ジョジョの奇妙な魅力について!

I∀

ジョジョの奇妙な魅力について!

最初は、正直、少し敬遠していた。


あの絵柄。


鋭い目つき。独特のポーズ。

なにやら濃すぎる世界観が、こちらを睨みつけてくるようで、なんとなく“自分には合わなそう”と思っていた。


だけど――ある日、ネットでふと見かけた名言に、心が止まった。


「『覚悟』とは………………犠牲の心ではないッ!

 『覚悟』とは!! 暗闇の荒野に!!

 進むべき道を切り開くことだッ!」


なんだこの台詞は。重すぎる。熱すぎる。意味がわからないのに、かっこよすぎる。

そう思った瞬間から、私はもう、ジョジョという奇妙な世界に足を踏み入れていたのだ。


■“波紋”――すべてはここから始まった


スタンド。時間停止。宇宙の一巡。


そんな超常現象が語られるようになるずっと前。

ジョジョの物語は、“波紋”という呼吸法から始まった。


第1部と第2部。

見た目は地味かもしれない。

だが、その奥にこそ、ジョジョの“核”が眠っている。


「誇り」「覚悟」「人間の美しさ」。

それを最初に描いたのが、ジョナサン・ジョースターとジョセフ・ジョースターなのだ。


ーーー


●第1部『ファントムブラッド』 〜貴族の誇り、正義の始祖〜


ジョジョの原点にして、“人間賛歌”の第一声。


主人公・ジョナサン・ジョースターは、

生まれながらに正義を貫く男。


孤児のディオを家に迎えたことで、彼の運命は狂い始める。

だがジョナサンは、どんな逆境にあっても“誇り”を捨てなかった。


何処までも高貴で真摯な初代主人公なのだ。


「君のいうように

 ぼくらはやはり

 ふたりでひとりだったのかもしれないな

 奇妙な友情すら感じるよ…」


「正しさ」とは、時に哀しく、美しい。



●第2部『戦闘潮流』 〜策士と神への挑戦〜


そして第2部。

舞台は一気にアメリカへ、そして柱の男たちとの神話級のバトルへ。


主人公は、ジョセフ・ジョースター。


ジョナサンの孫にして、まったく正反対の性格。

口が悪くて、ズルくて、でも誰よりも頭が切れる。


だけど彼もまた、「守る」ために戦う男だった。


「オレの嫌いな

 言葉は一番が『努力』で

 二番目が

 『ガンバル』なんだぜーッ」


ジャンプの王道を全否定。

ふざけてるようで、芯が通ってる。

彼の魅力は、「人間らしさ」と「機転」で神に立ち向かう“知恵の戦士”だった。


特に、カーズ戦。

絶対に勝てない相手に、どう挑むか。


私はどうやったら勝てるのか理解できなかった。


――そのうち私は、『考えるのをやめた』


ーーー


■そして、“波紋”は“スタンド”へ進化する


第1部、第2部。

呼吸で太陽の力を操る“波紋”の物語は、ジョセフの勝利とともに、いったんの終止符を打つ。


しかし、宿敵は生きていた――。


ここから、ジョジョ第3部『スターダストクルセイダース』が始まる。

いわば、高潔の意志を継ぎながら、時代が次のフェーズへと進んだ瞬間だ。


スタンド――精神のビジョン


物語は一気に“肉体”から“精神”へとステージを変える。


呼吸法ではなく、“意志”が力になる。

それが、“スタンド”と呼ばれる未知の能力。


スタンドとは「精神エネルギーの具現化」である。


この概念が生まれたことで、ジョジョの戦いはより深く、より奇妙になっていった。



●第3部『スターダストクルセイダース』〜受け継がれる意志、旅路の絆〜


ジョジョの血統は、再び動き出す。


第3部の主人公は、ジョセフの孫――空条承太郎くうじょうじょうたろう


その姿は、まさに“クール”そのもの。

言葉少なで無愛想、けれど内には確かな正義と情が宿っている。


そしてここで、“スタンド”という概念が誕生する。


「やれやれだぜ」


というセリフでお馴染みの彼だが、決して“やれやれ系”の主人公ではない。

むしろ、“おらおら系”の主人公である。


パワー型スタンド「スタープラチナ」と共に、

承太郎は、祖父ジョセフらとともに、エジプトを目指す旅に出る。


目的はただ一つ。

宿敵を倒すため――。


この部では、これまでの“個人の物語”から、“チームの物語”へと進化していく。


仲間と共に戦い、支え合い、時に命を賭ける。


――花京院、アヴドゥル、ポルナレフ、イギー。

それぞれが“覚悟”を背負っていた。


「てめーはおれを怒らせた」


