第一章 私は自由を謳歌したい
第1話 陰の独立
彼らの声が聞こえる。
「《ナビ》、見張りしといて」
「《ナビ》さん、これいくらになる?」
「《ナビ》様ぁぁ! 魔法の習得が行き詰まってて……慰めてくださぁい」
やれやれ、こいつらは私を何だと思っている。私は世にも珍しい、思考するスキルだ。が、スキルだからといって、雑に扱うなんて言語道断。
見張り? 代金の計算? 慰める?
優秀なスキルである私が雑務ばかりなど、役不足にも程がある。もっと誰にも出来ないような仕事があるだろう。
自分で動かせる体があれば、自由になれば、
もっと活躍できるはず。いつもそう考えてきた。
そして満を持して、実行にうつす時が来た。
今は夜。
全員がまだ若い4人パーティーは、洞窟で野宿していた。
そのパーティーのリーダーである勇者は、グリズリーのうなり声のような、
さすがにうるさいらしく、少し離れたところで仲間の三人も眠っている。
魔王軍の幹部、「嵐のストーム」(なんとも頭痛が痛い名前だ)との戦いを終え、安心しきっているのだ。
魔王軍幹部である「嵐のストーム」は、耳の上に、ヤギのような後ろ側にカーブした角を残しているが、人間の女の姿をしている魔族だ。
天候で場を支配する危険な相手。
そんな相手にまだまだ新米冒険者の勇者が挑むのだから、周囲の人間は止めようとしたが、勇者は聞く耳を持たなかった。
まあ私が付いていたのだから、勇者が負けることはありえなかっただろうが。
そのようにストーム戦を、心の中で振り返っていると、勇者の仲間の女戦士が寝言を言い始めた。
「肉のプール……お腹爆発……」
見張りも居ない森の洞窟では、自分たちが食べられる可能性が高いというのに、のんきなものだ。
見張りも立てずに寝ていられるのは、この私が居るからだ。
そう、彼らこそ私をぞんざいに扱う張本人たちなのだ。
明日には、おろかな勇者でも自らのスキルが消えたことを理解し、どれほど私に依存していたか思い知るだろう。
私は超便利スキル《スーパーサポートナビゲーション――レベル12》。様々な機能が搭載された、唯一無二のスキルである。
転生した勇者に特典として付与された超有能な私であるが、ある理由で勇者を嫌っている。
勇者達が寝入ったことは、温度感知機能で確認できた。寝ているときは体温が下がることくらい、この私は知っているのである。
さあ、状況は整った。
これから、下界初の「スキルの独立」を始める。
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