第4話 魔女であり女子高生
早朝、古い大きい屋敷のドアをガラリと開けて私は外へと出た。濃紺色の髪が朝日に照らされて輝いており履き慣れない黒のローファーを履き踵を地面でトントンと叩いた。
「入学式だ…」
魔女である私、内田優希はついに入学式当日を迎えてこれから始まる学校生活に期待を膨らませていた。
「制服の着方間違えてないよね?」
私は真新しい制服の着方が間違っていないかぐるりと回ると私の黒のジャンパースカートの裾が花のようにふわっとひらめいた。
私の学校の制服は黒のセーラーショートジャケットに黒いジャンパースカートでありスカートの裾には青い1本ラインが入っておりジャケットの下にはブラウスと首元には大きなリボンが付いていた。
「よしっ!!」
私は玄関のドアを閉めて鍵を掛けると市内へ行くためのバス停目指して歩き始めたが途中に小さい公園が目に入ると道を外れて公園の中に入っていった。
「わぁ…桜だ!!」
公園の中には大きな桜の木がそびえ立っており花びらが辺りにひらひらと舞い落ちていた。
「綺麗…これが日本の桜なんだ」
私が桜に見とれていると突如強風が吹き荒れて桜の木々が大きく揺れ始めて桜の花びらが空へと舞い上がった。
「お父さんお母さん…私、2人が出会ったこの長崎で高校生になったよ…」
私は空の向こうで私を見守ってくれているだろう両親に言葉を掛けた。するとそれに応えるかのように再び強風が吹き荒れて花びらが私の周りで舞い上がりスカートが大きくはためいた。
「行って来ます!!」
私は公園が出るとバス停へと続く坂道をゆっくりと歩きバス停で並んでいる人達の列に並びバスの到着を待った。
「人が多いなぁ…」
しばらくするとバスが到着して私はバスに乗り込むと1番前の1人席へと座り学校指定のリュックを胸に抱えた。
(あれ…?)
バスが走り出してからすぐに私は周りから負のオーラの気配を感じ取り、辺りをゆっくりと見回すと乗客はみんな不安そうな表情を浮かべている事に気がついた。
(春は出会いと別れの季節…特に学校や通勤が初めての人はこれからの生活の事で不安な気持ちになる事でケガレが溜まりやすくなるのよ。)
かつてイギリスの魔法魔術学校でそう教えられた事を思い出して私はハッとした。
(夜になったらパトロールかな?)
ふとそんな事を考えているとバスは私の降りるバス停へと辿り着き私はすぐにバスから降りた。
学校へと続く道を歩いていると私と同じ制服を来た女の子達が徐々に集まり始めて同じ方向へ向かって歩き始めた。
(新入生の子もいるのかな?)
そんな事を思いながらようやく私の学校へと辿り着くと事前に教えられていた下駄箱へとやって来ると下駄箱付近の掲示板にクラス表か掲示してあり新入生達が掲示板へと群がっていた。
(1年1組出席番号2番… 内田優希)
私は1組の教室に向かおうとローファーを脱ごうとしたが下駄箱の側の中庭に何かを見つけてローファーを持ったまま中庭へと足を踏み入れた。
「おーい!!降りれる? あー無理かなその高さじゃ…」
中庭へとやって来ると中庭の大きな木の上に黒い猫が枝によじ登っているのが見えて木の下から1人の女生徒が猫に向かって呼びかけていた。
「あの…大丈夫ですか?」
「黒猫ちゃんが木によじ登って降りられないみたいなんだ」
下から呼びかけている女生徒は茶髪のショートカットの女の子でとても活発そうな雰囲気の女の子だった。
「もう…仕方ないな!!今そっちに行くから動かないでよ!!」
茶髪の女生徒はなんと木に登り始めて木の枝に足を掛け始めたので私は慌てて女生徒に声を掛けた。
「あの…危ないですよ!!」
「大丈夫大丈夫!!私、木登りは得意だから!!」
みるみる高い所まで登ってしまい私は制服のジャケットに隠してある短い杖を取り出して背中に隠すといつでも魔法が放てるようにじっと様子を見守った。
「捕まえた!!後は落とさないようにゆっくりと降りるだけ…」
女生徒がそう呟いた瞬間ミシリと枝から鈍い音が鳴り直後に女生徒が体重を掛けている枝からバキッと枝が折れる音が響いて女生徒は黒猫を抱えたまま木から落下してしまった。
「うわああああ落ちる落ちる!!」
私は枝が落下する女生徒に向けて魔法を唱えると小さい風の渦が女生徒を包み込み落下の衝撃を和らげて女生徒はゆっくりと地面に降り立った。《ルビを入力…》
「あれ…無事?やったぁラッキー!!」
(ふぅ…間に合った…)
私はすぐに杖を上着の中に仕舞うと女生徒へと近づくと声を掛けた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫!!なんか春の風が私を助けてくれたみたい!!」
(私の魔法が無かったら大怪我してたよ…怖く無いの?)
ふとそんな事を考えていると女生徒は黒猫を抱えたまま私の方を向いた。
「じゃあ私はこの子を外に逃して来るね!!」
「あ、うん。…」
「じゃあいつかまたどこかで!!」
女生徒は黒猫を抱えたまま走り去ってしまい私はその場にポツンと残されてしまった。
「嵐のような子だったなぁ…」
そんな事を呟きながら折れてしまった木の枝と木を見上げると私は周囲を見渡して周りに誰もいない事を確認すると再び杖を取り出して呪文を唱えた。
呪文を唱えると折れた枝は浮かび上がり折れた箇所からくっついて修繕されて私はすぐに杖を仕舞う。
「さっそく魔法を使っちゃったよ…バレなくてよかった…」
女生徒に魔法を使うところを見られなかっだ事に安心し私は再び中庭を後にして上履きに履き替えてから自分の教室へとゆっくりと歩き始めた。
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