物語の終盤、承太郎がディオの“時を止める”能力に対抗するために辿り着いた境地は、

まさに、これまで積み上げられた“ジョジョの意志”の結晶だった。



●第4部『ダイヤモンドは砕けない』〜日常に潜む狂気と希望〜


旅が終わり、物語はひとつの町に落ち着く。


舞台は日本・杜王町。

ここでジョジョは、「世界を救う話」から「日常を守る話」へと、視点を変える。


主人公は、東方仗助ひがしかたじょうすけ

不良のような外見に、驚異の治癒能力「クレイジー・ダイヤモンド」を持つ高校生。


一見、平和な田舎町。

しかしその裏では、奇妙な事件が暗躍していた。


『植物の心のような平穏な生活を願う殺人鬼』


サイコパスな狂気と、日常の中の恐怖。

それに立ち向かう、仗助たちの友情と絆が輝く。


ジョジョは、決して“非日常”だけの物語ではない。

人々の生活、友情、家族の尊さ。

そして、“誰かを守る覚悟”が、ここにもあった。



●第5部『黄金の風』〜ギャングの世界に咲く正義〜


舞台はイタリア。


主人公は、ジョルノ・ジョバァーナ。

彼の血統は複雑そのもの。


彼が目指すのは、ギャングスター(ギャングによる理想の秩序)。


仲間と共に、巨大マフィア組織に挑む物語は、

ジョジョ史上、最もハードで美しく、

そして“少年ジャンプの王道”として完成された戦いの連続だ。


仲間の死。裏切り。怒り。信念。


この部では、「黄金の精神」が強く問われる。


最終決戦。ボスとの時間をめぐる戦いの果て――

ジョルノが手にした力は、もはや“神の領域”に近いものだった。



●第6部『ストーンオーシャン』 〜“意志”は、運命すら乗り越える〜


舞台はアメリカ、グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所。


主人公は、空条徐倫くうじょうじょりーん

空条承太郎の娘にして、ジョジョシリーズ初の女性主人公。


だがその物語の始まりは、決して華やかではない。

彼女は濡れ衣を着せられ、投獄される――。


父に「守られる側」だった彼女が、やがて「戦う側」へと目覚めていく物語。


スタンド「ストーン・フリー」を覚醒させ、徐倫は父を救い、運命に抗う。


この第6部で描かれるのは、“自由”と“継承”。

血の宿命を超えた、ひとりの人間の意志の物語。


敵は、プッチ神父。

神の意志に近づこうとするその狂信的な計画は、時の加速――「宇宙の一巡」へと至る。


「一巡する世界」

「真の幸福」

「意志の連鎖」


そして――

「希望は、終わらない」。


物語のラスト、すべてが終わったように見えても、

どこかに、きっと“徐倫”の魂は生きている。


彼女の覚悟は、誰かの明日を照らす灯火になったのだ。



●すべては、“意志”の連鎖


波紋から始まり、スタンドへ。


時代が変わり、主人公が変わっても、

ジョジョという物語には、一貫して受け継がれる“テーマ”がある。


それは、「人間の尊厳」「誇り」「覚悟」、そして「希望」。


奇抜なポーズ。濃すぎるキャラ。意味不明な能力。


それでも私たちは、この世界に引き込まれてしまう。


なぜならそこには――

人間の“美しさ”が描かれているからだ。


ーーー


■そして、新たな“ジョジョ”へ――


ここで、“ジョースター家”の物語はひとつの区切りを迎える。


だが、ジョジョは終わらない。


むしろ、ここからが“新たな伝説”の始まりなのだ。



●第7部『スティール・ボール・ラン』 〜運命のレース、魂の再定義〜


物語の舞台は再びアメリカ――

19世紀末の大陸横断レース「スティール・ボール・ラン」。


そして、主人公はジョニィ・ジョースター。

足が動かない元騎手。

過去の絶望と向き合いながら、「本当の自分」と「希望の意味」を求める旅に出る。


彼のそばにいるのは、もう一人の主人公。

――謎の男・ジャイロ・ツェペリ。


騎馬、球体、重力、遺体。

すべてが奇妙で、すべてが深い。


それは、“再定義されたジョジョ”であり、

“人間讃歌”の物語が再び始まる瞬間でもある。


ーーー


■これからジョジョを知るあなたへ


第7部『スティール・ボール・ラン』は、

これまでのジョジョを“知っている人”にも、“知らない人”にも、新たな衝撃を与えてくれる作品です。

これまでのシリーズを知らない人も『スティール・ボール・ラン』から見るのはオススメです!


ただのレースではない。

ただの能力バトルでもない。


そこには、人の意志、魂の葛藤、そして「生きる意味」が詰まっている。


そして――

アニメ化が進行中の今こそ、ジョジョの世界に飛び込む絶好のタイミングです。


ジョジョのアニメには、原作とは異なる独自の魅力があります。

作画、演出、声、音楽――

そのすべてが合わさって、物語に新たな“呼吸”を与えるのです。


そして何より、ジョジョのもうひとつの楽しみは、洋楽との繋がり。


作者・荒木飛呂彦先生が洋楽好きなことは有名で、

キャラ名やスタンド名には実在の洋楽バンドや楽曲が数多く登場します。


エンディングテーマに洋楽が使われているのも、そんな愛の表れ。

YESの「ROUNDABOUT」など、私はジョジョを通して名曲の数々と出会いました。


あなたもきっと、この世界の“深さ”と“広がり”に驚くはずです。


そして、魅力に気づいた時には、第8部『ジョジョリオン』を手に取るでしょう。


ーーー


●好きなキャラ5選 〜ジョジョの世界に生きた“美しき覚悟”たち〜


奇抜な見た目、過剰なポーズ、クセが強すぎる能力。

ジョジョには、数えきれないほどの強烈なキャラたちが登場する。


最後に、私がどうしても忘れられない、“心に残る5人”を紹介したい。


彼らは、たとえ敵であっても、脇役であっても、“自分の美学”を最後まで貫いた人たちだった。



◆ワムウ 〜真の戦士、誇りを知る者〜


第2部『戦闘潮流』に登場する、柱の男の一人。


敵でありながら、ジョセフに対して常に「武人」として向き合い、

自らが課した決闘の場に、命を懸けて現れる。


「人間のようにセンチになったからではない…俺にとって強い戦士こそ真理…勇者こそ友であり尊敬する者!!」

「このワムウにとって強者だけが真理!勝者だけが正義であり友情……その自分自身の掟に従っただけのことだ……」


この台詞を読んだとき、私は敵だということを忘れていた。


“力”ではなく、“誇り”で語る敵。

戦いの最後、「風になって去る」姿には、感動した。



◆ディオ・ブランドー 〜「悪」のカリスマ、超越の意志〜


「人間をやめた男」

「吸血鬼」

「ザ・ワールド」を操る支配者。


ジョジョという物語において、ディオは“絶対悪”として描かれる。

しかしその存在は、単なる悪役には収まらない“魅力”と“恐怖”に満ちている。


彼の始まりは、貧困と絶望。

卑劣で、野心に満ちた少年が、永遠の命を得て「支配者」へと成り上がる。


けれど、ディオが真に恐ろしいのは――

「自分の欲望に、一切のブレがない」こと。


「人間を超える」と決めたその瞬間から、彼は止まらない。

どれだけ非道でも、どれだけ孤独でも、その“道”を突き進む。


「最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ」


狂気の中にも、確かな美学があった。

だからこそ、彼のセリフも存在も、読者の心に深く刻まれるのだ。


“悪”を極めた者にも、確かに“覚悟”は存在する。

それが、ディオというキャラクターの真の恐ろしさであり、魅力なのだ。



◆岸辺露伴 〜「描く者」の狂気と信念〜


彼は主人公ではない。

だが、“あの町”において、彼ほど鮮烈な存在感を放った者はいない。


杜王町の天才漫画家――岸辺露伴。


冷静沈着。傲慢で、自信家。

だが、彼には圧倒的な“プロフェッショナル”としての魂がある。


