を求めて来た。
「男」に僅かに残った理性には、もはや制御は出来ず、暴れてる野生を一段と深く日向の中に食い込ませて来た。
「、、ぁっァァ!、いやァァ、そこっ!、、奥に入れちゃやだァァ!!、それ!激し、、い、ぃ、、ぐぅ、、」
「駄目だ、すまない、、」
「あァァ、やめ、、!」
ここで言わないと、俺は戻れなくなってしまう、、拒否を伝えないと、
目を見開いて言おうとした刹那に、暗闇に閃いた稲妻が照らす表情に、日向はハッとした。
なんでこんな、切ない、、(まるで泣いていたみたいだ、、ずっと、、)、澄んだ哀しそうな目の奥を見てしまった。
その瞳の奥から尋ねられた。「男」は動きも止め、不意に辺りは静寂に包まれた……。
2人の汗と涙で濡れそぼった身体だけで無く、日向の奥深い場所が揺れている、俺はどうすれば、、良いのか?
この夏、日向は幾度も尋ねられて来た、、
戻っていつもの自分の場に居続けるのか?
……それとも……
どこへ続いているのか、日向にも、この「男」にも見えない、〈深い渦〉に身を委ねるのか?、、と。
今また、境界線で佇んでいる、淋しげなこの人の手を、
俺は、、、掴むしか無い……掴みたい……んだ……
「……いえ、、この、ままで、、良いです、、」
( 俺はこの「
初めて、自分から日向は両腕を伸ばして、目の前の熱い生命を抱きしめた、、
「!?、いいのか……?」
「男」は、日向から初めて手を差し伸べられた事に驚いた目をした後、顔を歪ませて、強く抱きしめた。
(あぁ、日向、、日向、、ひゅう、が、、)
一旦、陰茎を抜いて、「男」の部屋に連れてこられ、布団にドサリと下ろされた。
身体じゅうを擦られて、再び、交わられた。
「すまない、今日は抑えられない、、ずっとお前の中に居たい、、」
「男」の一段と大きくなった陰茎の熱に驚きながら、けれど、日向はもう離れられない熱い腕の中で何もかも預けて受け入れた、、
(あぁ、、日向、おれは、、初めてだ、、こんなに、、)
稲妻に貫かれているような動きの中、、微かな声が日向の耳に届く、、
稲光と闇と、熱に包まれた。
「はぁ、あァァ、ひゅうが!、お前の中が熱くて、、凄くいい、、気持ち良いか?、」
今まで以上に強く両脚を持たれて、拡げさせられ、奥を
時化の海の小舟のように日向の身体は揺れて翻弄された。
日向の陰茎は擦られて無いのに、内側からの熱い感覚と「男」の存在だけで、快感の渦に飲み込まれた。
「うッ、はァァ、イイ!、、俺、、俺、おかしくなりそう、、はァァ、うわァァ、、中が、、ァァ気持ち、イイ!!」
もう何もこの人に隠せない、、全てを
白い自らの精液を噴出して痙攣が止まらない日向を抱きながら、「男」からも
苦しそうな、嬉しそうな声がした。
「あァァ、、おれもイきそうだ、、もっとお前の中に居たいのに、、」
より深く場所に熱い陰茎を潜り込ませられる衝撃に、日向は声にならない悲鳴を〈身体〉で〈魂〉で上げ続けた。
(あぁ、イくッ、、ひゅう、、が、、)
真珠のような汗をボタボタと日向の腹に落としながら、
叩きつけるような、「男」の性液が中に放出されている、それを感じながら、日向の意識は途切れた……
いいんです、、、
深い眠りに堕ちる直前に、日向は愛しいその頬に手を伸ばして、囁いた……
――――――――――――――――
気がつくと、喉も身体も固まったかのようだった。
抱きしめられていた、、
日向が後ろの「男」を見ようと顔を向けようとしたが、
「あ、いたた、、い」身体全体がギシっと音を当てそうなくらいになっていた。
「ああ、動かすな、まだ風呂も沸いてない、、」
冷えてしまった身体を、後ろから温められていた。
(まだ、休まないと、。日も登る前だ、、)
ガラス細工でも扱うかのように、背中に口付けをされた。
「あ、本当ですね、」
暴風と雷をもたらした雲は無くなって、洗われた明け方の光が東側を照らしつつあった。
「起きるのか?」
(海が、見たいです、、)
「本当に、お前は、、」
身体は殆ど強張っていて、ゆるゆるとしか動けない日向を、「男」がゆっくりと起こし自分の前に座らせてから、一緒にケットを被った。
「男」はケットの中で固くなってしまった日向の身体をそっとマッサージし始めた。
既に開けられていた客間の障子の向こう側に見える西南の海にも、キラキラと波が光っていた。
ミ、ミャーオー、アーゴ、、、
あ、鳥の鳴き声が聞こえます、、
「男」の温かい胸に頭を預けて、日向は海猫の声を聞いた。
青紫の薄明が、初めて見たかのように鮮やかにやって来ていた。
「あぁ、朝になってしまった、な、、」
「はい、すみません」
「……おれが、、悪い、」
「いえ、違います」
頭を上げて、心配げに見ている「男」に手を伸ばし、その唇に触れた。
鳥のように自然に
(この感情は幸せなのだろうか、、それとも哀しみを待っているものなのだろうか?、俺には分からない、、ただ、いまはこの人を、、)
冷えた日向の皮膚を擦ってくれていた、熱い手を取って、日向は自分の頬に当て、口付けを静かにした。
「良いんです、これで、」それしか言えなかった。
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