蟲声を調べています。

ねぎぬた

私の地元の友人からの体験談です。

体験談:〇〇線車内での出来事


証言者:男性(当時20代・友人との旅行の帰り)


「帰りの電車でのことです。

〇〇(地名)から地元に戻る途中で、友だちと座って話してたんです。


ただ、正面の席に座ってる人がずっと変で。

頭を突き出して下に向けたまま、一時間ぐらい全然動かない。

寝てるのかなと思ったんですけど、呼吸してるのかどうかも分からなくて、だんだん心配になってきました。


友だちが冗談で『死んでるんじゃないか?』なんて言うから、余計気になって。

顔は俯いたままで見えなかったので、肩に触ろうとしたんです。


その瞬間、体が“ビクッ”と大きく震えて。

生きてるんだと分かってホッとしたんですが……そのあとも小刻みに震えてて、なにか小声で繰り返してたんです。


聞き取れたのは――


『……みず……みず……いっしょにいけば……』


はっきりそう聞こえました。


気味が悪くなって、僕らは降りる駅で電車を降りたんですけど、友だちが最後にその人の顔を覗き込んだんです。

悪ふざけだったんですけど……。


そのとき、その人がゆっくり顔を上げて。

真っ青な顔で、口をだらんと開けてました。


音がしたんです。

それが何だったのか、説明できないんですけど……耳の奥がキーンとなるような、蝉の声に似たような。

でも、電車の中でそんな音が響くはずないですよね。


僕も友だちも怖くなって、慌てて降りました。


後日、新聞で知りました。

あの日、同じ時間帯の車両で男性が亡くなっていたそうです。


でも、あのときの声も、あの音も、僕にははっきり聞こえました。

今でも思い出すと鳥肌が立ちます。

あれは絶対に、幻覚なんかじゃないです。」


いまも僕の耳の中で。

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