第2話 王都アージナル①
ムーンの周りには討伐部隊が大勢いて、包囲網が完成していた。
討伐部隊の鎧を着た騎士たちは、少し青っぽく光っている剣を構えて待機していた。
「貴様を倒し、捕らえる。討伐部隊よ、かかれー!」
赤いマントを羽織った騎士が大声で号令をすると、大勢の騎士たちは一斉にムーンの方へ走っていった。
「あわわわ!な、何してんの!?」
――ほんとにどうしよう…。何か良い策は…。
ドタッドタッドタッ
物凄い足音と鎧の音が目の前まで来ていた。
そして、剣がムーンの首を目掛けて振り下ろされようとされていた。
「さーせんさーせん!もう、やめてー!」
焦って必死に叫ぶと、大勢の騎士たちは倒れていて、立っているのは指揮を執っていた赤いマントを羽織った騎士だけだった。
「な…んだと。」
――へ?
ムーンも今のこの状況に混乱していた。
「あ、え?ど、どうしたんですか?」
「き、貴様!やはりただ者では無かったな!緊急事態だ。この場で死刑を執行する!」
「えっ?し、死刑!?そんな物騒な…」
「大人しく投降するのなら、裁判までは執行猶予を保証できるだろう。」
な、なんとか乗り切った?
それからムーンは投降し、小型のドラゴンに乗り王都アージナルへと連れていかれた。
しかし、ドラゴンでの移動中もずっと異変を感じていた。
周囲にいる生き物全ての気配を感じるという異変を。そして、ムーンは気付いた、全身に力がみなぎってくることに。
そして、王都アージナルに到着した。
が、到着早々アージナル王のいる城へと連れていかれ、城に着くと手枷を付けられ、広い部屋に通された。
そこには、王座に座っている王の姿が見えた。アージナル王だ。
けど、あまり威厳というか迫力の欠ける王様だなー。
そんな事を考えていると、アージナル王が口を開き始めた。
「貴様が膨大な魔力の正体で間違いないな。」
「へ?な、なんの事でしょう?」
膨大な魔力?そんなもの見た事が無いし聞いたことも無い。初耳の単語だ。
「貴様からは常人とは思えぬ程の魔力が溢れ出ている。何者だ?」
「い、いやー。ただの森にスポーンした迷子ですけど。」
「その魔力量で何をぬかすか。裁判まで貴様の身柄を地下にて拘束する。」
「え、いやいや。どういうこ…」
――ドカン!
ムーンはいきなり背後から頭をバットのような者で叩かれ、意識を失ってしまった。
――夢を見た。
ドクンッ
――最後の砦に辿り着き、暗黒の門を開け――
「…なんだろう。最後の砦?暗黒の門?」
ポミュッポミュッ
「ん…なんか、ポミュポミュした床だなー。」
ドンッガガガガ――
「おわっ、びっくりした〜。壁が扉になってるのか…。」
扉が開くとそこは、最下層に続く階段になっていた。
「結構深いな…。少し疲れてきた。」
少し足が疲れたのもあって、階段に腰をかけた。
すると――
ガチャン!!
「へ?どわー!」
腰をかけてた場所がいきなり開いて、奈落の底まで落ちてしまった。
ん…。ここは?
「けど、深く落ちてきたのにあまり痛くないな…。」
ポワーンポワーン…ベチャッ!!
「どひゃ!」
ペチャッペチャッ
「な…なんだ。スライムかー。」
そこには前世、ムーンが住んでいた家の天井に届きそうなくらい大きなスライムがいた。
な、なんか美味しそうな見た目だー。
ベチャッ!
「どわ!あつっ!」
巨大スライムがいきなり吐き出してきた液体は、ムーンの腕にかかった。腕からは尋常ではない量の煙が出ていた。
「私が嫌がる事をするのは許せないー!どりゃっ!!」
ドッパーン!!
ムーンは無意識に魔素を拳に集め、巨大スライムを力一杯殴った。
シュワワワワ…
巨大スライムを倒すと、ムーンの体はほんのり紫色のオーラのような物を纏って光り始めた。
「ななな…なに!?」
体が光り始めると、ムーンの中で何かが変わり始め――
「…。なんだったんだろう…。」
――!!
ドクンッ…ドクンッ!!
「何!?この感じ…。全身の感覚が…。」
ムーンは魔素の存在に気が付き、全ての感覚が研ぎ澄まされ、違和感すらも無くなった。
「まぁ、先に進むしか無いよね。」
ポムッポムッポムッ
ムーンは魔素の感覚に慣れ、魔力弾を作って遊びながら歩いていた。
「なんか、雰囲気が廃坑っぽくなってきた…。」
ゾワッ
「…! なにっ?」
ドカッ!!
歩いていると、魔物の気配を強く感じた。それと同時に足元の床が無くなり、暗くてとても広い空間に落とされた。
「ここ…。広いなー。」
私、飼い猫のムーンと申しますが、転生したら野良の魔じん族になりました。 むーん @11moon05_
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