Shining silver snow*① 隣でぎゅっとして。
顔見たら涙が止まらない。
隣の席じゃなくなった。
だけどやっぱり諦めたくないよ。
*
12月24日の朝。わたしはぐちゃぐちゃになった布団の中にいた。
今日はクリスマスイヴで1年の2学期の終業式。
式が終わったらもう冬休み。
わたしはベットの横に置いてあるうさぎ型時計を見る。
時計は8時を示していた。
いつもならもうとっくに登校してる時間…。
「
「遅刻するわよ」
お母さんが階段の下からうるさく呼びかけてくる。
お母さんの声…起きなきゃ。
そう思うのに体を起き上らせようとしても力が入らない。
…そうだ、猫。
猫が気になったことで力が入り、なんとか起きられた。
布団を
シャッ!
ベランダに続く扉を隠した淡い青色の雪柄のカーテンを開ける。
猫はいなかった。
わたしは眉を下げ、ふっ、と笑う。
わたし、何を期待していたんだろ。
いる訳ないのに。
…きっと、猫は今頃一人で旅立って、
何食わぬ顔をして道を歩いてるんだろうな。
だったらわたしも、ここで立ち止まっている訳には行かない。
「…着替えよう」
わたしはハンガーにかかった制服をベットの上に置く。
だけど今日を乗り越えたら冬休み。
ふわふわのパジャマの上から制服をぎゅっと抱き締める。
両目が少し潤む。
――うん、大丈夫。
「一人で生きて行くって決めたんだもん」
きっと乗り越えられる。
*
「
キッチンで向かいの椅子に座っているお母さんが話しかけてきた。
「昨日はコートに猫の毛いっぱいつけて帰ってくるし…」
お母さんは、はぁ、と深く息を吐く。
「隣の猫が可哀相なのは分かるけど、もう触っちゃだめよ」
「うん、ごめんなさい…」
わたしは焼き目が兎の顔になった朝食のホットサンドをかじる。
あ…ホットサンド冷たい。
コーンスープも冷めちゃった。
お母さんが心配そうな表情を浮かべる。
「
「終業式だけだから休んだら?」
わたしは、へらっと力なく笑う。
「お母さん、大丈夫」
「わたし、高校行くから」
*
15分後、1年A組の教室の前に着いた。
わたしはぎゅっと鞄の肩紐を掴む。
…教室、入りずらいな。
廊下側から
だけど入らなきゃ。
――ガラッ。
わたしは勇気を出して前の扉を開ける。
「え!?
教壇の周りで
…え?
わたしは驚いて固まる。
「ほんとに!? マジ!?」
「マジマジ、B組の子が偶然、告白聞いたらしい」
…わたし以外にも聞いた子いたんだ。
良かった助かった…けど…。
「めっちゃ広まってるね」
「
え、え…!?
ちょっと待って…。
え…なんで?
なんで
両想いだと思ってたのに――。
「あ、おはよ
「キャー!
「なんで
わたしはハッとして右手で自分の口を塞ぐ。
わたし、何、話しかけて…。
もう、一人で生きて行くわたしには関係ないのに。
「鞄落としたの、やっぱりお前だったんだな」
え…昨日告白聞いてたのバレて…。
え…何…?
「…話がある」
「…終業式後、教室で」
*
終業式、終わった……。
校長先生の話、何も頭に入って来なかったな。
髪の上から右耳に手で触れてみる。
あ…まだ熱い。
甘い声だったな…。
あの後、何も答えずに席に着いた。
このまま教室に戻って、
帰りの
ふらぁ…。
こんな時に…。
どうしよう…教室に戻らなきゃ…いけないのに…。
あ…だめだ、もう限界。
わたしは廊下の壁に右手をつく。
みんな教室に戻って行っちゃったし、少し休もう…。
疲れてしまったわたしは廊下の窓の下で崩れ落ちしゃがみ込む。
――――パタ。
後方から、シューズの音が響いた。
パタパタ。
足音が近づいてくる。
…誰?
もう誰でもいいや。
一人で生きて行くって決めたから。
わたしはしゃがんだまま両手の平を合わせて広げる。
朝、雪降ってたのに雪受け取れなかったな…。
足音がピタリと自分の前で止まった。
ふわっ…。
雪みたいに両手の平に飴が降ってくる。
わたしは驚く。
え…“銀のミルク”?
わたしは顔をゆっくりと上げた――――。
「なんで…」
声が震える。
目の前に
なんで
動揺しながら振り向くと、
「入学式の時、飴あげたの俺だから」
え…。
わたしは動揺する。
「入学式の後」
「
「今みたいにしゃがみ込んでる
「顔を見たら元カノのめいに似てて、放って置けなくて飴を渡したんだけど」
「
「
「その顔が忘れられなくて、ずっと目で追うようになったんだよ」
わたしの両目が揺れる。
嘘…。
そんな…そんなの嫌だよ。
――飴、渡したの、俺じゃない。
わたし、ずっと“勘違い”してたなんて。
「それから8ヶ月」
「ようやく
「昨日席離れて改めて思ったんだ」
「このまま
「俺、
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