第4話 出来る事を全て…
幸か不幸か、探索は順調に進んでいく。最初のセーフティゾーンで、「休まないの?」と聞かれたので、「皆さんの負担になりたくないから、早くレベルを上げたい」と答えておいた。不審に思われるかもしれないが、どうでもいい。彼等からしても、ここで敵対するメリットはないのだから。
スライムの魔石は放置する。魔石は空気中で徐々に小さくなっていくので、帰る時に集める事になっている。ギルドで買い取り後、加工される事で大きさを維持できるらしい。今は少しでも早くレベルを上げたいので有り難い。
1階層のボスはスケルトン3体とスケルトンアーチャー1体、2階層は、スケルトンナイトだった。取れる素材が無いのでそのまま放置した。
このスキルは、発動した状況で、モンスターに直接触れてから倒す必要がある。そもそも、これは、「倒したモンスターをアンデッドとして支配できる」というものであって、最初からアンデッドだったものを支配するというものでは無い。何より「白き守り手」のメンバーとの信頼関係が揺らいだこの状況で下手に動くのは得策ではない。
3階層のセーフティゾーンでは、1泊するので、不寝番を申し出て、スライムを狩り続けた。
徹夜の甲斐もあって、レベルは30に達した。覚える予定だったスキルは2つともカンストし、魔力探知も覚えた。魔力探知はLV1が最大なので、まだポイントには余裕がある。黒木さんの言う事を聞くのも癪なので、ネクロマンサー唯一の専用スキル「アンデッド支配」をカンストさせた。
3階層のボスはホブゴブリン4体とゴブリンメイジだった。鈴木さんと田中さんで1体ずつ押さえている内に、伊藤さんの範囲魔法で残りの2体を倒した。最後に残されたゴブリンメイジは少し悲しそうに見えた。少し休んだ後、4階層に向かった。
4階層は不自然な程モンスターが少なかった。嫌な予感がしたがそれを口にする事は出来ない。そのまま進む。セーフティゾーンがこれまでとは比較にならない程大きい、しかも部屋の右側に人が通れそうな通路があった。3階層までボス部屋とセーフティゾーンは同じ大きさだった。今度も同じだとすれば、かなり苦戦すると思われる。
目的の部屋の前で黒木さんは静かに話し始める。
「ここのボスはゴブリンキングだ。一層気を引き締めて行こう。ただ基本は3階層の時と変わらない。初手の範囲魔法で前衛を倒す。その時、前衛を1体だけ残しておく事。増援を呼ばれるからな。鈴木がキングを撹乱、田中が残りを抑えている内に、伊藤は通路に向かって走って射程に入り次第アースウォールで塞げ。後は残りの前衛を倒した後、取り囲んで終わりだ。では、行こうか!」
ボス部屋に入る。中には、ゴブリンキングとホブゴブリン5体がいた。クィーンは居ないのかな?とか思っていると、伊藤さんが早々にホブゴブリンを4体吹き飛ばした。ほぼ同時に田中さんが残りの1体を抑え、鈴木さんはキングを撹乱する。そして通路を塞いだところで戦いの趨勢は決した。
キングが倒れた後、戦利品の大剣と盾を背負子に括り付ける。ステータスが上がったとはいっても流石に重い。若干、運搬能力UPにポイントを振らなかった事を後悔した。
ただ、事前に対策を立てていたとはいえ、あっさり終わったな。あの嫌な予感は何だったのか……
「皆んなお疲れ様! 隣で休憩してらギルドに戻ろう。」
鈴木さんが扉を開く…固まる。
そこには巨大な
一目で分かる。レベル、戦略、戦術…コイツの前では全てが無意味だ。だが、幸いな事に、今は寝ている様だ。
鈴木さんがハンドジェスチャーで左の壁沿いに行く様指示をする。あくまで出口を目指し、いざとなったら通路に逃げ込むつもりだろう。
もうすぐ通路に到達するという所で、何となくドラゴンを見た時、一匹のスライムが天井から落ちてくるのが見えた。しかも狙ったかの様にドラゴンの鼻に落ちる。ドラゴンは大きなくしゃみをし、顔を左右に振る。目が合った‼︎
『ドンっ』
私は背中に強い衝撃を受け、吹っ飛んだ。
3m程飛ばされ、スタンガンが手から離れる。通路の方からは、走り去る足音が聞こえた。すぐに荷物を下ろし、ドラゴンに向かって走り出した。
「捨て駒にされても
頭の中に声が響いた。
いや、一番助かる可能性の高い行動を取っただけなんだが…心の中でそう突っ込む。
あれだけの巨体、死角も大きいはずだ。腹の下に潜り込んで…‼︎頭上に強い魔力を感じる。
咄嗟にナイフを右に投げ、左に回避っ
『ドーーン』
ナイフに雷が落ちる。遊ぶ?これ、一撃必殺じゃ…とにかく死角へ、あと少しっ! ⁉︎伏せた! 普通手で払わないか? 伏せた事でドラゴンの両腕は動かせなくなった。だがこれで死角は無い。こちらの攻撃が効くとは思えない、距離を!
その時ドラゴンの胸の中央に突起の様な物が見えた。あれは逆鱗⁉︎ 剣を抜く。「アンデッド支配」発動。全力で飛び上がり、全体重を乗せて突き刺した。逆鱗に沿って剣身が滑り込む。その時、体が持ち上げられる感覚があった。
「マズっ」
すぐに剣から手を離す。が、手遅れだった。視界の端にはドラゴンの手が映っていた。空中では避ける事は出来ない。そのまま地面に叩き付けられた。
「ぐっ…」右腕と左足が折れか。肋骨も何本かイってる。ここまでか。 いや、……本当は分かっていた。助かる見込みなど最初から無かった。荷物を捨て逃げてもいい
頭上に魔力が集まっている。
やれる事は全てやった。私は全身の力を抜いた。
『ズドンっ』「グアッ」
「へ?」気が抜けた声が出た。見上げると、ドラゴンの胸の辺りから湯気の様なものがでていて、そのまま力なく倒れた。
…コイツ剣を抜かずに雷落としたんだな。いくら鱗が絶縁体でも、心臓の近くに剣が刺さってたんじゃ…アホみたいな理由だが助かって良かった。
あれっ、叩かれた時「アンデッド支配」の条件、満たされてるのでは? ダメ元で「起きろ」と念じたら、起き上がった。そこで気付いたのだが、このドラゴン、体が大き過ぎて、どの出入口からも出られそうにない。小さくなるスキルを持っていたのかも知れない。だが、アンデッドになった状態ではスキルは使えない。何か方法は…
辺りを見渡すと少し離れた所にスタンガンがある。心臓に電気ショックを与えれたら、生き返ったりしないかな?失敗してもデメリットはない。
『バチンッ』
直後、頭の中に聞き覚えのある声が聞こえた。
『あーびっくりした。死ぬかと思った』
「いや、死んでたからね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます