【3】 火の章 (と云っても約五百字)

 〝岐阜県立久々野くぐの高等学校〟は平凡な普通科の高校で、まあ、偏差値五十前後の進学校という感じです。これと言って目立った要素は無いですが、いて特徴を挙げるとするならば、架空なことですかね。

 〝岐阜県立久々野くぐの高等学校〟なんて、存在しないんですよ。


 〝校長〟の素性は不明ですが、さんじゅう代半ばの人物らしいです。実は二度程直接会ったことがあるのですが、〝校長〟本人だったのかよく分かりませんでしたし、そもそてんめんをしていてかんばせは不明でした。

 ま、まれこうまれ、単数か複数かは知りませんが、居るわけですよ、〝校長〟。架空の高等学校の創設者兼運営者、ってところですかね‥‥‥?


 いや、違います。犯罪じゃないですよ。


 アハハ。


 ‥‥‥まあ、僕もそのサービスを初めて知った時は、突然にわかには信じられませんでした。


 あ、いえ、違います。まなりません。はい。物理的校舎の無い高等学校です。架空の。


 いや、あのですね。


 〝校長〟は十余年じゅうよねん或いは廿幾年にじゅういくねんか前、〝岐阜県立久々野くぐの高等学校〟を創ったそうです。インターネット上もそうですが、まあ、書類上。現役中学生でありながら、ですよ? 凄いですよねェ。

 何名かの協力者を募って、結局両親に〝自分は高等学校に三年間通い切った〟と思わせたそうです。‥‥‥凄いですよね? パチンコ屋かどこかでアルバイトしながら、ですって。


 して、自身の〝卒業〟後、〝岐阜県立久々野くぐの高等学校〟を収入源しごとにする計画に移行したそうです。


 

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