第8話
潤はそれでも仕事をすることは諦めなかった。
以前の東京の会社に戻ることが決まりそれまでの間に病院に行くことを勧めた。
本当は仕事なんていけるか私は不安だった。
辞めると言ってからの潤は、一日中寝る。
起きても2.30分ほど、そこからまた寝る。
そしてご飯も食べない。
まだかろうじて会話はできるものの、眠りつづけた。
外に出ることは嫌がった。
体が重いのか、真っ直ぐ立たない。
足もフラフラで歩いていた。
この時私はまだ彼が「鬱」であることに気づけなかった。
私も彼が寝てばかりの毎日。家にいるのに
子供のことも手伝ってもらえないイライラ、休みもワンオペ。
でも彼は
「俺だってしてる!」と怒り出す。
「してないよ!!笑菜のオムツ変えた!?」
「俺は何もしてないんだね!?」
「子供たちといつお風呂はいった!?」
「入ったじゃん!」
「いつよ!?」
「俺は具合も悪くなったらだめなの?」
こんな言い合いが続いた。
私は40度の熱がでても育児を休めず、疲れても育児は休めない。
世の中には同じ思いの人たくさんいるんだろうなぁとは思いながらもパートナーに期待もしてしまう。
そんな小さなことが大きくなっていく毎日だった。
決定的なことは車の運転ができなくなったことだった。駐車場に停められなくなったり急にパニックになったり、私は義母に初めて弱音と助けを求める電話をした。
「奈々さん、それは精神科に行った方がいいかも」
精神科で看護師をしていた義母の勘は鋭かった。
「精神科?」
私はそこで初めて心療内科に連絡した。
しかし、現実は甘くなかった、岡山にある心療内科10件から15件電話するも
すべて
「新規の受付はしておりません」
と言われた。
最後の方は
「誰か助けて。じゃーどうしたらいいんですか!?」とすがっていた。
どうしたらよいかわからなかった。
潤だけでなく私も限界だった。
今思えば一つ前の仕事からおかしかった。
目が変わっていった。
「誰か助けて…」
私の毎日の心の叫びだった。
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