第6話 消えた宝石

 数多に渡るジュエリーショップを狙った宝石強盗。しかし内容は強盗と呼ぶよりも宝石消失と言った方が正しいものかもしれない。


 まず、強盗と言われ大半の人が思い浮かべるのは覆面を被った人物が店員を脅し宝石を盗んでいくなどが挙げられるだろう。


 だが、今回の宝石強盗に関しては怪しい人物が入店した形跡やショーケースが割られるなどといった明確に強盗と呼ぶ材料が欠如している。


 しかし複数店舗で宝石が消えていることから騎士団は人の意思による作為的なものと判断している。


 本来ならすぐ解決するような内容なのだが、現在騎士団がほぼ機能していない為、数ヶ月にわたって被害が続いている。


「なんか、簡単そうじゃねぇの?」


 半琶流かんとう買ってきた複数の地方新聞を流し見しながら、東瀬が呟く。


「じゃあ、東瀬が1人で解決してくださいよ」


「つられちゃん、君入部したてだよね?せめて先輩くらいつけてくれたら嬉しいんだけど」


「嬉しいって言い方がキモいです。犯罪の匂いが微かに」


「しねぇよ!?」


 入部したての1年生にすぐ嫌われるとは東瀬の性格はある意味すごいのかもしれない。


 500年ほど前の時代では、こういう性格はどちらかというとモテる方だったと思うのだが、時代の移り変わりとともにモテる異性の性格や特徴も変化していくものなのか。


「それで丹羽くん、蝶芽ちゃんと間湯は?」


間湯かんとう先輩は塾です。蝶芽はダルいって言って帰りました」


「あっ、そっか。あいつバカだから」


 間湯先輩のことを口では貶しつつも、一瞬見せた寂しげな顔を見るに部長はやはり間湯先輩のことが好きなのだろう。本人は隠せてるつもりでも当事者の間湯先輩以外の部員には既にバレている。


「じゃあどうしようかな〜。私的にはすぐ動き出したいから・・・」


 そう言って部員の方を順繰りに見る咲羅先輩。その目線は端にいる俺の方を向かず隣の猫布ねこぬののところで止まった。


「3人でも十分か」


「何がです?」


「そりゃ現地調査に決まってるでしょ?猫布ちゃん。休み明けで忘れちゃった?」


 こうして猫布、東瀬、そして新入部員の半琶流はんべる現地調査が決定した。



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