第29話 お化け屋敷2

 1階の左側にあった。

 行先のわからない階段をくだると、2階と変わらない間取りが広がっている様だ。

 しかしそこに光源と言えば、辺りをうろつく火の玉だけ。


「明かりはあったはいいがこれは……、倒す必要があるのか?」


 そうアレックスが呟く。

 

 その言葉に、僕は安心を覚えた。


 何故なら、火の玉を触ろうして、その炎の青白い色で顔を浮かびあがらせる、ダークエルフさん。


 そして火の玉を追いかけて行こうとして、僕に手をつながれているニンフ。

 彼女は、この階へ降り立ったようだ。


 その二人を見ていると、言葉少なに、火の玉を恐怖の対象と観察していた僕は冒険者としてこれでいいのか? と、不安になってしまっていたからだけど……。


 「温度は、冷たいですが、物理的には僕の手は火の玉を難なく貫通してしまいます」


 アレックスへそう話すと、彼は目の前の火の玉を、両手で包み込み掴もうとした。

 だが、その手の中の炎はボッ、と音をたて発火し彼の手の中で燃えあがる。


「アレックス!?」


 僕の心臓の鼓動は、加速して脈うった。

 それに負けず、彼の鉄の鎧を掴み後ろへ引かせ……。


 引っ張ろうとすると、彼に素早く避けられ、僕の方が危うく無様崩れ落ちるところだった。

 

 そうならなかったのは、逆に彼が僕の腕を掴み、引き上げてくれたからだった。

 

「すまんマーストン、今のは俺の魔法なんだ」

「え? あぁ、じゃあ邪魔してしまいましたね。すみません」


「いや、大丈夫」

 

 彼は僕の方へ手をあげ制する。


「今の、ところこの火の玉は、魔法でも干渉できない。魔物側であることは、変わりないだろうが……」


 そう僕らは火の玉に対する考えを述べ合い。結果には到達できなかったが……。


「ほかのチームメンバーも、各自で仲良く遊んでたという感じなので、一度まわりの探索から始めますか」という結果に落ち着いた。


 そして地下の探索を開始する。


 真ん中が多分、大広間へと続く扉、左右に牢屋とその中に物置部屋が1つあった。

 廊下の道は、どちらの道も途中で壁で塞がれている。

 牢屋はたぶん、そこまで数を多く必要としなかった為か、道が途切れていた。


 そして今のところ、何かが居るのなら一番、可能性の高い大広間。まずそこへ入っていく事になった。


 僕と、ニンフが片方ずつ、大広間の扉の取っ手を持って。


 「「せーのっ!」」


 そう声をかけ扉を開くと、扉へと蹴り入れ押し入った。

 中は教会、赤い絨毯と、ベンチはバラバラに置かれている。


「『世界樹の葉』のみなさーん」

 ヒーラーのノロシさんが、部屋の隅に隠れていたらしく、声をかけて来た。


「あっ動かないで」


 ――もうその時は、アレックスとダークエルフさんは部屋へ入っていた。


「リッチが居ますよ」

 ノロシさんが、手遅れな感じでそう話す。


 そう、リッチは居た。


 そして僕らに向かって何やら、魔法を唱えている!?


 ちょっ!?


「「拡散、拡散!!」」


 アレックスと僕が叫び、ダークエルフさんがニンフを抱えて部屋を出た。


 そのすぐ後、青白い炎をあげた魔法陣が、僕らの居た場所にたちあがる。


「触らないで魂を持っていかれますよ!?」

 彼はそれだけ言うと、次は魔法を唱える。


 『光の加護を! 神の力は誰にも挫く事は出来ない!』

 光のベールが僕らの上に舞い降りる。


「これで、一瞬? 5秒は魂を取られる事はありません!」


「ありがとう」

「サンキュウ、ノック!」


「いえ、でも、出来るだけ逃げてください。内臓は少し焼かれるので、今日はご飯食べれませんよ!」


「ははは……」

「とんだ、ダイエットだな」

 

 だから、まず焼かれる前に攻撃しなくては!


「風の刃よ、切り刻め!」

 風が刃がピアノ前にたたずむ、リッチに当たり、切り刻む……だが、ボロの布切れは剥いだが、肝心の骸骨のへの攻撃は風魔法だから、断面が少ないのか、すぐ修復してしまう。


「やっぱり、風の魔法は駄目です! やはり魔法は炎か、神の名を借りた魔法でなければダメかもしれません!」

 

 そう言った途端、骨がくるくると飛んできて、死せる剣士となってしまう。

 それをすぐさま、ダークエルフさんと、アレックスが倒してくれるが、埒が明かない!


「炎の魔法を使ってもいいですが、この部屋が燃えてしまいます」


 僕はそう言い、ノックさんを見た。

 彼は、魔法を唱え始めているのだが、相手はリッチだ。


 短い詠唱で倒せる相手ではない、すぐ危機を乗り切る事は難しいだろうし……。

 

「来てください、水の乙女 ウンディーネ」

 僕はピアノの前に居る、リッチを指さす。


 リッチを倒さなくてもいい。奴のまわりを囲む、骨の軍勢となってしまった、骸骨どもを倒さなくてはいけない!


 ―― 一筋の水が地面から吹きだす。


 ―― そしてそれを囲むように、地面が隆起を始める。


 全てが噴火するように、驚くほどの水が吹き上がる。


 それが上の天井を抜け、上のどこかで、ドドドォ――ンと、ぶつかる音がした。


 そして落ちてきた瓦礫と共に、美しい少女が、水の姿を借り、地上へ落ちて、水の中へも潜るように、無傷の迷宮の床の中へ飛び込んで行った。


 そして僕の頬には、彼女が消える間際に、地面か跳ねた水がただ残る。


 僕はそれを頬と、反対の手で拭い去る。


 /

 そして静寂が残る。



 カッカッカッと走る音、アレックスは僕の横をかけ抜ける。、


「炎を纏いし剣よ、敵を貫け――ファイアージェンド!」


 彼の貫いた地面は、骨の手をあげ、断末魔の悲鳴をあげた。


「そんな所に、居たなんて……」


 そこへ光を纏ったノロシが、フラフラと歩いて行く。

 断末魔をあげる、再生と死を繰り返すそれは、彼の足を掴んだ!?


 ――だが、彼の光がそれを払う。


 そして彼は屈むと、「神はここに居る」と、だけ言って、蠢く残かすに触れるだけで、それは光を孕み爆散した。


 僕とアレックスはお互いの顔を見合わせたが、お互いよくわからない。


 そして……リッチのさっきまで居た場所に、次の魔法陣が登場したのだった。


 そしてノロシさんも寝てしまった。

 なんか……『ブラックファイアー』の皆さん、ご飯たべてすぐ寝てしまう、赤ちゃんのようだなぁと、思わなくもない。


 続く




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