最高の死を求めて

@erixite

最高の死

ダンッ

「今回も弱かったな」

 私の名前は椛沢もみじざわ友梨ゆり。今は15歳で、殺し屋をしている。殺し屋は灑掃さいそう連合に所属している殺し屋と所属していないフリーの殺し屋の2種類が居るけど、私は後者。入り方が分からないし、知っていたとしても縛られるのは好きじゃないから入るつもりはない。そして私には大きな目標がある。それは、強い人と本気でりあって死ぬこと。弱い人に殺されるなんて無念でしかないし、何より私は戦うのが好きだから、戦いで死ぬのは本望。死ぬために生きるなんて他の人からしたらきっと変なことだけど、私はそうしたい。

ポーン

「最近灑掃が取り締まり強化してるらしいよ」

音がしたのでスマホを見たら、チャットアプリLoquoロクオから通知が来ていた。

「マジ?」

拠点に帰りながら友達に返信をする。

「スーツ着てる殺し屋見たって人多いから多分マジ」

「へー」

「気を付けた方がいいよホントに」

「そいつらって強いんかな」

「勝ったって人の話聞かないしまあ強いでしょ」

「ほーん」

「戦うとかやめなよ」

「おん」

強いなら戦うしかないな。まずは連合員を誘き寄せるなりしないと。とりあえず懸賞サイトを見て良さそうなターゲットを探す。基本殺人を犯したり違法な武器を作ったり流通させたりする犯罪者を抹殺することが多いらしいから、それに目星をつける。

「結構良さげなの居るな...」

その中でもヤバそうなのを何人かリストに入れて、拠点らしき場所の位置をマップで確認する。まずは一番近かったところに明日行こう。


 翌日23時。

「そろそろ行こっと」

ナイフを懐に入れて、スマホを見ながら目的の場所に向かう。歩いて40分くらいかかるらしい。

「歩くとなるとちょっと遠いな」

着いた。多分ここがターゲットの拠点だ。人の気配はしない。中に入り、2階に上がったら、色々武器が置いてあった。

「折り畳みナイフめっちゃある...」

折り畳みナイフの数に少し驚いていると足音が下からした。多分ターゲットだ。忍び足っぽいから侵入には気付かれてる可能性が高い。

ダンッ

思ったより登ってきていた。ドアの近くに移動して姿勢を低くする。

ダダダッ

「バレてるか」

すかさず避け、ターゲットに切りかかる。

キンッ

ナイフも止められた。

「ガキが」

今までのターゲットでも強い方だ。持ってるのはピストルだったけど、連射してたからマシンピストルとかなのかな。

「ナイフを盗みに来たのか?」

「あなたを殺しに来たのよ」

弾丸が髪の毛を掠める。

「なら殺しても構わないな」

相手は銃だから近づけばナイフを持ってるこっちの方が有利

ダダダッ

持ち替えるかと思ったけど普通に撃ってきた。

「クソッ」

ザシュッ

ジャムったっぽい。一瞬の隙を突いてターゲットの手にナイフを刺す。

「銃ありがとう」

カチャ

ダンッ

頭に一発入れる。ターゲットはそのまま倒れた。

「あーこれか」

奪った銃を見たらスライドの後ろにパーツが付いてた。セミオートピストルをフルオート化するスイッチだ。ショート動画で見たことがある。フルオートは怖いのでスイッチを切る。

ザッ

「おっ」

2度目の足音がした。

「連合員のお出ましかな」

下に降りると早速出くわした。銃も持っていて、まさに友達の言っていた「スーツを着ている殺し屋」のようだった。

「動くな!!」

「動くよ〜」

パシッ

避ける必要もなさそう。すかさず距離を縮め、ナイフで腹を刺す。

「ガハッ」

刺したナイフを抜き、持っていた銃でとどめを刺す。

ダンッ

結局思ったより大したことなかった。元のターゲットの重要度が低かったから大した人員を割り振らなかったとかなんだろう。でもまあいっか。どうせ強い人には当たるだろうし、それまで同じことをしてればいいや。殺す対象は居なさそうだし、もう拠点に帰って寝よう。


 "連合員の多数失踪について"

「んー…」

集合住宅の一室で、黒髪ボブの少女はベッドに横たわりながらスマホを眺める。

(これ会議とかあったら面倒だなー…)

"Flussの皆様は会議への参加をお願いします"

「え」

"詳細は別メールをご確認ください"

少女は会議へと駆り出されるようだ。


連合員を狙い始めて2か月。

「フルスって知ってる?」

「知らんなにそれ」

友達からメッセージが送られてきたので反射的に返す。

「灑掃の特殊精鋭部隊だって」

「知らんね」

「まあ都市伝説みたいなもんだけど」

「そのフルスがどうしたん?」

「とにかくめちゃくちゃ強いんだってさ 人間とは思えないくらい」

「へー とりあえず殺しに行ってくるわ」

「いってら」


「ここかー」

着いた先は廃ビルだった。特に人の気配はしない。階段を探し、上に上がる。

最上階まで上った。

「椛沢友梨だね」

声がしてとっさに銃を構える。居たのは黒髪のボブの女の子だった。年は同じくらい

「!?」

首元が温かくなり、急激に手足が冷たくなっていく。斬られたみたいだ。攻撃に全く気付かなかった。

「うちの連合員が多数失踪したの、君が沢山殺したからだよね」

「くっ…」

しかもこいつ全然本気出してなかった。自分よりも何倍も弱そうなのに。

「君が連合員と戦って殺したところが撮られているんだ。言い逃れは出来ないと思うよ」

座り込んだところで、頭に銃口を向けられる。一番嫌だった、最悪な死に方だ。

パシュッ

「こちら黒田。ターゲットの抹殺が完了しました」

「了解しました。今すぐ後処理部隊を向かわせます」

黒田くろだ千幸ちゆき。17歳、灑掃連合の暗殺課、特殊精鋭部隊Fluss所属。

ドテッ

「痛ぁー…」

最年少でのFluss入隊を果たした彼女は、懸賞サイトwantedhuntに4年以上載り続けている、多くの殺し屋の畏怖の対象である正体不明の殺し屋"怪物"の正体でもある。

「部隊の人たちにどう説明しよう…」

しかし、彼女はアホすぎるせいか、そのことを全く自覚していない…。

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