第2話 私の使命


魔女にはある使命がある。

それはこの世に蔓延る「ケガレ」と呼ばれる人間の負の感情から生まれる怪物を討伐する事だ。

ケガレは普通の人間には姿が見えずその名の通り存在するだけで穢れを辺りに撒き散らして周囲に不幸をもたらす悪魔のような物だと言い伝えられている。

台風、津波、地震、火山の噴火など様々な自然現象もケガレの仕業だそう。


そんなケガレを魔法を使って退治するのが魔女のお仕事であり、見習い魔女はケガレに対抗するためのあらゆる魔法を学ぶために世界中に存在する魔法魔術学校にて魔法を学んでいく。


そんな私も15歳までイギリスの魔法魔術学校で魔法を学んでケガレに対抗するために修行を重ねてきた。


それは幼少期にケガレの戦いで両親が命を落としてしまったからである。当時まだ幼かった私はケガレに攫われてしまい父と母が命を賭けて助けてくれたのだ。


幸いケガレを討伐する事は出来たものの、魔女であった母は真っ先に狙われてしまい致命傷となる傷を負いその遺体はケガレに吸収されてしまったのだという、最終的に母を吸収して隙を見せたケガレに父が陰陽道の術を叩き込んだ事で討伐したのだという。


しかし陰陽師である父も禁断の陰陽道の力を使った事で母の後を追うかのように数週間後に亡くなってしまい、私1人が残されてしまった。


当時の私はまだ弱くただひたすら泣いていたのを今でもはっきり覚えている。



「……またあの夢…」


私は目を覚ますとそこは飛行機の中であり着陸のアナウンスによって目を覚ました。


(お父さん…お母さん…)


私は飛行機を降りて空港から外へと出た瞬間に私の黒髪と少し長めに揃えたスカートの裾を、荒ぶる海風が薙いでいく。


「ここが長崎…父と母が出会い、私が生まれたところ」


それから私はバスに乗りかつて父と母の2人で住んでいた古い屋敷へと向かった。バスが走り始めて40分ほど経ち、目的のバス停で降りて田舎道へと入ると大きな屋敷が見えて来た。


「この屋敷がお父さんとお母さんが住んでた場所…」


私は鍵を使って屋敷に入ると玄関の天井にさっそく埃を被った蜘蛛の巣が張り巡らされている事に気づいてすぐに足を止めた。


「…うわぁ埃だらけ」


私はゆっくりと細長い玄関土間を進んでいき大きな段差を乗り越えると目の前に広い座敷スペースが現れて私は思わず辺りをぐるっと見回した。


「掃除しないと…」


それから私は家の中を探検しながら縁側を歩いているとどこからか魔力の気配を感じて辺りを見回した。


「魔力!?一体どこから…?」


私は魔力の気配を探りながら縁側から洋室の部屋へと続く廊下を歩きながら移動するとそこにはフローリングの床の部屋が目の前に現れて私は恐る恐る部屋に入った。


「この部屋から?…」


私は魔力を探りながら部屋を調べると大きな机に椅子と本棚があり本棚には魔力に関する本があり机には銀色の指輪があり私は思わず指輪を手に取った。


「魔法の指輪?」


私は謎の指輪を思わず手に取って眺めるが背後から魔力の気配を感じて指輪をポケットにしまった。


「もしかしてこの本棚?」


本棚には魔力に関する本があり埃を被っていたが私は本棚が不自然にずれている事に気づいて本棚に近づくと本棚の奥から僅かに光が漏れている事に気づく。


「よいっしょ…と…」


私は本棚を端を掴み横へとずらしていくと漏れていた光が大きくなり私はさらに力いっぱい本棚を横に動かした。


「これは…魔力の結界!?」


本棚の奥に隠されていたのは大きな扉であり紫色のバリアのような物が張り巡らされているようだった。


「魔力で封印されてる…」


扉は魔力で封印されており中に入る事が出来ないようで私は魔力の封印を解くために扉に向かって手を翳した。


「アンシール!!」封印解除


私の手から銀色の衝撃波のような物が放たれて魔法学校で習った封印を解くための魔法を発動させるがバリアは解けず私は頭を悩ませた。


「この扉…高位の魔法が掛けられてる…」


扉にじっくりと目を凝らすと扉には火や水など様々な属性を表す記号のような物があり私は再び手を翳して魔法を唱える。


「ファイア!!」炎よ


私の手から火炎魔法が放たれてバリアに命中するとバリアが一瞬赤く光るがすぐに元に戻ってしまった。


「私の初級魔法じゃ解けない…」


完全に解除するには各属性の上級魔法を覚える必要があるようでその上級魔法を使うための属性のパワーを身に付ける必要があるために私は諦めて扉から離れる。


「今の私じゃこの扉の先を見る資格が無いって事…?」


私は封印を解くのを諦めて本棚で扉を塞ぐと部屋から出る事にしたが最後に部屋の中を見てぼそりと呟く。


「いつか必ず封印を解けるぐらい成長してみせるから…」



私はそれから屋敷の中を一回りして屋敷の配置を確認し終えると屋敷全体を掃除するために小さい木製の杖を取り出して呪文を唱える。


「ウィンド!!」風よ


杖を取り出して杖を一振りすると小さい風の渦が召喚され、私は風によって浮き上がりそうなスカートを軽く押さえながらさらに杖を横に振ると小さい風の渦が分裂した所でさらに呪文を唱えた。


「ウォーター!!」水よ



私は小さい水の渦を追加で召喚すると先程呼び出した風の渦に重ねて水を含んだ風の渦を完成させた。


「クレンズ!!」清めよ


最後に仕上げとなる呪文を唱えると水を含んだ風の渦は屋敷全体へと行き渡り屋敷全体の埃や蜘蛛の巣などを吸い込んで吸収していく。


「ふぅ…」


杖を振ってから5分ほど経つと屋敷のあちこちから埃を吸い込んだ風の渦が私のいる居間に集まり私は杖を振って風の渦を消滅させた。


「これでちゃんと人が暮らせる屋敷になったかな?」


私は屋敷のあちこちの汚れや埃が無くなっている事を確認すると杖をしまい荷物を下ろすと近くの押し入れの中にある布団を取り出した。


「わっ…ここまで綺麗に出来るんだ?」


先程の魔法で押し入れの中の布団まで的確に綺麗出来たようであまりに完璧な魔法の成果に驚いていた。


「ちゃんと使える…」


私の杖は制御の難しい細かな魔法の出力の調整などの補助の役割を持っており杖があるからこそ細かな作業が出来るのだ。


「さてと…明日も早いしもう寝よう」


気づけば時刻は夜中の12時を回っており私は布団を敷くと寝巻きに着替えて布団に潜り込んだ。


「明日の予定は確か…」


私はふと机の方へと視線を向けた。机の上には先程バックから取り出した品物が散乱しておりその中には1冊の白い冊子があり布団から這い出ると白い冊子を手に取った。


(長崎市如月女子学院入学のしおり)


私はこの春、長崎市内の高校にて魔法と縁もゆかりもない普通の高校に通う事になったのだ。


「私…普通の人間の学校でうまくやっていけるのかな?」





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