とびきり不幸で少し幸せなお嬢様について

真蛇ナナコ

私とお嬢様

私はお屋敷で働いているものであります。


私とお嬢様について

少しお話しようと思います。


私がお仕えしていた。

かつて。

今は違うのですが

そのお嬢様は

私が知る限りとても不幸な身の上でございました。

父も母もお嬢様を育てる事は無く

誰が父か母かも知る事もなく

お育ちになりました。


またお屋敷もとても裕福とは言えなかったので

常に他の裕福な貴族のいう事を聞かなければ

やっていけないような状態でありました。


更にお付き合いされていた旦那様にも

貧しいからと捨てられてしまったそうで。

不幸が次々と降りかかってくるようなお嬢様でした。


それでも。

今は、一人でも切り盛りできるように

ご成長されたようですが。




私はかつて、一人のお仕えしていたものとして

私の罪を告白しようと思います。


私がお嬢様にお仕えした時

お嬢様はあまり裕福でなく

また他の貴族のお手伝いをされて生計を立てていた頃のお話です。


私は家が貧しいのを嘆いたお嬢様の為に

自分の持っていたお金を全て使って

イミテーションの首飾りを買いました。


お嬢様は大変喜ばれたのですが

所詮、造り物は正しくない偽物でございます。


本物でなくてはいけなかったのではないか、とか

仰る方もいらっしゃるのですが

ごもっとも。


しかし

そのイミテーションの首飾りは

貴族の社交界への入場許可証として

お嬢様はお使いになられた様です。


そこで、お嬢様はビジネスの成功者となられ

今では立派な貴族の一員となられたそうです。


これが私の罪の詳細であります。


私は、というと首飾りを買うと

直ぐにお屋敷を辞めて

今は細々と田舎町で暮らしております。


お嬢様に罪はないのか?という事ですか。

お嬢様が幸いならば良しとするのが社交界のルールですから。


ただのお屋敷に使えている者の事など塵に等しいのです。


これは既に何十年も昔の話ですが

今でも同じような事がお屋敷で行われているそうで。

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