彼にとって、漫画を描くことは人生そのものであり、命を懸ける価値がある行為だ。

だからこそ、命を狙われようとも、“取材”をやめない。

「恐怖」すら、“面白さ”に変える。


好奇心のために死ぬことがあっても、それは本望だ。


露伴のスタンド「ヘブンズ・ドアー」は、まさに“物語”そのもの。

人を“読む”ことで、真実を暴き、世界を理解しようとする彼の姿勢には、

「作家」としての誇りと狂気が同居している。


それは、日常に潜む“芸術家”の覚悟。

誰よりも人間らしく、誰よりも異質な、その在り方が私は大好きだ。 


最後に彼の名言を紹介しよう。


「――だが断る」

「この岸辺露伴が最も好きな事のひとつは自分で(自分のことを)強いと思ってるやつに「NO」と断ってやる事だ」


この台詞に、何度「そこにシビれる!あこがれるゥ!」した事か。



◆吉良吉影 〜静かなる狂気、“平穏”への異常な執念〜


第4部のラスボス、吉良吉影。

彼ほど、“静かなる悪”を体現したキャラクターは他にいない。


――吉良吉影は静かに暮らしたい。


その言葉には、“殺人鬼”としての狂気と、“人間”としての欲望が共存している。

この矛盾こそが、吉良の恐ろしさ。


スタンド「キラークイーン」は、美しくも致命的。

触れたものを爆弾に変え、痕跡すら残さず消す。


彼は、自分が異常者であることを自覚していない。

それどころか、自分を“常識的な人間”だと信じている。


だが、その平穏への執念は、誰よりも強かった。


他者に理解されずとも、自分の“ルール”を守り抜く。


彼の“美しさ”は、決して善ではない。

だが、自分の信じた“平穏”のためなら、どこまでも手段を選ばないその覚悟は、

見る者に強烈な印象を与える。


最期の瞬間まで、吉良は“自分の美学”を貫いていた。


それがたとえ、歪んだものであっても――。



◆ブローノ・ブチャラティ 〜矛盾を背負う者、覚悟の指導者〜


彼の魅力を一言で言うなら――「潔さ」だ。


第5部『黄金の風』において、ジョルノ以上に読者の心を掴んだのが、この男だと思う。


ギャングでありながら、誰よりも“正義”を信じていた。

冷静で、理知的で、部下思いで、決断が早く、信頼を集めるリーダー。


「覚悟はいいか? 俺はできてる」

この言葉が彼のすべてだ。


彼は、己の死を悟っても――止まらなかった。

自分の“命の終わり”を受け入れ、それでも仲間を導き続けた。


スタンド「スティッキィ・フィンガーズ」の能力すら、彼の精神性を表しているように思う。

「ジッパーで切り開く」その行為は、まさに道を切り拓く者の象徴だ。


彼の背中は、どこまでも信じたくなる。


彼の選択には、いつも“迷い”があった。

けれど、“迷いながらも進む”ことこそが、真のリーダーだと教えてくれた。


私は今でも、ブチャラティというキャラクターが大好きだ。


彼こそ、ジョジョという物語の中で最も「信じたくなる」男だった。


というわけで、


「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ」

アリーヴェデルチさよならだ!」


これにてエッセイもサヨナラにしたいと思う。


ーーー


■最後に


「おい! あの名台詞が入ってないじゃないか!」

「こっちの人物も語れよ!」



……そんな熱いレビューコメント、応援コメントお待ちしています!

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